日本臨床外科学会雑誌
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70 巻, 12 号
選択された号の論文の54件中1~50を表示しています
第70回総会会長講演
原著
  • 木戸川 秀生, 伊藤 重彦, 山吉 隆友, 井上 征雄
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3486-3489
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    1999年7月から2007年12月までに当院において施行した腹腔鏡下虫垂切除術267例について,2004年6月までの117例(前期群)と,2004年7月以降の150例(後期群)の2群にわけ,両群間で創感染および腹腔内膿瘍の発生率,術後在院日数を比較検討した.なお前期群ではドレーン留置に関しては主治医の判断に任せていたが,後期群では汚染の程度に関わらずドレーン留置を一切行わなかった.両群とも腹腔鏡手術は3ポートで施行し虫垂間膜は超音波凝固切開装置,虫垂根部は自動縫合器にて切離した.炎症が強い場合は生食にて十分に洗浄を行った.前期群では57例(48.7%)にペンローズドレーンが留置された.創感染は前期群7.7%に対し後期群1.3%と有意に発生率の減少を認めた.腹腔内膿瘍は前期群4.3%に対し後期群2.0%と両群間に差は認められなかった.今回のわれわれの検討では腹腔鏡下虫垂切除術においては炎症の程度に関わらずドレーンを留置する必要はないという結果を得た.
  • 野田 英児, 前田 清, 井上 透, 永原 央, 六車 一哉, 山田 靖哉, 澤田 鉄二, 仲田 文造, 大平 雅一, 西口 幸雄, 池原 ...
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3490-3494
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    目的:大腸癌待機手術における術前機械的腸管処置(MBP:mechanical bowel preparation)の有無による術後合併症の発生の検討を行い,その必要性を明らかにする.対象:2003年5月から2007年10月の間に当科で待機手術を行った,結腸癌切除症例および直腸癌前方切除症例467例を対象とした.方法:術前に,MBP施行群と非施行群に無作為に患者の割り付けを行った.MBPの有無と,主な術後合併症として,創感染,縫合不全,腸閉塞の発生との関連を検討した.また,手術時間,出血量との相関をみることにより,手術操作への影響を検討した.結果:全症例,結腸癌症例,直腸癌症例,腹腔鏡補助下手術症例のいずれの群においても,MBPの有無による術後合併症の発生および,手術時間,出血量に有意差はみられなかった.結論:大腸癌の待機手術症例では,MBPは必ずしも必要ではないことが示唆された.
  • 南 一仁, 亀田 彰, 野宗 義博, 大原 正裕, 宮原 栄治, 岡島 正純, 二宮 基樹
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3495-3502
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    目的:大腸癌に対する腹腔鏡補助下リンパ節郭清の安全性・根治性に関し,利点・欠点をもたらす因子を明瞭にすることを目的とした.方法:広島県内26施設の外科医に,大腸癌リンパ節郭清において開腹手術に対する腹腔鏡補助下手術の利点・欠点をアンケート調査した.手術経験総数に応じて経験豊富な施設,中等度の施設,寡少な施設に分類し,分析した.結果:経験豊富な施設,中等度の施設,寡少な施設は,それぞれ8,7,11施設認めた.この手術の利点は,経験数の多寡に係わらず,拡大視および開腹では得られない視野であった.その欠点は,経験豊富でない施設で見られ,術者の技術不足,助手の視野展開の悪さ,およびスコーピストの技術不足により良視野が獲得されないというものであった.結論:腹腔鏡補助下での大腸癌リンパ節郭清の安全性・根治性の獲得には,術者・助手・スコーピストの協調作業による良視野確保が重要であり,手術チームで解決すべき問題である.
臨床経験
  • 小川 宰司, 古畑 智久, 沖田 憲司, 西舘 敏彦, 河野 剛, 平田 公一
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3503-3506
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    根治的恥骨後前立腺摘除術(以下RRPと略)は,鼠径ヘルニア発症の一因と考えられている.当科にて経験したRRP術後に発症した鼠径ヘルニアの特徴について検討した.対象は2005年12月~2008年12月までに当科にて施行した男性初回鼠径ヘルニア手術症例77例とし,RRPの既往の有無により既往群14例と対象群63例に分け,部位,成因,根治術式について検討した.患側,分類では有意な差を認めなかったが,修復術式では既往群で有意にmesh-plug法が多かった(85.7%対31.7%).RRPにおける操作は,内鼠径輪のシャッター機構を障害し,間接鼠径ヘルニア発症のリスクを増大することが報告されている.前立腺癌に対しRRPを施行する際は術前に術後鼠径ヘルニア発症の可能性を説明する必要があり,また症例によって予防的内鼠径輪修復を考慮すべきと考えられた.
  • 田崎 達也, 津村 裕昭, 日野 裕史, 金廣 哲也, 市川 徹
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3507-3511
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    再発鼠径ヘルニアに対する術式選択に関しては定まった見解が得られていないのが現状である.成人再発鼠径ヘルニア62例を検討し,再発手術の術式選択を考察した.62例中43例(69.3%)が内鼠径ヘルニア型の再発であった.再発までの期間はmesh plug法後が4.3±3.6年,Kugel法後が1.2±1.0年であり,tension-repair後の19.2±13.7年に比べ,有意に短かった.2005年までは後方よりの腹膜前腔アプローチで再発手術を多く行ったが,2006年以降はMillikan法が第一選択となった.鼠径管を再解放したにも関わらず,神経損傷による慢性疼痛や精索損傷をきたした症例はなかった.Millikan法は,再発形式として最も多い内鼠径ヘルニア型再発に対して手技が簡便であり,安全面においても問題ないことから,再発症例に対する術式としての有効性が示唆された.
  • 黄 泰平, 藤川 正博, 安政 啓吾, 田中 恒行, 広田 将司, 西田 幸弘
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3512-3516
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    筆者はラテックスおよび手袋,薬品アレルギー患者となった.手袋のパウダーフリー化およびアレルギープロテクトグローブとしてのポリウレタン手袋内履きの試みを報告する.症例(筆者):1985年外科医として勤務.手の皮膚炎から,ラテックスフルーツ症候群,喘息,全身の小痒疹出現.I型およびIV型アレルギーが重症化し,2004年に離職.パウダーがラテックス抗原暴露の原因となるため院内のラテックス手袋はパウダーフリーとし,合成ゴム手袋で2005年に復職.しかし,IV型アレルギーが再燃したため2008年より添加化学物質のない未滅菌ポリウレタン手袋(デュラクリーン®ライクラ®)を内覆きし,速乾式アルコールを塗り合成ゴム手袋をはめる方法で手術を施行し,アレルギー反応は改善した.結語:1,ラテックス手袋はすべてパウダーフリーにすべきである.2,ポリウレタン手袋を内履きすることはアレルギー対策に有効である.
