日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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70 巻, 8 号
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綜説
  • 田中 肖吾, 山本 隆嗣, 石原 寛治, 渡辺 千絵, 藤井 祥貴, 野沢 彰紀, 上西 崇弘, 福富 經昌, 藤井 弘一, 大野 耕一
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2257-2264
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    胃切除後空腸重積症は稀な疾患でその臨床的特徴は明らかでない.今回われわれは,胃切除後20年目に発症したBraun吻合部腸重積症の1例を報告し,近年の邦文報告28例とともに集計的検討を行った.自験例は60歳台,女性.20年前に胃癌に対し胃亜全摘術,結腸前式BillrothII法再建,Braun吻合付加施行.嘔吐・吐血,腹部腫瘤の精査にて腸重積症と診断し,緊急開腹した.Braun吻合部から肛門側10cmの輸出脚空腸が逆行性に輸入脚まで重積していた.用手的整復が可能であった.29例の集計的検討では,全例胃切除後数年経て発症していた.発症時年齢は疾患別で差はなかったが,潰瘍患者は癌患者より胃切除時から発症までの期間が長かったことより,加齢が誘因の一つと考えられた.全例腹部CT検査で術前診断が可能であった.亜全摘術術後21例中,結腸前式BillrothII法再建,Braun吻合付加例が12例(57%)と最多であった.27例(93%)が逆行性であった.発症早期に開腹を行っても腸管切除が必要な症例も多かったが,予後は良好であった.
原著
  • 齋藤 善広, 武藤 大成, 浅沼 拓, 堀越 章, 土原 一生
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2265-2270
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    公立学校の職域病院として,過去8年間に15,224例のマンモグラフィ(以下MMG)併用検診を行った.対象は東北6県の教職員であり,50歳代以下が90%以上,49歳以下が約半数を占めた.要精検率は3.8%,発見乳癌症例が55例で発見率が0.36%,陽性反応的中率が9.5%であった.発見乳癌(MMG検診群)の21.8%が石灰化症例であり,腫瘤症例の平均腫瘍径が1.6cm,Stage0とIで82.7%を占めた.比較の対照とした同時期の外来受診群の平均腫瘍径は2.5cm,Stage0とIが49.6%と較べ,MMG検診群は有意に早期乳癌が多かった.MMGの検出率は腫瘤症例の76.7%であり,視触診の86.0%より低く,若年者の多い職域検診には両者の併用とともに超音波の併用を考慮する必要があると思われた.
臨床経験
  • 二村 浩史, 山田 雅恵, 山田 哲
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2271-2275
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    目的:甲状腺癌頸部再発のため経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)や経皮経食道胃管挿入術(PTEG)が不能な症例に対する開腹胃瘻造設に,交換用イディアルボタン®を用いて安全かつ簡便に行えるよう工夫をしたので報告する.手技:ボタンのバンパー部側孔へガイドワイヤーを誘導の後,オブチュレーターで直線化し胃内に挿入した.術後バンパー埋没症候群や腹膜炎防止のため胃壁挿入部を吸収糸で巾着縫合2針,胃を腹壁に4点固定した.術後早期の経腸栄養開始のため,ガイドワイヤーに沿ってバンパー部側孔を経由して14Frサンプチューブを挿入した.交換は,ガイドワイヤーを挿入しオブチュレーターを用いて交換,透視下に胃内であること,腹腔内に漏れが無いことを確認した.結語:PEG,PTEG不能症例に対する開腹胃瘻造設に交換用イディアルボタン®を用い工夫することで,安全に早期から経腸栄養を開始でき,また交換も安全かつ簡便に行うことができた.
  • 渋谷 雅常, 寺岡 均, 中尾 重富, 柏木 伸一郎, 玉森 豊, 新田 敦範
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2276-2280
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    2001年1月から2008年12月までの過去8年間に当院で経験した大腸癌穿孔症例10例に関して臨床病理学的特徴,手術術式および予後について検討した.リンパ節郭清を施行した5例には死亡例はなく,郭清を施行しなかった5例中1例に死亡が認められ,リンパ節郭清の有無は術後死亡率に関与しないという結果が得られた.また,リンパ節転移を認めた症例は5例あり,転移率は50%と高かった.予後に関しては比較的良好で,術中死,他病死,stageIV症例を除いた6例が現在も生存中である.
    大腸穿孔性腹膜炎の死亡率は一般に高いとされるが,大腸癌穿孔性腹膜炎に対する緊急手術であっても治癒切除例は長期予後を期待できる可能性もあるため,患者の状態を総合的に判断し可能な限りリンパ節郭清も含めた根治性の高い手術を目指すべきと考えられた.
  • 田代 浄, 山口 茂樹, 細沼 知則, 石井 利昌, 佐藤 貴弘, 小澤 修太郎
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2281-2285
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    3例の腹腔鏡下Hartmann手術を経験したので報告する.症例1:75歳,男性.Rb直腸癌で透析中,多量腹水,心臓弁膜症.症例2:82歳,男性.Rb直腸癌で脳梗塞,重度認知症.症例3:81歳,女性.RS直腸癌で高度肝硬変,多量腹水,糖尿病.当院開院後より大腸癌切除を施行した463例のうちHartmann手術は23例(4.9%)に施行し,腹腔鏡手術は3例であった.直腸癌の腹腔鏡下手術の適応はRS:~T3,Ra/Rb:~T2症例とした.平均年齢は79.3歳,平均腫瘍径は42mm,深達度T2:2例,T3:1例で,平均手術時間は249分,平均出血量は24g.術後合併症は1例(術後出血)で保存的に軽快した.ドレーン留置期間は平均8日間,食事開始は全例術後3日,術後平均在院日数は14.3日であった.消化管再建を回避せざるを得ないハイリスク症例に対し,腹腔鏡下Hartmann手術は低侵襲であり安全に行うことができた.
症例
  • 長谷川 聡, 千島 隆司, 木村 万里子, 清水 大輔, 石川 孝, 市川 靖史
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2286-2290
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は50歳,女性.平成19年に左腋窩腫瘤に気づき,徐々に増大したため平成20年1月皮膚科を受診したところ,1cmの粉瘤の診断で摘出術を受けた.病理診断で乳管内成分を伴う浸潤性乳管癌を認めた.エストロゲン受容体,プロゲステロン受容体は陽性で,HER2は陰性であった.以上から腋窩副乳癌と診断された.深部断端陽性が疑われ,追加切除目的に当科を紹介受診した.手術は瘢痕部を含めた追加切除と腋窩リンパ節郭清を行った.皮膚欠損部が広範であり,単純閉鎖では術後瘢痕拘縮が予想されたため,広背筋前縁からの局所皮弁を用いて腋窩形成を行った.癌の遺残,リンパ節転移はなかった.リハビリテーションを必要としたが,左肩関節の運動制限は認めない.術後補助療法は施行せず,現在,無再発で外来経過観察中である.
