日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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84 巻, 1 号
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巻頭言
原著
  • 北原 弘恵, 瀬原田 魁, 吉村 昌記, 唐澤 幸彦, 織井 崇
    2023 年 84 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    目的:消化器癌術後の肺血栓塞栓症は予後不良の転帰を取ることも多いため,原因となる深部静脈血栓症(以下,DVT)の早期診断および発症予防が重要である.方法:2014年6月から2021年3月までに待機的腹部消化器癌手術を423例施行した.術前は術前下肢静脈エコーを施行した228例を対象とし,術後は術後Dダイマー10.0μg/mL以上で下肢静脈エコーを施行した132例を対象とし,周術期DVTの危険因子を患者背景,手術因子から後方視的に検討した.結果:DVTは術前2.2%,術後7.5%に認めた.術前DVTの危険因子はヘモグロビン10g/dL未満,術後DVTの危険因子はbody mass index 30kg/m2以上,術中出血量500mL以上,であった.結語:今後は,リスクスコアに基づいて分類し抗凝固療法の必要性を判断するために,日本人での周術期静脈血栓塞栓症のエビデンス構築が必要である.

症例
  • 竹本 佳菜, 亀井 義明, 西山 加那子, 田口 加奈, 村上 朱里, 北澤 理子, 高田 泰次
    2023 年 84 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は35歳,女性.授乳2カ月目より左血性乳頭分泌を自覚,その3カ月後に左乳房腫瘤を自覚したが受診せず,授乳8カ月目に断続的な左血性乳頭分泌を認めたため当科を受診した.A区域を中心に約70mm大の腫瘤を触知し,マンモグラフィでは線状石灰化が区域性に分布,造影MRIではnon-mass enhancementを区域性に認めた.針生検では非浸潤癌であったが,血清腫瘍マーカーはCEA,血清HER2共に高値を呈していた.PET-CTでは明らかな遠隔転移やリンパ節転移,他臓器腫瘍は認めず手術の方針となり,左乳房全切除術とセンチネルリンパ節生検を施行.術後,血清腫瘍マーカーは速やかに低下し,乳癌由来であったことが推察された.最終病理診断にても非浸潤癌であったが,早期乳癌において血清腫瘍マーカー高値となる頻度は低く,今回異常高値を呈した要因として授乳期乳腺と広範な乳管内進展の関与が示唆された.

  • 朝田 理央, 伊藤 吾子, 三島 英行
    2023 年 84 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は79歳,女性.主訴は左乳房2時方向の腫瘤を自覚.20年前に右乳癌に対し右乳房全切除術,16年前に不整脈に対し左前胸部にペースメーカー(PM)植込み術施行の既往があった.身体所見上,自覚部位の他に植込み型PM直上にも硬結を触知した.超音波所見では,乳房2時方向に皮膚浸潤を伴う低エコー腫瘤およびPM直上にも低エコー腫瘤を認めた.2時方向腫瘤から施行した針生検では,浸潤性乳管癌の診断であった.FDG-PETにて,PM直上腫瘤にも主腫瘤と同様に集積を認め,PM同側の多発乳癌の診断となった.リードレスPMへ変更した後,PMを合併切除する形で左乳房全切除術および腋窩リンパ節郭清術を施行した.病理ではPM直上腫瘤も独立した浸潤癌であり,切除断端は陰性であった.高齢化に伴いPM合併乳癌は増加することが予測され,治療方法の決定には個々に応じた対応が必要となる.PM合併乳癌の診断・治療につき,文献的考察を交え報告する.

  • 加瀬 晃志, 長塚 美樹, 岡野 舞子, 松嵜 正實, 片方 直人, 野水 整
    2023 年 84 巻 1 号 p. 24-28
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    乳癌を発症したCowden症候群の1例を経験したので報告する.症例は37歳,女性.胃ポリポーシス,舌根部から咽頭粘膜ポリポーシスの経過観察中であった.フォローアップのCTで甲状腺腫を指摘され,また前額部に微小丘疹が多発しており,下顎部に皮膚腫瘍も認めた.巨頭症もあり,これらの症候からCowden症候群を疑った.マンモグラフィおよび超音波検査によるスクリーニングで右乳房C領域に17×11mmの不整形腫瘤が発見され,針生検で硬癌,トリプルネガティブの診断となり,右乳房全切除・センチネルリンパ節生検を施行した.遺伝カウンセラーによる検査前遺伝カウンセリングを行った後,次世代シークエンサーによるPTEN遺伝子を含む遺伝性消化管腫瘍症候群26遺伝子のキャプチャーシークエンス解析を実施したところ,PTEN遺伝子に生殖細胞系列病的バリアントを認めた.現在は外来で無再発経過観察中である.