症例
  • 有明 恭平, 元井 冬彦, 吉田 寛, 國島 広之, 江川 新一, 海野 倫明
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3517-3522
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,男性.十二指腸乳頭部癌で,膵頭十二指腸切除術を施行.術後ICU入室時より頻脈を認め,44時間後には呼吸不全を併発したため,人工呼吸管理を開始した.次第に腹部の膨瘤が増大するとともに,腹腔内に留置されたドレーンより異臭を伴う排液を認めたため,再開腹術施行.腹腔内には中等量の腹水貯留以外に異常を認めなかった.再手術後も全身状態の改善は得られず,初回手術後83時間後に急性循環不全にて死亡した.腹水および動脈血培養からAeromonas hydrophilaが検出されたため,同菌による敗血症と診断した.
    本菌による敗血症は極めてまれであり,特に術後の早期診断は困難である.その一方で病態の進行は電撃的であるため,診断時すでに救命困難な場合も多い.本菌に対する認知度を高めるとともに,術前に予防的対策をとることが,本疾患に対する最も有効な治療手段であろうと考えられた.
  • 安藤 敏典, 宮下 英士, 生澤 史江, 柴田 近, 佐々木 巖
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3523-3527
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は44歳,女性.2008年7月頃より右腋窩に違和感を感じ外来受診した.可動性良好な腫大したリンパ節を触知し,超音波検査(US)で不整形で一部境界不明瞭な腫大したリンパ節を認めた.リンパ節生検にて低分化型腺癌の転移が疑われ,ER(+),PgR(+)であったため,転移性乳癌が疑われた.PETにて右腋窩および右乳房の下に高集積を認めた.触診で右乳房下部に皮下腫瘤を触知し,USで11×15mm大の境界不整なlow echoic massを認め,生検にて浸潤性小葉癌の診断であった.右腋窩リンパ節郭清(Level-II)を含む乳房下部腫瘤摘出術を施行し,皮下腫瘤の切除標本内には,小葉と乳管が完備した副乳腺組織が存在するため,副乳腺原発癌と診断した.腋窩リンパ節Level-Iに9/21のリンパ節転移を認め,stageIIのため術後補助化学療法としてCEFを行っている.副乳小葉癌は稀であり,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 小ヶ口 恭介, 並木 健二, 今野 文博, 三井 一浩, 吉田 龍一, 川嶋 和樹
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3528-3531
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は79歳,男性.8年前より慢性骨髄性白血病にて加療中.喫煙歴あり.4カ月前より腹痛が出現.徐々に摂食後の腹痛が増強.上部消化管内視鏡検査にて多発性胃潰瘍と粘膜の虚血性変化を認め虚血性潰瘍が疑われた.造影CTにて腹部大動脈の高度石灰化と腹腔動脈,上腸間膜動脈,下腸間膜動脈起始部の高度狭窄を認めた.腹部内臓動脈3枝の高度狭窄に起因する腹部アンギーナ(慢性腸管虚血)と診断し血行再建術を施行した.自家静脈を用い右外腸骨動脈─上腸間膜動脈,脾動脈バイパス術を行った.術後腸管虚血は改善し,虚血性潰瘍,腹痛は軽快した.
  • 宇山 攻, 先山 正二, 松岡 永, 鳥羽 博明, 滝沢 宏光, 丹黒 章
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3532-3538
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    胚細胞腫瘍では化学療法後腫瘍マーカーが正常化するものの腫瘍の増大を認めることがあり,これらのうち切除標本にてmature teratoma成分のみを認めるものはgrowing teratoma syndromeと呼ばれている.症例は25歳,男性.右精巣非精細胞性胚細胞腫瘍術後に左肺転移,後腹膜転移を認め化学療法としてBEP療法とTIP療法を行った.血中AFP値の正常化にも関わらず左肺転移巣の増大を認め,FDG-PETでは集積はほとんど認めずgrowing teratoma syndromeが疑われた.手術目的に当科紹介となった.CTでは左肺門部に103×82mmの腫瘍を認め,前回化学療法後よりも増大していた.後腹膜大動脈近傍にも26×17mmの腫瘍を認め左肺全摘術+後腹膜腫瘍摘出術を施行した.術後約24カ月経過した現在も再発を認めていない.非精細胞性胚細胞腫瘍治療時にはgrowing teratoma syndromeの可能性を念頭におき,当該症候群を認めた場合には外科的切除も考慮するべきである.
  • 中島 慎吾, 野口 明則, 齊藤 朋人, 谷 直樹, 岡野 晋治, 山根 哲郎
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3539-3542
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    呼吸不全を呈し,緊急手術を必要としたMorgagni孔ヘルニアとLarrey孔ヘルニアが併存した1例を経験したので,報告する.症例は79歳,女性.ネフローゼ症候群にて当院入院中,呼吸困難を認め,胸腹部CT施行.Morgagni孔とLarrey孔ヘルニア併存による縱隔偏位を認め,緊急開腹術を施行した.Morgagni孔に横行結腸が嵌入しており,Larrey孔には嵌入腸管を認めなかった.用手的整復後,それぞれのヘルニア嚢を切除しヘルニア門を直接縫合閉鎖した.術後呼吸困難は著明に改善.現在に至るまで再発を認めていない.
  • 渡邉 利史, 田島 秀浩, 高村 博之, 谷 卓, 萱原 正都, 太田 哲生
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3543-3549
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,女性.肝S5/8に1cm大の肝細胞癌再発を指摘され経皮的ラジオ波焼灼術(Radiofrequency ablation以下RFA)を受けた6カ月後,右上腹部痛が出現し,救急外来を受診した.胸部単純X線写真では右下肺野に腸管ガス像を認め,腹部CTでは肝右側から右胸腔内へ腸管の侵入を認めた.横隔膜ヘルニア嵌頓の診断で緊急手術を施行し,横隔膜に生じたヘルニア門を通じて胸腔内に小腸が嵌頓していることが確認された.RFA後の横隔膜ヘルニアは施行後1年近く経過した後に発症することが多く,死亡例もみられる重篤な遅発性合併症である.RFA後は定期的な経過観察を行い,本症と診断された場合は外科的治療を考慮する必要があると考えられた.
