日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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67 巻, 12 号
選択された号の論文の42件中1~42を表示しています
  • 守本 芳典, 岡本 竜弥, 岡部 道雄, 鶴田 淳, 河本 和幸, 庭野 元孝, 佐野 薫, 朴 泰範, 今井 史郎, 吉田 泰夫, 伊藤 ...
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2779-2787
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    原発性肝細胞癌(HCC)の切除症例82例を対象に,手術,生存率,再発危険因子,再発形式,再発治療に関して検討した.手術は,部分切除66例,亜区域以上の系統的切除16例であった.術後1, 3, 5年生存率は, 91.4, 79.3, 61.8%であった.無再発例にB型肝炎関連,再発例に肝障害度B, ICG15分停滞率の上昇したものが多く,多変量解析ではB型肝炎関連が有意であった.部分切除後1, 3, 5年生存率は93.9, 87.9, 71.5%であった.部分切除後,無再発例にB型肝炎関連が,再発例にC型肝炎関連,肝障害度B,手術時出血量の多い例が多く,多変量解析ではB型肝炎関連が有意であった.部分切除後の同側葉単発再発は,追加療法にて長期生存中である.以上から,原発性肝細胞癌切除術では,再発危険因子,再発形式,再発治療を考慮すると,部分切除が推奨されると考えられた.
  • 矢田 清吾, 山口 剛史, 宮内 隆行, 倉立 真志, 余喜多 史郎
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2788-2791
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1995年から2004年までにマムシ咬傷にて当院で治療を行った37例について臨床的特徴,腫脹のgrade分類,腫脹までの時間,臓器障害,まむしウマ抗毒素血清(以下,抗毒素)投与と投与効果について検討した.男女比は22:15,受傷部位はすべて四肢.受傷40時間後に来院した1例は多臓器不全を合併し, 2病日に死亡した.最大腫脹までの時間は, grade I~IIに比べIII~Vの出現は有意に遅かった(p<0.001).臓器障害の発生はgrade I~IIIに比べIV~Vの方が有意に多かった(p=0.002).抗毒素を受傷後4時間以内に投与した8例のうち,IV~Vとなった3例では,臓器障害をきたさなかったが,受傷後4時間以降に抗毒素を投与した5例全例がIV~Vとなり,全例に臓器障害をきたした(p<0.02).
    マムシ咬傷時の腫脹は,受傷後3時間を越えても腫脹が続く場合にはgrade III以上となる可能性が高いと予測して対処すべきと考えられた.また,抗毒素投与は,受傷後4時間以内であれば,腫脹がIV~Vに進行する症例の臓器障害の軽減に繋がる可能性があると考えられた.
  • 中熊 尊士, 上野 聡一郎, 宮内 邦浩, 塩澤 邦久, 仙石 紀彦, 蔵並 勝
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2792-2795
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    乳房温存術後の放射線治療終了直後に皮膚筋炎を発症した早期乳癌の1例を経験した.症例は52歳,女性.左乳癌の診断にて2004年5月,乳房温存術,センチネルリンパ節生検施行.病理組織学的診断は,充実腺管癌, T1N0M0, Stage I, Estrogen Receptor(+), Progesterone Receptor(-). 6月よりホルモン剤(Toremifene)投与開始.7月より残存乳房に放射線治療施行.治療終了直後の8月より突然,全身倦怠感,発疹,嚥下困難,顔面~頸部にかけて浮腫出現し, 8月下旬当科再診.肝機能障害も認めたため薬剤性肝炎を疑いホルモン剤中止.しかし,症状の改善認めず,上・下肢の筋力低下を伴う原因不明の高CK血症も認め, 9月入院.精査にて皮膚筋炎と確定診断された.手術,放射線治療といったストレスが皮膚筋炎発症へとつながったと推測される.皮膚筋炎に悪性腫瘍合併率が高いことは良く知られているが,悪性腫瘍の先行例は稀であるため報告する.
  • 米山 公康, 菊山 成博, 大山 廉平
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2796-2799
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は62歳,女性.左乳腺腫瘤を主訴に来院.精査の結果,乳癌と診断された.術前検査として施行された血液検査において血清タンパク13.6mg/dl, IgG 11,900mg/dlと高値であり,尿中Bence Jones蛋白が陽性であることから多発性骨髄腫と診断された.乳癌はいわゆる嚢胞内癌であり,乳房部分切除術を施行した.術後の病理組織診断では非浸潤性乳管癌であり,乳頭側切除断端が陽性であったため追加切除,放射線照射をすすめたが同意が得られず経過観察となった.多発性骨髄腫に対する治療を行っていたが,術後6カ月に乳輪近傍に腫瘤を触れ,局所再発と診断され乳房切除術を施行した.以降4年間多発性骨髄腫の治療を継続しているが,乳癌の再発は認めていない.
