日本蚕糸学雑誌
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28 巻, 6 号
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  • 小林 勝利, 山下 幸雄
    1959 年 28 巻 6 号 p. 335-339
    発行日: 1959/12/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    カイコの幼虫, 蛹および蛾のアラタ体の機能を蛹化直後に除脳してえられた永続蛹を被移植体として用いることによつてしらべた。
    4令72時間幼虫, 5令8時間幼虫, 熟蚕, 蛹化直後の蛹, 蛹化後5日目の蛹および蛾のアラタ体をそれぞれ3対ずつ永続蛹に移植すると, いずれの場合でも移植後大多数は25℃で, 16~21日を経て羽化する。
    この実験からカイコのアラタ体にはいわゆる幼若ホルモンの分泌以外に移植したアラタ体の場合には脳の神経分泌物の放出器官としての役割があることが明らかにされた。
  • 坂手 栄
    1959 年 28 巻 6 号 p. 340-345
    発行日: 1959/12/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    EKp過剰肢蚕の1系統の過剰肢の大きさについて正逆淘汰を加えて得た2分枝系統を供材として, その変異性の遣伝的環境的要素を吟味した。
    (1)(有孔繭系×+Mp/EKp MT) の後代 (3眠蚕) は過剰肢発達度の変異が大きく, 個体淘汰によつて発達良好 (A系統) および発達不良 (C系統) の両者をほぼ分離し得た。
    (2) 2系統はKp肢の発生発達に関して遺伝的に異り, それはpolygene systemをなすKp肢発達助長と阻止の変更遺伝子群によるもので正常品種にも広く分布していることを明らかにした。
    (3) 胚子発生期低温-Kp肢発達良好, 高温-不良の現象を確め, 特に低温においてはその変異の程度は関与変更遺伝子群の種類と数の如何が大きく影響すると思われる。また, 温度有効時期は25℃保護で最長期前後3日間内であろう。
  • 江口 正治
    1959 年 28 巻 6 号 p. 346-351
    発行日: 1959/12/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    同蛾区内交配を続けたものの同一蛾区に分離したod油蚕と正常蚕を用いて実験した結果, 次のことがわかった。
    1. odは正常蚕よりも経過がおくれ体重が軽いが, この差は1令期に現われ, その後はこの両系統の差が持続しているにすぎないと考えられる。
    2. 1令期における両系統間の経過・体重の差は低温の方が高温の場合よりも大きい。
    3. od油蚕の繭層重, 繭層歩合および産卵数は正常蚕よりも少ない。
    以上の結果にもとずいて油蚕性の特性につき考察を行つた。
  • 渡部 仁
    1959 年 28 巻 6 号 p. 352-357
    発行日: 1959/12/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    種々の原種およびそれらの正反交雑種の幼虫を供試し, 正反交雑における体重差の発育に伴う変化, ならびに交雑F1の示す体重のヘテローシスについて調査した。その結果はつぎのように要約される。
    (1) 交雑F1の蟻蚕体重は卵細胞質の影響を強く受け, 母系統の蟻蚕体重に近似するので。正反交雑で蟻蚕体重に差を生ずる。
    (2) この正反交雑における幼虫初期の体重差は, 本実験に供試された日支交雑種の場合では3令中に消失するが, 蟻蚕体重差の大きい正反交雑間ほどその差の消失する時期は遅い。
    (3) 卵の大きさ以外の遺伝的性質を同じくした場合, 大卵と小卵から孵化した幼虫間における体重差の発育に伴う縮小は, 原種よりも交雑種において著しい。
    (4) 交雑F1の体重におけるヘテローシス程度は, 蟻蚕では母親の卵細胞質に強く影響されるので正反交雑で差を生ずるが, 発育の進むにつれて両者間の差はなくなり, 共にヘテローノス程度は漸次高くなる。
  • (VI) 蛹, 卵 (産下後10日間) の保護温度並びに散種洗落時間及び水温の再出卵の発現に及ぼす影響
