日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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ISSN-L : 1345-2843
67 巻, 4 号
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  • 高橋 伸育, 島山 俊夫, 河埜 喜久雄, 旭吉 雅秀, 永野 元章, 千々岩 一男
    2006 年67 巻4 号 p. 741-745
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    はじめに:開腹既往歴がなく体表に原因のない小腸イレウスでは原因の検索が困難で治療方法が遅れ腸切除になることがある.方法: 1998年1月から2004年12月までの7年間に当院で手術した小腸イレウス295例のうち鼠径ヘルニアなど体表面から確認できる例を除いた開腹既往歴のない小腸イレウス36例の手術時期と腸切除の有無について検討した.結果:原因としては索状物によるもの12例,閉鎖孔ヘルニア10例,内ヘルニア5例,食餌性イレウス4例,腸重積4例,小腸捻転1例で食餌性を除き全例CTで診断できた. 14例に腸切除を行い, 22例は腸切除を行わずにイレウスを解除できた.腸切群では発症から手術までの時間が有意に長く,入院後24時間以内の手術例が有意に少なかった.考察:開腹既往歴のない小腸イレウスに対しては,速やかにCTを含めた検査を行い24時間以内に手術することにより腸切除を回避できる可能性が示唆された.
  • 中尾 健太郎, 角田 明良, 鈴木 直人, 山崎 勝雄, 清水 喜徳, 草野 満夫
    2006 年67 巻4 号 p. 746-750
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    クリティカルパス(Critical path, 以下CP)の運用は標準的医療の提供のために必須となっている.しかし途中中止となる症例もみられ,当科でも平成14年度には2.0% (CP実施数256例中途中中止症例5例),平成15年度では7.3%に認められた.一方, CP実施率は平成14年には平均60.1%であったが,なかには実施率が20~30%台のCPもあり,結腸癌CPも同様の低い実施率であった.そのため(1)CPの簡便化(腹腔鏡下結腸切除術CPと開腹結腸切除術CPの統合)(2)勉強会の導入(3)関連部署のミーティング(4)下部消化管専門病棟班としての診療実施の対策を講じたところ平成15年度の結腸癌CPの実施率は60.0%と上昇した.その中で平成15年のCP脱落症例のバリアンスを検討したところ,術後合併症が2例で半数を占めた.合併症は重篤なものであり,バリアンスの回避は避けられないものであった.これらの検討はCPを安全に遂行し,さらに次世代CPを改良する際に必要なことと思われた.
  • 小池 誠, 片岡 佳樹, 西 健, 橋本 幸直, 板倉 正幸, 矢野 誠司
    2006 年67 巻4 号 p. 751-754
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    髄外性形質細胞腫は頭頸部領域にその多くの発生をみるが,甲状腺原発は比較的稀で,本邦においては40例近くの報告をみるのみである.今回われわれは甲状腺原発形質細胞腫の診断となった1例を経験したので報告する.症例は65歳,女性,検診にて甲状腺腫瘤を指摘され,当科受診.甲状腺左葉に約2cm, 右葉に約1cmの腫瘤性病変を認めた.悪性も考慮し切除生検を施行,形質細胞腫の診断になる.後に全身の精査を行い,他に病変がないのが確認されたため甲状腺原発形質細胞腫の診断となった.術後は放射線療法を施行した.髄外性形質細胞腫の予後は良好と言われているが,多発性骨髄腫に移行することもあり厳重なフォローが必要である.
  • 真田 克也, 柴田 稔, 長内 孝之, 杉原 健一
    2006 年67 巻4 号 p. 755-758
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は53歳,女性.乳癌検診マンモグラフィにて右乳房カテゴリー3,腫瘤と診断されて2次検診目的で当院を受診した.触診上腫瘤は触知しなかった.乳房超音波検査では右A領域に5×6×5mmのlowechoic massが描出され充実腺管癌が否定できなかった.穿刺吸引細胞診で細胞数が少なく判定不能だったため,切除生検を施行した.触知しないため超音波にて位置を確認し,腫瘍を含めた乳腺を切除した.切除標本はHE染色では悪性を否定できず.免疫染色を施行した.結果は良性でductal adenomaと診断した.
  • 佐藤 耕一郎, 加藤 丈人, 佐藤 孝, 吉田 徹, 小原 真, 八島 良幸
    2006 年67 巻4 号 p. 759-762
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    診断に苦慮し,手術標本の病理所見にて,はじめて診断しえた肉芽腫性乳腺炎の1例を報告する.症例は31歳,女性で, 2週間前から有痛性右乳腺腫瘤にて,近医で抗生物質投与をうけていたが軽快せず,当科を紹介された.触診では,右乳房AC領域に最大径7.5cmの熱感を伴う弾性硬の腫瘤が認められた.マンモグラフィでは腫瘤は非対称性陰影を示し,超音波検査では最大径約4cmの不整型低エコー腫瘤を認め,穿刺吸引細胞診,針生検では強い炎症像のみで悪性所見は認められなかった.抗生物質などを投与したが,同部に発赤,腫張が増強し,各種所見より炎症性乳癌も否定できず,全身麻酔下に腫瘤切除術を行った.手術所見では腫瘤部内には多房性の腫瘍形成が生じており,組織学的に乳腺小葉に限局して炎症細胞浸潤を伴う肉芽腫が認められた.ラングハンス巨細胞も浸潤しており,肉芽腫性乳腺炎と診断された. 6カ月を過ぎた現在,再発徴候なく外来観察中である.