  • 磯辺 太郎, 横山 吾郎, 藤井 輝彦, 河村 大輔, 中川 志乃, 白水 和雄
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2800-2804
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は48歳,女性.初診3カ月前に腰痛が出現し,その2カ月後に右乳房腫瘤にも気付き当科を受診した.来院時に右乳房に大きさ25×30mmの境界不明瞭で,やや弾性硬の腫瘤を触知した.マンモグラフィー・エコーでは明らかな腫瘤影は認めなかった.穿刺吸引細胞診でDuctal carcinomaが疑われたが, core needle biopsy (CNB)では印環細胞癌が検出された.胃癌の乳腺転移の可能性を考え,胃内視鏡検査を施行したところ,胃生検で印環細胞癌を含んだ低分化腺癌が検出された. PET検査で多発骨転移・リンパ節転移を認め,腹膜播種による両側水腎症も呈しており,その後,癌性胸膜炎も併発し急速に全身状態が悪化したため,化学療法を開始できずに初診から27日目に他界された.今回臨床上稀である胃癌の乳腺転移を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 服部 有俊, 尾関 雄一, 松谷 哲行, 佐藤 光春, 阪野 孝充, 前原 正明
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2805-2809
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は39歳,男性.平成16年8月,検診時左胸部異常影を指摘され,胸壁腫瘍の診断で当院を紹介された.胸部CTでは前胸壁から胸腔内に向かって突出する辺縁整,境界明瞭で内部均一な4cm大の腫瘤影を認めた.胸部MRIでは腫瘤はT1, T2強調像とも筋肉よりややhigh intensityを示し, Gd造影で造影効果を認めた.また,胸壁の構造が正常で腫瘍の呼吸性変動を認めたため臓側胸膜由来のsolitary fibrous tumor (SFT)を疑い,平成17年3月胸腔鏡下に手術を施行した.腫瘍は左肺上葉,舌区外側の臓側胸膜から有茎性に発生しており,左肺を一部合併切除して腫瘍を摘出した.組織学的に腫瘍は紡錘形細胞が錯綜して増殖しており,臓側胸膜発生のSFTと診断した. SFTは間葉組織由来の比較的稀な腫瘍であり,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 多田 明博, 佐伯 英行, 山本 澄治, 福原 哲治, 小林 一泰, 花岡 俊仁
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2810-2814
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は44歳,男性.感冒様症状と前胸部痛を主訴に近医を受診,胸部CT検査で前縦隔腫瘍を認め当院紹介となった.腫瘍は左肺動脈に広く接しており,左上肺静脈,縦隔胸膜への浸潤も疑わせた.甲状腺右葉にも約3.0cm大の腫瘍を認め,エコー下に施行した穿刺吸引細胞診はclass Vであった. 67Gaシンチグラフィで両腫瘍に強い集積像を示したため,悪性リンパ腫や縦隔腫瘍の甲状腺転移を考え,診断と治療目的に手術を施行した.甲状腺亜全摘と頸部リンパ節郭清を先行し,迅速病理検査で悪性リンパ腫が否定された後,縦隔腫瘍を左上葉,心膜と共に合併切除する拡大胸腺摘出術を施行した.病理組織学的検査では非定型胸腺カルチノイドであり,甲状腺転移の所見であった.術後4カ月目に他臓器への多発転移を認め, 67Gaの集積はその悪性度の高さを反映していたものと考えられた.
  • 大村 篤史, 戸部 智
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2815-2818
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    肺動脈弁乳頭状線維弾性腫の2手術例を経験したので報告する. 1例目は73歳,男性.他院にてC型肝炎にて加療されていた.胸部CT検査にて,肺動脈内に腫瘍影を認め,精査加療目的で当科紹介された.心臓超音波検査にて肺動脈内に可動性のある腫瘍を認めた. 2例目は68歳,男性. WPW症候群にて当院循環器内科にて加療されていた.心臓超音波検査を行った際に偶然に肺動脈弁に付着する可動性のある腫瘍を認めた. 2症例とも,心臓超音波所見から,乳頭状線維弾性腫の可能性が高いと判断し,腫瘍切除および肺動脈弁形成術を施行した.術後病理診断にて確定診断を得た.術後経過は良好で,弁機能に問題を認めなかった.乳頭状線維弾性腫は無症状で経過することが多いが,時に塞栓症を引き起こし致命的な合併症を発症することが報告されており,外科的切除が必要であると考えられた.
  • 酒井 章次, 青木 輝浩, 櫻井 孝志, 橋本 光正, 細田 洋一郎, 清水 健
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2819-2823
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    CT画像上,薄壁空洞を含む,空洞を呈した多発性乳癌肺転移の1例を経験したので報告する.症例は46歳,女性.乳癌手術後5年目に胸部異常陰影が出現し, CTでは薄壁空洞を含む多発性の空洞性病変であった. 2年間のCTでの経過観察中に空洞の壁の肥厚や充実性病変の出現などがみられ,確定診断のために胸腔鏡下肺部分切除を施行した.組織学的に乳癌の肺転移と診断され,ホルモン療法を施行した.治療開始3年後,肺病変はすべて薄壁空洞となり,ホルモン療法は効果的であったと考えられた. 9年を経過した現在も,担癌ながら存命中である.
  • 宮木 陽, 成高 義彦, 島川 武, 今野 宗一, 勝部 隆男, 小川 健治
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2824-2828
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は27歳,女性.頸部痛,前胸部痛,発熱を主訴に当院を救急受診した.胸部CT検査で,胸部から腹部食道右側の縦隔内に限局する膿瘍を認めた.食道造影検査で明らかな穿孔はなく,炎症が縦隔内に限局していたため保存的治療を行った.上部消化管内視鏡検査で,切歯列より22cmの胸部上部食道に約15mm大の深い食道潰瘍を認めたが,異物や穿孔はなかった.鳥の手羽先を丸ごと摂取した病歴があり,胸部CTの縦隔膿瘍と食道潰瘍の部位が一致していたことから,鶏骨で食道が損傷し,穿孔したと判断した.第4病日以降解熱し,第13病日の胸部CT検査では縦隔内の膿瘍はほぼ消失,第16病日に退院した.食道穿孔は,侵襲の大きな手術が必要になることが多いが,自験例では,保存的治療により治癒しえた.