    河合 孝
    1959 年 28 巻 6 号 p. 358-361
    発行日: 1959/12/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    蛹の保護温度 (30°と20℃) および卵の保護温度 (産下後10日間, 25°と15℃) が散種製造の際の再出卵の発現に如何なる影響をおよぼすかを, 支122号と紹興油とを用いて産下後20日から80日にわたり洗落した (水温300, 2.5℃) 結果について, 要因実験法により調べた成績は次の通りである。
    1) 支122号では蛹の低温 (200C) 保護と卵の低温 (15℃) 保護の主効果が有意 (危険率: 1%) であつたが, 洗落用水の低温 (2.5℃) の主効果には有意性が認められなかつた。
    2) 紹興油では蛹の保護温度の主効果は有意性がなく, 卵の低温保護の主効果が極めて有意 (危険率: 1%) で, この場合は洗落用水の低温の主効果も高い有意性 (危険率;1%) を示した。
    3) 高温 (25℃) 明催青により完全に1化性を獲得したと思われる越年卵では蛹期, 卵期の低温保護 (一般には卵の越年性を増す) という要因がかえつて洗落による再出卵の発現を多くした。
  • 有賀 久雄, 荒井 成彦
    1959 年 28 巻 6 号 p. 362-368
    発行日: 1959/12/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    春蚕期および夏蚕期に支122号×日122号のF1の種々の発育段階の蚕児および絶食状態においた蚕児等を供試して, 低温処理による膿病 (体腔型多角体病) および中腸型多角体病の誘発実験を行い, 次の結果を得た。
    (1) 5令起蚕では中腸型多角体病は6時間の低温処理によつてかなり誘発される。
    (2) 1眠蚕, 2令起蚕, 2眠蚕, 3令起蚕および3眠蚕の低温処理では多角体病の誘発現象は見られず, 4令起蚕, 4眠蚕および5令起蚕などでは誘発が見られ, 特に5令起蚕処理で高率の誘発現象が認められた。
    (3) 体腔型は5令起蚕から餉食後1日目までと, 5令5, 6日目頃の低温処理区で高い誘発率が認められた。
    (4) 中腸型では, 4令および5令各期の低温処理により, 5令6日目以後を除き全期にわたって, かなり高い誘発率が見られた。特に食桑中の諸時期でも, 相当高率の誘発が起ることが明らかにされた。
    (5) 5令蚕児において, 脱皮後0-48時間絶食状態において低温処理を行つた場合について比較すると, 0-6時間の絶食後の処理では, 6時間以上の絶食の後の処理に比べて誘発率が低い。すなわち起蚕処理による誘発実験でも, 脱皮後処理までの時間によつて誘発率が変動するものであることを指摘した。
  • 有賀 久雄, 金井 栄一, アユタヤ アムヌイ・イサランクール・ナ
    1959 年 28 巻 6 号 p. 369-374
    発行日: 1959/12/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    家蚕の膿病 (N) および中腸型 (C) 多角体病の発生には, 遺伝的, 生理的, 環境的諸要因が密接な関係をもつと考えられる。夏蚕期の1~3令蚕児に極端な軟葉や日覆桑葉を給与すると, C型 (C+NC) の発生が多かつたし, また春蚕期の4令蚕児に極度の軟葉や長期貯蔵桑葉を給与すると, 同様にC型の発生率が高まる現象が認められた。5令起蚕を低温処理すると多数の多角体病が誘発されるが, その場合低温処理前および処理後の蚕児の栄養状態を人工的に変化せしめると多角体病の発生率が変化する。冷蔵前の栄養条件と多角体病の誘発率との関係は, 冷蔵前の蚕児の栄養状態がよいと思われる場合にN型 (N+NC) 多角体病の発生が多く, C型の発生が少い。これに反して冷蔵前の栄養条件が悪い場合には, 冷蔵によつて上記と反対の発病傾向がみられた。また冷蔵後の蚕児の栄養条件と多角体病発生との関係をみると, やはり栄養条件がよいと思われるときにN型の発生が多い。これは多角体病ウイルスの誘発あるいは増殖に成長発育に関係するホルモンが関連をもち, 蚕児の栄養状態はこれらのホルモンバランスに影響を与えるためであろうと考えた。
