地理学評論 Ser. A
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72 巻, 12 号
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  • 八田 二三一
    1999 年 72 巻 12 号 p. 789-807
    発行日: 1999/12/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    1950年代に至るまでの長野県遠山郷の山地斜面の住民は,その生活の基盤となる周囲の自然環境を詳細に独自の方法で読み取り,それを民俗知識として体系化・共有し,自然の生態系と組み合わせた生業に基づく伝統的生活様式に生かしていた・山村の急傾斜地という自然の制約条件は人々の行動や知覚に強い影響を与えたが,逆に人々はこのような条件を積極的に生かし,活用すべく,日常生活や複合的生業の焼畑.常畑耕作・林業・狩猟の各分野において豊富な民俗知識を成立させていた.湧水が乏しい下栗地区では地下水脈が,湧水が豊富な八重河内地区では地表水の多様な局面が,土壌や植生の特徴をとらえるかたちで敏感に観察されていた・山地斜面の呼称が利用地名として生業分野間で異なっていたり,同じではあっても生業や生活の場面に応じてその意味が変化する実態が明らかとなった.自然環境を詳細に読み取り,日常生活に生かす世界観は,住民が生態系との共存を図る価値観の一端を示すものであったと考えられる.
  • 野村 千尋
    1999 年 72 巻 12 号 p. 808-828
    発行日: 1999/12/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,冬季東アジアおよび東南アジアにおける寒波について,初めに回転主成分分析を用いて五っの低温偏差分布の型として抽出し,次に各型の総観場と出現傾向を調べた結果,以下のような特徴が明らかになった.1型は中国全土,豆型は中国東北地方に卓越する寒波で,ともに出現の年々変動が大きい.丑1型は日本の気圧配置型の西高東低型に対応し,1型・II型に続いて出現する.IV型は華南地方に卓越する寒波で・15~30日周期の変動をしている.V型は日本の気圧配置型の北高型に対応し,1型の約2日後に出現する.さらに各型が出現する時の低緯度地方における雲活動を調べた結果,III型とIV型のとき,トラフ前面に伴う雲帯とその南西端で南西進する熱帯積雲がみられた.とくにIV型出現時に,赤道付近の積雲域が通常の東進ではなく西進をする傾向があり,大気の中緯度一熱帯相互作用の存在が考えられる.
  • 太田 陽子, 伊倉 久美子
    1999 年 72 巻 12 号 p. 829-848
    発行日: 1999/12/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    西津軽地域の海成毅丘上にみられる古ランドスライドを研究対象として,それらの形態・分布・発生位置などを明らかにした.本地域の古ランドスライドの分布は岩質と密接な関係があり,新第三紀泥岩地域でとくに密に発達する.古ランドスライドの大部分は完新世段丘直上にある海成段丘面(酸素同位体ステージ5e~5a)の外縁に位置し,完新世段丘に切られていて,最終氷期の低海水準およびそれに続く海面上昇期に形成されたことを示す.しかし,なかには再活動して完新世段丘を覆っている場合もあり,その形成が古地震と関係する可能性がある.本地域の海成段丘の開析には,流水による侵食に加えて,ランドスライドによる塊状の侵食の効果が大きい.
  • 1999 年 72 巻 12 号 p. 849-858
    発行日: 1999/12/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
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