  • 安藤 英也, 前田 正司, 亀岡 伸樹, 藤本 克博, 坪井 俊二
    2006 年67 巻4 号 p. 763-767
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    乳腺原発のカルチノイド腫瘍は非常に稀である.本邦の論文報告例はわれわれが検索しえた限りでは自験例を含めて24例である.今回われわれは術後5年経過し無再発生存中の1例を経験したので,文献的考察を含め報告する.
    症例は75歳,女性.主訴は右乳房の腫瘤.現病歴は平成12年9月に右乳房の腫瘤を自覚し近医を受診し,紹介にて平成12年10月上旬に当院外科外来を受診した.初診時現症にて,右乳腺C領域に径約1.5cmの可動性良好な弾性硬の腫瘤を触知した.超音波検査(US)では境界明瞭で内部がほぼ均一でlow echoicな腫瘤を認めた.吸引細胞診検査は陽性でありcarcinoma cellを認めた.以上より乳癌と診断し10月下旬,乳房温存術(Bq+Ax)を施行した.病理組織学的検査はChromograninA染色が陽性であり, carcinoid tumor, g, n(-)であった.術後全身検索を施行したが他に病変を認めず,エストロゲンレセプターが陽性でもあり,乳腺原発のカルチノイド腫瘍と診断した.
  • 鷲尾 一浩, 西 英行, 河合 央, 大村 泰之, 日野 眞人, 間野 正之
    2006 年67 巻4 号 p. 768-771
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    塵肺症に合併した緊張性気胸に対して,小開胸併用し,胸腔鏡補助下にブラ切除術を行い良好な結果が得られた1例を経験した.症例は71歳,男性.既往歴に塵肺あり.突然の激しい胸部痛があり近医受診した.胸部レントゲン検査にて気胸が認められ,当院紹介となった.持続胸腔ドレナージ行うも,高度の気漏が持続し,肺の十分な拡張が得られず,胸部CT検査にて緊張性気胸を認めた.小開胸併用し胸腔鏡補助下に手術を行った.肺尖部に多発ブラと広範囲の癒着を認めた.癒着剥離したところ,ブラの一部に気漏部を認めた.補強材(シームガード)を装着した自動縫合器にてブラを切除した.手術時間は1時間45分,出血量は250mlであった.術中・術後経過は順調であった.現在術後6カ月を経過したところであるが再発を認めていない.
    塵肺症に合併した気胸の手術例の文献的報告例はいまだ少なく,貴重な症例と考えられたため,文献的考察を加えて報告した.
  • 西尾 渉, 坪島 顕司, 若原 鉄平
    2006 年67 巻4 号 p. 772-775
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は57歳,男性.胸痛を主訴とし,原因不明の右胸水貯留,胸膜肥厚を認めた.アスベスト曝露歴があり,びまん性胸膜中皮腫を疑い手術を施行したが,術中迅速診断にて胸膜線維症と診断された.壁側胸膜の切除によって胸痛は軽快し,胸水の再貯留や胸膜肥厚も認めなかった. 10年後,左胸腔にも胸水貯留をきたした.再び胸腔鏡下に胸膜生検を施行したが,右側同様,胸膜線維症と診断された.胸腔ドレナージのみで軽快し,その後,胸水再貯留や胸膜肥厚を認めていない.
    石綿曝露歴のある患者に発生した原因不明の胸水貯留に対しては,早期に胸腔鏡検査を施行し中皮腫の早期診断に努めると同時に,良性であった場合にも胸水のドレナージを完全に行って胸膜線維症の進行を防ぐことが重要である.胸膜線維症による胸痛に対しては胸膜切除術が有効である.
  • 佐々木 賢一, 渋谷 均, 原田 敬介, 山本 雅明, 中村 幸雄, 平田 公一
    2006 年67 巻4 号 p. 776-779
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,男性.他院にて右胃大網動脈グラフト(以下, GEAグラフト)を用いた冠動脈バイパス術(CABG)を受けている.その1年6カ月後に横隔膜ヘルニア嵌頓によるイレウスを発症し緊急開腹手術を施行した.ヘルニア嚢を有さない仮性ヘルニアで小腸および横行結腸が大量に左胸腔内に脱出し呼吸循環不全の状態であったが,嵌頓を解除し脱出臓器を腹腔内へ還納したところ,呼吸循環動態は安定化した.絞扼壊死に陥った小腸と横行結腸を部分切除し,ヘルニア門の横隔膜を単純縫合閉鎖し手術を終了し,救命に成功した.CABGにおけるGEAグラフト挙上のための横隔膜切開部位がヘルニア門となり横隔膜ヘルニアを発症したものと考えられた. GEAグラフトを用いたCABGの合併症として横隔膜ヘルニアが存在することを,心臓血管外科医にはもちろん,消化器外科医も知っておく必要がある.
  • 宮脇 美千代, 今給黎 尚幸, 河野 洋三, 三浦 隆, 川原 克信
    2006 年67 巻4 号 p. 780-783
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は15歳の女児.左気胸が再発した為紹介された.胸部X線写真で右上縦隔に腫瘤陰影と,胸部CTスキャンで胸部上部食道と気管に接して右胸腔内に突出する境界明瞭な嚢胞状病変を認めた.胸腔鏡下左肺ブラ切除を行った後,体位を変えて胸腔鏡下に嚢胞を切離し,食道壁欠損部は食道縦走筋を縫合し修復した.切除標本では二層の平滑筋層と内面に多列線毛上皮を認め,食道duplication cystと診断された.
    今回,気胸発症のため偶然発見された15歳のduplication cystを胸腔鏡で同時に手術した症例を経験したので報告する.