  • 成田 知宏, 宇佐美 伸, 佐藤 未来, 出川 和希, 神谷 蔵人, 臼田 昌広, 小野 貞英
    2023 年 84 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    今回,われわれは浸潤性乳管癌術後に後腹膜転移が指摘された症例を経験したので報告する.症例は62歳,女性.乳癌手術歴があり,腫瘍マーカー上昇の精査目的に撮影したCT上,両側水腎症を指摘された.両側水腎症に対し,両側尿管ステント留置を行ったが,まもなく吐き気と下肢の浮腫を訴えた.精査にて十二指腸,下大静脈の狭窄が認められた.後腹膜に明らかな腫瘤を認めなかったが,乳癌転移再発を疑い,開腹後腹膜生検,胃空腸バイパス術を施行した.組織学的検索で,乳癌後腹膜転移と判明した.化学療法を予定していたが,開腹術より1カ月後に強い頭痛を訴え入院となり,髄膜癌腫症の診断を得た.著明なQOL低下のため,緩和的加療方針となり,開腹術より2カ月後に永眠した.乳癌の後腹膜転移は稀であるが,乳癌既往のある患者では念頭に置いておくべき病態と考えられる.

  • 山村 和生, 宮嶋 則行, 岡崎 泰士, 田中 健太, 大谷 聡, 佐賀 信介, 安藤 修久
    2023 年 84 巻 1 号 p. 35-42
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は48歳,女性.42歳時,右乳癌に対し乳房部分切除術とセンチネルリンパ節生検を施行(pT1c,pN0,cM0,ER陰性,PgR陰性,HER2陰性,Ki67 70%).術後補助療法としてEC療法4クールとRT(50Gy/25fr)を施行.45歳時,胸部X線写真で左肺野に結節影を指摘.CTで左肺上葉に17×12mm大の結節を認め,経気管支鏡生検の結果,乳癌の肺転移と診断された.TS-1内服を2コース施行したが,肺結節は21×17mm大に増大しPDと判定.明らかな新規病変の出現は認めず,患者と相談の結果,他院放射線専門施設において肺転移巣に対し先進医療として陽子線治療を行った(66GyE/10fr).照射後,肺病変は消失し,以後2年間再発を認めず,新規病変の出現もみられていない.照射に伴う有害事象はGrade1の皮膚炎と肺臓炎のみであった.再発乳癌の予後は不良であり,治療の目的は延命とQOLの維持・改善であるが,近年,オリゴ転移に対し積極的な局所治療で予後改善が得られたとの報告が散見され,陽子線治療の報告もみられる.文献的考察を含めて報告する.

  • 大隅 祥暢, 濱崎 博一, 丸塚 孝
    2023 年 84 巻 1 号 p. 43-46
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は73歳,女性.縦隔腫瘍の精査加療目的に当科へ紹介となった.造影CTにおいて前縦隔に長径2.5cmの病変を認め,病変は辺縁から緩徐に点状に造影されるperipheral puddles像を認めた.造影MRIにてT1強調画像で低信号,T2強調画像で高信号であり,dynamic studyにて経時的に造影される腫瘍であった.これらの画像所見より,縦隔血管腫の可能性が疑われた.病変は周囲への明らかな浸潤を疑う所見はなく,胸腔鏡下縦隔腫瘍摘出術を施行した.病理組織検査で海綿状血管腫の診断となった.

    縦隔発生の血管腫は稀な疾患であり,術前に画像検査で診断することは難しいとされているが,本症例では造影CTと造影MRIの併用により術前に縦隔血管腫を疑うことができた.また,縦隔血管腫は易出血性との報告もあるが,本症例は胸腔鏡下手術にて安全に摘出することができた.本症例を画像検査所見とともに,文献的考察を含めて報告する.

  • 我喜屋 亮, 嵩下 英次郎, 安里 昌哉, 照屋 剛, 仲地 厚, 喜友名 正也
    2023 年 84 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は68歳,男性,前立腺癌術前CTにて右肺上葉に6×7mmの結節および両側後縦隔に多発集簇する結節を指摘され,当科へ紹介となる.転移性肺癌および脂肪成分を含む縦隔腫瘍が疑われ,胸腔鏡下肺部分切除および縦隔腫瘍生検を施行した.肺結節は自動縫合器を使用し,結節より距離を確保し切除した.迅速病理では前立腺癌からの転移性肺癌が疑われた.縦隔腫瘍は壁側胸膜外より胸腔内に隆起する暗赤色の結節として確認できた.胸膜を電気メスにて切開すると赤色ゲル状,易出血性の組織であった.組織の一部を採取し病理へ提出した.永久標本の病理組織学的検査にて肺結節は原発性肺癌,縦隔腫瘍は骨髄脂肪腫と診断された.両側後縦隔に多発する骨髄脂肪腫は非常に稀であり,若干の文献的考察を加えて報告する.