  • (III) セリシンの光散乱
    渡辺 忠雄
    1959 年 28 巻 6 号 p. 375-380
    発行日: 1959/12/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    1. セリシン蚕の中部糸腺, セリシン繭, 正常繭より各種の方法でセリシンを溶出しセリシン水溶液をえ, その散乱強度を光散乱法によって測定し分子量を求めた。その結果, 中部糸腺よりえた液状セリシン及びセリシン繭をCu-En法によつて溶解したセリシンの分子量はそれぞれ9.1×105及び8.3×105であった。正常繭よりMOSHERの方法により加熱抽出, 或いはアルカリ抽出したセリシンの分子量はそれぞれ7.5×105及び6.5×105であつた。以上のことから加熱抽出或いはアルカリ抽出によるセリシンは可成り分解していることが考えられ, 一方セリシン蚕の中部糸腺より抽出したセリシンはほぼ未変性のセリシンに近いものと考えられる。
    2. 上のセリシン溶液より不溶性のセリシンBを除いたセリシンA溶液の散乱強度を測定し分子量を求めた。セリシン蚕の中部糸腺からえたセリシンA及びセリシン繭からCu-En法で得たセリシンAの分子量はそれぞれ2.3×105及び1.9×105であったが正常繭からMOSHER法によつて得たセリシンA及びアルカリ抽出によつてえたセリシンAの分子量はそれぞれ5.4×104並びに2.8×104であつた。以上の結果からMOSHER法, 或いはアルカリ抽出による場合は未変性のセリシンが崩かいしてその崩かい物がセリシンAとして測定されるものと考えられる。
    3. セリシン蚕中部糸腺の前区, 中区, 後区よりそれぞれセリシンを溶出してその散乱強度を測定した。その結果は前区よりえたセリシンの分子量は中区, 後区より小さく, セリシンは絹糸腺内においても不均-であることを示し, さらに前区より分泌されるセリシンはセリシンAであることが推測された。
  • (I) 中部糸腺におけるフィブロインの所謂結合水および自由水の量的変化
    倉沢 恒夫
    1959 年 28 巻 6 号 p. 381-388
    発行日: 1959/12/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    1) 家蚕の5令期における各時期の中部糸腺内フィブロインの結合水を塩化コバルト法により測定した。
    2) 中部糸腺中区内のフィブロインの全水分量, 自由水分量および結合水分量は何れも日を追って減少していく。その変化過程において結合水は自由水に比較して, その水分率の減少がはなはだしい。
    3) 最高結合水は対乾物50%附近になると, その放出が緩徐となり, 大体40%前後で蚕は吐糸を開始した。この時の対乾物結合水分率は初秋蚕はで42.1%で, また晩秋蚕では38.4%であつた。
    4) 自由水対結合水の比は経過にともなつて全体的にみれば低下するが, 初秋蚕では5日目, 晩秋蚕では7-8日目頃に一時増加し, 熟蚕に到つて再び低下した。このことから盛食期に中部糸腺にフィブロイソの貯溜が急激に行なわれ, フィブロインの結合水の放出もまた激しく行なわれていることが推定される。
    5) 絹糸腺による腺内フィブロインの脱水時における水分の転移は結合水-自由水-腺外放出の二つの段階において行なわれることが推定される。
  • 木藤 半平, 村田 鈴子, 大平 敏彦
    1959 年 28 巻 6 号 p. 389-394
    発行日: 1959/12/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    蚕蛹油の一利用法としてアゼライン酸の製造に関する研究を試みた。酸化剤としては硝酸を使用しバナジン酸アンモニウムを触媒として酸化し, 酸化の条件, 生成アゼライン酸の分離方法等を考究し原料油に対して約28%のアゼライン酸が簡易且つ経済的に得られることを知つた。
    なお生成諸有機酸についてはヒドロオクザム酸法またはブロームクレゾールグリン発色法等を利用して検出を行い, アゼライン酸の他に水溶性酸として蓚酸, コハク酸, グルタール酸, アジピン酸, ピメリン酸等が副生成物として生ずることが推定された。
  • 松尾 卓見, 桜井 善雄
    1959 年 28 巻 6 号 p. 395-401