  • 西川 和宏, 藤井 眞, 森本 芳和, 三方 彰喜, 齊藤 哲也, 田中 康博
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2829-2832
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は55歳,男性.胃癌術後でフォロー中, 2004年5月から胸部不快感,胸痛が出現.上部消化管内視鏡検査にて,胸部食道に食道内腔をほぼ占拠する1p型の隆起性病変を認めた.腫瘍生検にて食道癌と診断した. 2004年7月28日食道亜全摘術および残胃摘出術を施行した.病理組織学的所見は紡錘形細胞と異型上皮細胞からなる腫瘍であり食道癌肉腫と診断された.紡錘形腫瘍細胞は異型に富みα-smooth muscle actinが陽性に染色され,紡錘形細胞と異型上皮細胞の両者の間の移行像は明らかではなかった.以上の所見より真性癌肉腫と考えられた.反回神経リンパ節および左鎖骨上リンパ節には原発巣同様に肉腫成分が混在したリンパ節転移を認めた.術後早期に再発し急激な経過をたどり,術後4カ月目に死亡した.
  • 塩崎 滋弘, 丁田 泰宏, 青木 秀樹, 二宮 基樹, 高倉 範尚, 石川 純
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2833-2837
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胃に開口する異所性胆管に対して異所性胆管切除,肝管空腸吻合を行った.症例は73歳,女性.主訴は腹痛,嘔吐.胃内視鏡検査で胃体部小彎の小孔および小孔からの胆汁の流出を認め,胃胆管瘻の診断で紹介入院となった. ERCPでは膵管は造影されたが,胆管は造影されなかった.胃体部小彎の小孔から造影すると小網内に異所性胆管および胆管結石を認め,さらに肝内胆管が描出された.手術所見では小網内に左肝管から胃に達する径1.5cmの異所性胆管を認めた.肝十二指腸間膜内には本来の総胆管の走行部に肝門部から続く索状物が認められた.索状物と肝門部肝管との交通はなかった.異所性胆管を切除し,肝管空腸Roux-en Y吻合にて再建を行った.重複胆管を伴わない胃へ開口する異所性胆管の報告は極めて稀であり今回報告した.
  • 臼田 敦子, 勝部 隆男, 久原 浩太郎, 村山 実, 今野 宗一, 小川 健治
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2838-2841
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は74歳,男性. 20年前から糖尿病を指摘されていたが放置. 2006年2月,虚血性心疾患(3枝病変)の診断で右胃大網動脈をグラフトとした冠状動脈バイパス術を受けた. 2006年12月,黒色便が出現したため近医を受診,胃癌の診断で当科に入院した.胃体上部後壁にIIc型早期胃癌を認め,生検では低分化腺癌であった. CT angiographyで右胃大網動脈(以下RGEA)グラフトの開存と走行を確認し,グラフトを損傷することなく胃部分切除術を施行した.病理組織学的には, por2, pT1 (SM2), ly0, v0であった.本症例のような胃癌の治療にあたって,安全性の面から問題となるのは手術時のグラフトの損傷であるが,その確認にCT angiographyが有用であったので報告する.
  • 北薗 巌, 宮崎 俊明
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2842-2846
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,男性.心窩部痛を自覚し,近医にて上部消化管内視鏡検査を施行,胃角部から前庭部にかけて広範な潰瘍性病変を認め,生検でB細胞悪性リンパ腫(びまん性大細胞型CD20陽性)と診断された.その後,化学療法目的で当院内科に入院しR-CHOP療法を開始した. 3クール終了後に嘔吐が頻回にみられるようになり,上部消化管内視鏡検査を施行したところ,潰瘍性病変は縮小していたが,幽門部の狭窄を認めるようになった.胃悪性リンパ腫による胃流出路狭窄の診断で,幽門側胃切除を施行した.しかし,切除標本では悪性リンパ腫の遺残は認められず,完全寛解と診断された.狭窄の原因は,化学療法による瘢痕治癒後の狭窄であった.本症例の如く,化学療法後に胃流出路狭窄をきたした症例は稀であり,本邦報告例および自験例を含め文献的考察を加え報告する.
  • 橋本 竜哉, 星野 誠一郎, 篠原 徹雄, 前川 隆文, 山下 裕一, 白日 高歩
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2847-2850
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    MRIにて術前診断しえた左傍十二指腸ヘルニアの1例を経験したので報告する.症例は, 30歳,女性.間欠的な左側腹部痛,嘔気を主訴に当科を受診.左上腹部に圧痛を認めたが,筋性防御はなかった.腹部CT検査所見において胃背側に腫瘤像を認めた. MRIにて内部が腸管と同信号かつ腸管壁構造が鮮明に描出されたことより陥入した小腸と判断し,左傍十二指腸ヘルニアと診断した.その後も間欠的なイレウス症状を繰り返すため開腹下にヘルニア門の閉鎖を行った.傍十二指腸ヘルニアは,特有な症状に乏しいが,間欠的なイレウス症状を有する場合は本疾患の存在を念頭に置く必要があり,その確定診断においてMRIが有用と考えられた.
  • 清水 英治, 伊藤 博, 新田 宙, 山下 純男, 鈴木 裕之, 諏訪 敏一
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2851-2855
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    CTにより術前部位診断が可能であった小腸毛細血管腫の1例を経験した.症例は44歳,男性. 2005年8月より黒色便を自覚する.めまい・ふらつきの貧血症状が強くなり,当院に緊急入院となった.上部・下部消化管内視鏡検査,腹部造影CT検査(1回目)にて出血を疑わせる所見を認めなかった.食事開始後,再度大量下血し,緊急造影CT (2回目),消化管出血シンチグラフィ施行.造影CTにて右下腹部で腸重積を起こした小腸からの出血を疑い,緊急開腹手術を施行した.術中所見では,回腸末端より約1.5mの小腸に腫瘍を先進部とする順行性の腸重積所見を認め,小腸部分切除術を施行した.切除標本では径約2.0cm,有茎性の軟らかい病変であった.病理組織学的所見は,毛細血管腫と診断された.原因不明の小腸出血に対し,造影CTはその汎用性と簡便性の上からもfirst choiceになりうる検査法と思われた.