  • 森田 修司, 安岡 利恵, 園山 宜延, 藤木 博, 満尾 学, 門谷 洋一
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3550-3555
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    胃軸捻転症を伴う食道裂孔ヘルニアの1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告した.症例は59歳,女性.心窩部痛,嘔吐にて当院紹介入院.CTおよび造影検査で,胃が間膜軸性に捻転して前庭部の下縦隔内への嵌入を認め,胃軸捻転症を伴う食道裂孔ヘルニアと診断した.内視鏡的整復を試みるも不成功で手術を施行した.開腹時,捻転変位した胃体下部が食道裂孔部ヘルニア門に癒着していた.ヘルニア整復後,ヘルニア門の縫縮と胃固定術を施行した.術前より逆流性食道炎症状を認めなかったことから噴門形成術は行わなかったが,術後経過は良好で逆流症状も認めなかった.また,胃軸捻転症の診断にはCTの多断面再構成画像を検討することが有用であった.
  • 高嶋 伸宏, 三井 敬盛, 西田 勉, 杉浦 弘典, 佐々木 信義
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3556-3560
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は50歳,女性.45歳時に胃ポリポーシスを指摘され毎年経過観察を行っていた.胃体下部から前庭部にかけて大小多彩な多発するポリープを認め,年数を経るにつれて密生型のポリープは範囲が拡大し,それぞれ増大傾向を呈した.また妹が他院にて若年性胃ポリポーシスの診断にて胃全摘術を施行されていたこともふまえ,胃限局性若年性ポリポーシスの診断にて胃全摘術を施行した.摘出標本ではほぼ胃全体に無数のポリープが密生しており,組織学的に若年性ポリポーシスの診断であった.また前庭部の表層に粘膜内癌を認めた.胃限局性若年性ポリポーシスは自験例を含め本邦報告22例と稀な疾患である.家族内に発生した胃限局性若年性ポリポーシスの1例を経験したため文献的考察を加え報告した.
  • 亀田 久仁郎, 久保 章, 門倉 俊明, 田中 優作, 長嶺 弘太郎, 吉田 謙一, 竹川 義則
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3561-3564
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,女性.胃角部大彎前壁のIIc typeの早期胃癌の診断で平成12年に幽門側胃切除術,B-I法再建,D1+α郭清を施行した.病理ではpor2>sig,T1(SM),N2(25/26),H0,P0でStageIIであった.術後フルツロン800mg/dayの内服を5年間継続し,転移再発を認めなかったため内服中止として経過をみていた.平成21年3月に入ってから頭痛が出現.次第に増悪し,めまいや嘔吐を伴うため入院精査となった.髄液穿刺を施行したところ,class V,腺癌細胞が検出され,髄膜癌腫症と診断した.MTX 10mgの髄腔内注入を開始すると,頭痛は軽快し退院可能となった.その後も外来で髄腔内注入を継続.髄液中の細胞数も減少し髄膜播種に対しては効果的だったが,皮膚転移,肺転移,肝転移などが新たに出現.次第に全身状態は悪化し,7月に永眠された.非常に稀な,術後長期経過後の早期胃癌の髄膜播種再発を経験したのでこれを報告する.
  • 藤田 博崇, 篠原 永光, 大畑 誠二, 田渕 寛, 梶川 愛一郎
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3565-3570
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    今回われわれは胃原発小細胞癌術後5年以上無再発生存している1例を経験したので報告する.
    症例は80歳の女性.当院内科通院中に,貧血の増悪を認めたため,上部内視鏡検査にて胃前庭部小彎側に3型の腫瘍を認めた.同部位の生検では低分化腺癌(por1)の診断で,手術目的にて入院となった.胃癌の診断にて幽門側胃切除術,D2リンパ節郭清を施行した.病理組織学的検査所見では,small cell carcinoma,medullary type,病変部では,N/C比の高い癌細胞が胞巣性や索状,リボン状に浸潤増殖しており,一部では血管周囲性ロゼット構造が認められた.Grimelius染色で好銀顆粒がみられ,免疫組織染色学的には,chromogranin A,synaptohysinが陽性を示した.
    術後CPT-11(40mg)の2年長期投与後,術後5年1カ月現在無再発生存中である.胃小細胞癌に対する治療として,積極的な胃切除とリンパ節郭清および長期補助化学療法の有用性が示唆された.
  • 山川 俊紀, 小野田 裕士, 徳毛 誠樹, 岡 智, 大橋 龍一郎, 塩田 邦彦
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3571-3577
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    症例1は67歳,女性.心窩部不快感に対して近医での精査の結果,胃体部後壁の2型胃癌と診断された.CTで腹腔動脈周囲の転移リンパ節を認め,cT3(SE),cN2,cM0,cH0,cP0:c-stageIIIBと診断した.症例2は66歳,男性.胃内視鏡検診で,胃噴門部の2型胃癌と診断された.CTと審査腹腔鏡で胃小弯側から腹腔動脈周囲の転移リンパ節を認め,cT3(SE),cN2,cM0,cH0,cP0(CY0):c-stageIIIBと診断した.術前化学療法としてS-1+paclitaxel併用療法を行った結果,症例1はcT3(SS),cN2,cM0,cH0,cP0:c-stageIIIA,症例2はcT3(SE),cN2,cM0,cH0,cP0:c-stageIIIBと判断した.ともに胃全摘術(D2)を施行し,主病巣,リンパ節ともに病理組織学的判断基準でGrade 3であった.S-1+paclitaxel併用療法は副作用も少なく,外来投与も可能であり,生命予後の改善とQOLの維持を両立した優れた治療であると思われた.
  • 安村 友敬, 斉田 真, 矢川 彰治, 小澤 俊総
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3578-3583
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    68歳の男性で,発熱,上腹部痛を主訴に当科を受診した.肝胆道膵酵素値が上昇し,CTで総胆管が拡張していたが原因は特定できなかった.胃全摘Roux-en-Y吻合後のため乳頭部の精査が困難であり,症状も消失したため,総胆管結石の落下と考え経過観察した.7カ月後,同様の症状が出現.CTで十二指腸水平脚に腫瘍の存在が疑われた.後日施行したdrip infusion cholangiography-CT(以下,DIC-CTと略記)で十二指腸下行脚に径30mmの有茎性の腫瘤が明瞭に描出された.有症状時のCTと腫瘤の位置が異なっており,可動性のある腫瘍が,上腸間膜動脈左側へ嵌入することで,膵炎・胆管炎が発生した経過が推測された.膵頭十二指腸切除を施行.十二指腸乳頭部の腺腫内癌と診断された.大きな十二指腸乳頭部の絨毛腫瘍の報告例は稀である.加えて,本例は胃全摘術後であり診断に苦慮したため,その経過を報告する.