  • 丸塚 孝, 濱崎 博一, 大隅 祥暢
    2023 年 84 巻 1 号 p. 52-56
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    56歳,男性.急性膿胸の精査加療目的に当院へ紹介入院となった.CTでは左大量胸水と左下葉の無気肺と共に,左下葉気管支入口部に輪状の石灰化を伴う気管支閉塞を認めた.気管支鏡検査で左下幹入口部は肉芽様組織で閉塞していた.同部の病理組織検査で悪性所見は無く,細菌検査でも有意な病原菌を認めなかった.感染制御のため胸腔鏡下膿胸腔掻爬術を行い,急性膿胸は軽快した.術後経過観察の気管支鏡検査で,左下幹入口部は部分的に開存し,その奥に円筒状の異物を認めた.深鎮静下に気管内挿管を行った上で,気管支鏡下に異物除去を行った.1本の鉗子では摘出が困難で,もう1本の生検鉗子を気管支鏡に沿わせるように挿入し,2本の鉗子で異物の縁の両側を把持して摘出した.本人が9歳時にプールで水泳中に鉛筆キャップを飲み込んだことを思い出した.誤嚥から47年後に軟性気管支鏡下に摘出した気管支異物の1例を経験したので報告した.

  • 高橋 光, 朝戸 裕二
    2023 年 84 巻 1 号 p. 57-62
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    乳糜胸は肺癌切除術の合併症の一つであり1.2~3.0%に発生すると言われている.治療には絶食および中心静脈栄養による保存的治療や胸管結紮術が行われることが多いが,近年はリンパ管造影の有用性も報告されており,今回,リンパ管造影にて治療しえた術後乳糜胸を経験したので報告する.症例は40歳,女性.左上葉肺腺癌(cT4N0M0:cStage IIIA)に対して左上葉切除術および迷走神経,横隔神経合併切除,上縦隔リンパ節郭清が施行された.術後3日目に乳糜胸と診断,保存的治療に反応せず胸管結紮術を施行したが改善しなかったため,術後30日目にリンパ管造影を施行した.造影翌日よりドレーンからの乳糜胸水の排液が止まり,術後37日目に退院となった.施行可能な施設が限られているが,治療抵抗性の術後乳糜胸に対する治療選択肢としてリンパ管造影は有用と考えられた.

  • 内藤 慶, 篠田 公生, 橋場 隆裕, 佐野 渉, 知久 毅, 安藤 克彦, 豊田 亮彦
    2023 年 84 巻 1 号 p. 63-69
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は64歳,男性.前胸部不快感の精査で撮影したCTで横隔膜下腫瘤が発見され,当科へ紹介となった.CTでは横隔膜下に25mm大の境界明瞭な軟部腫瘤を認め,MRIやPET-CTでも確定診断は得られず,悪性の可能性を考慮して腹腔鏡下腫瘤摘出術の方針とした.腫瘤は左横隔膜下の肝鎌状間膜付近に位置しており,被膜を損傷することなく切除しえた.病理組織検査では多列線毛上皮に内腔が裏打ちされた嚢胞を認め,嚢胞壁には結合織を介して平滑筋層を認め,気管支原性嚢胞と診断した.気管支原性嚢胞は胎生期前腸由来の先天性嚢胞であり,腹部領域での発生は非常に稀である.腹腔鏡下に切除した横隔膜下気管支原性嚢胞の1例を経験したので報告する.

  • 高田 直哉, 戸田 道仁, 鈴木 智詞, 山本 亜弥, 岩田 隆
    2023 年 84 巻 1 号 p. 70-75
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    42歳,女性.2013年9月,子宮頸癌術前精査の胸部CT像で左肺S10根部に10.3mmの結節を指摘されたが,良性と判断され術後1年毎にCTを行い,経過観察となっていた.2021年1月,同病変は14.8mmに増大し当科へ紹介.増大は緩徐であったが,転移性腫瘍など悪性疾患を除外し得ず切除の方針とした.結節は左下肺静脈近傍であり,通常は下葉切除術の適応となると思われたが,V10処理を行うことで楔状切除が可能と判断した.実際,術中にV10を確保して結紮切離することで結節を下肺静脈根部から離すことができ,5mmの外科的切除縁を確保してステープリングによる左肺S10楔状切除術を施行した.術中迅速診断では硬化性肺胞上皮腫と上皮内腺癌の鑑別が困難とされたが,いずれにしても浸潤傾向はなく病理学的にも5mmの外科的切除縁が確保されていたため,追加切除なく手術を終了.術後病理検査で硬化性肺胞上皮腫と診断を確定した.術12カ月現在,無再発経過中である.