  • 諏訪 敏之, 櫻井 丈, 青木 一浩, 榎本 武治, 渡邉 泰治, 大坪 毅人
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2856-2859
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は78歳の女性. S状結腸癌でS状結腸切除術を施行し,ダグラス窩にデュープルドレーン(径10mm)を挿入した.術後5日目にドレーンを抜去したところ,約6時間後に腹痛,嘔気と嘔吐が出現した.ドレーン抜去部に一致して皮下に手拳大の腫瘤を認め,圧痛を伴っていた.腹部CT検査では,皮下に脱出した小腸を認めた.ドレーン挿入部からの腸管の脱出,嵌頓と診断し緊急手術を施行した.ドレーン抜去孔に嵌頓し,壊死した小腸を認め,小腸切除術を施行した.術後経過は良好で初回手術後15病日に退院した.
  • 萩原 英之, 阿部 豊, 森 康昭, 鈴木 洋一, 名取 穣治, 内山 喜一郎
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2860-2863
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は50歳,女性. 2005年1月20日に下血を主訴に当院内科を受診,精査加療目的に翌日入院となった.下血は第2病日には軽快した.下部消化管からの出血を疑い大腸内視鏡検査を施行したが,出血源は明らかでなかった.食事を再開したところ再度血便を生じ,小腸病変の検索のため,経口法とカテーテル法による小腸造影を施行した.回腸に再現性のある直径約20mm大の隆起性病変が認められ小腸腫瘤と診断した.上部消化管内視鏡,腹部CT,腹部血管造影検査では異常所見は認められず, 2月18日に手術を施行した.開腹時所見では回腸末端から約120cm口側の回腸に腫瘤性病変を触知し,回腸部分切除術を施行した.切除標本の病理組織学的検査では, Heinlich III型の異所性膵と診断された.術後経過は良好で,術後1年の現在,下血の再発は認められていない.
  • 千堂 宏義, 常見 幸三, 椋棒 英世, 中村 吉貴, 金田 邦彦, 和田 隆宏
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2864-2868
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    小腸innammatory fibroid polyp (以下IFP)による血便の1例および成人腸重積症の1例を経験したので報告する.症例1: 61歳,男性.血便を主訴に当院受診,上部および下部内視鏡検査では明らかな出血源は不明であった.再び下血し当院受診,貧血を認めたため入院となり,諸検査にて小腸出血を疑った.入院中に再度下血したため緊急開腹術を施行した.術中所見では回腸に腫瘍を先進部とした腸重積を認め,回腸部分切除術を施行した.切除標本では頂部にびらんを伴った有茎性腫瘤を認めた.症例2: 59歳,女性.繰り返す腹痛と便秘を主訴に近医受診,腸炎と診断されたが腹痛が増強したため当院受診.腸重積疑いによるイレウスと診断し入院.保存的治療にて軽快,明らかな病変指摘しえず退院したが,再び便秘,腹痛出現,イレウスの診断で再入院となった.イレウス管造影および腹部CT検査にて小腸腫瘍による腸重積と診断し,開腹手術を施行した.術中所見では回腸に腫瘍を先進部とした腸重積を認め,回腸部分切除術を施行した.切除標本では表面平滑な球状有茎性腫瘤を認めた.病理組織学的検索にていずれの症例もIFPと診断された.小腸のIFPは比較的稀で,そのほとんどは腸重積で発症し,下血での発症は稀である.本疾患は術前および術中での質的診断はきわめて困難で,術後の病理組織学的検索に委ねられることがほとんどである.今回われわれは血便および成人腸重積症でそれぞれ発症した回腸IFPの2例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 北山 佳弘, 余田 洋右, 岡本 信洋
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2869-2873
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は59歳の男性で,突然の下腹部痛を主訴に来院.精査にて穿孔性腹膜炎の診断のもとに緊急開腹術を施行.回腸末端より約40cm口側の小腸に径10cm大の腫瘤を認め, S状結腸に浸潤しつつ穿孔しており,回腸部分切除, S状結腸切除術および人工肛門造設術を施行した.病理組織学的所見で紡錘状の腫瘍細胞の増殖がみられ,免疫染色でc-kit, CD34陽性, α-SMA, S-100蛋白陰性であったためgastrointestinal stromal tumor, uncommitted typeと診断した.現在,メシル酸イマチニブを服用し,外来にて約2年間の経過観察中であるが現在のところ再発は認められていない.
  • 富永 哲郎, 柴田 健一郎, 長谷場 仁俊, 山口 広之, 飛永 晃二
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2874-2879
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    内分泌細胞癌の併存を認めた盲腸癌の1例を経験した. 58歳,男性.検診で便潜血反応陽性のため精査を行い,盲腸に約3cm大の3型の腫瘍を指摘された.生検でGroup V; poorly differentiated adenocarcinomaと診断されたため,回盲部切除+D3郭清を行った.術後の病理学的所見は, Mixed composition of adenocarcinoma and neuroendocrine carcinomaでT3N1P0H0M(-): pStage IIIaの進行癌であった.
    術後外来で補助化学療法を継続中である.大腸の内分泌細胞癌は比較的稀な疾患で,盲腸原発のものはさらに稀であるので文献的考察をふまえて報告する.