  • 広松 孝, 長谷川 洋, 坂本 英至, 小松 俊一郎, 河合 清貴, 田畑 智丈
    2006 年67 巻4 号 p. 784-789
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,男性.既往歴に冠状動脈バイパス術あり. 7カ月前からつかえ感あり当院受診した.上部消化管内視鏡検査で中部食道に易出血性亜有茎性隆起性病変を認め,ルゴール染色では基部のみに下染域を認めた.基部からの生検結果はsquamous cell carcinomaであった.食道癌の術前診断で,食道亜全摘術, 2領域郭清を施行した.右胃大網動脈による冠状動脈バイパス術後のため胃管再建はできず,空腸間置再建とした.内腔に発育するポリープ状の腫瘍で,病理所見は大部分は紡錘形細胞の蜜な増殖からなる肉腫様病変からなり,周囲に扁平上皮癌が存在し,両者の移行像を認め, so-called carcinosarcomaと診断した.患者は術後多発肺転移と縦隔リンパ節転移が出現し,術後11カ月で永眠された.胃大網動脈による冠動脈バイパス術後に上腹部開腹手術を行う場合は,再建術式および術中操作に配慮が必要である.
  • 柴田 智隆, 武野 慎祐, 渡辺 聡志, 野口 剛, 川原 克信
    2006 年67 巻4 号 p. 790-793
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,食道裂孔ヘルニアに対するニッセン噴門形成術後に発症した,左巨大腎のう胞を伴う胃軸捻転症に対し,腎のう胞開窓術,胃固定術を行い良好な結果を得たので報告する.症例は72歳,女性. 2年前に噴門形成術を受け良好に経過していたが,食後に腹痛を訴え,腹部が著明に膨満したため当科紹介受診となった.
    胃は腹部CTスキャンでは著明に拡張し,幽門が左側に位置し,長軸方向に180度回転し左巨大腎のう胞を合併していた.内視鏡下に胃内減圧を施行したが再発したため,腹腔鏡下に左腎のう胞開窓術および胃固定術を施行し,術後経過は良好であった.
    胃固定が不良である高齢者の食道裂孔ヘルニアに対する噴門形成術では,胃軸捻転症の発症を考慮し,胃底部横隔膜固定のみならず胃前壁腹壁への固定が必要であると考えられた.
  • 服部 憲史, 越川 克己, 桐山 幸三, 和田 応樹, 谷口 健次, 末永 裕之
    2006 年67 巻4 号 p. 794-798
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は38歳,男性.腹痛,嘔吐を主訴に当院を受診し,腹部X線検査, CT検査にて腸閉塞と診断し精査加療入院となった.逆行性回腸造影検査にて,回腸に約5cmの全周性狭窄を認め,小腸腫瘍,炎症性腸疾患などを念頭に開腹手術を施行した.回腸末端より50cm口側に狭窄部位を認め,小腸部分切除を行った.狭窄部位には深掘れ型の潰瘍を認め,病理組織検査で腸結核と診断された.一般に腸結核は,抗結核剤による保存的治療によく反応するとされる.しかし本症例では,狭窄が強く,また確定診断が得られていなかったため外科的切除を行い,診断がその摘出標本によることとなった.腸閉塞の原因として本症の存在も念頭に置き,小腸病変に対してより正確な術前診断を目指していく必要がある.
  • 佐々木 順平, 古谷 政一, 清水 康仁, 坂東 功一, 柳 健, 田尻 孝, 杉崎 祐一
    2006 年67 巻4 号 p. 799-802
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は86歳,女性で,嘔吐・下腹部痛を主訴に来院した.腹部レントゲン・腹部CTにてfree airを認めたが,上部消化管内視鏡にて異常を認めなかったため,下部消化管穿孔による汎発性腹膜炎と診断し緊急開腹手術を施行した.術中所見で回盲部より約20cmの部位の回腸に穿孔部位を認めたため,小腸部分切除術を施行した.摘出標本上,穿孔部を中心に約8cmの潰瘍病変を認めた.病理組織検査にて,小腸原発のHodgkin病と診断した.術後早期は経過良好であったが,術後第29病日より易感染状態から敗血症・DICを発症,肝不全を併発し,術後49日目に永眠された.消化管悪性リンパ腫のうち小腸悪性リンパ腫は多数例をみるが,報告例はすべてnon-Hodgkin typeであり, Hodgkin病は未だに報告例をみていない.
  • 山田 圭一, 佐藤 宗勝, 芳田 佳奈, 佐々木 和人, 上田 和光, 奥村 稔
    2006 年67 巻4 号 p. 803-806
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    回腸動静脈奇形の1例を経験したので報告する.症例は31歳,男性.下血を主訴に来院した. Hb 6.1g/dlと貧血が認められた.腹部CT検査で回腸末端部に血管の濃染像が認められた.腹部血管造影検査では,回腸枝末梢部にて静脈相で静脈の濃染が認められた.以上より回腸動静脈奇形と診断した.ゼラチン,マイクロコイルで塞栓術を行った後,手術を施行した.開腹所見では回腸末端部の色調変化,同領域の静脈の怒張が認められた.マイクロコイルを触診にて確認し,回盲部切除術を行った.切除標本では粘膜面に潰瘍と露出血管が認められた.病理組織学検査では,粘膜下に壁肥厚,内腔狭小化した血管がみられた.術後経過は良好で,現在,消化管出血は認められていない.