  • 永島 琢也, 諸星 隆夫, 五来 厚生, 中沢 佳穂子
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2291-2294
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は34歳,男性.割り箸を飲み込んで喉が痛いと訴え,当院受診.胸部エックス線写真で異常を認めず,上部消化管内視鏡検査では下咽頭の裂創を認めるのみであり,経過観察となった.2日後,発熱,頸部腫脹,咽頭痛の増強があり再受診.CTで縦隔気腫と箸と思われる構造物を認めた.同日縦隔ドレナージ,異物除去手術を施行.下咽頭の穿通創に関しては,硬性食道鏡を用いながら穿通部位を確認し,縫合閉鎖した.術後縦隔炎の再燃は認めず,術後19日に退院となった.
    迷入した木片異物の同定は,エックス線写真では不可能である.CTが最も有用であるとの報告があるが,撮影条件を工夫しながら撮影することが重要と考えられた.
  • 岡山 尚久, 笠原 勝彦, 竹口 友有子, 鎌田 聡
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2295-2298
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は33歳,男性.2007年10月頃より発熱が持続したため,近医にて内服加療受けたが改善せず,当院紹介受診となった.入院時血液培養にてメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)検出し,心エコーにて三尖弁前尖に疣贅認めたため,感染性心内膜炎と診断.抗生剤加療行ったが,三尖弁逆流増悪し,炎症反応改善も認めず,内科的コントロール不良と判断され,手術適応となった.2008年1月手術施行.三尖弁前尖には疣贅が広範に付着しており,可及的に切除した.前尖が約半分程度欠損したため,自己心膜補填し,人工腱索用いて再建行った.術後,三尖弁逆流は軽度で,炎症の再燃認めず,良好に経過中である.
    感染性心内膜炎では,高度な弁破壊のため,弁形成術が困難となる場合があるが,自己心膜,人工腱索を用いることで,弁形成術の適応を拡大し得ると考えられた.
  • 吉田 俊人, 内藤 祐嗣
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2299-2302
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    61歳,女性.自宅にて背部痛を自覚し安静にしていたところ,左片麻痺に家族が気付き救急搬送.A型大動脈解離ならびに脳梗塞と診断され当院へ搬送された.JCS10.右上肢血圧70台,左上肢血圧110台.左片麻痺.CTでは上行大動脈から腸骨動脈にかけての解離と,腕頭動脈から右総頸動脈にかけての閉塞を認め,同日緊急手術を行った.左腋窩・左大腿動脈送血,右房2本脱血で人工心肺開始.entryは上行大動脈.腕頭動脈は血栓閉塞した偽腔に圧排され閉塞.フォガティカテーテルを真腔より挿入して偽腔の血栓を可及的に除去すると右総頸動脈より逆流が得られた.上行大動脈置換術を行った.術後3病日より左上下肢の動きが現れ,その後自力歩行が可能となった.術後33病日に自宅退院.左片麻痺を呈したA型大動脈解離が後遺症なく退院した1例を報告する.
  • 高橋 英雄, 小林 裕之, 田村 亮, 細谷 亮, 伊藤 亨, 今井 幸弘
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2303-2308
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    8年間でわれわれが経験した9例の腹部内臓動脈瘤破裂症例について検討し,文献的考察を加えて報告する.破裂動脈瘤の内訳は,中結腸動脈3例,右結腸動脈2例,膵十二指腸動脈,第1空腸動脈,左胃動脈,脾動脈がそれぞれ1例であった.確定診断には血管造影を行った.8例は引き続きTAE(Transcatheter arterial embolization)を試みた.うち3例は止血に成功し,4例は手術が必要であった.術式は,動脈瘤切除1例,動脈瘤結紮2例,動脈瘤を含めた腸管切除2例であった.9名中7名が生存し,2名が死亡した.経過中,1例に動脈瘤の再発,出血を認めたが,TAEで止血可能であった.病理学的に検討できた症例は3例で,全例で分節的動脈中膜融解(SAM;Segmental arterial mediolysis)と診断された.われわれは腹部内臓動脈瘤破裂を疑った場合,まず血管造影を行い,治療はTAEを第一選択としている.また,動脈瘤治療後にはMDCT(Multi-detector CT)での経過観察を推奨したい.
  • 椎野 王久, 坂本 和裕, 山仲 一輝, 関戸 仁
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2309-2314
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例1は25歳,男性.喫煙指数360.検診で胸部X線上異常影を指摘され来院.胸部CTで空洞を伴う多発結節影を認めたため胸腔鏡下肺生検を施行し,肺Langerhans細胞肉芽腫症(pulmonary Langerhans' cell granulomatosis,PLCG)と診断.禁煙3カ月後,画像上多発結節影は消失した.症例2は30歳,男性.喫煙指数240.左胸痛で近医受診し胸部X線で左気胸と診断され当院紹介.左気胸は安静にて軽快したが胸部CTで多発結節影および空洞性病変を認めたため胸腔鏡下肺生検を施行しPLCGと診断.禁煙11カ月後,画像上多発結節影は消失,空洞性病変は縮小し,2年後の現在,気胸の再発なく経過中である.本疾患において胸腔鏡下肺生検が診断に有用であり,禁煙により病状の改善が期待できる.
  • 斉藤 元吉, 姉川 剛, 皆川 亮介, 長谷川 博文, 池部 正彦, 北村 昌之
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2315-2318
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は22歳,女性.職場検診の胸部X線写真にて右肺に境界明瞭な孤立性結節を指摘され当院内科を受診された.胸部CT検査にて右肺S6やや肺門部寄りに径1.5cm大の境界明瞭な腫瘍が認められ,肺過誤腫が最も疑われた.2年前の職場検診の胸部X線写真では指摘されていなかった.増大傾向であり悪性腫瘍も否定できなかったため,手術目的に当科に紹介された.胸腔鏡下に切除を試みたが,腫瘍の位置をはっきりと同定することが困難であったため,小開胸下に右肺S6区域切除術を行った.病理組織学的所見では,紡錘形細胞の増殖,リンパ球や形質細胞を主とする炎症細胞浸潤を認めた.免疫組織化学所見にて紡錘形細胞がALK(anaplastic lymphoma kinase)およびvimentine陽性であった.以上より肺原発の炎症性筋線維芽細胞腫瘍と診断された.肺原発の炎症性筋線維芽細胞腫瘍は稀な疾患であり,今回われわれは若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 田口 泰郎, 津金 恭司, 河野 弘, 木村 充志, 竹之内 靖, 佐竹 立成
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2319-2323
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は81歳,男性.2006年5月に胸やけを主訴に近医を受診.上部消化管内視鏡検査で下部食道に2型の腫瘍を認め,生検で扁平上皮癌と診断され当院へ紹介受診した.当院で精査したところ,胸部下部食道より噴門部におよぶ腹部食道癌と診断された.2006年6月26日,右開胸開腹により下部食道切除,胃管再建を行った.切除標本の肉眼所見では2型の癌は全て扁平上皮癌と思われたが,病理組織学検査では扁平上皮癌だけでなく腺癌もみとめられた.扁平上皮癌は食道重層扁平上皮との連続性を有し,腺癌は噴門部胃粘膜との連続性が認められた.さらに両者には組織学的に明らかな境界があり移行像を認めないことより,食道胃接合部における食道扁平上皮癌と胃腺癌の衝突癌と診断した.
