地理学評論 Ser. A
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74 巻, 7 号
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  • 後藤 拓也
    2001 年 74 巻 7 号 p. 369-393
    発行日: 2001/07/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    選択的拡大部門における拠点開発的な産地形成論は,わが国の周辺地域に「周辺型食料生産基地」の形成を促した.輸入農産物の急増によって,これち周辺型食料生産基地が著しい再編成を迫られることが,既存研究でたびたび予測されてきた.こうした議論に対する実証的回答を得るべく本稿は,国際化による顕著な再編成がいち早く現れた南九州ブロイラー養鶏地域を事例に,その再編成メカニズムを検討したものである. 1973年り畜産危機以降も垂直的統合を維持した一部的総合商社は,南九州を解体品供給地域と位置づけ,南九州養鶏地域の肥大化を促進してきた.しかし,輸入鶏肉急増による解体品価格の下落で, 1990年以降の南九州養鶏地域は急速な再編成を迫られる.南九州のうち宮崎県では1990年以降,全国有数のプロイラー飼養過密地域である児湯地域が急速な衰退を呈するが,それを規定した三つの要因が地域レベルで確認された.それは(1)飼養過密性に起因する生産低下,(2)大手ブロイラー処理場による集鳥戦略の変化,(3)低収益性と施設資金償還に起因する児湯地域内236農家の顕著な対応分化であり,これらの複合的作用が地域的差異を伴う再編成を進行させたのである.その一方,養鶏地域形成を主導した総合商社は,再編成において必ずしも中心的役割を果たさなかった.このように,国際化による南九州養鶏地域の再編成は,輸入鶏肉にに因する解体品価格の下落が,地域レベルに内包されていた低生産性を顕在化させるという,複層的メカニズムとして解釈できる.っまり・周辺型食料生産基地の再編成は国際化によって一面的に起因されるのではなぐ,地域レベルにおける飼養過密性の問題と,それに対処せざるを得ない処理場による集鳥戦略の変化が,きわめて重要な役割を果たしたと指摘できる.
  • 今里 悟之
    2001 年 74 巻 7 号 p. 394-414
    発行日: 2001/07/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    本稿では,中国四川省成都市近郊の一村落を対象に,解放前から現在における各時期の社会空間体系の変遷,村境(村落領塚)の画定状況,景観変遷の実態とその規定主体・要因を明らかにした.当該地域の基礎社会は,解放前は院子,集団化期は生産隊,改革開放後は生産隊を継承した村民小組であった.散居の基礎単位でもあった院子は,実質的には同族的な小村であった.成都盆地の社会空間体系は歴史的に流動性が特徴であるが,基礎社会レベルでは主に微地形がその境界基準となり,村境は集団化の過程で属人的要素を基礎として画定された.また,景観変化の規定要因は,国家の政治体制変化,区や鎮の政策,人口増加と経済水準上昇であり,景観維持の規定要因は,微地形と民俗思想(風水思想)の存続である.
  • 石黒 直子
    2001 年 74 巻 7 号 p. 415-423
    発行日: 2001/07/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    長野県中部に位置する諏訪湖で起こる御神渡りは宗教的に重要な現象であったため,その記録は550年以上にわたりほぼ途切れることなく継続する.そしてこの記録は冬季の気候復元のための貴重なデータとして注目されてきた.本研究では,この記録を使用するのに際し,重要な問題となるデータの均質性にっいて,・データソースの歴史的変遷の観点から検討を行った.その結果,諏訪大社管轄の記録の中でも,データソースの変化に伴い内容に相違がみられた.とくに,15~17世紀にかけての御神渡りの観測基準が現在と異なり,氷の割れる音を聞いて観測していた可能性が示唆された.さらに近年の気象観測データに基づいた解析から,諏訪大社と諏訪測候所による結氷日の観測基準が異なることに由来する,両者の結氷日の質的な違いを明らかにした.これらの違いに留意してこのデータを使用することによってより精度の高い気候復元が可能になるであろう.
  • 2001 年 74 巻 7 号 p. 424-430,iii
    発行日: 2001/07/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
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