  • 陳 尚顯, 藤田 竜一, 成田 徹, 河 喜鉄, 村田 順, 亀岡 信悟
    2006 年67 巻4 号 p. 807-810
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は70歳の男性で,軽度の右季肋部痛と発熱にて超音波検査で肝に多発性腫瘍を指摘され当院に紹介された,空腸粘膜下腫瘍による肝転移と診断した. 2004年12月手術を施行した.肝臓に充実性腫瘍を多数認め,また,空腸起始部に5cm大,壁外発育型の腫瘍を認めた.局所コントロールの目的で空腸部分切除を施行した.切除標本の免疫染色ではc-kitで陽性, SMAやS-100で陰性を示し, gastrointestinal stromal tumor (GIST)と診断した.術後肝転移に対しイマチニブ400mg/日を投与した.投与3カ月半後超音波とCT検査にて肝転移が完全に消失した.イマチニブ投与7カ月後現在も再発を認めなかった.イマチニプで完全奏効したGISTの報告例は稀で,貴重な症例を経験したので報告した.
  • 蘆田 明雄, 利野 靖, 安藤 耕平, 高梨 吉則, 今田 敏夫
    2006 年67 巻4 号 p. 811-815
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    植物種子によるイレウスの2例を経験したので報告する.症例1: 78歳,女性.主訴:腹痛,嘔吐.現病歴: 1995年7月主訴出現のため当院入院.イレウスと診断し手術施行. 2型上行結腸癌の潰瘍面に梅干しの種子が嵌頓しイレウスを発症していた.症例2: 79歳,女性.主訴:腹痛.既往歴: 60歳時,卵巣癌手術と放射線治療を受けた.現病歴: 2005年8月腹痛にて発症.イレウスと診断され,イレウス管を留置されるも軽快せず手術施行.放射線性腸炎によると思われる回腸の狭窄と同部を閉塞させる梅干しの種子を認めた.植物種子によるイレウスの本邦報告例は自験例を含め10例であった.内9例になんらかの腸管の器質的狭窄を認めた.高齢者では癌の併存または既往が,若年者では炎症性腸疾患が植物種子によるイレウスの発症に関与していた.腸管側に器質的狭窄があれば球形で小型の植物種子でも食餌性イレウスの原因となり得ると考えられた.
  • 西村 暁, 吉松 和彦, 石橋 敬一郎, 横溝 肇, 会澤 雅樹, 小川 健治
    2006 年67 巻4 号 p. 816-820
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    盲腸癌による狭窄で翻転した正常盲腸が先進部となった成人腸重積症の1例を経験した.症例は68歳,女性.腹痛を自覚し近医受診,腸重積症の診断で当科に紹介され入院した.入院時右下腹部に可動性良好な鶏卵大の腫瘤を触知した.入院後は間歇的な腹痛が継続し,粘膜下腫瘍による腸重積症と診断,手術を施行した.開腹所見では盲腸を先進部とする腸重積を認め,用手的に整復すると盲腸に硬い腫瘤を触知した.盲腸癌を疑い3群リンパ節郭清を伴う回盲部切除術を施行した.摘出標本ではBauhin弁の対側に2型の腫瘍を認め,これにより盲腸が狭窄して正常盲腸が翻転し,粘膜下腫瘍様の隆起としてみられた.現在まで腫瘍性病変を先進部とする腸重積症は多く報告されているが,翻転した正常盲腸が先進部となった自験例は原因として稀と考え報告する.
  • 野島 広之, 小笠原 猛, 柴田 陽一, 大塚 恭寛, 豊沢 忠, 高橋 誠
    2006 年67 巻4 号 p. 821-824
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,穿孔性虫垂炎にて発症し,術後に診断された1例と術前に確定診断しえた1例の盲腸癌の2例を経験したので報告する.症例1は, 61歳,男性.発熱,下痢,腹痛を主訴に当院受診.腹腔全般に腹水を認め,腹腔試験穿刺にて膿汁を認めた.汎発性腹膜炎の診断にて緊急開腹したところ,多量の膿性腹水と虫垂の穿孔を認め,回盲部が腫瘤状に一塊となっていたため,回盲部切除を施行した.病理組織診断は,中分化腺癌であった.症例2は, 68歳,男性.発熱,腹痛を主訴に当科を受診. CT上,穿孔性虫垂炎による腹腔内膿瘍と診断したが,回盲部に腫瘤を認めたため,保存的治療を優先した.炎症消退後の大腸内視鏡にて虫垂根部を閉塞する形の腫瘤を認め,病理組織診断は,中分化腺癌であった.手術所見は,腫大した虫垂,陳旧性膿瘍,回盲部腫瘤を認め,結腸右半切除およびD3郭清を施行した.
  • 小橋 俊彦, 板本 敏行, 米原 修治, 山崎 浩之, 池田 聡, 浅原 利正
    2006 年67 巻4 号 p. 825-828
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    55歳,女性,発熱,右側腹部痛および下痢を主訴に来院した.腹部US, CTにて右後腹膜膿瘍と多発性肝腫瘍を認め,血液検査上,強い炎症所見とCEA高値を伴っていた.腫瘍穿孔による膿瘍形成と肝転移を強く疑い,緊急に結腸右半切除術および膿瘍部ドレナージを施行した.術後病理所見から虫垂癌穿孔による後腹膜膿瘍と診断した.術後経過は順調であったが,退院後CEAが急激に上昇し, US, CTにて肝腫瘍の増大と腹腔内再発を認めたため,二期的肝切除予定から化学療法へ治療方針を変更し, FOLFIRI療法を開始し継続中である.術後6カ月の現在,腫瘍は縮小傾向にあり,腫瘍マーカーも著明に低下している.今回穿孔をきたし後腹膜膿瘍を形成した虫垂癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 瑞木 亨, 近藤 泰雄, 斉藤 心, 志村 国彦, 安田 是和, 永井 秀雄
    2006 年67 巻4 号 p. 829-833
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    精神・神経疾患に合併した結腸軸捻転の3症例における4手術例を経験したため,文献的考察を加えて報告する.症例のうち2例は統合失調症患者で, 1例はてんかんと精神発達遅滞を有していた. 1例はS状結腸軸捻転症で巨大結腸症が背景にあり, S状結腸切除術を施行した6カ月後に右側結腸軸捻転症を発症した.全例に大腸内視鏡による減圧を行い,緊急手術を回避しえた.病理所見では切除した腸管に神経叢の異常所見は認めなかった.結腸軸捻転症は本邦では腸管閉塞の原因としては稀である.しかし,精神・神経疾患を有する患者では結腸軸捻転や巨大結腸症を合併することが多く,意思疎通が困難な症例では診断が遅れることがある.さらに,巨大結腸症患者に発症した結腸軸捻転症に対して結腸の部分切除を行うと軸捻転の再発率が高いため,症例ごとに適切な術式を検討する必要がある.