  • 塚田 祐一郎, 岸本 浩史, 吉福 清二郎, 小田切 範晃, 笹原 孝太郎, 田内 克典
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3584-3588
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    成人に発症した原発性小腸軸捻転症を3例経験し,いずれも捻転解除のみで治癒しえたので報告する.症例1は87歳,男性.腹痛を主訴に受診.腹部CTで小腸の捻転像を認め緊急手術施行.手術所見では小腸は拡張し上腸間膜動脈を軸として時計回りに360度捻転していた.症例2は74歳,女性.嘔気,下痢,食事摂取不良による衰弱を主訴に受診.腹部CTにて小腸の捻転像を認め,緊急手術施行.症例3は28歳,女性.下腹部痛,下痢を主訴に受診.発症前にナッツの過食があった.腹部CTでwhirl signを認め,緊急手術施行.3例とも腸管血流は良好であり捻転解除のみ施行した.小腸軸捻転症の発症機序として,症例3ではナッツの過食が誘因と思われた.また,症状は腹痛,嘔吐,下痢など非特異的であり注意が必要である.特徴的なCT像より早期診断が可能であり,早期治療によって腸管切除を回避し良好な予後が期待できると思われた.
  • 大和田 進, 綿貫 文夫, 浜田 邦弘
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3589-3592
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    40年以上の慢性的で非還納性となっていた巨大腹壁瘢痕ヘルニアに,新たに小腸が嵌頓,絞扼した1例を経験した.症例は68歳の女性で,pre-shock状態で来院した.虫垂切除術部の交差切開部に成人頭大の瘢痕ヘルニアを認めた.CT検査では大量の腸管が脱出し,小腸が絞扼され静脈性の循環障害を認めた.腸管切迫壊死と診断し,緊急手術を行った.右半結腸と大網がヘルニア嚢に癒着しており,その間膜は伸展され肥厚しており慢性的な非還納性ヘルニアに,新たに回腸が嵌頓,絞扼したものと診断した.腹腔内容量が還納すべき臓器の量に比べ小さく,大網の部分切除で減量をはかった.絞扼の解除までは10時間で,腸管の壊死はなかった.ヘルニア門は5cm大で,ヘルニアの修復にはComposix Kugel patchを用いた.
  • 井上 耕太郎, 土井 康郎, 今井 克憲, 高田 登, 吉仲 一郎, 原田 和則
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3593-3599
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    症例1は83歳,男性.脳梗塞後の半身麻痺で長期入院中.嘔吐を契機に施行したsingle-row detector CTで拡張結腸を認めた.注腸透視で肛門から上行結腸までの通過を確認し,麻痺性イレウスと疑診した.経過観察し2日後にmulti-row detector CT(MDCT)を施行したところ盲腸軸捻症の診断となり,手術を行った.症例2は25歳,女性.髄膜炎後遺症,寝たきり状態で施設に入所中.頻回の嘔吐で発症し,イレウスの診断で近医に入院,保存的加療を行っていた.増悪のため当院紹介となった.MDCTで盲腸軸捻症が強く疑われ手術を行った.盲腸軸捻症の治療前診断は一般に難しいとされるが,最近その診断率は上昇傾向にある.適確に治療前診断を行うには疾患の認識に加えて,MDCTの活用と注意深い読影が重要である.本症の診断の困難性を中心に考察を加えて症例を報告する.
  • 後藤 裕信, 池永 雅一, 辻江 正徳, 小川 久貴, 安井 昌義, 辻仲 利政
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3600-3604
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,女性.発熱,右下腹部痛で近医にて感染性腸炎と診断され,抗生剤治療を行うも改善せず,当院を受診した.腹部造影CT検査で腫大した虫垂を認めた.持続する発熱,右下腹部痛,虫垂腫大を認めることより,急性虫垂炎と診断し緊急手術を施行した.開腹すると径10cmの腫大した虫垂を認め,リンパ節腫脹も伴っていた.腫瘍性病変である可能性も考慮し,回盲部切除術を施行した.病理組織学的検査にて虫垂粘膜内にリンパ球様の細胞がびまん性に増殖しており,L26陽性であり悪性リンパ腫(diffuse large B-cell type)と診断した.虫垂原発悪性リンパ腫は急性虫垂炎症状を呈することが多いが,画像検査上,虫垂に腫瘤を形成している場合には,本疾患も念頭におくことが重要であると考えられた.
  • 薮崎 紀充, 石山 聡治, 森 俊明, 横井 一樹, 鈴木 祐一, 木村 次郎
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3605-3608
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,男性.平成21年4月,意識消失にて緊急搬送された.来院時,意識レベルは清明,vitalは安定していた.採血では著明な代謝性アシドーシスと高血糖を認め,糖尿病の既往歴もあったことから糖尿病性ケトアシドーシスにて入院となった.入院後は補液にてアシドーシスは速やかに改善したが,左下腹部痛を訴えるようになり,腹部CTを施行したところ下行結腸から直腸にかけて広範な腸管嚢腫様気腫症と末梢血管から肝内肝外門脈ガス像を認めたため腸管壊死を疑い緊急手術を行った.術中所見は下行結腸から直腸Rs部まで広範な気腫と腸管壊死を認めたため同部位の切除を行った.病理所見では腸管壁全層にわたって壊死・気腫が見られ,壊死した腸管内に多数のKlebsiella pneumoniae(K.pneumoniae)が見られた.術後はエンドトキシン吸着療法(polymyxin B immobilized fiver column)を施行,状態は徐々に改善し術後28日目に退院となった.
  • 下村 誠, 横井 一, 吉峰 修時, 谷川 寛自, 谷口 健太郎, 佐藤 梨枝
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3609-3615
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    近年,大腸癌に対する腹腔鏡下手術は急速に普及し,進行癌にまで適応が拡大されつつある.その吻合法では機能的端々吻合(functional end to end anastomosis;以下FEEA)が汎用されているが,近年,本吻合法による吻合部再発の報告例が散見される.今回,腹腔鏡補助下結腸切除術施行後,FEEAを施行した部位に,再発をきたしたS状結腸癌を経験したので報告する.症例は60歳,女性.S状結腸早期癌に対し,腹腔鏡補助下結腸切除術を施行した.術後1年目にFEEA吻合部に再発をきたし,吻合部を切除.腸管内洗浄ののち,経肛門的にcircular staplerにより再吻合した.術後6年7カ月の現在,無再発生存中である.腸管内の洗浄が困難なFEEAに際しては,術中,腫瘍細胞の腸管内散布を予防することが重要であり,腹腔鏡下大腸手術においても,術中の愛護的な鉗子操作と十分な腸管の受動,腸管マージンの確保が重要と考えられた.
