本稿は,茨城県の地方財政の空間構造を,市町村財政における歳入と歳出の地域的差異とその変容を通して明らかにした.そのために,県内88市町村の1970, 1980, 1990各年度における住民1人当たり項目別歳入・歳出額に対し,年次間の因子変化を記述することが可能な準3相因子分析法を適用した.
茨城県の地方財政の空間構造の基本的な次元は,自主財源収入と義務的な経費の卓越する都市部と,依存財源収入と投資的な経費の卓越する農村部の2つであり,両者は対象期間を通じて安定している.しかし,財源を地方債へ依存する傾向が,県南部や,県北部山間地域で出現しつつある.これは,前者は都市化の進展に伴う財源需要の絶対的増加を,後者は過疎化の進行に付随する自主財源の相対的減少を,地方債によって補填するものである.この結果,空間構造は,都市-農村の対照という枠組みに加え,新たに大都市圏内外の対照という要素が混在することとなった.
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