  • 深見 保之, 寺崎 正起, 坂口 憲史, 村田 透, 大久保 雅之, 西前 香寿
    2006 年67 巻4 号 p. 834-837
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は80歳の女性で,下腹部痛を主訴に当院を受診し,身体理学所見で疼痛部位に一致して臍ヘルニアを認めた.スクリーニング目的の注腸検査でRs左壁に表面平滑・辺縁整な15×15mm大の隆起性病変を認めた.大腸内視鏡検査では同部位に表面平滑で頂部に軽度陥凹を有する粘膜下腫瘍を認めた.生検にて軽度異型のある紡錘形細胞が比較的密に増殖し,免疫組織化学的染色ではS-100蛋白陽性, vimentin陽性であった.以上より直腸神経鞘腫と診断し,高位前方切除術を施行した.神経鞘腫の消化管発生は少なく,特に直腸原発は稀である.今回われわれは,術前診断した直腸神経鞘腫の1例を経験したので報告する.
  • 山口 智仁, 西上 耕平, 河崎 任利, 川見 弘之
    2006 年67 巻4 号 p. 838-842
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は81歳の女性.発熱,倦怠感を主訴に当院循環器科を受診し入院となった.腹部超音波にて肝腫瘤を指摘,当科紹介された.入院時体温38.3°C.腹部造影CTにて肝右葉に周囲が造影される孤立性の腫瘤を認め,肝膿瘍と診断したが転移性肝腫瘍の可能性も考えFDG-PETを施行したところ,肝腫瘤部と左上腹部に異常集積を認めた.注腸で脾彎曲部に狭窄像と, CTで横行結腸の壁肥厚像を認めた.抗生剤投与により解熱しCTで肝腫瘤の縮小を認め, FDG-PETで肝臓の異常集積は消失した.以上より肝膿瘍を合併した大腸癌と診断し,開腹手術を施行.脾彎曲部の横行結腸癌に対して横行結腸切除術を施行.その後肝膿瘍は完全に消失し,肝膿瘍と癌再発は認めていない.
    肝膿瘍を契機にFDG-PETで診断された,肝膿瘍を合併した横行結腸癌の1例を経験したので,若干の考察を加え報告する.
  • 松井 芳文, 浦島 哲郎, 大平 学, 碓井 彰大, 谷口 徹志
    2006 年67 巻4 号 p. 843-846
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腸管の癒着防止用のePTPE面を有するBard Composix meshは腹壁ヘルニアに多く用いられる.今回われわれはBard Composix meshが大腸癌腹壁浸潤による手術切除による腹壁欠損部の補修に有用であった1例を経験したので報告する.
    症例は64歳,男性,腹部腫瘤主訴に来院.内視鏡などの精査にて2型の横行結腸癌および腹壁腹直筋浸潤の診断.術前化学療法(5FU+1-LV)を1コース施行後, 2003年8月,結腸右半切除術(D2)および腹直筋合併切除術を施行.腹直筋切除部位は6×8cmにおよび,欠損部を一期的にBard Composix meshにて閉鎖した.術後感染の兆候もなく第28病日軽快退院し,術後約3年経過するも腹壁ヘルニアになることもなく,再発の兆等残なく現在経過観察中である. Bard Composix meshの使用により簡便に腹壁の再建ができたと考えられ,有用な方法と考えられた.
  • 西尾 公利, 種村 廣巳, 大下 裕夫, 菅野 昭宏
    2006 年67 巻4 号 p. 847-850
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は62歳,男性.全身倦怠感と左腰背部痛を主訴に来院した.血液検査上貧血(Hb3.9g/dl)と炎症所見(WBC16,000/mm3, CRP15,44mg/dl)を認めた.腹部骨盤CT上,左腰背部に10cm×8cmのガス像を伴う低吸収域を認めたため同部を切開すると大量の便臭を伴う膿を排出した.注腸にて下行結腸に直径5cmのapple core signを認め,その部位より後腹膜腔に穿通し腸管皮膚瘻を形成していた.結腸左半切除術(D3)を施行した.腹腔内と膿瘍腔との境には大網を充填被覆し,腸管皮膚瘻の皮膚側は開放創とした.摘出標本肉眼所見は,下行結腸に直径5mmの後腹膜への穿通孔を中央に伴う直径55mmの2型の全周性の腫瘍を認めた.病理組織学的検査は高分化腺癌ss, ly1, v1, n(-), ow(-), aw(-), stage IIであった.腸管皮膚瘻を合併する大腸癌は比較的少なく,特に左側結腸癌では稀である.左腰背部に形成された皮下膿瘍で発症し腸管皮膚瘻を形成した下行結腸癌の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
  • 永島 琢也, 熊本 吉一, 片山 清文, 白石 龍二, 田邊 浩悌, 谷 和行
    2006 年67 巻4 号 p. 851-855
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は79歳,女性. 2004年10月排便時下血を主訴に来院.直腸診で1~4時方向に直径約5cmの隆起性病変を触知.注腸像ではRbに陰影欠損を認め, CTでは直腸左壁に直腸壁とisodensityの腫瘤を認めた.大腸内視鏡では1/4周性の1型腫瘍を認めた.肉眼的に黒色の部分は認めず,生検では低分化腺癌であった.直腸癌の診断で2004年12月腹会陰式直腸切断術を施行した.病理組織学的所見はa1, n1(+), P0, H0, M(-) stage IIIaであった.免疫組織染色を施行したところHMB-45・S-100が陽性で,メラニン色素はわずかに陽性の肉眼的無色素性悪性黒色腫であった.直腸無色素性悪性黒色腫は予後不良の稀な疾患で,消化管間質腫瘍では鑑別診断として念頭に置く必要がある.また本症例ではc-kitが陽性であったが,このことはc-kitがGISTに特異的ではなく,悪性黒色腫や他疾患でも陽性になり得ることも念頭に置く必要があると思われた.
