慢性型地すべりの移動速度の式を導くことを試みた.文献などから得たすべり面の観察例のほとんどは,すべり面が波状の凹凸をもつことを示している.このことから,すべり面形状は正弦曲線からなると仮定した.土塊の滑動は,すべり面の凹凸により妨げられるため,垂直応力はすべり面凸部付近でより大きく,凹部付近ではより小さくなる.この応力変化により,凸部付近の土は収縮,凹部付近の土は膨脹する結果,凹凸をすり抜けて,土塊は滑動できると考えた。すべり面に沿う諸応力を解析し,垂直応力の変化の大きさを求めた.三軸圧縮クリープ試験から,土の応力と変形速度との関係を調べた.すべり面付近の土の変形速度と地すべり移動速度との関係に仮定を設け,地すべり移動速度の理論式を得た.式中の未知数は6例の地すべりデータをもとにして得られた.地すべり移動速度は,土塊の滑動力とすべり面の波長と波高との比をパラメータとした関数で表わされた.
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