  • 太田 竜, 古賀 浩木, 田中 聡也, 北原 賢二, 黒木 信善
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2880-2885
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は90歳,女性. 2004年3月腸閉塞を生じ当科受診.下部消化管内視鏡検査を行ったところ上行結腸に全周性の隆起病変が存在した.大腸透視検査にて上行結腸に5cmの全周性狭窄像を認めた.生検にて中分化腺癌であり上行結腸癌の診断にて結腸右半切除術,第2群リンパ節郭清を行った.肉眼的に腫瘍は単一で潰瘍限局型を呈していた.病理組織診にてrosette形成を伴う充実性または小腺管構造を呈するカルチノイドが腺癌と混在する極めて稀な組織型であった.免疫組織染色にて癌部ではCEA, CA19-9, p53が陽性であり,カルチノイド部ではsynaptophysin, p53が陽性, chromogranin A, gastrinは陰性だった.結腸に発生したカルチノイドと腺癌のcomposite腫瘍は極めて稀であり,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 金 啓志, 坂下 吉弘, 高村 通生, 橋本 泰司, 岩子 寛, 繁本 憲文
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2886-2891
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    単発性肝膿瘍を合併した直腸癌の1例を経験したので報告する.症例は47歳,女性.主訴は発熱,上腹部痛,食欲低下.平成14年7月26日より38°Cの発熱,腹痛が出現し,近医受診し点滴を受けたが,症状改善しないため,当院受診.腹部超音波検査,腹部CT検査にて肝外側区域に径4.5cm大の多房性の腫瘤を認め,肝膿瘍と診断される.排膿と診断目的にてPTADを施行し,抗生剤投与を行い保存的に軽快した. 8月23日,肝膿瘍の原因検索のため,大腸内視鏡検査を施行し,直腸Rbに2型の直腸癌を認めた.肝生検を行い,肝転移を伴わないことを確認した後,自律神経温存直腸低位前方切除術を施行.術後3年6カ月現在,肝膿瘍の再燃も癌再発も認めていない.本症例のように肝転移を伴わない単発性の肝膿瘍は比較的稀といわれているが,生検結果,画像所見などにより,肝転移の有無を十分に検索し,慎重に治療方針を決定すべきである.
  • 猪狩 公宏, 松山 貴俊, 飯田 道夫, 熊谷 洋一, 山崎 繁
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2892-2896
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    大腸癌の卵巣転移は比較的稀な転移形式である.症例は75歳,女性.下腹部痛,便秘を主訴に,直腸癌両側卵巣転移の診断にてHartmann手術を施行した.両側卵巣転移および大網,腹膜播種よりP3 Stage IVと診断した.また大腸癌卵巣転移の多くは中高分化型腺癌の組織型を示すのに対し,本症例ではsynaptophysin, NSE, chromograninに陽性を示す神経内分泌腫瘍の成分を伴っており, moderately differentiated adenocar-cinoma with neuroendocrine differentiationと診断した.大腸癌卵巣転移は発見時に腹膜播種をきたしている例が多く, neuroendccrine cell carcinomaはadenocarcinomaに比し予後は不良であり,本症例は転移様式および組織型から考えて,極めて悪性度が高い.
  • 石倉 久嗣, 沖津 宏, 滝沢 宏光, 湯浅 康弘, 組橋 由記
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2897-2900
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    2004年10月より進行,再発大腸癌に対してweekly CPT-11/UFT/LVを9例に施行した.投与スケジュールはCPT-1160mg/m2を第1, 8, 15に外来において点滴静注し,経口薬UFT (300mg/body/日)と経口Leucovorin (75mg/body/日)を21日間連日投与し, 7日間休薬の28日間を1コースとした.治療効果はPR 5例, SD 4例であり,奏効率56% (5/9), tumor control rateは100%であった. Grade3以上の副作用は倦怠感33%,白血球減少11%,嘔気11%で,下痢は1例(Grade2)のみであった.これらの結果は既報告と比較し,有害事象発生率が低く,奏効率56%と満足できるものであった.外来におけるCPT-11/UFT/LV療法は,有効性,安全性, QOLの面からも,進行再発大腸癌に対するfirst lineとして有用な治療法であると考えられた.
  • 坂本 英至, 長谷川 洋, 小松 俊一郎, 法水 信冶, 田畑 智丈, 河合 清貴
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2901-2904
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    高度肝硬変を合併した合流部型Mirizzi症候群に対し腹腔鏡下手術を施行したので報告する.症例は57歳,男性で黄疸を主訴に受診した. MRCPでは胆嚢頸部および三管合流部に2cm大の結石2個が嵌頓していた. ERCPでは胆管は三管合流部で閉塞し上流側は造影されなかった.精査・減黄目的に経皮経肝胆道ドレナージ (PTBD) を行いカテーテルを内瘻化した.減黄後手術を予定したがICGI5分値55%と肝機能不良のためtube stentの状態で手術待期となった.その後下咽頭癌が発見され,化学放射線療法が行われCRが得られた.半年後肝機能が改善したため腹腔鏡下に手術を施行した.胆嚢頸部から三管合流部までを長軸方向に切開し嵌頓した結石を摘出したのち,切開部を縫合閉鎖した.術後は合併症なく順調に経過した.合流部型Mirizzi症候群に対しても症例を選択すれば腹腔鏡下手術は十分に適応できると考えられた.
  • 森 洋一郎, 榊原 堅式, 中前 勝視, 安藤 拓也, 遠藤 克彦, 遠藤 友美
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2905-2908
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,女性.他院で腹腔鏡下胆嚢摘出術,総胆管切開・Cチューブドレナージ術を施行された. 7年半後,発熱,上腹部激痛,嘔気を主訴に当院初診となった.精査したところ,金属クリップを核とした総胆管結石を1個認めたため,開腹総胆管切開・Tチューブドレナージ術を施行した.摘出した結石は18×11mmのビリルピンカルシウム石で,内部中央に金属クリップを認めた.術中, 2個あるべき胆嚢動脈断端のクリップは1個しか認めず,結石の原因と考えられた.術後経過は良好で現在無再発経過観察中である.クリップを核とした総胆管結石は本邦で27例が報告されている.今回の症例では,術中所見から胆嚢動脈断端のクリップが総胆管内に引き込まれた可能性が推察された.
