日本蚕糸学雑誌
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49 巻, 2 号
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  • 桑原 昂, 仲道 弘, 多々良 尊子
    1980 年 49 巻 2 号 p. 81-85
    発行日: 1980/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    パークロルエチレン (Cl2C=CCl2, パークレン) 分解生成物 (2種) または添加安定剤 (3種) による絹の変色および脆化について調べた。
    1. pHについては, 分解生成物である塩化トリクロロアセチル, トリクロル酢酸は強い酸性, 添加安定剤であるプロピルアミンはかなり強いアルカリ性, フェノール, エポキシプロパンは中性に近い弱酸性であることが判った。
    2. 強伸度の低下は, トリクロル酢酸が最も大きく, フェノール, エポキシプロパン, プロピルアミンは同位でこれに次ぎ, 塩化トリクロロアセチルはほとんど変化がないことが判った。
    3. 黄変度はプロピルアミンが最も大きく, 次いでトリクロル酢酸, 塩化トリクロロアセチル, フェノール, エポキシプロパンの順であることが判った。
    4. 退色率は酸性染料, 1:2型金属錯塩染料ともにトリクロル酢酸が大きく, 40℃での塩化トリクロロアセチルがこれに接近し, 次いでフェノール, プロピルアミン, エポキシプロパンの順であるが, 1:2型金属錯塩染料の方がやや退色しにくいことが判った。
    5. このような結果から, 絹はパークレン分解生成物のうち特にトリクロル酢酸によって脆化, 変色し次いで添加安定剤のうちプロピルアミン, フェノールの影響をうけることが判ったが, 実際のドライクリーニングでは, これらが相互に作用するので脆化, 変色または退色が一層助長され易いことが想定される。
  • III. 有機溶媒で処理した絹糸の物理的性質
    大木 良一, 平林 潔, 重松 正矩, 荒井 三雄
    1980 年 49 巻 2 号 p. 86-90
    発行日: 1980/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    有機溶媒で処理したのち, 十分乾燥させた絹糸を用いて絹糸の力学的性質を測定し, 内部微細構造変化との関係を検討した結果, つぎのようなことが明らかとなった。
    1. 絹糸を有機溶媒で処理したのち乾燥し, その機械的性質を調べると強力とヤング率はやや低下し, 伸度は僅かに増加する傾向を示した。
    2. 有機溶媒処理前後の絹糸の赤外吸収スペクトルとX線回析像には, いずれも差が認められないことから, 化学結合の生成や分子構造的な変化はないとみられる。
    3. 複屈折ならびに比重の低下, エチルアルコール処理絹糸の tan δならびにスズ増量率の増加から, 有機溶媒処理により絹糸は非晶領域における微細空隙を増加すると考察された。
  • 小林 睦生, 浜野 国勝, 向山 文雄
    1980 年 49 巻 2 号 p. 91-94
    発行日: 1980/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコの一突然変異であるNd蚕の5齢から蛹期にかけての窒素収支の特徴を明らかにするため, 人工飼料を用いて窒素の消化試験を行い, つぎの結果を得た。
    1. Nd蚕の食下総窒素量は正常蚕 (日124号×支124号) に較べてはるかに少なく, 正常蚕の約60%であった。しかし消化率に差は認められない。
    2. Nd蚕の尿酸排泄量は3日目以後急激に増加し, 総排泄窒素量に占める尿酸態窒素の割合はNd蚕では約24%に達したが, 正常蚕では約7%であった。
    3. Nd蚕が繭糸蛋白として体外に排出する窒素量は, 正常蚕の約25%にすぎない。
    以上のようにNd蚕は窒素食下量が少くて排泄尿酸量が多いために, 繭糸として排出する窒素量が少くても, 正常に化蛹しうるものと考察した。
  • 田中 幸夫, 草野 忠治
    1980 年 49 巻 2 号 p. 95-99
    発行日: 1980/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕体液アミラーゼ活性の変化を3齢初期から羽化までの期間, 支124号と郡華×芳春について調査した。なお, 5齢起蚕時以後は雌雄別々に測定した。
    体液アミラーゼ活性は, 3, 4齢期を通じて速やかに上昇し4齢未期に最高となり, 脱皮の際若干減少するものの5齢期間中高い活性を保った。吐糸開始の頃から活性は減少を始め, 化蛹時には5齢期のほぼ2/3となった。ここまでの変化は2品種ともほぼ同じであり雌雄差もほとんど無かった。蛹の期間において, 支124号では活性は再び増加し化蛹8日目でピークに達し, 以後減少してゆく変化をたどったが, 郡華×芳春では雌の体液アミラーゼ活性が化蛹9日目頃若干高くなるのみで, 雄の活性は徐々に減少してゆく変化をたどった。蛹の期間においては両品種とも雌の活性が雄のそれより高かった。