  • 濱津 隆之, 黒田 陽介, 舟橋 玲, 島 一郎, 磯 恭典
    2006 年67 巻4 号 p. 856-860
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,男性.腹痛と嘔吐を主訴に平成14年12月7日に当科受診となった.大腸内視鏡にてS状結腸にtype2の結腸癌を認め,また腹部CTでは肝S8に径2cmのlow-low patternを呈する腫瘍性病変を指摘され,腹部エコー,肝血管造影を追加した上で,結腸癌および転移性肝癌の診断となり,まず平成14年12月17日にS状結腸切除術を行い, 2期的に平成15年1月15日に肝S8部分切除術を追加した.肝臓切除標本にて腫瘍は弾性,白色,辺縁不整であり,病理組織学的検査では線維性間質の増大および血管腔の狭小化を伴っており肝硬化性血管腫の診断であった.肝硬化性血管腫瘍は非常に稀な良性腫瘍であり一般には手術の適応にはならないが,画像所見が非典型的なものが多く,肝内胆管癌,転移性肝癌,硬化性肝癌との鑑別が困難である.今回若干の文献的考察を加え報告する.
  • 前田 賢人, 宮下 正
    2006 年67 巻4 号 p. 861-864
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,男性で,上腹部痛を主訴に来院.腹部全体に腹膜刺激症状を呈し,胸腹部単純レントゲン写真上,右横隔膜下に遊離ガス像と鏡面形成を伴う類円形の異常ガス像を認めた.また,血糖値は1,395mg/dlと高値であった.消化管穿孔による汎発性腹膜炎の診断にて直ちに緊急開腹手術を施行したところ,膿性腹水を認めるも消化管には異常所見なく,肝右葉に膿瘍の破裂部を認めた,ガス産生性肝膿瘍の腹腔内破裂と診断し,洗浄・ドレナージを施行した.腹水よりKlebsiella pneumoniaeが分離同定された.術後,膿瘍腔は次第に縮小し,患者は軽快退院した.
    ガス産生性肝膿瘍の腹腔内破裂は本邦ではこれまで32症例が報告されているに過ぎない比較的稀な病態であり,文献的考察を加えて報告する.
  • 植木 智之, 谷口 史洋, 加藤 雅也, 栗岡 英明, 榎 泰之, 加藤 元一
    2006 年67 巻4 号 p. 865-869
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は81歳,女性. 2000年肝嚢胞に対して薬物注入療法を施行された. 2004年発熱および右季肋部痛を認め外来受診した.腹部エコー検査上,肝嚢胞内部にdebrisの貯留を認め,感染性肝嚢胞と診断し,入院となったが,内科的治療が奏効せず,外科転科となった.転科後,腹腔鏡下にLiga Sure Atlas®を用いて天蓋切除術を施行した.嚢胞造影にて胆道との交通は認めなかった.起因菌はKlebsiella pneumoniaであり,感染経路は頻回に行われた嚢胞穿刺によるものと考えられた.術後,感染性嚢胞液が貯留したためドレナージを施行したが,著明な合併症なく退院となった.薬物注入療法後に発症し,その後の内科的治療に難治性の感染性肝嚢胞に対して腹腔鏡下天蓋切除術が有効であった1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 本山 一夫, 兼子 順, 安藤 正幸, 伊藤 雅史, 関根 毅, 前島 静顕
    2006 年67 巻4 号 p. 870-874
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    DIC-CT (drip infusion cholangiography-computed tomography)にて診断した胆嚢横行結腸瘻の1例を経験したので報告する.症例は84歳,男性.胆石胆嚢炎による麻痺性イレウスにて入院した.保存的治療にて軽快退院した後,約1カ月後に食欲不振,発熱,下痢を主訴に再入院となった. DIC-CT検査にて萎縮した胆嚢と横行結腸肝彎曲部の間に瘻孔を認め,胆嚢横行結腸瘻と診断し,胆嚢摘出,横行結腸部分切除術を施行した.われわれが文献検索した範囲では, DIC-CT検査にて瘻孔を確認しえた胆嚢結腸瘻は本症例がはじめてであった.