  • 菊地 健司, 和田 邦敬, 吉田 秀明
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2909-2913
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,嚢胞液中の腫瘍マーカーが高値を示し,画像上も嚢胞壁の増殖性の変化を呈したため悪性疾患を否定できなかった嚢胞性胆管性過誤腫の1例を経験したので報告する.症例は77歳,女性. 2004年3月に右季肋部の鈍痛を主訴に当科受診.画像所見より,肝後区域の単純性肝嚢胞の診断し,経皮経肝嚢胞ドレナージ術(以下, PTCD)とmynocyline直接投与にて軽快した.しかし11カ月後に再び右季肋部痛を自覚し当科再診.入院時血液所見で炎症反応とCA19-9の上昇を認め,再発性感染性肝嚢胞の診断にてPTCDを施行した.嚢胞穿刺液中のCEA・CA19-9・DUPAN-2が上昇しており,腹部CT上も嚢胞壁の肥厚を認めたため, malignant potentialを有する腫瘍性疾患の存在も否定できず,非定型肝右葉切除術を施行した.病理診断は胆管性過誤腫であり,悪性所見はみられなかった.
  • 山本 誠士, 原 章倫, 常深 聡一郎, 泉 信行, 岩本 伸二
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2914-2917
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    von Meyenburg complexは胆管性過誤腫性病変といわれている.今回われわれは進行胃癌の術前検索にて,びまん性肝転移との鑑別診断を必要としたvon Meyenburg complexの1例を経験したので,報告する.症例は59歳,女性.進行胃癌の術前検索の腹部超音波検査, CT検査にて肝臓の両葉に多発する小結節性の腫瘤性病変を認め,多発性肝転移との鑑別は難しかった.そこで, MRI, MRCPへと検査にて精査をすすめたところ,肝内の胆管系との交通がない多発する小嚢胞を確認し,典型的なvon Meyenburg complexと診断した.さらに診断精度を上げるために, FDG-PET検査も追加したところ, FDGの集積は認めず,肝転移は否定した.術中の肝臓の肉眼判定では,肝表面に5mm大の濃緑色調を呈する嚢胞性病変が散在しており, von Meyenburg complexの術中診断を下した.病理学的な確定診断を得るべく肝生検を行ったが,採取部位と大きさが不適切であり,今後の反省課題として残った.
  • 石川 正志, 湯浅 康弘, 石倉 久嗣, 一森 敏弘, 沖津 宏, 阪田 章聖, 藤井 義幸
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2918-2922
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胆嚢原発の内分泌細胞腫瘍は極めて稀で,その予後も不良といわれている.今回,肝右3区域切除を行うも,早期に再発をきたした胆嚢原発内分泌細胞癌の1例を経験した.
    症例は59歳,女性.肝機能障害と腹部USで肝腫瘤を指摘され入院となった.腹部US, CTでは肝右葉に多発する巨大な腫瘤とS4にも5cm大の腫瘤を認めた.胆嚢は壁が全周性に肥厚しており,結石もみられた.胆嚢癌の肝転移と考え,右3区域切除術を行った.切除標本の割面では腫瘍は膨隆していたが明らかな皮膜はみられず,黄色部と白色部が混在していた.病理検査では胆嚢および肝の腫瘍は共に壊死,線維化を伴った悪性細胞がみられ,免疫組織染色ではNSE染色とchromogranin A染色で陽性であり,胆嚢原発内分泌細胞癌と診断した.術後2カ月半後のCTで残肝に腫瘤が多発しており, CPT-11, CDDPの肝動注療法を行うも1カ月後に永眠した.
  • 吉田 克嗣, 玉内 登志雄, 久世 真悟, 服部 正興, 森脇 菜採子, 鈴木 秀昭, 馬場 聡
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2923-2928
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は53歳の女性で,閉塞性黄疸で紹介された.超音波検査で胆嚢底体部遊離腹腔側に,乳頭型病変(約4.5cm)と結石を認めた. CTで軽度造影効果がある均質な胆嚢病変と壁肥厚を伴い造影効果がある下部胆管を認めた. MRCPで下部胆管の狭窄を認めた.血管造影検査で腫大膵頭部による上腸間膜静脈の左方への圧排を認めた.以上より,胆嚢癌と下部胆管癌の同時性重複癌と診断し肝床切除術,肝外胆管切除術と亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.組織学的には,胆嚢低分化型腺癌で,リンパ管や間質への高度浸潤のために下部胆管狭窄や膵頭部腫大を生じ,膵臓,左肝管,右前後区域胆管断端で癌陽性となった.第62病日癌腫症によるDICから出血性ショックとなり死亡した.病理解剖で多臓器にわたる癌性リンパ管症を認めた.本症例は,急速に進行し下部胆管狭窄を生じた稀な胆嚢癌で,特異な進展形式を念頭においた治療戦略が必要と考えられた.
  • 田中 千恵, 宮内 正之, 金住 直人, 中尾 昭公
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2929-2934
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は76歳の男性で上腹部痛のため当院受診した.腹部エコー上膵頭部に径10cmの低エコー性腫瘤を指摘され入院した. CT検査で膵鉤部に不均一に造影される低吸収性腫瘤を指摘された.腹部血管造影検査では前上膵十二指腸動脈をmain feederとしたtumor stainを呈した.膵頭十二指腸切除術を施行し,術後病理組織検査では大小不同な核の目立つ腫瘍細胞の増殖を認めた.さらに免疫染色を施行したところソマトスタチンが著明に染色され膵原発無症候性ソマトスタチン産生腫瘍と診断した.