  • 平光 高久, 永田 二郎, 大屋 久晴, 大西 英二, 間瀬 隆弘, 橋本 昌司
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2324-2329
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    肺癌の胃転移の1例を経験したので報告する.症例は60歳,男性.胸部X線検査で異常陰影を指摘され,2001年2月,当院紹介となった.胸部CT,気管支鏡検査にて,右肺上葉腺癌と診断した.2001年3月に右肺上葉切除術を施行した.術後9カ月目にCEAの上昇を認め,CT,MRIで多発脳転移を認め,ガンマナイフを行った.その後,CEA値は正常化したが,2003年7月より再び急上昇を示した.positron emission tomography(以下PET),腹部CT,USにて,胆嚢,胃,横行結腸に接する充実性腫瘤を認めた.胆嚢転移の診断で手術を行った.胃前庭部大彎に腫瘤を認め,一部胆嚢への浸潤が疑われ,幽門側胃切除術,胆嚢合併切除を施行した.病理組織検査で,胃壁内に病変を認め,TTF-1免疫染色陽性であり,肺癌の胃転移と診断した.術後約4年4カ月経過するが再発転移を認めていない.
  • 杉本 貴昭, 平野 公通, 中井 紀博, 藤元 治朗
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2330-2335
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は74歳,女性.胆石,総胆管結石に対する治療目的にて当科入院.ERCP時に胃底部後壁に5cm大の粘膜下腫瘍を指摘された.血液検査で白血球数とCRPが高値であり,直接ビリルビン優位の黄疸を示した.腹部CTでは胃病変は造影効果を認め,GIST等の粘膜下腫瘍を疑った.胆嚢摘出,総胆管切石術を施行し,胃病変に対しては胃部分切除術を施行した.病理組織検査では,胃漿膜下に5cm大の固有筋層から漿膜面にかけて多数の好中球反応を伴う膿瘍形成と炎症性肉芽組織形成が認められ,胃壁膿瘍と診断した.今回,総胆管結石に合併した胃壁膿瘍の1例を経験したので報告する.
  • 竹林 正孝, 徳安 成郎, 豊田 暢彦, 野坂 仁愛, 若月 俊郎, 谷田 理
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2336-2340
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,女性.吐血を主訴に受診し,胃内視鏡検査にて,胃体上部前壁の粘膜下腫瘍から動脈性出血を認めた.内視鏡的止血が困難であったため,血管造影下のマイクロコイル動脈塞栓術で止血された.その後上部消化管造影検査および腹部CT検査では径5.5cmで高度な石灰化を示す胃壁外性腫瘤を認めた.胃gastrointestinal stromal tumor(以下GIST)を疑い開腹術を施行し,胃局所切除術を施行した.切除標本では大きさ5.3×4.6×4.3cmで非常に硬く,割面では高度な石灰化と硝子様変性を認めた.免疫組織学的検索ではc-kit陽性,CD34陽性,αSMA陰性,desmin陰性,S-100陰性でGISTと診断した.核分裂像は強拡大50視野に1個以下で低悪性度と判定した.術後17カ月現在再発はない.石灰化を伴う胃GISTの本邦での報告は本症例を加えて6例と少なく,GISTの悪性度との関連は不明である.若干の文献的考察を加え報告する.
  • 八木 康道, 澤崎 邦廣, 野手 雅幸
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2341-2346
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,女性.1996年に浮腫を主訴に近医を受診し,鉄欠乏性貧血と低蛋白血症を指摘された.胃内視鏡検査で胃全体に巨大皺壁を伴う胃ポリポーシスと十二指腸に脱出する巨大ポリープを認め,過形成性ポリープと診断され経過観察されていた.2005年12月より黒色便,嘔吐が出現し,前庭部の巨大ポリープによる幽門閉塞と診断された.保存的治療に抵抗性であったため外科的治療が必要と考えられ開腹手術を施行した.術中に漿膜外浸潤と腹膜播種巣が認められ,胃癌による癌性腹膜炎と診断し胃全摘術を施行した.病理組織検査にて胃癌を合併した胃限局性若年性ポリポーシスと診断した.一般に若年性ポリポーシスは非腫瘍性の過形成性病変であり癌化は少ないとされるが本疾患にかぎり癌の合併は高率であり,蛋白漏出性胃腸症や貧血に対する根治的治療として胃全摘術が必要と考えられた.
  • 小林 里絵, 今村 和広, 高見 実, 大島 哲, 松本 潤, 石澤 貢
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2347-2352
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    胃小細胞癌は極めて稀で発育進展が速く予後不良な疾患である.今回比較的長期生存が得られている胃小細胞癌の2例を経験したので報告する.症例1:80歳女性.卵巣癌術後経過観察中,上部消化管内視鏡検査にて前庭部小弯後壁に2型腫瘍を認めた.生検で胃小細胞癌と診断し幽門側胃切除術+D1β郭清を施行.病理組織学的所見はpT2(SS),ly2,v2,pm(-),dm(-),pN1(2/32:#4d,6),fStageIIだった.症例2:57歳男性.健診で噴門部に潰瘍を伴う粘膜下腫瘍様の病変を認めた.生検で胃小細胞癌と診断し胃全摘術+D2郭清,脾臓胆嚢合併切除術を施行.病理組織学的所見はpT2(MP),ly2,v1,pm(-),dm(-),pN1(1/17:#3),fStageIIだった.当院における胃切除症例2,566例中胃小細胞癌は2例であり,頻度は0.08%だった.2例は共にfStageIIで術後補助化学療法を行わず現在まで無再発経過観察中(3年2カ月,2年7カ月)である.若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 佃 和憲, 高木 章司, 池田 英二, 中原 早紀, 平井 隆二, 辻 尚志, 國友 忠義
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2353-2356
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,男性.検診発見の胃体小彎の2型病変で,生検により低分化腺癌と診断された.腹部CT検査において小彎側のリンパ節転移を認めたため,2群郭清を伴う幽門側胃切除術とビルロートI法再建を行った.病理組織学検査で原発巣は印環細胞癌,深達度pSMの診断であったが,転移リンパ節の組織像は小細胞癌でクロモグラニンA染色も陽性であった.リンパ節の組織像が原発巣とは異なるため肺小細胞癌など他癌からの転移の可能性も考慮し全身検査を行ったが,他癌の合併は認められなかった.転移リンパ節で組織型の変化した混合型の胃癌と考え,S-1による術後補助化学療法を行い,術後3年6カ月の現在まで再発を認めていない.