  • 伊東 浩次, パンナチュート エーカポット, 池田 聡, 前田 学, 平沼 進
    2006 年67 巻4 号 p. 875-879
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は64歳の男性.人間ドックで肝臓の腫瘤を指摘され,当院を紹介された. CT検査では外側区域より尾側に肝外発育する多房性の嚢胞性腫瘤を認め,内部に乳頭状の隆起を認めた.腹部MRI検査ではT1強調でhigh intensityの混在するlow, T2強調ではhigh intensityを示す嚢胞性腫瘤であった.腹部血管造影検査でも腫瘍濃染像を認め,癌を疑った.以上より肝外側区域から肝外へ発育する胆管嚢胞腺癌と診断し,肝左葉切除術を施行した.病理組織診断はcystadenocarcinomaであった.胆管嚢胞腺癌は肝癌追跡調査報告でも原発性肝癌の0.22%と稀な疾患であり,最近の知見を踏まえ若干の文献的考察を加え報告する.
  • 橋田 秀明, 小室 一輝, 岩代 望, 大原 正範, 石坂 昌則, 近藤 哲
    2006 年67 巻4 号 p. 880-884
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,男性.多量の飲酒歴があり,慢性膵炎にてフォローをうけている.また胃潰瘍にて幽門側胃切除術(再建: Billroth II法)を施行されている.平成15年4月吐血のため当院入院,腹部CTで径6cm大の脾動脈瘤を認めたが内視鏡検査にて異常を認めなかった.十二指腸乳頭の観察は行えず,脾動脈瘤と消化管出血の関連が証明できなかったため経過観察となった.その後,吐下血のため10月に再入院,内視鏡検査では出血を確認できなかったが,下血が遷延するため最終的に脾動脈瘤が膵内に穿破したことによる消化管出血と判断し,膵体尾部脾切除を施行した.病理では,脾動脈は弾性繊維を欠如しており,膵仮性嚢胞内に穿破して仮性動脈瘤を形成し膵管内に出血を生じたものと推測された.慢性膵炎の経過中の消化管出血においては膵管を介する出血であるhemosuccus pancreaticusを念頭におく必要があると思われた.
  • 森田 克彦, 三瓶 訓子, 平木 桜夫, 工藤 明敏, 福田 進太郎
    2006 年67 巻4 号 p. 885-889
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    原因不明の好酸球増多症として7年間経過観察後に生じた脾臓原発悪性リンパ腫を経験した. 81歳,男性で末梢血白血球数は軽度高値であったが,好酸球分画は15~22%と異常高値であった.感染,アレルギー,肺疾患,皮膚疾患,膠原病,悪性疾患などは否定されていた. 2004年9月腹部エコーで脾腫,脾腫瘍を指摘され, CT, MRIで多発性脾腫瘤, Gaシンチで脾臓への集積をみた.血液検査で可溶性IL-2R値の上昇あり,全身検索にて他臓器に異常は認めず,脾臓原発悪性リンパ腫を疑い脾摘した.開腹時,脾臓以外に病変は認めなかった.病理診断はB cell non-Hodgkin's lymphoma, follicular, mixed typeであった. T cell系の悪性リンパ腫では好酸球増多をみることがあるが, B cell系では極稀である.原因不明の好酸球増多症では悪性疾患の発生も念頭に経過観察が必要であると思われた.
  • 松村 祥幸, 岩井 和浩, 川崎 亮輔, 妻鹿 成治, 市之川 正臣, 高橋 透
    2006 年67 巻4 号 p. 890-893
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は31歳の女性.疼痛を伴う左鼠径部腫瘤を主訴に来院した.平成12年と14年に帝王切開術の既往があった.超音波検査にて2.5cm大の内部不均一な腫瘤を腹直筋内に認めた.骨盤CTでは同部位に不均一に造影される腫瘤を認めた.腹直筋内腫瘤の診断にて摘出術を施行した.病理組織学的検討にて,腹壁子宮内膜症と診断した.
    腹壁子宮内膜症は非常に稀な疾患であるが,疼痛を伴う腹壁腫瘤を認めた場合,念頭に置くべき疾患と考えられた.
  • 矢野 将嗣, 杉野 圭三, 番匠谷 将孝, 西原 雅浩, 板本 敏行, 浅原 利正
    2006 年67 巻4 号 p. 894-898
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    子宮内避妊具(IUD)が病因と考えられる横行結腸・虫垂放線菌症の1例を経験した.症例は49歳,女性.主訴は右下腹部腫瘤. 15年以上前よりIUDを長期間留置していた.腹部CT検査で,右下腹部腹壁直下に径5cm大の腫瘤陰影を認めた.手術所見では,横行結腸間膜から右下腹部腹壁に浸潤する径5cm大の腫瘤と虫垂の腫脹を認めた.腫瘤とともに横行結腸部分切除術,虫垂切除術を行った.病理組織学的検査にて,放線菌症と判明し, IUD抜去時の細菌培養でも放線菌が検出された.術後5週目に,右下腹部から骨盤腔内に放線菌症が再燃したが,抗生剤の投与で軽快した.子宮内避妊具の長期留置者に発症した腹部腫瘤は,放線菌症を念頭におく必要がある.
  • 山下 久幾, 平野 明, 今村 洋, 清水 忠夫, 成高 義彦, 小川 健治
    2006 年67 巻4 号 p. 899-903
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    虫垂炎術後に菌塊を核として発症した大網肉芽腫(Braun腫瘤)を経験したので報告する.症例は10歳,男性.虫垂切除後とその術後合併症としての腹壁膿瘍の既往がある.虫垂切除術の3年後に右下腹部痛,発熱で当科を受診した.右下腹部に著明な発赤と圧痛がみられた.腹部超音波検査で皮下から腹腔内に連続する低エコー領域を認め,腹部CT検査では腹壁筋の炎症像とそれに連続する造影効果を伴う腹腔内腫瘤を認めた.腹壁から連続する腹腔内腫瘤あるいは膿瘍の診断で開腹術を施行した.腹壁筋には著しい炎症性肥厚と硬化がみられ,腹腔内にはそれと強固に癒着し,大網が集束したような形態の腫瘤性病変を認めた.腫瘤は菌塊を核とした大網肉芽腫 (Braun腫瘤)であった.
