地理学評論 Ser. A
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72 巻, 4 号
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  • 山中 勤, 嶋田 純, 谷口 真人
    1999 年 72 巻 4 号 p. 215-226
    発行日: 1999/04/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    乾燥地域の水循環システムにおいて,プラヤはしばしば,広大な内陸盆地の排水径路の末端として機能する.プラヤの土壌は,その細粒性と高い塩分含量によって特徴づけられる.本稿では,西オーストラリアArrow Lakeにおける一つの事例を提示し,乾燥期のプラヤが持つ水損失機能をプラヤ固有の土壌特性からもたらされる水分動態の特異性という観点から議論する.微気象観測および(安定同位体分析を含む)土壌水の水質分析の結果から,蒸発および土壌水分移動に関する二つの特異性が示された.一つは,液状水輸送から水蒸気輸送への移行が,乾燥表層下部境界からその上方にかけた比較的幅広い領域において,緩やかになされていることである.このような特徴は粗粒土壌では認められず,プラヤ土壌の細粒性に起因するものと思われる.また,もう一つは,乾燥表層内の湿度低下が,土壌水分の減少のみでなく,塩類集積に伴う土壌水の浸透ポテンシヤルの低下によっても引き起こされていることである.これら2点の特徴のうち,前者は水損失の持続性をもたらすが,後者は水損失の量を減じる方向に働く.したがって,乾燥期のプラヤは,その固有の土壌特性ゆえに,低能力ではあるが,持続的な水損失機能を有しているといえる.
  • 藤目 節夫
    1999 年 72 巻 4 号 p. 227-241
    発行日: 1999/04/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,交通の地域インパクト研究において,時間空間と費用空間の変化を同時に考察する必要があるとの基本的認識のもとに,多次元尺度構成法を用いて交通変革に伴う中四国地域の両空間の変化を把握した.その結果,中四国地域の時間空間はこの四半世紀に約40%の大幅な縮小を示したが,費用空間はこの間にわずか数%未満の縮小であったことが明らかとなった.この両空間の縮小は,高速交通体系の整備に伴う高速の移動性が,余分な支払い費用を伴わずに達成されたことを意味しており,この四半世紀に中四国地域の交通条件がかなり向上したことが明らかとなった.またINDSCALにより両空間の共通空間の復元を試みたところ,満足のいく結果が得られ,時間・費用空間の変化は共通空間の二つの次元を伸縮することにより表現可能であることが明らかとなった.さらに以上の結果から,ある交通変革が地域の時間・費用空間に及ぼす影響には多大な差異があり,交通変革に伴う交通条件変化の把握には両空間を同時に取り扱う必要性が示唆された.
  • 貞広 幸雄
    1999 年 72 巻 4 号 p. 242-252
    発行日: 1999/04/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    本稿は,空間単位に基づいて集計された空間データの代表点について,その最適な位置を分析したものである.最も代表的な空間集計地区の変換手法である代表点法を取り上げ,変換時に生ずる誤差が最小となるような代表点の位置について考察を行った.まずはじめに,分析の前提となる条件を整理し,現実性の高い仮定のもとで,推定値の平均二乗誤差を導出した.そして,点分布と連続分布の2種類の分布について,推定誤差が最小となる代表点の位置を求めた.その結果,いずれの場合についても最適な代表点の位置は分布の幾何中央点であることが明らかになった.さらに数値計算から,分布に偏りがある場合には明らかに幾何中央点が最適であり,分布が比較的均一な場合には,分布重心も比較的推定誤差を小さくする位置であることがわかった.計算費用の問題を考え合わせると,実際上はこれら二つの位置を適宜使い分けることが望ましいといえる.
  • 江口 誠一, 村田 泰輔
    1999 年 72 巻 4 号 p. 253-266
    発行日: 1999/04/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    関東平野中央部加須低地における完新世の環境変遷を,堆積物の層相,層序,珪藻分析,植物珪酸体分析などによって明らかにした.埋没谷が開析された時期は約30,000年前以前で,完新世初期にはヨシ属が生育する河川作用の弱い泥炭地となった.縄文海進がおよんだのは約7,000年前で,内湾域となった後,次第に干潟域が広がるようになった.約3,500年前以降の海退期になると,河口域~下流域の環境要素が目立ってくる.約2,000年前,台地を開析した谷は埋積され,氾濫原が台地面上に広がった.開析谷谷頭部では,ヨシなどが繁茂する湿地が分布していた.約1,500年前,上流からの堆積物供給量がさらに増大し,現在河川沿いに分布しているような大規模な自然堤防が形成され,台地の埋没域が拡大した.
  • 後藤 秀昭, 中田 高, 奥村 晃史, 池内 啓, 熊原 康博, 高田 圭太
    1999 年 72 巻 4 号 p. 267-279
    発行日: 1999/04/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    中央構造線活断層系は,四国では活動度が高く,累積的な右横ずれ断層変位地形が連続的に認められるが,松山平野東部においてはこれまで活断層の存在が知られていなかった.このため,その東方の北方断層と西方の伊予断層との間には約10kmの断層線の不連続が存在し,ここがセグメント境界にあたると考えられてきた.筆者らはこの地域に長さ約6kmの明瞭な低断層崖地形が存在することを発見し,これを重信断層と命名した.本稿では活断層の存在を証明する地形学・地質学的な証拠を提示し,これに基づいた第四紀後期の運動様式および最近の活動履歴について考察する.重信断層は,N75~85°Eの走向を持ち,沖積面を南落ちに変位させる.直線的な低断層崖は重信町志津川から松山市高井町まで連続し,旧河道や侵食崖の屈曲から,これに沿って右ずれの変位が認められる.トレンチ掘削調査によって,地形から推定した位置に沖積層を変位させる断層が出現した.トレンチ壁面に出現した主断層は,走向N75~85°E,傾斜85~90°Sである.断層変位を受けた沖積層の年代から,5,550yrBP以降に少なくとも1回活動したと考えられる.
  • 1999 年 72 巻 4 号 p. 280-283,286
    発行日: 1999/04/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
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