  • 高橋 正貴, 黒澤 治樹, 舛井 秀宣, 福島 忠男, 茂垣 雅俊, 長堀 薫
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3616-3622
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は76歳,男性.平成13年9月に胃癌に対して胃全摘術,脾摘術,胆摘術を施行した.総合所見はtub2+sig,T3 N2 H0 P0 CY0 M0 StageIIIbであった.以降,再発なく経過観察とされていた.平成19年4月に便秘を主訴に当院受診.直腸に全周性の狭窄を認め,直腸腫瘍による腸閉塞と診断して腹会陰式直腸切断術を施行した.病理組織所見で直腸の粘膜面は異常なく,粘膜下層から全層にscirrhous patternを示す低分化腺癌の浸潤像を認め,先行した胃癌の転移と診断した.転移性大腸癌は大腸癌全体の0.1-1%と比較的稀であり,胃原発びまん浸潤型転移性直腸癌の国内報告例は23例にすぎない.転移経路としてはリンパ行性転移,播種性転移などが考えられるが本症例では播種性転移と考えた.
  • 田中 智和, 甲斐 敬太, 鮫島 隆一郎, 矢ヶ部 伸也, 湯ノ谷 誠二, 宮崎 耕治
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3623-3627
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は慢性腎不全に対して維持透析中の57歳男性.粘膜下腫瘍様の形態を呈する直腸癌に対して直腸低位前方切除術を施行した.術後7カ月で多発肺転移をきたしたが,FOLFIRI療法(CPT-11 65mg/m2)およびFOLFOX4療法(Oxaliplatin 32mg/m2),次いでFOLFIRI療法(CPT-11 80mg/m2),さらにBevacizumab併用FOLFOX4療法(Bevacizumab 5mg/kg,Oxaliplatin 85mg/m2)を順次導入し,いずれも特に問題なく施行可能であった.粘膜下腫瘍様の形態を呈する直腸・大腸癌は稀であり,術前診断が困難なことがある.また,維持透析中の大腸癌患者に対する化学療法は確立されていないが,今回われわれが経験した症例では,最終的に通常量のBevacizumab併用FOLFOX4療法が問題なく施行可能であった.
  • 石崎 守彦, 海堀 昌樹, 斎藤 隆道, 松井 康輔, 權 雅憲
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3628-3633
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,女性.平成元年に自己免疫性肝炎(autoimmune hepatitis;AIH)と診断をうけていた.平成18年1月の腹部CTで肝S8に3cm大の腫瘤を認めたため当院初診となった.HBs-Ag(-),HCV-Ab(-),抗核抗体>2,560倍,抗ss-DNA IgG抗体>400倍,抗ds-DNA IgG抗体>400倍と自己抗体高値でありAIHと診断された.腫瘍マーカー上昇(PIVKA-II 196mAU/ml)あり,画像からも肝細胞癌(hepatocellular carcinoma;HCC)と診断し,肝部分切除術を行った.病理結果は中分化型肝細胞癌で,非腫瘍部の所見からAIHと診断された.AIHを背景としたHCCの発生機序は,肝硬変,ステロイド,ウィルス性肝炎等が想定されているが,本症例はいずれも合致しなかった.AIHにおいてもHCCの合併を念頭に置く必要があると考えられた.
  • 別府 直仁, 森本 芳和, 弓場 健義, 藤井 眞, 赤丸 祐介, 山崎 芳郎
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3634-3639
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は10歳,男児.上腹部痛,嘔気を主訴に当科を受診した.以前より腹痛を繰り返し近医で胆嚢の位置異常を指摘されていた.腹部超音波検査,CT検査で正中に偏位し壁肥厚を伴った胆嚢を認めた.胆嚢結石は認めなかった.MRCP検査で胆嚢管の明らかな途絶像は認めなかったが胆嚢捻転症が否定できないため緊急腹腔鏡検査を施行した.胆嚢は著明に鬱血腫大し胆嚢管を中心に反時計方向に270度捻転していたため胆嚢捻転症と診断した.胆嚢は胆嚢管と胆嚢頚部の一部でのみ肝床部に付着しGrossI型の遊走胆嚢であった.捻転を解除した後,胆嚢摘出術を施行した.
    胆嚢捻転症は腹腔鏡手術のよい適応とされているが自験例では1)胆嚢管が肝床部に直接付着しておりCalot三角の展開が困難2)胆嚢管が長く,屈曲蛇行していたため三管合流部の確認が困難であった.症例によっては慎重な手術操作を必要とすると考えられた.
  • 関野 誠史郎, 小久保 健太郎, 阪本 研一, 下川 邦泰
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3640-3645
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    後腹膜線維症を合併したIgG4関連硬化性胆管炎と考えられる1例を経験したので報告する.
    症例は82歳,男性.発熱と腹痛を主訴とし総ビリルビン,胆道系酵素の上昇,IgG4値の上昇を認めた.造影CT検査では総胆管,肝内胆管の拡張があり,上腸間膜動脈根部から末梢12cmの範囲にわたり動脈周囲を取り囲むような濃染像を認めた.胆道造影で総胆管拡張,下部胆管の狭窄像を認めたが,胆汁細胞診は陰性であり,上腸間膜動脈周囲の腫瘤にたいするEUS下穿刺吸引細胞診でも悪性所見は認められなかった.上記により後腹膜線維症を伴ったIgG4関連硬化性胆管炎を疑い,ステロイド治療を行った.腫瘤は縮小傾向を示すも胆管ステントの度重なる閉塞のため胆管空腸吻合を施行した.胆管内腔の生検では線維化とIgG,IgG4染色陽性の形質細胞の浸潤が認められ,悪性像は認められなかった.
  • 竹本 圭宏, 榎 忠彦, 岡 一斉, 重田 匡利, 桂 春作, 濱野 公一
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3646-3650
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    下行結腸癌を伴った左側胆嚢に対して腹腔鏡下胆嚢摘出術および結腸部分切除術を施行した1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.症例は60歳代の男性.術前検査では左側胆嚢を指摘できなかったが,術中所見で肝円索の左側に胆嚢を認め左側胆嚢と診断し,腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.肝鎌状間膜に穴を開け心窩部からの鉗子を肝円索の左右両方で操作可能とし,安全に手術を行った.続いて,下行結腸癌に対して腹腔鏡下に下行結腸部分切除術を施行した.左側胆嚢は内臓逆位を伴わず,肝円索の左側に胆嚢が位置する状態であり,本症例は右肝円索および右門脈に臍部を有する肝内門脈分枝異常を伴った左側胆嚢であった.
