本研究は,可視的側面における住宅地景観の地域的特徴を8指標に基づいて明らかにし,その形成過程を都市の拡大過程に対応させて考察することを目的とする.都心近隣市街地では,業務機能の混在度,共同住宅の立地,建物の垂直的拡大,狭小敷地率,経年建築物の立地,高木樹木の維持を示す値が3事例地区の中で最も高くなる.周辺市街地では,建物更新の進展と緑化傾向の値が最も高くなる一方,業務機能の混在度,共同住宅の立地などの値は他2地区の中間値となる.外縁市街地では,外壁色彩の均一性が最も顕著となるが,特徴となる項目数が他の2地区よりも少ない.これらの地域的特徴は,地区の成立年代を反映し,各時代の技術水準や法規制などの社会・経済的条件から影響を受ける.同時に,高度経済成長期以降の都市機能の拡充も,住宅地景観に対して強い影響力を及ぼす.短期的な社会・経済的条件に加えて,中・長期的な都市の地域変容の中で住宅地景観の地域的特徴が成立していた.
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