本研究は,岩手県滝沢村における酪農経営の飼料構造を分析し,飼料需給の地域的特性を解明することを課題とする.滝沢村の酪農家は飼料生産基盤と労働生産性によって, 4つの酪農経営に分類され,類型ごとに飼料調達に関して異なる選択を行なっていた.その結果,資本集約的大規模酪農経営と労働集約的酪農経営は,購入飼料に大きく依存する大都市近郊の酪農経営に類似した飼料構造を,土地利用型の大規模および中小規模酪農経営は,飼料自給率の高い飼料構造をもつことが判明した.滝沢村の飼料構造の地域的特性は,自然的条件が等質な山麓地帯内部で,経営耕地規模および酪農家間の結合関係の地域的差異に基づき,飼料構造の経営的分化が生じていることである.飼料需給についてみると,滝沢村で消費される酪農飼料の20-40%は酪農家の自給飼料生産によって,残り60-80%は購入によって調達される.流通飼料の供給は,酪農家と供給者との間に,良好な交通条件に基づいた長距離の結合関係と,村内で完結する結合関係とを成立させている.
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