  • 吉富 宗宏, 御鍵 和弘, 赤須 玄, 奥田 康司, 木下 壽文, 内藤 嘉紀
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3651-3655
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    胆管内腔の乳頭状増生,粘液過剰産生を伴い,明確でfibrovascularな核を有し胃および腸上皮化成,MUC2やCK20の発現を特徴とした疾患概念がintraductal papillary neoplasm of the bile duct(IPN-B)として注目されている.症例1)症例は65歳男性.S4肝内胆管癌の肝門部浸潤型と診断し拡大左葉切除,尾状葉切除,肝外胆管切除施行した.病理組織学検査ではintraductal papillary neoplasm of the bile ductの診断であった.症例2)症例は49歳女性.肝門部胆管癌の診断にて肝左3区域切除,肝外胆管切除,胆管吻合術施行した.病理組織学検査ではintraductal papillary neoplasm of the bile ductであった.今後はIPN-Bを念頭においた治療を行っていく方針である.
  • 宇野 秀彦, 三橋 登, 鈴木 大亮, 大塚 将之, 木村 文夫, 宮崎 勝
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3656-3661
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は49歳,女性.平成17年2月上腹部痛にて当科紹介入院.血液検査ではCA19-9が1,196U/mlと上昇を認めた.腹部超音波検査では胆嚢体部に40mm大の乳頭状腫瘍を認めた.腹部CTでは胆嚢内に造影効果をもつ乳頭状腫瘍を認め,#12cリンパ節は12mm大と腫大を認めた.MRCPにおいて,腫瘍は胆嚢内に認めるものの,胆管の狭窄像は認めなかった.腹部血管造影では,胆嚢動脈領域に腫瘍濃染,encasementを認めた.以上よりss以深胆嚢癌の診断で,肝中央下区域切除・肝外胆管切除・肝管空腸吻合術を施行した.摘出標本肉眼像にて胆嚢内は黄色の粘液で満たされていた.病理像では中分化型管状腺癌でありss,pT2,pN2,Stage IIIであった.術後経過は良好で術後28日で退院し,術後4年現在無再発生存中である.粘液産生胆嚢癌は本邦で自験例を含め19例と稀な疾患である.若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 鈴村 和大, 山中 潤一, 飯室 勇二, 矢田 章人, 安田 潤, 藤元 治朗
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3662-3665
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    胆嚢原発の印環細胞癌の1例を報告する.症例は66歳の女性で,心窩部痛を主訴に近医を受診した.腹部超音波,CTにて胆嚢内にポリープ様の病変を認めた.胆嚢ポリープまたは胆嚢癌疑いにて当院入院.腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.切除標本では不整な隆起性病変を認め,病理組織診断にて印環細胞癌を認め漿膜下層に浸潤していた.胆嚢癌の診断を得たため,根治手術を目的として肝S4a,5切除,D2リンパ節郭清を行った.術後合併症は認めず,病理組織検査上も癌の遺残はなかった.術後27カ月の現在,無再発生存中である.胆嚢印環細胞癌はまれであり,本邦での切除報告例は検索しえた限りで自験例を含め14例に過ぎない.若干の文献的考察を加え報告する.
  • 西塔 拓郎, 辻江 正徳, 宮本 敦史, 中森 正二, 辻仲 利政, 眞能 正幸
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3666-3670
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は57歳,男性.左側腹部腫瘤を主訴に近医を受診し,画像検査で膵悪性腫瘍が疑われ,当院を受診した.腹部CTで左側腹部に膵体部に連続する径15cmの壁肥厚を伴う嚢胞性腫瘤を認めた.FDG-PETでは同部位に異常集積を認め,腹膜播種も疑われた.経皮的穿刺吸引細胞診では膵内分泌腫瘍が疑われた.また入院後,巨大腫瘍が原因と思われる意識消失発作や貧血の進行を認めた.術前診断で腹膜播種が疑われたが,内分泌腫瘍との診断であったこと,および巨大腫瘍に伴う臨床症状が出現したことより,外科的切除を行う方針とした.術中の播種病変の迅速病理検査で膵内分泌腫瘍との確定診断が得られ,膵体尾部切除・横行結腸部分切除・小腸部分切除を施行した.病理検査では高分化型神経内分泌癌と診断された.術後3カ月目に腹膜播種が再発,5カ月目に肝転移が出現し,化学療法を施行するも,術後1年1カ月後に永眠された.
  • 中井 肇, 村田 年弘, 上塚 大一, 宇田 征史, 川真田 修, 太田 保
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3671-3675
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)と通常型浸潤性膵管癌を同時性に認めた4症例を経験した.IPMNは全症例,膵管内乳頭粘液性腺腫であり,合併した浸潤性膵管癌はStage III2例,IVa1例,IVb1例と進行症例であり,3例が2年以内に死亡し,予後不良であった.IPMNには他臓器の悪性腫瘍を合併する傾向のあることが知られているが,さらにIPMNと通常型膵癌が同時性,異時性に合併した症例の報告も最近散見される.IPMNの10%に通常型膵癌が合併すると報告されている.当科の4症例はすべてその発見動機が,浸潤性膵管癌による症状あるいは画像所見であり,すでに進行した状態での治療となり,その予後も不良であった.IPMNがFollow upされていれば,その予後も違っていただろうと予測される.IPMNの注意深い経過観察が早期膵癌の発見につながるのではないかと考えられた.
  • 中川 智恵, 佐藤 浩一, 前川 博, 櫻田 睦, 折田 創, 小松 義宏, 山野 三紀, 和田 了
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3676-3679
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は30歳,女性.生来より右上肢に海綿状血管腫を認めていた.体重増加と腹部膨満感を主訴に当院救急外来を受診.血液検査上,高度の貧血,血小板減少および凝固能異常認め,DICと診断された.精査にて巨大脾腫を認め,その破裂による腹腔内出血と診断し,緊急開腹脾摘出術を施行.病理組織診断より,脾血管腫症と診断され,先天性海綿状血管腫を合併していることから,全身性血管腫症の一部分症と考えられた.全身性血管腫症は非常に稀であるが,腹腔内出血をきたし,慢性的なDICを合併する危険性があることから早期の診断と適切な治療が必要である.また他臓器の血管病変を合併する可能性もあることから,慎重な経過観察が重要である.