  • 石井 大智, 髙瀬 貴章, 千葉 慶宜, 鶴田 航大, 宮島 正博, 渡辺 敦
    2023 年 84 巻 1 号 p. 76-81
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    触診が困難な小結節に対する肺部分切除術では,マーキングが有用である.近年,気管支鏡を用いたデジタルマーキング技術である,radiofrequency identification (RFID)が臨床応用された.RFIDマーキングは肺深部に存在する病変でも位置同定を可能とする.しかし,その合併症に関する報告はほとんどない.今回,気管支に留置されたRFIDタグが術中に変位する症例を経験したので報告する.患者は71歳,女性.転移性肺腫瘍疑い(左肺S10に8mm大の結節影)に対し,2箇所にRFIDタグを留置し,部分切除術を施行したところ,術中にタグの1つが気管支中枢側へ変位した.このタグを病変と一塊にして切除するため,結果的に切除肺の拡大を要した.原因として,鉗子の把持操作や自動縫合器による複数回のクランプが考えられた.部分切除では単一病変に対しタグ1つを末梢気管支に留置することを原則とし,留置部近傍での鉗子操作は避けるべきである.

  • 竹原 恵美, 宇山 攻, 松井 栞, 行重 佐和香, 池内 真由美, 日野 直樹
    2023 年 84 巻 1 号 p. 82-88
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    肺切除術後脳梗塞は主に肺静脈断端に生じた血栓に起因することが知られている.症例は86歳,男性.左上葉肺癌+左下葉肺癌の診断にて,消極的左上葉部分切除+S6区域切除の方針となった.左上葉部分切除を先行したのちS6区域切除に移り,V6,A6,B6を処理したが,術中所見によりS6区域切除では不十分と判断されたため,左下葉切除へ術式変更した.先行切除したV6断端 stapleを巻き込まないように,やや末梢側で総肺底静脈を切離.肺底動脈と底幹支を切離し左下葉切除を完了した.翌日,突然左片麻痺が出現した.MRIで右中大脳動脈領域の術後脳梗塞と診断,経皮的脳血栓回収術が行われた.術後胸部CTで2.8cmと長い左下肺静脈断端が確認された.精査で他の要因も否定的であったため,術式変更時V6 stapleの末梢で総肺底静脈を処理したことで肺静脈断端が長くなり,生じた肺静脈断端血栓による脳梗塞をきたしたと考えられた.

  • 茂木 はるか, 若林 俊樹, 山田 修平, 新保 知規, 菊地 功, 佐藤 勤, 提嶋 眞人
    2023 年 84 巻 1 号 p. 89-95
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    患者は66歳,女性.近医での腹部超音波検査で肝S6に40mm大の新たに出現した肝腫瘤を指摘された.CTでは腫瘍辺縁が軽度造影される境界明瞭な低吸収域として描出された.また,右肺S8に8mm大の結節を認めたが,経過観察とした.肝悪性腫瘍を否定できないことから,肝部分切除を行った.切除標本では境界明瞭な充実性腫瘍で,組織学的に核/細胞質比の高い紡錘形の異型細胞が胞巣状・索状に増殖し,免疫染色ではクロモグラニンA,シナプトフィジンが陽性であり,神経内分泌腫瘍と診断された.また,免疫染色でthyroid transcription factor (TTF)-1が陽性であることから,肺原発であることが示唆された.その後,胸腔鏡補助下右S8区域切除が施行され,肺腫瘍は肝と同様の病理所見であり,肺が原発巣,肝は転移巣と診断された.本症例では肝腫瘍のTTF-1染色が契機として診断に至り,臨床的にTTF-1染色が有用であった.

