従来の地理学では,オンライン化などの情報技術革新と空間変容とを,フェイス・ツー・フェイス代替の観点から比較的直接的に関係づけようとする傾向がみられた.確かに,情報ネットワーク化は時間的空間的懸隔を短縮し,取引情報流や物流の集約化を促進する効果をもつ.しかし,それらの効果は常に直接的に空間変容に結びつくとは限らない.現実には,それらは複雑な企業行動の変化を介して,空間構造に影響を与えているのである.そこで本稿では,わが国で最も顕著に情報ネットワーク化が進展しつつある消費財卸売業を例に,情報ネットワーク化の進展によって企業に生じた変化の内容と,その変化から企業の空間行動が受けた影響を検討した.
その結果,情報ネットワーク化は,卸売企業の商圏の拡張や商流・物流拠点のテリトリーの拡大を招くことで,卸売施設の集約化や機能転換あるいは機能的分割を促進させており,それに伴った立地変容を生じさせていることが判明した.
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