地表上にはさまざまな事象の不均一な分布が目立つが,古典的立地論の多くはそれを付随的,所与的なものとしてのみ扱ってきた.しかし,ほとんど均一と思われた農村空間においてさえ,市場および人口の分布には不均一性が生成,累積しうる.本稿の目的は,農村市場システムの近代的変化(再編)をモデル構築することを通して,古典的立地論の枠組みを見直すことにある.
本稿のモデルは非線形非平衡システム論の考え方に基づいていて,超過利潤をめぐる各種商人の空間的競争を変化の動因とみなし,その超過利潤を蓄積させていくさまざまな相乗作用,初期状態にみられるわずかな不均一性,そして不確実性を考慮していることが特徴である.このモデルのシミュレーションでは,均等に分布している農村市場群が市場の新設,閉鎖,階層分化を経ることで,より複雑なシステムへと秩序化されていく過程が描かれた.ただし,その変化にはいくつかの型があり,それを決定する要因として初期優位,収穫逓増,均衡帯,不確実性があることが示された.
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