過去14年間に経験した急性上肢動脈閉塞7例を報告. 80歳以上が7例中5例を占め,右側が5例,左側が2例.上腕動脈が6例,尺骨動脈が1例.心房細動のない例は医原性の1例のみ.心房細動6例中,抗凝血剤使用は1例で,眼科手術のため休薬した3日目の発症で,発症時は全例服用していなかった.発症から手術までの時間は数時間以内であるが1例13日目.閉塞部位は,上腕動脈のみ閉塞が3例,撓骨動脈も閉塞が2例,按状に撓骨動脈,尺骨動脈の閉塞は1例,尺骨動脈のみ1例.心房細動を有する6例中5例で白色血栓を認めた.初期の3例には術後ワーファリンを用いなかったが2例に塞栓症起こり,その後はワーファリンを使用している.上肢の急性動脈閉塞は下肢に比し,側副血行路の存在から重症化することは少ないとされるが保存的に処置すべきでなく可及的に手術すべきで,殊に,症状があれば直ちに着手すべきである.
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