  • 吉村 文博, 金谷 誠一郎, 小森 義之, 櫻井 洋一, 宇山 一朗
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2357-2362
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,女性.消化管出血の診断で近医より当院紹介受診となる.CT,内視鏡検査にて下十二指腸曲の壁外性粘膜下腫瘍からの管腔内出血と診断した.内視鏡下に止血を行うも出血を繰り返し,入院3日後に吐血,出血性ショックを呈したために手術にて出血源である腫瘍を切除することとした.手術は気腹下に腫瘍を含めた腹腔鏡下十二指腸部分切除術を施行した.気腹開始後,血圧は上昇し術中バイタルサインは安定し,鏡視下に手術が可能であった.術後経過良好で術後16日目に退院となる.病理組織診断はgastrointestinal stromal tumorであった.
    気腹による腹腔内圧上昇は血圧を上昇させることが知られている.しかし出血性ショックに陥った症例に対する気腹下鏡視下手術は,術中の循環動態に大きく影響することから,その有用性については今後さらに検討が必要と考えられた.
  • 安江 英晴, 薄葉 輝之, 羽生 信義, 湯田 匡美, 岩渕 秀一, 阿部 光文
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2363-2366
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は30歳,女性.既往歴にvon Recklinghausen病(以下VRD)あり.10年前に,Vater乳頭部カルチノイドの診断で幽門輪温存膵頭十二指腸切除術施行(13b,17a,17bリンパ節転移陽性).術後8年目の経過観察中の腹部CT検査で大動脈周囲リンパ節(16b)の腫大を認め,その後の経時的な腹部CT検査で更なる腫大傾向を認めた.PET検査においても,同部位にFDP集積を認めたため,診断治療目的で手術となった.手術では腫大した数個のリンパ節を切除した.術後の病理組織学的検査で,Vater乳頭部カルチノイドのリンパ節再発と診断した.現在術後10カ月経過し,新たな転移・再発所見なく外来経過観察中である.
  • 山村 和生, 石榑 清, 林 直美, 加藤 公一, 平井 敦, 黒田 博文
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2367-2371
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は38歳,男性.腹痛を主訴に当院救急外来を受診した.腹部全体に圧痛あり,腹壁は板状硬であった.血清アミラーゼ高値であり.高度の代謝性アシドーシスを認めた.腹部造影CTで膵腫大,上腸間膜動脈本幹の狭細化,門脈内ガス像を認め,腸管壁の造影効果が不良であった.急性膵炎に伴った腸管壊死を疑い,緊急手術を施行した.下部小腸より右側結腸の血流障害を認め,同部を切除した.病理組織学的には,非閉塞性腸管虚血症(nonocclusive mesenteric ischemia:以下NOMI)と診断された.本邦におけるNOMIあるいは腸管壊死を合併した急性膵炎の報告は検索した限りでは5例と少ない.文献的考察を加えて報告する.
  • 三浦 卓也, 稲葉 行男, 森谷 敏幸, 滝口 純, 磯部 秀樹, 林 健一
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2372-2376
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は31歳の未婚女性で,26歳時より子宮内膜症の既往があり手術歴はない.2006年7月上旬,臍周囲部痛,嘔吐で来院.癒着性腸閉塞の診断でイレウス管を挿入し保存的加療をした.症状は軽快したもののイレウス管造影検査で回腸に狭窄を認めた.診断も含めて腹腔鏡下手術を施行したところ,回腸末端から50cm口側の回腸が子宮前面に癒着し屈曲していた.癒着を剥離し,腸管自体には肥厚や狭窄を認めず,閉塞は解除されたため腸管切除術は施行しなかった.病理組織学的検査所見で癒着組織に子宮内膜組織を認め,回腸子宮内膜症と診断した.術後補助療法としてLH-RHアゴニストを投与し,術後2年半無再発である.本邦報告49例では腸閉塞をきたした回腸子宮内膜症に対して全例に腸管切除術を施行しており,腸管切除術を行わなかった症例報告はない.腹腔鏡下癒着剥離術と術後ホルモン療法で加療した症例を経験したので,文献的考察を加え報告する.
  • 中村 謙一, 山本 真, 山本 紀彦, 門田 和之, 細田 洋平, 岡 博史
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2377-2381
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    Meckel憩室は時に穿孔や出血の原因となり得る稀な疾患である.今回われわれは,潰瘍穿孔を起こした若年者Meckel憩室穿孔の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.症例は13歳,男性.某年9月上旬夕方下腹部痛を主訴に近医受診.翌日腹痛が増悪し当院に救急搬送された.受診時,腹壁は硬で腹膜刺激症状が強く,採血で炎症反応高値であった.CTで消化管穿孔による腹膜炎像を認め緊急開腹手術を行った.開腹すると回盲部より約50cm口側にMeckel憩室を認め,中央部に大きな穿孔を認めたため憩室を含め回腸の楔状切除を行った.病理組織診断ではMeckel憩室の潰瘍底近くに胃底腺を認め異所性胃粘膜に潰瘍を形成し,穿孔をきたしたと思われた.Meckel憩室は稀な疾患であるが,時に原因不明の消化管穿孔や出血の原因となり得る為,若年者の急性腹症の一因として,常に念頭に置く必要があると考えられた.
  • 工藤 明敏, 原田 俊夫, 長沢 孝明
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2382-2387
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例1;64歳,女性.2004年9月上行結腸癌にて,結腸右半切除術を施行(fStageIIIa).腸閉塞およびCEA上昇を認めたため,大腸内視鏡検査を施行した.吻合部より5cm回腸に腫瘍を認め,2005年10月小腸切除を施行した.肝・肺転移を認め化学療法を施行したが,2008年5月死亡した.症例2;56歳,女性.2007年11月盲腸癌にて結腸右半切除術施行(fStageII).術後腸閉塞を繰り返したため2008年2月開腹し,吻合部口側30cmに腫瘤を認め,小腸切除術を施行.2009年3月脾転移に対し脾切除を施行した.症例1・2とも,病理所見より大腸癌の孤立性小腸転移と診断した.転移経路はリンパ行性または血行性と考えられた.小腸転移の領域リンパ節には転移がみられた.大腸癌と小腸転移が同時性に生ずることがあり,開腹時には入念な腹腔内観察が求められる.大腸癌孤立性小腸転移本邦報告の約半数は小腸切除後も生存しており,比較的予後は良いと思われる.
