海面更正気圧 (SLP) により定義されるシベリア高気圧の季節変化を半旬を単位として明らかにし,上空の気圧配置および気温分布との関係を明らかにした. 1980年から1992年までの13年平均データを用い,シベリア高気圧の中心部 (50~55°N, 90~95°E) とウラル山脈北部(60~65°N,70~75°E)のSLPの3半旬平均の差により,季節変化のステージ分けを行った.その結果, 1年をステージ1(第39~53半旬),ステージ2(第54~57半旬),ステージ3(第58~64半旬),ステージ4(第65~72半旬),ステージ5(第73~3半旬),ステージ6(第4~7半旬:最盛期),ステージ7(第8~12半旬),ステージ8(第13~15半旬),ステージ9(第16~38半旬)に分割することができ,シベリア高気圧の形成・発達・衰退・消滅に至る時期およびその出現位置をとらえることができた.
さらに,上空の気圧配置,気温分布,気温の鉛直構造を考察した.この結果, 500hPa面高度で130°E付近の強いトラフと, 50°Eのトラフ, 80°Eのリッジが強くなっている時に,シベリア高気圧の中心が強まっていることがわかった.すなわち,シベリア高気圧の中心部分が発達・衰弱する時には,上層の気圧配置の影響が見られる.また,バイカル湖周辺がシベリア高気圧の中心となっており,気温の鉛直方向の逆転はステージ6のみで見られる.その西部および北東部では下層の寒気により高気圧が形成される.西部のウラル山脈北部では,シベリア高気圧形成時と衰退時に高気圧の中心になり,北東部のヤクーツク付近では,シ球リア高気庄が発達している時に,地上気温が大陸上で最も低くなるため高気圧が張り出す.シベリア高気圧は,これらの3地域を中心として,強さと形が季節変化することが示された.
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