  • 酒井 丈典, 安永 昌史, 大塚 隆彦, 古川 哲, 川原 隆一, 木下 壽文
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2935-2940
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,女性.下痢と食思不振のため精査,腹部CTにて後腹膜腫瘍を指摘された.腫瘍マーカーは,いずれも正常範囲であった.種々の画像診断の結果,十二指腸後壁より発生したGISTを疑われ手術の方針となった.実際の開腹所見で,腫瘍は膵後面の膵実質から膵外へ発育していたため,膵実質を一部腫瘍に付ける形で腫瘍切除術を行った.病理組織学所見で,腫瘍部は小型で核小体の出現・クロマチン増量を示す異型細胞が,策状・リボン状配列を呈しながら増殖し,免疫染色では,シナプトフィジン・クロモグラニン陽性,グリメリウス・c-kit・CD34陰性であった.ホルモン関連は,ガストリン陽性,グルカゴン・インスリン.ソマトスタチン陰性であった.この結果より膵内分泌腫瘍(ガストリノーマ)と診断された.後日判明した内分泌検査の結果,血中ガストリンが2,400pg/mlと高値を示していた.現在は外来通院にて経過観察中である.
  • 原田 岳, 横井 佳博, 平山 一久, 鳥山 裕史, 小谷野 憲一
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2941-2945
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,女性.膵頭部癌の術前,血管造影を行ったところ,腹腔動脈は起始部(Celiac axis: CA)で挿管できず,拡張した膵アーケードを介して上腸間膜動脈より造影された. CTでは大動脈壁に石灰化が散在し, Three dimentional computed tomogra-phic amgiography (3D-CTA)では,正中弓状靱帯(MAL)による圧迫に特徴とされる“hooked appearance”は認められず,動脈硬化性のCA閉塞と診断した.しかし,術中, MALによる圧迫の解除のみでCA血流は再開した.
    腹腔動脈起始部が閉塞し,膵頭十二指腸切除術を施行した英文報告39例を集計した.動脈硬化による閉塞は原則として血行再建を要し,一方, MALによる圧迫では, 11例中10例でMAL圧迫の解除のみで血流が再開したことから,閉塞の原因はその後の術式決定に重要であることが示唆された. MAL圧迫に特徴的な“hooked appearance”は呼気時に典型的に現れる.自験例では呼気時の画像で評価したため,正確な診断に至らなかったと思われた. 3D-CTAで閉塞原因を判定する際は,呼気時の画像で評価すべきである.
  • 浦山 雅弘, 瀬尾 伸夫, 太田 圭治, 川口 清, 渡邊 利広, 牧野 孝俊
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2946-2949
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は30歳,男性.平成17年3月中旬,風邪症状が改善せず,当院内科初診.急性化膿性扁桃炎の診断で治療したが,軽快せず,初診より2日目に再来し,採血検査にて黄疸および肝機能障害を認め,急性肝炎の疑いで入院した.入院2日目の夕方より,左季肋部痛が出現し,翌朝ショックとなった.腹部超音波および腹部CT検査の結果,脾臓破裂による腹腔内出血と診断し,緊急手術を行った.腹腔内には約1,800mlの出血を認めた.出血源はやはり腫大した脾臓で,被膜が破れて出血していた.止血温存は困難と判断し,脾臓を摘出した.病理組織学的にはCD8陽性のTリンパ球が浸潤していた.抗体検査の結果によりEBウイルスの初感染による伝染性単核球症と診断した.伝染性単核球症の合併症の一つに脾破裂があげられるものの,その頻度は0.1~0.5%とされ,非常に稀な例と考えられ,報告した.
  • 渋谷 和人, 斎藤 文良, 小島 淳夫, 桐山 誠一, 塚田 一博
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2950-2953
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれは子宮広間膜裂孔ヘルニアの1例を経験したので報告する.症例は51歳の女性.分娩歴あり.開腹歴なし.イレウスの診断で当院に入院となり,イレウス管を挿入し保存的療法を開始した.腹部CTでは骨盤内の拡張小腸と,それによる子宮の圧排像を認めた.イレウス管造影で小腸の狭窄が疑われ,また保存的療法では腹痛,腹満感の増悪と軽快を繰り返すため,内ヘルニアの診断で開腹手術を施行した.開腹すると回腸末端より約30cmの小腸が約15cmにわたり左子宮広間膜の異常裂孔に陥入しており,子宮広間膜裂孔ヘルニアと診断した.用手的に陥入していた小腸を裂孔より引き出し,異常裂孔を縫合閉鎖した.陥入していた小腸は血流障害を認めず切除はしなかった.
    本疾患は,女性の原因不明のイレウスにおいて,早期の診断,治療のために念頭に置くべき疾患と考えられた.
  • 土井 仁志, 天上 俊之, 河合 功, 渡辺 久, 中田 英二
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2954-2957
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    S状結腸軸捻転を呈した総腸間膜症の1例を経験したので報告する.症例は38歳の男性.主訴は腹痛で,腹部単純写真にて鏡面像を伴う腸管拡張像を認め,注腸造影にてS状結腸相当部のbird beak's signを認めた.血行障害を伴っている危惧があったため保存的療法は断念し緊急手術を施行した.十二指腸から下行結腸にまで固定不全が及ぶ高度な総腸間膜症の状態であり, S状結腸が軸捻転を呈し,さらに横行結腸相当部がウインスロー孔に嵌入し複雑な腸管走行を呈していた.血行障害はなく用手整復が可能であったため腸管切除は施行せず,再捻転予防目的にて,腸間膜を一部後腹膜に固定して手術を終了した. S状結腸軸捻転を伴った総腸間膜症は稀であり,自験例を含めて本邦報告例は11例のみである.