  • 小出 紀正, 吉田 克嗣, 久納 孝夫, 尾上 重巳, 鳥本 雄二
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3680-3683
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    尿膜管臍瘻に対し腹腔鏡下尿膜管遺残摘出術を行った2例を経験したので報告する.症例1は23歳,男性.症例2は17歳,女性.2例とも臍炎を発症し来院した.保存的治療を行い,その後腹腔鏡手術を行った.気腹下の3本ポートで行った.左右の内側臍ひだを切離し,尿膜管の膀胱側は充分剥離し結紮切離した.臍側は症例1では臍炎が持続していたので臍を切除し形成した.症例2は感染がコントロールされていたので,尿膜管を充分剥離し体内で結紮切離した.自験例では吸収糸による体内結紮で切離を行い,腹腔内に異物を残さないで低コストで行えると考えられた.
  • 堀池 正樹, 池辺 孝, 寺倉 政伸
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3684-3688
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    患者は41歳,男性.1999年に臍周囲膿瘍にて近医を受診,尿膜管遺残を疑われたが抗菌薬点滴にて改善したためそのまま経過観察していた.2008年8月29日に再び臍周囲膿瘍を認め当院受診.瘻孔造影にて臍尾側に限局した小腔を認め,瘻孔造影後腹部CTにて臍尾側より膀胱側に腹壁に密着した索状構造物を確認し尿膜管遺残症と診断した.繰り返す臍炎を認め患者の強い希望もあり2008年10月16日腹腔鏡下にて尿膜管摘出術を施行した.術後経過は良好で手術翌日に軽快退院となった.術後病理組織学的検査にて膀胱側のみ円柱上皮で覆われた尿膜管組織を認め臍側では線維性組織のみから構成されていることがわかった.
    腹腔鏡下尿膜管遺残摘出術施行例の報告は本邦では23例であった.適切な術野確保のためポート挿入位置を工夫した.さらに臍尿膜管移行部切除操作に工夫を加えることで尿膜管全体を安全かつ確実に摘出できたので文献的考察を加え報告する.
  • 藤 浩明, 水野 礼, 森 友彦, 伊東 大輔, 古元 克好, 小切 匡史
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3689-3693
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,女性.20年前に右卵巣破裂にて子宮全摘術および両側付属器切除術,10年前に骨盤腔の腫瘍(病理診断は滑膜肉腫)に対して腫瘍摘出術の既往がある.下腹部違和感を主訴に外来受診し,画像検査にて腹腔内腫瘍を認めたため,滑膜肉腫の再発と考え腫瘍摘出術を行った.しかし病理検査の詳細な検討によって今回の腫瘍組織は20年前の卵巣破裂の原因であった卵巣顆粒膜細胞腫と同様の組織であることが判明し,最終的には今回の腫瘍は卵巣顆粒膜細胞腫が10年後に腹腔内再発し,再発巣摘出後更に10年後に腹腔内に再再発したものと考えられた.婦人科疾患の既往がある患者の腹腔内腫瘍においてはたとえ年数がたっていても顆粒膜細胞腫の再発などの婦人科疾患に関連した病変も鑑別診断に入れるべきである.
  • 舛田 誠二, 藤村 昌樹, 佐藤 功, 弓場 孝郁, 沖田 充司, 高原 秀典
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3694-3698
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    内ヘルニアはまれな疾患で,中でも大網裂孔ヘルニアはその3%に過ぎず,特徴的な臨床所見に乏しく,診断治療の遅れから手術時腸管壊死となっていることも多い.今回われわれは,術前診断を得たうえで腹腔鏡下手術により整復,修復した大網裂孔ヘルニアによる絞扼性イレウスの1例を経験したので報告する.症例は88歳の女性.右大腿骨骨折で当院整形外科に入院中の平成20年2月下旬夜嘔吐,腹痛が出現した.翌朝腹部CTで大網裂孔ヘルニアによる絞扼性イレウスと診断し同日緊急腹腔鏡下手術を行った.小腸は切除不要であった.一般に大網裂孔ヘルニアの術前診断は困難であるとされているが,本例ではMultidetector row CT(MD-CT)により診断が可能であった.しかし確診は得られずとも,内ヘルニアが疑われた場合,診断を兼ねた腹腔鏡下手術を行うことは有用であると考える.
  • 藤山 准真, 中島 晋, 福田 賢一郎, 増山 守, 馬場 正道
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3699-3703
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は32歳,女性.心窩部痛を主訴に近医受診し腹部超音波検査,腹部CT検査で腹腔内腫瘤を指摘され,精査加療目的で当院紹介となった.腫瘤は35×30mm大で大網に局在していた.腹腔内腫瘤の確定診断を得るために臍下縁1カ所のみに25mm横切開をおいた単孔式腹腔鏡下手術を施行した.切除された腫瘤は,病理組織学的にCastleman's disease,hyaline vascular typeと診断された.術後経過は良好で手術後の7日目に軽快退院となった.小さな腹腔内腫瘤を診断することは非常に困難である.確定診断・治療のための単孔式腹腔鏡下手術は低侵襲で術後回復が早く,術後疼痛や美容面においても非常に有用な術式と考えられた.
  • 古元 克好, 水野 礼, 森 友彦, 伊東 大輔, 小切 匡史
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3704-3708
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    10例の急性上腸間膜動脈閉塞症例を検討した.術前診断に有用と考えられたのは腹部CTにおけるsmaller SMV signで,単純CTでも指摘できた.全例が小腸大量切除と大腸部分切除を必要とし救命例6例の平均残存小腸長は75cmで,うち中心静脈栄養を離脱しえた4例は95cm,離脱しえなかった2例は35cmであった.代表例として,中心静脈栄養を離脱できずにいる1例について報告する.68歳男性,腹痛を主訴に来院し腹部単純CTでsmaller SMV signを認め,さらに14時間後のCTで上腸間膜動脈血栓が明らかになったため,発症28時間後に手術を行った.残存小腸が20cmで経口摂取が不可能なため在宅中心静脈栄養中だが,カテーテル感染を繰り返し24回の入れ替えを行っており必ずしも良好なquality of lifeではない.5年以上生存しておりこのような例はまれであるが,肝,腎障害や高カルシウム血症も経験しており短腸症候群の管理の困難さを痛感している.