    発行日: 1959/12/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    深さ1m程天地返しをした埴壌土の種々の深さに白紋羽病菌菌糸及び白絹病菌菌核を埋め, その周辺広面積に常法と異なってクロールピクリン及び二硫化炭素は深さ5cm, 又石灰窒素は深さ10cmの浅部施用を行い, それらの殺菌効果を薬剤施用10日後に供試菌の培養試験によって検討し, 次の結果がえられた。
    1. クロールピクリン (454g/9.9m2) 注入は, 二硫化炭素 (954g/9.9m2) 注入又は石灰窒素 (深さ10cmの範囲に3.3m2当り750g) 混入よりも著しく殺菌効果があった。
    2. クロールピクリン454g/9.9m2注入では, 桑根 (直径2.5mm又は5mm) に培養した白紋羽病菌はもとより, ふすま培養の白紋羽病菌も殺菌されずに残っているものがある。908g/9.9m2夏季注入では, ふすま培養区は深さ2, 3cmから80cmまですべて死滅した。しかし桑根培養区では25cm迄は死滅したが, 50cm以上では残存するものがある。一方白絹病菌の菌核は, 桑根に培養した白紋羽病菌と類似の抵抗力を示した。
    3. 白紋羽病菌, 白絹病菌とも夏季高温のとき殺菌され易い。
    4. 粘土においては, 殺菌効果の劣ることが推察され, 又埴壌土と砂土で比較すれば, ふすま培養白紋羽病菌は砂土における方が殺菌され易く, 桑根培養菌 (組織中) はむしろ砂土において殺菌され難いような傾向を示した。
    5. クロールピクリン注入後, 土壌表面にビニール幕を被覆すれば殺菌効果が上る。しかしその程度に過大の期待をかけることは出来ない。
  • (1) 摘葉強度と摘葉後の生長の関係
    秋山 文司
    1959 年 28 巻 6 号 p. 402-407
    発行日: 1959/12/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    栽培クワの初秋期における摘葉強度と摘葉後の生長の関係を分析した。
    摘葉強度は無摘葉, 下部1/2摘葉, 下部2/3摘葉, 全摘葉とし, 摘葉後の葉・茎・根の生長量が摘葉強度によつてどのようになるかを調べた。
    葉と茎の生長量は実測し, 根の生長量は摘葉後の積算総生産量から葉・茎の生長量と茎の呼吸量をひいて求めた。
    葉の生長量は下部2/3摘葉区, 全摘葉区, 下部1/2摘葉区, 無摘葉区の順に多く, 茎・根の生長量はこの逆であつた。
    同化生産物の分配割合は摘葉量の多いものほど葉への分配割合が大となり, 根へのそれは少なくなる。特に全摘葉区では摘葉後17日間ほどは総生産量が, 葉・茎の生長量をまかなえず, この期間貯蔵物質を使つていることがうかがわれ, 樹勢を害することが推察された。
  • (II) 晩秋期の摘葉強度と摘葉後の生長の関係
    秋山 文司
    1959 年 28 巻 6 号 p. 408-411
    発行日: 1959/12/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    栽培クワの晩秋期における摘葉強度と同化生産物の分配の関係を明らかにした。無摘葉・先端30cmのこし摘葉, 先端15cmのこし摘葉, 全摘葉の4試験区において摘葉後の葉・茎・根の生長量を調査した。葉・茎の生長量は実測し, 根の生長量は摘葉後の積算総生産量から葉・茎の生長量と茎の呼吸量をひいて求めた。
    摘葉後の葉生長量は初秋期とちがい, 摘葉がはげしくなる程減少し, 一方茎の生長量は大きく, したがつて茎呼吸量も増大するので, はげしく摘葉した区では総生産量が少ないのに消粍が大きく, かえつて根の貯蔵養分を消粍することになり, 樹勢を著しく害することが推察される。
  • (I) 病蚕繭の一般性状について
    加藤 康雄, 土橋 俊人
    1959 年 28 巻 6 号 p. 412-415
    発行日: 1959/12/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    製糸原料繭中に多数混在する各種病蚕繭の性状を知るために, 実験的に作つた饗蛆寄生繭, 硬化病繭および軟化病繭の中, 製糸原料繭中に混在するものと同程度のものについて, これを正常繭と比較検討して次のような結果をえた。