  • 蔵谷 勇樹, 山本 葉一, 木井 修平, 藤好 直, 下國 達志, 小池 雅彦
    2023 年 84 巻 1 号 p. 96-101
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は31歳の男性.前日からの右下腹部痛,嘔吐があり受診.血液検査で炎症反応高値を認め,CTで骨盤内に腹水,虫垂根部に糞石を伴う虫垂腫大を認め,急性虫垂炎の診断で抗菌薬治療目的に入院となった.治療経過中に抗菌薬抵抗性の骨盤内膿瘍を形成し,第21病日にEUSガイド下経直腸的ドレナージを施行した.その後炎症所見は改善し,第30病日に退院した.4カ月後に待機的腹腔鏡下虫垂切除術を施行し,合併症なく退院した.今回われわれは虫垂炎に起因する骨盤内膿瘍に対して,EUSガイド下経直腸的ドレナージを施行し,後日待機的に腹腔鏡下虫垂切除術を安全に施行しえた1例を経験したため報告する.

  • 川端 洸斗, 大井 悠, 宮崎 俊哉, 竹下 惠美子, 奥山 隆, 吉富 秀幸
    2023 年 84 巻 1 号 p. 102-105
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は67歳,女性(148cm,64kg,BMI 29),肺腺癌(Stage IV)の診断で,化学療法が開始された.翌年にS状結腸穿孔,汎発性腹膜炎に対して,緊急Hartmann手術を施行した.術後,傍ストマヘルニアを認めたが,肺腺癌の進行度から経過観察としていた.肺腺癌に対してペムブロリズマブを投与されていたが,ストマ周囲にペムブロリズマブに伴うと考えられる類天疱瘡,皮膚潰瘍を認め,保存療法を行っていた.初回手術から3年後に潰瘍部の腹壁が自壊し,腸管が腹腔外に脱出したため,当科外来に救急搬送された.腹壁自壊部からの小腸脱出,それに伴う絞扼をきたしており,緊急手術とした.手術は壊死腸管を切除した後,吻合し,ヘルニア嚢を切除,腹壁を単純閉鎖した.術後は合併症なく経過した.今回,ペムブロリズマブ投与中,傍ストマヘルニアに皮膚潰瘍を生じ,腹壁破裂により小腸脱出をきたした極めて稀な症例を経験した.

  • 塚本 忠司, 江口 真平, 国本 友浩, 貝崎 亮二, 高塚 聡, 福島 裕子
    2023 年 84 巻 1 号 p. 106-110
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は22歳,男性.発熱,咽頭痛を主訴に近医の耳鼻咽喉科を受診し,急性扁桃腺炎と診断され,抗菌薬が投薬された.翌日より腹痛,下痢,全身倦怠感を認め,翌々日に上腹部に圧痛が認められ,当院を紹介受診した.当院初診時にMurphy徴候を認めた.腹部CTでは胆嚢の腫大と壁肥厚を認め,肝脾腫大を軽度認めた.血液検査上,異型リンパ球を認め,伝染性単核球症が疑われた.急性胆嚢炎に対して,当院初診当日に腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し,切除標本から無石性胆嚢炎と確定診断された.術後,38℃前後の弛張熱が持続し,異型リンパ球はさらなる増多を認め,血清肝胆道系酵素値の上昇も認められた.肝胆道系酵素値は術5日後をピークに漸減し,異型リンパ球は術11日後より減少,術12日後より解熱傾向を示し,術16日後に軽快退院した.伝染性単核球症に伴う無石性胆嚢炎の場合は経過観察で軽快する症例が多く,慎重な経過観察のもとで手術適応を検討する必要がある.

  • 萩原 精太, 田村 耕一, 中森 幹人, 堀内 哲也
    2023 年 84 巻 1 号 p. 111-115
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は55歳,男性.当科では早期胃癌術後の経過観察中であった.胃癌術前の腹部CTより脾門部に長径9mmの腫瘤を指摘されており,術後24カ月で最大径36mmまで増大した.無症状であったが,画像診断的には脾動脈瘤・悪性腫瘍が鑑別に挙がり,診断兼治療目的に膵体尾部切除術を施行した.術後病理組織学的所見では,不規則に拡張・蛇行した動静脈を認め,血管は不整な形態を示し,動脈瘤を伴う膵の動静脈奇形(arteriovenous malformation:AVM)と診断された.胃癌術後フォロー中に認めた稀な病態と考えられ,若干の文献的考察を踏まえて報告する.

国内外科研修報告
会報
日本臨床外科学会会則
日本臨床外科学会内規
日本臨床外科学会支部に関する規定
日本臨床外科学会臨床研究の利益相反に関する指針
日本臨床外科学会個人情報取扱基本指針
第83巻総目次,筆頭著者名および総索引用語
編集後記
日本臨床外科学会役員等氏名
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