  • 河本 真大, 平田 啓一郎, 山添 定明, 堀 武治, 高塚 聡, 池原 照幸
    2006 年67 巻4 号 p. 904-907
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は67歳の女性,下腹部痛と血便を主訴に受診し入院となった. CT検査にて骨盤腔内にガスと液体貯留を有する嚢腫様病変と,それに接するS状結腸壁の壁肥厚を認めた.入院翌日に下腹部激痛を訴え, X線写真で両横隔膜下に遊離ガス像を認めた. S状結腸膀胱痩とそれに起因する汎発性腹膜炎を疑い手術を行った.術中所見では多量の膿性腹水を認めたが膀胱は正常であり子宮体部に穿孔を認めた. S状結腸に腫瘍を認め子宮体部背側に癒着していたが浸潤の有無は不明であった. S状結腸癌に伴った子宮留膿腫破裂による汎発性腹膜炎と診断し,単純子宮全摘術・S状結腸切除術を施行した.病理組織学的には,子宮は炎症著明であったが子宮内膜・筋層にS状結腸癌の腫瘍細胞を認めなかった.本症例はS状結腸癌に伴った子宮留膿腫破裂による汎発性腹膜炎をきたした稀な症例であった.
  • 三瀬 祥弘, 吉見 富洋, 荒木 眞裕, 井村 穣二, 朝戸 裕二, 岡本 光順
    2006 年67 巻4 号 p. 908-914
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    滑膜肉腫は四肢大関節近傍に好発する病変であり,その発育は比較的緩徐とされている.今回われわれは,非常に稀な腹壁原発滑膜肉腫の急速な増大により,腎不全,呼吸不全,肝機能障害をきたした,いわゆるabdominal compartment syndromeを呈した病例に対し,腫瘍切除減圧を行い救命しえた.病例は36歳,男性.約40cm大の巨大腹部腫瘤,両肺結節影の精査を目的として2004年12月に入院となった.生検など行うも確定診断には至らず,腫瘍の急速な増大により腹部膨満感,肝腎機能障害,呼吸不全が進行した.保存的治療は限界と判断され, 2005年1月に腫瘍切除術が実施され,腫瘍は病理組織学的に腹壁原発滑膜肉腫と診断された.術後,多臓器不全は劇的に改善し,遺残腫瘍に対する化学療法を施行しつつ,術後11カ月現在,外来通院で経過観察されている.
  • 萩原 正弘, 青木 貴徳, 新居 利英, 稲葉 聡, 矢吹 英彦, 葛西 眞一
    2006 年67 巻4 号 p. 915-918
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は34歳,男性.平成15年9月5日より左側腹部痛,発熱出現.症状の改善なく,同年9月7日,当院救急外来受診.腹部CTにて後腹膜に最大径約9cmの腫瘤と左水腎症を認め,精査加療目的に当院内科入院となった.左水腎症に対して,尿管ステント留置.その後,後腹膜腔腫瘤の診断のため, CT, MRI, 血管造影, Gaシンチ,上部および下部消化管検査,骨髄検査など全身検索施行するも,確定診断には至らなかった.このため診断と治療をかねて,平成15年10月22日手術施行.後腹膜腔腫瘍が左腎静脈を巻き込んでいたため,後腹膜腫瘍摘出術および左腎合併切除施行.病理診断は精上皮腫であった.本例は術前後の十分な検索で精巣に腫瘍を認めないことより,後腹膜腔原発性のものと考えている.本例は精上皮腫を摘出し残存腫瘍はないと考えられ,また精上皮腫のみの単一組織型であることより,現在無治療,経過観察中である.
  • 西村 真, 片岡 順三, 矢永 勝彦
    2006 年67 巻4 号 p. 919-923
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,女性. 30年前より臍ヘルニアを指摘されていた.ヘルニアは25cm×20cmと巨大で,ヘルニア部皮膚に発赤・疼痛が出現し来院.皮膚壊死と皮下膿瘍を認めたため切開排膿・debridementを施行した.
    その後,徐々に炎症は軽快し創の縮小を認めた.しかし,しばらくして肉芽部分の一部が次第に増大し,同部より便汁の流出がみられた.腹部CT・注腸造影・瘻孔造影で臍ヘルニア嚢内に発生した横行結腸癌の皮膚浸潤と考え,手術(横行結腸部分切除・胃部分切除・臍ヘルニア根治術)を施行した.術後創感染なく良好に経過し退院した.
    成人臍ヘルニア嚢内に横行結腸癌が発生した報告はなく,また皮膚壊死・皮下膿瘍で発症した希少な症例と考え報告した.
  • 水沼 和之, 中塚 博文, 藤高 嗣生, 中島 真太郎
    2006 年67 巻4 号 p. 924-927
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    鼠径法アプローチにてKugel patchを用い修復した閉鎖孔ヘルニアの1例を経験した.症例は85歳,女性.イレウスの診断にて当科紹介となった.骨盤部CT検査にて右閉鎖孔ヘルニアと診断し緊急手術を施行した.手術は低侵襲目的に鼠径法にてアプローチした.ヘルニア嵌頓を解除した後,ヘルニア門はKugel patchにて閉鎖した.本法は低侵襲で,他のヘルニアも予防でき非常に有用な治療法であると考えられた.
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