    1) 蟹蛆寄生繭は正常繭に比べて, 繭糸量, 繭糸長共に劣り, 平均繭糸繊度は一般に太目の傾向がある。
    2) 硬化病繭も極めて劣性を示し, 糸量で15%, 糸長で20%の低下がみられ, また平均繭糸繊度は一般に太い傾向がある。
    3) 軟化病繭については均一な試料がえ難いので確言できないが, 糸量, 糸長は低減し, 繭糸繊度は細く吐出される傾向がある。特に病蚕体の腐敗したものにこの傾向が顕著である。
  • (II) 病蚕繭々糸の強さ及びそのセリシン量について
    加藤 康雄, 土橋 俊人
    1959 年 28 巻 6 号 p. 416-420
    発行日: 1959/12/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    The inferiority of various kinds of cocoons made by diseased silkworms were investigated from the standpoint of tenacity, elongation and degumming loss of their baves and the following results were obtained.
    1) The tenacity and elongation of diseased baves were inferior to those of the healthy ones, and this tendency is more severe the worse the disease becomes.
    2) The degumming loss of diseased cocoons was in all cases greater than that of the healthy ones.
    3) The sericin quantity in the outer layer did not so differ between diseased and normal cocoons. However in the inner layer the sericin quantity in diseased cocoons was greater than normal.
  • (1) 繭の吸水方程式について
    久我 睦男
    1959 年 28 巻 6 号 p. 421-424
    発行日: 1959/12/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    繭層の多孔組織に類似した開孔をもつガラス製の容器 (繭模型) を試作し, このものについて温度差と吸水量との関係を示す吸水方程式を誘導し, 同時に吸水実験を行って吸水量を測定した結果, 実測吸水量は吸水方程式から求めた理論吸水量に略々等しい。
    即ち, 吸水方程式の誘導に際しては, 温度差以外に水圧, 表面張力, 開孔の大きさ等の吸水抵抗に対する考慮が必要である。又, 吸水方程式を応用して, 高温部に蒸気及び熱水を用いた場合の吸水量の比較を行った。
  • (II) 繭層の通気性にいて (その1)
    久我 睦男
    1959 年 28 巻 6 号 p. 425-428
    発行日: 1959/12/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    最も単純な単孔について通気抵抗の理論的考察を行うと同時に, 通気抵抗の測定装置を試作し, 単孔, 及び多孔組織について測定を行った。
    その結果, 単孔の通気抵抗は開孔の断面積で与えられ, 実験式は理論式によく合致するが, 多孔組織の通気抵抗は組織の構成要素によりきわめて複雑な挙動を示す。即ち, ガラスフィルターの如き比較的均整な多孔組織の厚さ及び表面積と通気抵抗との間には簡単な比例関係が存在するが, 空隙の大きさ, 或いは密度等により各ガラスフィルターは固有の通気抵抗を示すものである。
  • (III) 繭層の通気性について (その2)
    久我 睦男
    1959 年 28 巻 6 号 p. 429-432
    発行日: 1959/12/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    前報に引き続き, 繭層の通気性について検討を加えた。