  • 堀江 保宏, 山本 尚義, 柳川 弘明, 渡辺 喜二郎, 中曾根 正一
    1980 年 49 巻 2 号 p. 100-106
    発行日: 1980/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコの人工飼料組成に家畜・家禽用の飼料素材を導入し, カイコの栄養要求量の条件を満たし, しかも比較的低廉な飼料組成を設計するために線型計画法を応用した。本方法で設計した飼料組成に, カイコ人工飼料に特異的な素材を添加し, その混合物75部に桑葉粉末25部を加えて人工飼料を調製した。
    飼育成績は未だ対照飼料に比べて劣っていたが, 若干改良した飼料では十分飼育が可能であり, 線型計画法をカイコ人工飼料組成の設計に利用できる可能性のあることがわかった。
  • 倉田 俊一, 柳沼 利信, 小林 迪弘, 古賀 克己, 坂口 文吾
    1980 年 49 巻 2 号 p. 107-110
    発行日: 1980/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1. カイコの胚発生過程におけるDNA量の変動を調べるために, 全卵の酸不溶性画分中のDNAの定量分析を行った。その結果, 非休眠性卵では卵当りのDNA量は産下後から2~4日目まで急速に増加し, その後は徐々に増加して, 8日目までに260ngに達した。一方, 休眠性卵ではDNA量は24時間目までは急速に増加し, その後は増加速度が低下して, 産下後2日目に卵当り21ngになるとそれ以後の増加は見られなくなった。
    2. 2倍体ゲノム当りのDNA量 (1pg) を用いて, 上記の結果から卵1個当りの全細胞数の変動を推定した。
  • 佐藤 光政, 松波 達也, 大山 勝夫
    1980 年 49 巻 2 号 p. 111-116
    発行日: 1980/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    桑枝条切除の際に残された葉がその後の生長において果たす役割りを解明するために, 枝条切除の際に基部に4葉をつけて切除したのち, 半数についてはこれらの4葉を摘除し (摘葉区), 残りの半数については4葉をつけたままにし (残葉区), その後の生長と貯蔵器官のアミラーゼ活性および貯蔵炭水化物の消長について比較し, 次の結果を得た。
    1. 1個体あたりの新条は残葉区の方が摘葉区より長かった。
    2. 枝条および株の皮部のアミラーゼ活性は, 枝条切除後上昇して切除時の値の1.5~2倍程度になったが, 45日目ごろには切除時の水準に戻った。両区の活性を比較すると摘葉区の活性が残葉区の値を上回った。
    3. 枝条切除後に展開した新しょうの重量は残葉区が摘葉区を常に上回った。また貯蔵器官の重量は枝条切除後に減少し, その後増加に向かったが, 残葉区は摘葉区に比べ減少の程度が少なく, また回復の時期が早かった。
    4. 貯蔵器官中の糖およびでんぷん含有量は枝条切除後に減少し, その後回復へ向かったが, 残葉区では摘葉区に比べ減少の程度が少なく, また回復の時期が早かった。
    5. これらの結果から, 枝条切除後における残葉の役割りとして, 第一義的にはその光合成作用による炭水化物等の生産によるものと推測された。
  • 金勝 廉介
    1980 年 49 巻 2 号 p. 117-123
    発行日: 1980/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコの消化液アミラーゼの精製法を改良するための検討と, 得られた酵素標品を用いてアミラーゼ産生組織検索を目的とした血清学的研究を行なった。得られた結果は下記のとおりである。
    1. 消化液アミラーゼ1000U当り4gのバレイショデンプン粒を吸着体として, 20%エタノール存在下における吸着, pH 8.5, 45℃による溶離およびCM-Sephadex C-50カラムクロマトグラフィーにより, +ae型のカイコ幼虫の消化液よりアミラーゼを高能率で精製する条件を設定した。
    2. 上記により得られた酵素標品を用いて, 抗カイコ消化液アミラーゼ・ウサギ抗体を作製した。
    3. この抗血清と反応する抗原性は+ae型のカイコの幼虫においては, 消化液の他に, 中腸前部および中腸中部に検出された。中腸組織中の抗原もまた酵素活性を有する。
    4. +ae型のカイコの幼虫の中腸以外の他組織, およびae型のカイコの幼虫のあらゆる組織には抗原性が存在しないことが確かめられた。
  • 金勝 廉介
    1980 年 49 巻 2 号 p. 124-132
    発行日: 1980/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコの消化液アミラーゼの産生組織に関する知見を得る目的で, 螢光抗体法による酵素組織化学的観察を行なった。得られた結果は下記のとおりである。