  • 川畑 方博, 井原 司, 松永 章, 井関 充及
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2388-2391
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は35歳,女性.子宮筋腫の診断にて平成20年5月12日子宮筋腫核出術施行.開腹時の所見で回腸末端より約80cmの回腸に漿膜面に球状に突出する径約2cmの腫瘍性病変を認め,小腸部分切除術を施行した.病理組織学的には乳頭状構造を示す高分化腺癌と類円形細胞が胞巣状,管腔形成ないしリボン状構造を呈すカルチノイドからなる混合型腫瘍であった.今回子宮筋腫手術時に偶然に発見された小腸カルチノイドと小腸癌が混在する腫瘍の1例を経験した.組織発生を考える上で興味深い症例と考え,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 後藤 裕信, 安井 昌義, 高見 康二, 池永 雅一, 三嶋 秀行, 辻仲 利政
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2392-2396
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は51歳,男性.2002年,肺腺癌に対して右肺上葉切除術を施行した(p-T1 N2 M0 pStageIIIA).術後3年間,UFT-E内服後,経過観察されていた.2007年7月,サーベイランス目的のCT検査で上縦隔リンパ節再発を疑われ,FDG-PETにて同部位のみ再発が確認されたため,放射線療法(60Gy)を施行した.2008年5月,血清CEA値が16.1ng/mlと上昇したが,胸腔内に再発は確認されず,FDG-PETを施行した.虫垂とその所属リンパ節にFDGの集積を認めた.腹部所見や炎症所見はなく,大腸内視鏡検査でも異常所見はなかった.虫垂悪性腫瘍を疑い,治療目的で腹腔鏡下回盲部切除術(D2郭清)を施行した.虫垂の病理組織検査所見は低~中分化型腺癌の診断であった.免疫染色にて腫瘍はTTF-1(+),CK7(+),CK20(-)であり肺癌の虫垂転移と診断した.肺癌の虫垂転移について文献的考察を加えて報告する.
  • 大橋 浩一郎, 王 孔志, 鈴村 和大, 斉藤 慎一, 岡田 敏弘, 藤元 治朗
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2397-2402
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,男性.当院内科で心筋梗塞の治療後に外来通院中であったが,2007年2月頃より右側腹部痛と微熱を認めていた.内服加療も改善傾向を認めないため当科受診となった.右側腹部に成人手拳大の発赤を伴う腫瘤を触知し,腹部超音波検査および腹部CT検査では回盲部に腫瘤および腹壁腫瘍を認め,大腸癌の腹壁穿破による腹壁膿瘍が疑われた.抗生剤投与での保存的加療を先行させ,炎症反応軽快後に手術を施行した.開腹所見では腹壁腫瘍を形成した盲腸癌であり,腫瘍および膿瘍を一塊とした右半結腸切除および腹壁合併切除を行った.術後の経過は良好で術後第20病日に退院した.現在術後1年半経過しているが再発は認めていない.腹壁膿瘍を形成する大腸癌の報告は本邦では比較的稀であり,文献的考察を加え報告する.
  • 佐々木 義之, 国枝 克行, 佐野 文, 田中 千弘, 長尾 成敏, 河合 雅彦
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2403-2407
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,男性.2008年4月突然の腹部激痛にて当院救急外来を受診した.来院時,腹部は板状硬であり,反跳痛を認めた.腹部CTにて小腸間膜の捻転,小腸壁内のガスを認めたが,腹水・遊離ガス像は認めなかった.以上より小腸の捻転による絞扼性イレウスと診断し,緊急手術を施行した.開腹にて,180cmにわたる小腸が,S状結腸を乗り越えS状結腸間膜に存在する3cmの裂孔を,その外側から内側へと貫通し,360度捻転し壊死をきたしていた.S状結腸間膜裂孔ヘルニアおよび小腸捻転による腸管壊死と診断し,小腸切除,裂孔の閉鎖を行った.術後第9病日に軽快退院した.S状結腸間膜裂孔ヘルニアはまれであり,検索しえた限りでは,本邦では12例の報告があるのみである.本症例を加えた13症例について検討を行い報告した.
  • 速水 克, 藤井 昭芳, 松本 匡浩, 木村 恒人, 荒武 寿樹, 亀岡 信悟
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2408-2415
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は51歳,男性.他院で急性虫垂炎と診断され手術目的に当院搬送され,緊急手術となった.手術所見では右側結腸の著明な炎症性変化と回盲部穿孔を認めた.また横行結腸に触診上腫瘍性病変が疑われ,右半結腸切除術+大量洗浄ドレナージを施行した.摘出標本では,右半結腸全域に周堤を持つ多発性潰瘍を認めた.病理で栄養型アメーバが検出され,アメーバ性大腸炎と確定診断.第13病日よりメトロニダゾール1,500mg/日内服を10日間行った.第30病日に施行した大腸内視鏡では,吻合部の肛門側に多発性潰瘍を認め,メトロニダゾール1,000mg/日内服10日間を追加し第49病日に退院した.1970年から2008年の劇症型アメーバ性大腸炎穿孔例は自験例を含め72例報告されており,これに若干の文献的考察を加え報告する.
  • 朝蔭 直樹, 原口 美明, 鈴木 貴久, 塚田 健次, 山本 哲朗, 小林 滋
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2416-2420
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,女性.24年前より全身性強皮症と診断されている.1年ほど前から直腸脱が出現し早急に増悪,立っているだけで超手拳大の腸管が脱出し当科を受診した.身長149cm,体重34kgと小柄痩せ型で顔面,手指に茶褐色の光沢を持った皮膚硬化を認めた.怒責診では約10cmの直腸が脱出し,脱出腸管は浮腫状であたかもソフトボール状に緊満していた.怒責時腹部CT検査を施行すると,脱出腸管壁内にガス像が認められ脱出腸管反転部内への小腸陥入を伴う直腸脱と診断した.手術は会陰式直腸S状結腸切除術(Altemeier手術)に肛門挙筋形成術を併施した.術後経過は順調で,現在術後1年半経過したが脱出はなく特に排便機能にも問題はない.全身性強皮症は結合組織の線維性硬化性病変を伴い,直腸脱の発症要因の一つと考えられた.本症例のような基礎疾患を有する場合,侵襲が少なく肛門挙筋形成も行えるAltemeier手術は有効であると思われた.
