本研究では,笠間稲荷神社(茨城県笠間市)の信仰者の分布から,信仰圏の範囲を画定し,信仰圏の地域区分を行なった.分布の指標には,昇殿祈願者(講社および篤信崇敬者),産物献納者,,分霊勧請者の3つを用いた.
その結果,笠間稲荷からの距離に応じて,笠間稲荷信仰圏は,(1)産物献納者の分布が卓越し,農耕に恵みを与える生産神としての信仰を集める第1次信仰圏(0~50km圏),(2)各指標とも分布が密であり,・とくに講:社の成立と分霊勧請者の分布の中心域で,、笠間稲荷信仰の核心地域といえる第2次信仰圏(50~150km圏),(3)講社,分霊勧請者とも分布が分散的となり,笠間稲荷信仰の外縁地域となる第3次信仰圏(150~800km圏)の3つに地域区分ができることが明らかとなった.
また笠間稲荷信仰圏の場合,信仰の広がりには,神社の西部から南東部にかけてのセクター性もみられ,笠間稲荷信仰圏が,信仰拠点を中心とする圏構造ではなく,第2次信仰圏に信仰者の分布の中核のあるドーナツ型を呈していることがわかった.
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