谷密度を計測する場合,どの地点までを谷の最上流部と認定するかにより谷密度の値が変化する.そこで,25,000分の1地形図を用いて,等高線の屈曲部をすべてっないだ水系を全水系,等高線の屈曲部において等高線長2mmかっ屈曲角90°以内の基準を満たす水系を深水系として2種の水系図を作成し,地質ごとに1・2次流域の谷密度を測定,比較した.計測対象地域は敏音知,鵡川・沙流川,大島,大江山の各蛇紋岩山地とその周辺である.大江山地域を例に挙げると,全水系の谷密度の値は大きい方から,蛇紋岩<花商岩<古生層堆積岩,深水系の谷密度は,花商岩<古生層堆積岩<蛇紋岩となり,各地質における谷密度の相対的な大きさが水系認定法により異なることが明らかとなった.また,他の3地域においても相対順位が大きく変化した.これらの計測結果は,従来の谷密度の計測方法だけでは,山地の地形特性を正確に把握できないことを示唆する.一方,すべての対象地域において,蛇紋岩流域の全水系の谷密度は他の地質に比較して最大,深水系の谷密度は最小であった.さらに,蛇紋岩流域の全水系と深水系の谷密度比は最小であった.このことから蛇紋岩山地の地形的特徴として浅い水系が多く,深い谷が少ないことが示された.また,そのような地形の原因として地すべり地形の存在が挙げられる.
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