  • 川崎 誠康, 田中 麻紀子, 市川 剛, 小川 雅生, 藤尾 長久, 亀山 雅男
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2421-2425
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    肝門部および大動脈周囲リンパ節転移を有する横行結腸癌で,原発巣に対する根治度C手術の1年後に根治的リンパ節郭清を施行し,その後1年5カ月無再発生存中の1例を経験したので報告する.症例は79歳女性.2006年7月に右半結腸切除D3郭清と肝門部リンパ節のsamplingを施行.組織診断は低分化型腺癌,mp,n3,H0,P0,M1(肝門部リンパ節),stageIV,根治度Cであった.術後肝門部・大動脈周囲リンパ節遺残に対してS-1の内服を開始し,一旦PRとなるも,1年後同リンパ節の再増大を認めたため2007年7月に根治的肝門部・大動脈周囲リンパ節郭清を施行した.郭清リンパ節17個中no.8,12a,13,16aに計6個転移を認めた.郭清術後,化学療法は施行せずに1年5カ月経過する現在,再発徴候は認めていない.領域外リンパ節転移を有する結腸癌の治療において,他臓器転移がなく病変部が限局していることを見極めたうえでの根治的なリンパ節郭清術は意義があると思われる.
  • 岡田 貴幸, 佐藤 友威, 長谷川 正樹, 武藤 一朗, 青野 高志, 鈴木 晋
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2426-2431
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は43歳,女性.腹痛,発熱,下痢を主訴に来院した.CT上下行結腸の全周性の壁肥厚とそれに連続する腹壁膿瘍を認めた.下行結腸癌の穿孔による腹壁膿瘍と診断した.2日間の抗生物質投与で症状が悪化したため,緊急手術(左半結腸切除術,膿瘍ドレナージ術)を施行した.病理組織検査では未分化癌であった.免疫染色上神経内分泌マーカーは陰性であった.術後経過は順調であったが,結腸癌に対する補助化学療法を施行したにもかかわらず早期に肝転移再発を認め,術後7カ月目に死亡した.結腸未分化癌は全結腸癌の1%未満と稀で,極めて予後不良な組織型である.腹壁膿瘍を合併する結腸癌も極めて稀であり,報告例のほとんどが高分化腺癌あるいは粘液癌で,未分化癌の報告は自験例のみであった.
  • 竹本 研史, 光吉 明, 新藏 信彦, 財間 正純
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2432-2435
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は14歳,男児.感冒様症状を認めたのち心窩部痛と嘔気が出現し近医受診.保存的加療を行うも疼痛軽快しないため当院紹介入院となった.入院当日急性虫垂炎の術前診断にて手術を行ったが,術中所見にて回盲部の硬結と著明に腫大した虫垂を認め,回盲部切除術を施行した.病理組織学的所見は低分化腺癌─印環細胞癌,stageIIであったため,根治手術目的で再開腹にてD3郭清を伴う右半結腸切除術を施行した.術後予防的化学療法を行うも腹腔内再発を認め術後4年8カ月にて癌性腹膜炎にて死亡した.小児結腸印環細胞癌は極めて稀であり,本邦では自験例を含め16例の報告をみるのみである.
  • 本多 正幸, 金丸 仁, 前間 篤, 横山 日出太郎, 甲田 賢治
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2436-2441
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は76歳,女性.家族性大腸腺腫症により大腸全摘術をうけ,35年後に回腸人工肛門部に癌化を認めた.その5年後に高度の電解質異常による全身倦怠感で入院した.人工肛門部に結節性の巨大な腫瘍を認めたが全身転移はなく,これを切除し,術後は良好な経過をたどった.大腸全摘術後の回腸人工肛門部癌の報告は稀で,その発生機序ははっきりしていないが,原疾患に関わらず長期の人工肛門それ自体が癌発生のリスク因子であると考えられる.
  • 村岡 篤, 桒田 和也, 小林 正彦, 國土 泰孝, 立本 昭彦, 津村 眞, 溝渕 光一
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2442-2446
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は41歳,女性.平成18年4月,乳癌術前の超音波スクリーニングで肝臓の小腫瘤を指摘され,経過観察となっていたが,術後1年目の検査で肝腫瘤の増大が指摘され精査となる.臨床症状はなく,腫瘍マーカーを含む血液検査も異常を認めず,乳癌の再発兆候もみられなかった.腫瘤は超音波では辺縁が比較的明瞭で内部が低エコー,CTでは単純で低濃度,造影で早期に均一にかつ高度に濃染され,平衡相でやや淡く染められた.MRIではT1WIで低,T2WIで高信号,リゾビストを用いた造影T2WIで正常肝実質よりやや高信号を呈した.良性の肝腫瘍を疑ったが,確定診断にはいたれず,増大傾向と本人の意向のため腹腔鏡下肝部分切除術を施行.病理検査で毛細血管に類似した小血管の増生像を認め,海綿状血管叢が認められず,肝毛細血管性血管腫と診断された.本疾患は非常にまれな症例であるが,画像上造影剤で特徴的な像を示す興味ある肝癌類似疾患である.
  • 大畑 多嘉宣, 神山 俊哉, 中西 一彰, 横尾 英樹, 松下 通明, 藤堂 省
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2447-2451
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は68歳男性.40歳頃よりγ-GTPの高値を指摘されていた.2002年原発性胆汁性肝硬変(PBC)またはPBC+自己免疫性肝炎(AIH)疑いと診断され経過観察されていた.2006年12月,腹部USでS7に15mm前後の腫瘤影を認め,その3カ月後の精査施行により肝細胞癌と考えられ,2007年3月手術目的にて当科入院となった.血液検査所見で抗ミトコンドリア抗体,抗核抗体陰性であり,腹部CTで肝S7に,早期濃染し後期で低吸収域となる,最大径2.5cmの腫瘤性病変を認めたため,PBCに合併した肝細胞癌と診断し,肝拡大後区域切除術を施行した.肉眼上,癌部は黄色調の充実性腫瘍であり,肉眼型は単純結節周囲増殖型であった.病理組織学的所見は,腫瘍範囲中分化~低分化型肝細胞癌で,背景肝は新犬山分類でF3-4,A2程度の肝硬変であり,Scheuer分類IV期のPBCと診断された.
  • 重田 英隆, 近藤 真治, 山田 英貴
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2452-2457
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は74歳,女性.発熱と上腹部痛を主訴に当院を受診した.血液検査所見で炎症反応と肝胆道系酵素の上昇を認めた.腹部超音波検査およびCT検査で肝内胆管および総胆管の拡張を認めたため,閉塞性胆管炎の診断で経皮経肝胆道ドレナージ術が施行された.胆道造影で下部胆管に不整な狭窄像を認めたため,下部胆管癌と診断され幽門輪温存膵頭十二指腸切除術が施行された.肉眼所見で下部胆管に13×12mm大の顆粒状粘膜を認め,その部で粘膜は肥厚し全周性に狭窄していた.病理組織所見では胆管上皮に乳頭状構造を認め,軽度の再生異型は認めたが癌の所見はなく,adenomatous hyperplasiaと診断された.胆管上皮の過形成は前癌病変と考えられ,胆管癌に伴ってみられることがある.しかし本例のように限局性の胆管狭窄で発見される症例は稀であり,下部胆管癌との鑑別が問題となる.
