本研究は,東京大都市圏郊外の北東セクターに位置する千葉県柏市松葉町を事例として,既婚女性の通勤行動と子供の成長との関係を分析することにより,世帯のライフステージの進行に伴う既婚女性の通勤行動の変化を解明することを目的とした.
分析の結果,既婚女性の通勤行動圏は,世帯のライフステージの進行とともに拡大することが明らかになった.また,通勤行動の変化パターンの分析により,既婚女性を以下の3類型に分類した.ブルーカラーが卓越する「家庭志向型」の既婚女性の場合は,子供の成長とともに就業率は上昇するものの,通勤行動圏の空間的範囲に変化は見られず,日常的な生活空間の範囲にとどまっていた.就業意欲の高い専門職に多い「職場志向型」の既婚女性は,子供の年齢とは関係なく広域的な通勤行動圏を維持していた.両者の中間的特性を有する「中間型」の既婚女性は,末子が小学校低学年の段階では,家庭志向型と同様に通勤行動圏は狭域的であったが,世帯のライフステージが進行し,行動の制約が軽減されると,通勤行動圏は日常的な生活空間を超え,職場志向型と同様の広域的な通勤行動圏に変化していた.
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