    その結果, 繭層の通気抵抗は品種差, 個体差, 及び部位差により, きわめて複雑な挙動を示すものである。しかしながら, 上簇環境の良否, 乾燥処理の有無, 水浸処理の有無等と繭層の通気性との関係については, かなり判然とした傾向がみとめられる。
  • 菱谷 政種
    1959 年 28 巻 6 号 p. 433-437
    発行日: 1959/12/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    まず分析の基礎資料として, 蚕糸局編輯にかかる「全国器械製糸工場調 (昭11)」をとり上げこれより規模別生糸加工費をとり, また規模別生糸生産係数を繰糸工, 繰糸機械別に算出し, 3者の多元相関々係を見ることによつて, 加工費が両生産係数と如何に密接な関係を有するかを検出し, また回帰線の示す変数の係数値の大きさによつて, 生産係数のうち,何れが加工費と密接な関係を有するかを明らかにした。
  • 菱谷 政種
    1959 年 28 巻 6 号 p. 438-441
    発行日: 1959/12/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    以上を総合し, かつ要約すれば次の如くである。
    1) 製糸における生産係数は, 戦後著しく低下した。それは主として生糸の目的繊度の変更に基づくものである。
    2) 戦後製糸業においては, 自動繰糸機の発明を見, しかもそれは着々と実用化しつつある。
    このため自動機の普及に伴い, その優れた性能 (低い生産係数) は, 漸次産業全部の水準を支配し, 生産係数の低下は加速された。
    3) 多条機は, 戦前においては, 製糸業全体の水準よりも高い生産係数 (就中繰糸機械の生産係数) を有したが, 戦後品位面における隔差は縮少し, ために多条機も, 一般繰糸機と同じく能率的繰糸法に転換し, その生産係数も著しく低下した。
    4) 昭和33年を同2年と比較すると, 繰糸機械生産係数において67.5%, 繰糸工生産係数において82.8%を低減しており, 更に今後の傾向を現わすものとして, 自動繰糸機のそれを見ると, 繰糸機械において78.3%, 繰糸工において91.1%を低減している。ここに今後の加工費の低下の傾向を類推し得よう。
  • (I) 桑園経営について
    堀田 剛吉
    1959 年 28 巻 6 号 p. 442-448
    発行日: 1959/12/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    本研究は桑園経営経済学的観点よりまとめたものであるが, それを要約すると次のごとくである。
    1) 桑樹は自然的条件からみると, 品種の差異はあつてもかなり広範囲に適応できる。ゆえに桑園の立地は社会経済的条件と養蚕業者の個人的事情に強く影響される。
    2) 桑園は社会経済面からみると・労働集約的経営で労働生産性が低いから, 賃銀の安いところに立地しやすい。しかし, 他作物との補完補合関係から都市近郊にも栽培される場合もある。
    3) 生産費分析では労賃と肥料が大きな比重を占め, この両者は桑園経営合理化解析の中心点といえる。しかし労賃合理化は農機具の利用と共同作業の推進に集約される。
    4) 肥料は自給化の向上を図るため, 家畜とのつながりを重視し, 飼料間作による厩肥生産を問題とした。
    5) 桑園計画化については, その改善方法も含め, これらを他部門との関連と桑園内部の問題とにわけて追及したが, 最終的には養蚕農家の農業所得の最大化に結びつくものでなければならぬ。
  • W. F. BOIS, K. M. SMITH
    1959 年 28 巻 6 号 p. 449
    発行日: 1959/12/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
  • 1959 年 28 巻 6 号 p. 450
    発行日: 1959年
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
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