  • 大谷 聡, 伊東 藤男, 押部 郁朗, 三浦 純一
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2458-2462
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    胆嚢結石症に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術において,胆嚢管を鉗子にて触診し遺残結石の有無を確認する手技は重要である.今回われわれはこの手技にて胆嚢管癌を発見した1例を経験したので報告する.症例は76歳,男性.主訴は右季肋部痛.胆嚢内に直径15mmの結石を1個認めたが胆道系に腫瘍を認めなかった.腹腔鏡下胆嚢摘出術時胆嚢管を鉗子にて触診したところ腫瘤を触知した.術中迅速病理診断にて乳頭腺癌の診断であったため胆管切除,肝管空腸吻合術を施行した.腹腔鏡手術は開腹手術と比較して直接臓器に触れることができない特異性を有する.しかし,鉗子を介しても触感の情報を得ることは可能かつ重要な要素であると考えられた.
  • 浅沼 史樹, 中村 理恵子, 金田 宗久, 首村 智久, 大作 昌義, 山田 好則
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2463-2469
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は54歳,男性.食後の腹痛,微熱を主訴として入院した.血液検査では,CRP,血清および尿中アミラーゼ,エラスターゼ1が高値であった.腹部CT検査で膵体部に1.5cm大の石灰化陰影を認め,周囲脂肪織の濃度上昇と液体貯留を認めた.MRI検査では膵体尾部の膵管が拡張しており,膵石の嵌頓による閉塞性膵炎が強く疑われた.保存的治療にて血液所見が改善せず,発熱と疼痛の増強等膵炎の再燃を認めたため,外科的治療を選択し,膵体尾部切除,膵管内結石除去,腹腔内洗浄・ドレナージ術を施行した.手術後は血清アミラーゼ値は正常化し,合併症なく軽快退院した.膵石症は,近年,体外衝撃波結石破砕術(ESWL)や内視鏡的治療が行われるようになり,まずは保存的治療を試みるべきであるが,治療に抵抗性の場合や,結石の径が大きく内視鏡的治療や破砕治療に適さない場合には,時期を失せず外科的治療を検討すべきと考えられた.
  • 指山 浩志, 阿部 恭久, 笹川 真一, 花田 裕之, 望月 亮祐
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2470-2475
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    膵頭十二指腸切除後膵外瘻の低侵襲な内瘻化の試みはいくつか報告されているが,われわれはPEGを用いて,低侵襲に内瘻化しえた1例を経験したので報告する.症例は54歳,男性.十二指腸乳頭部癌にて亜全胃温存膵頭十二指腸切除施行.再建は胆管空腸,膵胃吻合とした.術後,膵胃吻合縫合不全に伴う胃十二指腸動脈出血があり,止血術施行.胃側の吻合口を閉鎖し,膵管チューブを外瘻にした.術後長期に栄養状態が不良であったため,再度の開腹手術を回避するため,残胃にPEGを造設し,膵外瘻チューブを胃瘻から残胃に挿入,膵液を消化管内に戻したところ,栄養状態が改善.そのまま,チューブを皮下に埋め込んで,内瘻化した.内瘻化後,3年経過したが,現在までチューブ閉鎖などのトラブルはなく,経過良好である.膵外瘻による栄養障害を伴う症例では,膵液を消化管内に戻し,栄養状態を改善してから内瘻化するという方法は安全で,有用であると思われる.
  • 鈴木 仁呂衣, 鈴木 隆文, 松下 典正, 古川 達也, 重松 恭祐
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2476-2480
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    はじめに:膵頭十二指腸切除後の繰り返す膵炎に対しダブルバルーン内視鏡(以下DBE)を用いて膵液の流出を改善することで臨床症状の改善をみた1例を経験したので報告する.
    症例:76歳,男性.1997年3月膵頭部癌に対して膵頭十二指腸切除術(PDIIA-1)施行.(現在まで再発は認めていない)以後,今回までに6回術後膵炎が原因と思われる腹痛を主訴に入院し,いずれも保存的加療を行っている.2008年4月18日左季肋部痛を主訴に受診.CT及びMRCPにて残膵炎の診断で緊急入院.絶食,輸液にて症状は改善したが,食事内容の増量とともに腹痛の再燃が数回見られたことと,今までも頻回に繰り返していることから,膵管空腸吻合部の観察を計画した.通常の方法では挙上空腸への到達が困難と判断したため5月22日DBEを準備し,膵管空腸吻合部を観察したところ,縫合糸を核とした結石の形成があった.これが膵液の流出障害の原因となっていると考え,結石を破砕除去,ならびに縫合糸の摘出を行った.その後臨床症状の改善が見られ現在に至っている.結語:DBEは小腸疾患の診断のみならず,膵頭十二指腸切除術後などのblind loopへのアプローチを容易にすることが可能であり,術後再建腸管の観察,診断,治療に有用であると考えられた.
  • 関野 誠史郎, 小久保 健太郎, 阪本 研一
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2481-2485
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,男性.3日前より腹部膨満と食欲低下を認め,腹痛のため前医を受診し腹膜炎の診断で当院に紹介となった.入院時の腹部CTでは胃後壁を背側より圧排し膵体尾部と連続した長径13cm大の嚢胞性腫瘤を認め,また膵体部主膵管に一致して小石灰化像を認め膵尾部主膵管が軽度拡張していた.アルコール飲酒歴もあり,膵石を伴う膵仮性嚢胞と診断し入院としたが,入院後2時間後に突然著明な腹痛を訴え腹部は板状硬となった.腹部CTを再検すると嚢胞は縮小し肝,脾外側およびダグラス窩に腹水を認めた.膵仮性嚢胞破裂による汎発性腹膜炎と診断し緊急手術を行った.開腹すると暗褐色漿液性の腹水が貯留しており胃後壁から膵尾部に位置する嚢胞を認めた.嚢胞周囲の炎症所見が著明であり膵尾部脾合併切除術を施行した.術後に切離断端からの膵液瘻を生じたが膵管ステント留置にて軽快した.
