地理学評論 Ser. A
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70 巻, 11 号
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  • 川瀬 正樹
    1997 年 70 巻 11 号 p. 699-723
    発行日: 1997/11/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,東京大都市圏郊外の北東セクターに位置する千葉県柏市松葉町を事例として,既婚女性の通勤行動と子供の成長との関係を分析することにより,世帯のライフステージの進行に伴う既婚女性の通勤行動の変化を解明することを目的とした.
    分析の結果,既婚女性の通勤行動圏は,世帯のライフステージの進行とともに拡大することが明らかになった.また,通勤行動の変化パターンの分析により,既婚女性を以下の3類型に分類した.ブルーカラーが卓越する「家庭志向型」の既婚女性の場合は,子供の成長とともに就業率は上昇するものの,通勤行動圏の空間的範囲に変化は見られず,日常的な生活空間の範囲にとどまっていた.就業意欲の高い専門職に多い「職場志向型」の既婚女性は,子供の年齢とは関係なく広域的な通勤行動圏を維持していた.両者の中間的特性を有する「中間型」の既婚女性は,末子が小学校低学年の段階では,家庭志向型と同様に通勤行動圏は狭域的であったが,世帯のライフステージが進行し,行動の制約が軽減されると,通勤行動圏は日常的な生活空間を超え,職場志向型と同様の広域的な通勤行動圏に変化していた.
  • 池 俊介
    1997 年 70 巻 11 号 p. 724-748
    発行日: 1997/11/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    本稿では,日本の農村における共同体的結合の物質的基盤として重要な存在である入会林野の所有・利用の実態を主要な指標とすることにより,北海道農村の社会的特質を実証的に明らかにしようと試みた.研究対象とした平取町の去場共同山の林野所有・利用の実態を検討した結果,権利者集団の地域性や権利者の形式的平等性など形態としては内地と共通する基本的性格を持っているものの,一方で農家の流動性の高さによる入会林野の共有持分権の頻繁な売買など北海道独自の特色が見られることが明らかとなった.とくに持分権の性格に着目すると,内地の一般的農村のような「村落共同体の構成員としての保障」という社会的価値の認識が希薄で,持分権の経済的価値のみが強く認識される傾向にある.こうした点に,機能性が地縁性に優越するという北海道社会の特質が反映されており,入会林野を指標とする北海道農村社会の特質の解明が一定の有効性を持つことが示された.
  • 山本健兒論文の批判的検討を通して
    内藤 正典
    1997 年 70 巻 11 号 p. 749-766
    発行日: 1997/11/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    本稿は山本健見による筆者の著書への批判に反論することを通じて,多民族・多文化の共生をめぐる諸問題に対する研究視角を検討したものである.冷戦体制の崩壊とともに,イスラムとイスラム社会を共産主義に代わる新たな脅威とする言説が西欧諸国に蔓延している.しかし,多くのムスリム移民が定住している西ヨーロッパ諸国において,この言説は多文化の共生を危機に陥れる危険をはらんでいる.宗教や民族の相違が直ちに対立や紛争をもたらすとする言説の問題点とは何であるのか.移民自身からの異議申立ては何を争点としているのか.異文化との共存をめぐるマスメディアの功罪とは何か.そして,移民によって国家の基本原理が問われていることをどのように評価すべきか.本稿では,ドイツにおけるトルコ人移民の問題を通して,これらの課題を検討する際に必要な視角を具体的に提示した.
  • 1997 年 70 巻 11 号 p. 767-768,771_1
    発行日: 1997/11/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
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