  • 加藤 洋介, 尾山 佳永子, 新田 佳苗, 原 拓央, 野澤 寛, 大村 健二
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3709-3712
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,女性.右腰背部の腫瘤を主訴に受診し,腹部CTにて上腰ヘルニアと診断された.全身麻酔下で,左側臥位にて手術を行った.腹横筋腱膜の断裂部をヘルニア門として,後腹膜脂肪組織が脱出していた.Direct Kugel Patchを用いてヘルニアを修復した.人工材料を用いた腰ヘルニア修復手術の報告例が散見されるが,Direct Kugel Patchを用いた修復は本例が初めての報告であり,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 二宮 豪, 石榑 清, 山村 和生, 加藤 公一, 平井 敦, 黒田 博文
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3713-3717
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は83歳,男性.10年前からの左腰部の腫瘤を主訴に2008年11月当院外来を受診した.左腰部に立位で脱出し,腹臥位で消失する軟腫瘤を認めた.MRI検査で,後腹膜の脂肪組織が左腰部の筋欠損部より皮下に脱出する所見を認めた.腰ヘルニアの診断のもとに,2009年1月手術を施行した.手術所見では,第12肋骨,下後鋸筋,内腹斜筋,腰方形筋に囲まれた上腰三角部に径2cmのヘルニア門を認め,呼吸性に脱出を繰り返す脂肪組織が存在した.周囲組織が脆弱であったため,PHSを用いて修復した.腰ヘルニアは本邦では稀な疾患で,従来腹斜筋群と背側筋群を縫合するPetit手術が行われることが多かったが,近年はtension-freeの概念からMesh plug,PHS,Kugel patchなど人工物を用いた修復の報告例が増えてきている.今回PHSにて修復した左上腰ヘルニアの1例を経験したので報告する.
  • 長嶺 弘太郎, 亀田 久仁郎, 中川 和也, 徳久 元彦, 盛田 知幸, 久保 章
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3718-3723
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    患者は57歳,女性.左腰背部膨隆を主訴に平成19年9月当院に受診され,術前CT,MRIの画像所見で左上腰ヘルニアと診断された.平成20年3月下旬全身麻酔下で手術:メッシュプラグ法による上腰ヘルニア根治術を施行した.膨隆部の中心を通る横切開を置き,広背筋中央を分割し下層に到り,上腰三角内,腹横筋腱膜に直径2cmの円形の欠損部がありそこから径6cm大の脂肪塊が突出していた.Mサイズプラグを欠損孔に挿入し腹横筋腱膜と固定した.さらにオンレイパッチをトリミングして上腰三角を覆うように固定した.術後経過は良好で術第5病日に退院され,術後1年3カ月経過した現在再発を認めていない.近年tension-freeの概念に基づいた人工材料による修復術の報告が増しており,本例では当施設で最も馴れていると考えられるメッシュプラグ法を用いて修復しえた.
  • 吉川 智宏, 小鹿 雅博, 星川 浩一, 青木 毅一, 遠藤 重厚
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3724-3727
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    膀胱ヘルニア,閉鎖孔ヘルニアは各々稀な疾患である.今回,無症状の膀胱が嵌入した閉鎖孔ヘルニアを経験したので報告する.
    症例は96歳,女性.発熱にて当院受診.血液検査,胸部レントゲンで異常を認めず,感染源精査のために施行した腹部単純CTで右閉鎖孔ヘルニアを認めた.腸管の拡張を認めなかったため,膀胱が嵌入した閉鎖孔ヘルニアを疑い,逆行性膀胱造影を施行した.造影後の腹部CT,レントゲンで右閉鎖孔に嵌入した膀胱が造影されたため,膀胱を嵌入臓器とした閉鎖孔ヘルニアと診断した.逆行性膀胱造影で嵌入した膀胱内へ容易に造影剤が流入したこと,ヘルニア自体が無症状であり,熱源とは関係なかったために,年齢,全身状態を考慮して手術は施行せず,経過観察とした.過去に膀胱が嵌入した閉鎖孔ヘルニアの報告は無く,本邦第1例の報告である.
  • 小久保 健太郎, 関野 誠史郎, 阪本 研一
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3728-3731
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は84歳,女性.1年前より繰り返す右鼠径部痛で整形外科に通院していた.数日前より強い右鼠径部痛を認め,精査目的で施行した骨盤部MRI・CT検査で右閉鎖孔に嵌入する軟部組織陰影を認め当科に紹介された.Howship-Romberg signは陽性で,右閉鎖孔ヘルニアと診断し緊急手術を考慮したが,入院直後に症状は消失したため,再度腹部CT検査を施行したところ,閉鎖孔の軟部組織陰影は消失しており自然還納されたものと診断した.後日,待機的に鼠径法でDirect Kugel Patchを用いて根治術を施行した.Patchが閉鎖孔を十分に覆っていることを確認するために腹腔鏡を併用した.本法は,鼠径ヘルニア修復術と同様の術式であるが,閉鎖孔ヘルニアに対しても,閉鎖神経と動静脈の損傷リスクの少ない低侵襲手術として有用であると考えられた.
  • 吉田 充彦, 林 伸一, 鈴木 弘文, 山本 和夫, 山森 秀夫, 宮崎 勝
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3732-3736
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,男性.右鼠径部・陰嚢痛を主訴に来院した.来院時,陰嚢は20cm×15cm以上に腫大し,発赤,腫脹を伴っていた.腹部CT検査にて陰嚢内に腸管像を認め,また,採血結果上,炎症の高値を認めたため,鼠径ヘルニア嵌頓と診断し緊急手術を施行した.手術所見ではヘルニア嚢内に回腸,回盲部,上行結腸の脱出を認め,さらに炎症を伴った虫垂を認め,虫垂のヘルニア嚢との癒着を認めた.陰嚢内発症急性虫垂炎いわゆるAmyandヘルニアと診断した.
    巨大鼠径ヘルニアを放置することによる合併症に鼠径ヘルニア嵌頓があることはわれわれは慮意しているが,Amyandヘルニアが発症する可能性もあることも念頭に入れておく必要があると考えられた.
  • 金 伯士, 金丸 仁, 横山 日出太郎, 本多 正幸
    2009 年 70 巻 12 号 p. 3737-3740
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は74歳,男性.平成18年5月,4カ月前から徐々に増大する左鼠径部の皮下腫瘤を主訴に来院.画像診断にて血腫と診断し穿刺吸引を行ったが,外来経過中に再び増大を認めた.病理結果,臨床所見から慢性拡張性血腫(chronic expanding hematoma,以下CEH)と診断し,摘出術を施行.術後経過良好であったが2カ月目頃から再び増大する血腫を認めた.前回手術にて残存したCEHの再燃と診断し,再手術を施行した.再手術後,1年7カ月の経過で再燃は認めておらず,治癒には完全切除が必要であった.また,病理組織学的検索にて,アミロイド沈着を認め,慢性的な炎症性刺激が病態に関与することの傍証を得た.
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