  • 井上 聖也, 倉立 真志, 八木 淑之, 斉藤 勢也, 住友 正幸, 藤野 良三
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2486-2491
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,男性,主訴は特になし.現病歴は,2005年1月に上行結腸癌で右半結腸切除術を施行した(tub1,a2,n0,ly0,v0,P0,H0,M0,stage II).術後2年10カ月の胸部CTで両側肺腫瘤を認め,腹部CTで膵尾部に1cm大の低吸収域を認めた.胸腔鏡下に肺腫瘤(右S10,左S6)を切除し,病理組織診断は,上行結腸癌の肺転移であった.術後3年3カ月の腹部CTで膵尾部の腫瘤は3cmに増大を認め,転移性膵腫瘍を最も疑い手術を施行した.手術所見は,膵尾部に3cm大の腫瘤を認め,一部後腹膜への浸潤を認めたが,リンパ節の腫大は認めなかった.膵体尾部,脾臓合併切除を施行した.病理組織所見は,大腸癌の膵転移と診断された.術後経過は良好で,術後18日目に退院した.術後3カ月後に新たな肺転移を認め,化学療法を開始し,現在も継続中である.大腸癌の膵転移は比較的稀であり,本邦での報告例は自験例を含め21例に過ぎない.転移形式は,血行性転移で肺と膵臓に転移をきたした症例であった.文献的考察を加え報告する.
  • 星野 博之, 野尻 和典, 齋藤 健人, 平野 進, 佐藤 直夫, 長堀 優
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2492-2497
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,女性.健康診断の腹部超音波検査でφ5.5cm大の脾腫瘍を指摘された.血液検査上,可溶性IL-2レセプター1,730U/mlと高値を認めた.腹部超音波検査では低エコー像を呈した.腹部造影CTでは境界明瞭な低吸収域で辺縁から中心に向かって経時的に染まる像を呈した.MRIではT1強調で若干高信号,T2強調では低信号であった.腹部血管造影ではφ5.5cm大のhypovascular massを認めた.FDG-PETでは腫瘍の部位に一致してリング状に,内部は不均一な集積を認めた.以上より脾原発性悪性腫瘍も否定できず開腹脾臓摘出術を施行した.病理検査上,多核巨細胞を伴った非乾酪性肉芽腫を認め脾サルコイドーシスと診断された.画像上,他疾患との鑑別が困難であった脾サルコイドーシスの1例を経験したので報告する.
  • 渡辺 卓央, 藤井 慶太, 藤澤 順, 松川 博史, 利野 靖
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2498-2501
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,女性.2007年4月に狭心症に対し冠動脈バイパス術施行され術後縦隔炎となったが,軽快し外来フォローされていた.9月に40℃の発熱を認め来院した.血液検査でWBC 8,500/μl,CRP 13.0mg/dと炎症反応の高値,腹部CT検査で脾臓に7cm大の低吸収域を認めた.超音波ガイド下に経皮的ドレナージを施行し,排液からSalmonella enteritidisが検出され,脾膿瘍の診断となった.持続ドレナージに抗菌薬を併用するも改善せず,開腹下脾臓摘出術施行した.術後の経過は良好で軽快退院した.本症例では腸炎の既往やペットの飼育歴はなく,感染経路は不明であった.
    本邦では孤立性脾膿瘍は稀な疾患である.中でも食中毒の原因菌であるサルモネラが脾膿瘍から検出されるのは極めて稀で,報告例は本症例で9例目であった.若干の文献的考察を加えてこれを報告した.
  • 高嶋 一博, 細野 俊介, 金 修一, 内山 清, 清水 義博
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2502-2505
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,女性.腹痛を主訴に受診.急性腹膜炎の疑いで精査を行ったところfree airを認めたため上部消化管穿孔を疑い緊急手術を行った.手術所見では消化管に穿孔を認めず,脾臓に膿瘍形成とその穿孔を認めたため脾臓の摘出を行った.術後の経過は良好であったが,脾膿瘍の原因はコントロールできていない糖尿によるものと考えられた.脾膿瘍は比較的珍しい症例であり,本邦での報告例82例をふまえてこれを検討した.
  • 山本 晋也, 亀田 久仁郎, 吉田 謙一, 杉浦 浩朗, 長嶺 弘太郎, 久保 章
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2506-2508
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は74歳,男性.近医で糖尿病による慢性腎不全で透析を施行されていた(自尿あり).4月中旬に発熱,全身倦怠感を認め近医より当院に紹介受診となった.炎症反応高値,糞尿を認めた.骨盤CTでは前立腺の部位に膿瘍形成を認め,膀胱内にもAirを認めた.高度な前立腺炎による直腸膀胱瘻と診断し,fecal diversionとして横行結腸双孔式人工肛門造設術を施行した.術後経過は良好で炎症反応は消失し退院となった.直腸膀胱瘻の原因が前立腺炎であった稀な1例を経験したので文献的考察を加え報告する.
  • 田口 昌延, 笹沼 英紀, 俵藤 正信, 佐田 尚宏, 安田 是和
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2509-2514
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は34歳,男性.某年12月に腹痛を主訴に前医を受診した.CT検査等で,上腹部から骨盤腔内まで占める腹腔内多房性嚢胞を指摘され,膵仮性嚢胞の診断にて経皮的ドレナージを施行し症状は軽快した.4年後4月に再び腹痛が出現.再度経皮的ドレナージを施行したが症状の改善は認めず当院へ紹介となった.CT,MRIにて胃小彎に接した多房性の巨大な腫瘍を認め,膵外病変と考えられた.小網原発のリンパ管腫と診断し手術を施行した.開腹時,小網を主座とする巨大な多房性嚢胞性腫瘍を認めた.膵・胃などと癒着していたが他臓器への浸潤はなく,腫瘍摘出術を施行した.切除標本で腫瘍は16×12×9cm,800gで病理組織学的にcystic lymphangiomaと診断された.術後の経過は良好で14日目に退院となり症状も軽快した.
  • 中野 克俊, 桧垣 直純, 村上 雅一, 菅 和臣, 市原 隆夫, 左近 賢人
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2515-2520
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は50歳,男性.上腹部膨満感,心窩部痛が出現してきたため近医を受診し,腹部腫瘤を指摘され当院に紹介された.腹部CT検査では内部が不均一に淡く造影される14cm大の腫瘤として描出され,腫瘍は胃の小彎側に広く接していた.腹部血管造影検査で左右胃動脈,後膵動脈,大膵動脈,右胃大網動脈から腫瘍への栄養血管を認めた.以上の所見より,胃原発の壁外発育性GISTの診断で手術を施行した.開腹すると,腫瘍は胃の小彎に沿って存在するものの連続性は認められず腫瘍のみを摘出した.病理組織学的検査では,紡錘形細胞の錯綜増殖が見られ細胞密度が著明で,各所に出血,変性壊死を伴っていた.免疫染色ではc-kit,CD34およびビメンチンは陽性,S-100蛋白,デスミンおよびα-SMAは陰性で,その解剖学的位置より小網原発のGISTと診断した.術後29カ月を経過した現在,再発は認めていない.
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