乾燥地域の水循環システムにおいて,プラヤはしばしば,広大な内陸盆地の排水径路の末端として機能する.プラヤの土壌は,その細粒性と高い塩分含量によって特徴づけられる.本稿では,西オーストラリアArrow Lakeにおける一つの事例を提示し,乾燥期のプラヤが持つ水損失機能をプラヤ固有の土壌特性からもたらされる水分動態の特異性という観点から議論する.微気象観測および(安定同位体分析を含む)土壌水の水質分析の結果から,蒸発および土壌水分移動に関する二つの特異性が示された.一つは,液状水輸送から水蒸気輸送への移行が,乾燥表層下部境界からその上方にかけた比較的幅広い領域において,緩やかになされていることである.このような特徴は粗粒土壌では認められず,プラヤ土壌の細粒性に起因するものと思われる.また,もう一つは,乾燥表層内の湿度低下が,土壌水分の減少のみでなく,塩類集積に伴う土壌水の浸透ポテンシヤルの低下によっても引き起こされていることである.これら2点の特徴のうち,前者は水損失の持続性をもたらすが,後者は水損失の量を減じる方向に働く.したがって,乾燥期のプラヤは,その固有の土壌特性ゆえに,低能力ではあるが,持続的な水損失機能を有しているといえる.
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