  • 錦織 直人, 明石 諭, 今西 正巳, 川口 正一郎
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2958-2963
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    患者は72歳の女性で既往に下肢静脈瘤,陳旧性心筋梗塞,肝硬変,糖尿病を認める.平成18年1月下旬腹痛と下血にて前医入院したが改善せず,翌日腹膜刺激症状出現したため当院紹介受診となった.腹部造影CT検査にて小腸の部分的な高度の壁肥厚を認め,腹膜刺激症状も著明であったため腸管の部分的な血流障害による汎発性腹膜炎を疑い緊急開腹術施行した.空腸が約60cmに渡ってうっ血・壊死しており腸間膜静脈内には血栓を認めた.腸間膜静脈血栓症mesenteric venous thrombosis (MVT)と診断し,健常部で腸管を切除し一期的に吻合した.術後は早期より抗凝固療法開始し,術後の腹部造影CTで門脈内に血栓は残存していたが増大傾向なく血流は保たれていた. MVTは急性腹症において比較的稀な疾患であり症状も非特異的であるため早期診断が困難な場合が多い.今回われわれは肝硬変に合併した腸間膜静脈血栓症の1例を経験したので報告する.
  • 環 正文, 大下 和司, 宇山 正
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2964-2969
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    5回の摘出術を施行し長期生存を得ている腸間膜原発脂肪肉腫の1例を経験した.症例は74歳,女性. 1989年11月, 58歳時にS状結腸間膜原発の10cm大の腫瘍に対してS状結腸切除を伴う腫瘍摘出術を施行され,病理組織学的に高分化型脂肪肉腫と診断された. 1994年1月,仙骨前面の後腹膜に局所再発を認め,直腸の部分切除を伴う腫瘍摘出術を施行された.それ以後現在までに後腹膜,臀部の局所再発をくり返し, 3回の腫瘍摘出術が施行された.経過中,組織学的に高悪性度とされる脱分化を2回認めたが,初回手術後16年以上が経過し現在無再発生存中である.
    本症の治療は外科的切除が原則であり,術後再発を認めた場合にも局所に限局する場合は積極的に再切除が行われるべきであると考える.
  • 澤岻 安勝, 長濱 正吉, 友利 寛文, 藤谷 健一, 名嘉 勝男, 西巻 正
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2970-2974
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は93歳,女性. 2000年7月より腹部膨満感を自覚.症状が持続するため,同年10月当院外来受診.腹部CT, MRIから腹膜偽粘液腫が疑われた.直ちに,手術を勧めたが,高齢であることから手術の承諾は得られず,外来での経過観察となった.しかし, 2001年4月頃から食思不振と腹痛が出現し腹部膨満感も増悪したため,手術目的で4月下旬に外科外来へ紹介受診となった.腹部CTで,下腹部を中心に径12cmの嚢胞性腫瘤と,拡張した小腸像を認めた.血清CEAは99.6ng/mlと高値であった.同年5月,両側卵巣切除,可及的粘液腫瘍摘出術を施行した.病理組織はムチン性乳頭状嚢胞腺癌であった.術後2年後に他院にて癌死したが,術後約1年6カ月間は重篤な消化器症状は発症せず,自宅での生活が可能であった.
  • 柴田 稔人, 桂巻 正, 水口 徹, 梶 晋輔, 平田 公一
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2975-2978
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,女性. 1991年にS状結腸癌にてS状結腸切除術が施行され, 1996年にS状結腸癌の肝転移にて肝左葉切除術が施行された.その後は外来にて経過観察されていた. 2005年にスクリーニング目的の腹部CTにて下腹部創部に腫瘍を認め, FDG-PET検査を施行したところ下腹部手術創の皮下に集積を認めた.大腸癌の腹壁転移が否定できず, 2005年10月に腫瘍摘出術を施行した.病理組織検査では,著明な炎症細胞浸潤と膠原繊維の増生を認めSchloffer腫瘍と診断され,悪性所見は認めなかった.手術歴がある患者で, FDG-PETにて手術創に集積を認める場合,鑑別診断としてSchloffer腫瘍も考慮に入れる必要があると思われた.
  • 吉成 大介, 安東 立正, 富沢 直樹, 川手 進, 堤 裕史, 竹吉 泉
    2006 年 67 巻 12 号 p. 2979-2983
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Larrey孔ヘルニアに対し,腹腔鏡下にヘルニア門を直接縫合し,さらにComposix Mesh®を用いて補強をする修復術を行った.症例は79歳の女性で,心窩部痛と息切れを主訴に紹介入院した. CTで右心横隔膜角部に脂肪織と横行結腸の脱出があり,横隔膜ヘルニアと診断した.腹腔鏡下に観察すると,胸骨背側の肝鎌状間膜の左側に, 5×3cm大のヘルニア門があり, Larrey孔ヘルニアであった.ヘルニア内容を還納し,ヘルニア門を直接縫合閉鎖した.この際,ヘルニア門の緊張を減弱することで,縫合を容易にした.さらに補強のためComposix Mesh®をヘルニア門に追加固定した.術後の回復は順調で, 1年後の胸部レントゲンで,ヘルニアの再発はなかった.胸骨後ヘルニア修復術には低侵襲な腹腔鏡下手術が適しており, Composix Mesh®を用いることで簡便かつ確実な修復術が可能である.
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