    1. 消化液アミラーゼは, +ae型のカイコの前腸皮膜細胞, 噴門弁細胞, 中腸前部および中部の円筒細胞により産生される。また, それは中腸前部において最も顕著であるほか, 中腸中部においては皮膜細胞層の褶曲の陥凹部を形成する細胞において主として行なわれることが判明した。
    2. 細胞内のアミラーゼは顆粒状の像を呈し, その形態は前腸細胞において最も微細であり, ついで中腸前部ではやや大型, そして中腸中部で最も粗大な形態を示した。また前腸および中腸前部では核をのぞく細胞質全域に存在するのに対し, 中腸中部では細胞質のうち管腔側に偏在した部分に観察された。
    3. 消化液中にアミラーゼ活性をもたないae型のカイコにおいては, これらの像は観察されない。
    4. 細胞内に観察された顆粒状の像はアミラーゼを含むチモーゲン顆粒であり, それは管腔内に分泌された後, 一旦囲食膜表面にとどまりその後徐々に消化液中に分散してアミラーゼを放出するとの考察を行なった。
  • (2) 家蚕の雌雄モザイクにおける脂肪組織細胞の組織学的観察
    山崎 アツ美, 前島 潤子, 金勝 廉介, 長島 栄一
    1980 年 49 巻 2 号 p. 133-139
    発行日: 1980/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕の脂肪組織に見られる性差に着目し, 雌雄モザイク個体の体腔内脂肪組織における組織化学的観察を行なった。観察時期は吐糸期・化蝋直後および化蛾直後である。
    1. 雌の脂肪組織細胞にはタンパク顆粒が充満しているのに対し, 雄のそれにはタンパク顆粒は比較的少なく, 液胞が多い。また核の形態も顕著に異なる。
    2. 吐糸期の雌雄モザイクにおける雌部位の脂肪組織細胞の状態は雄のそれにやや近くなる。
    3. 化蛹直後には, 逆に雌雄モザイクの雄部位の脂肪組織細胞の液胞中にタンパク顆粒を含有するなど, やや雌の脂肪組織細胞に近い状態になる。
    4. 成虫においては雌雄モザイクの雌雄両部位の脂肪組織細胞は類似した状態を保ったまま, 全体として非常に雄に近い形態をとる。
    5. 以上の事実から, 家蚕においても性に関連する物質の存在が示唆され, 雌雄モザイクは間性的な要素を含むものと考察された。蛹の発育にともなって雌雄モザイクは雌化の方向に動き, さらに成虫では逆に雄化する傾向が認められる。
  • III 非イオン界面活性剤の繭層への吸着ならびに繭層セリシン溶解挙動
    北村 愛夫, 柴本 秋男, 志賀 達悦
    1980 年 49 巻 2 号 p. 140-146
    発行日: 1980/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    繭層を非イオン活性剤水溶液中に浸漬し, 繭層セリシンの溶出と界面活性剤の吸着とが併起する場での吸着挙動とセリシンの溶解性との関連について研究し, つぎのことを明らかにした。
    1. 非イオン活性剤によるセリシン溶解挙動は吸着量と密接な関係をもち, この吸着性は非イオン独特の温度特性である曇点と, またミセル形成臨界濃度と関連しあっていることがわかった。
    2. 非イオン活性剤が単純にセリシンの溶解を抑制するというものでなく, このことはミセル形成臨界濃度以上の濃度処理においていわれることで, ミセル形成臨界濃度以下では, 吸着量の増大するほどセリシン溶解は促進されることを明らかにした。
  • 赤井 弘
    1980 年 49 巻 2 号 p. 147-151
    発行日: 1980/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    幼虫脱皮直後の体表面に観察される結晶物の微細構造, 元素組成, ならびにマルピギー管内の結晶物との関係を明らかにする目的で, 走査電顕による観察およびX線マイクロアナリシスによる微量分析を行った。
    1. 幼虫脱皮直後の体表面に分布する結晶物は不斉形の円盤状をなし, 大きさも不同であり, 体表面に広く分布している。とくに, 頭部の頂板上や周気門輪の凹所などでは高い分布密度で観察された。
    2. X線微量分析から, 体表面に分布する円盤状の結晶物およびマルピギー管内の結晶物はともに多量のカルシウムを含有し, 両者の分析結果がほぼ一致していることから同一物であるものと判断した。
    3. 以上の結果から, 上述の円盤状結晶物はマルピギー管に由来するものと考えられる。幼虫脱皮期にマルピギー管の内容物は, 新, 旧クチクラの間隙に流出するため脱皮後の体表面にはマルピギー管に由来する結晶物が分布するものと考えられる。
  • 金 三銀, 甲斐 英則, 四方 正義
    1980 年 49 巻 2 号 p. 152-158
    発行日: 1980/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコ卵の休眠性を, 卵殻の透過性と脂質との関係から検討するため, まず卵の水分透過臨界温度 (CT) を測定し, その意味を考察した。
    はじめに休眠卵について調べたところ, 産下後10時間以内の卵のCTは約44.0℃であり, 産下48時間後のCTは, 約46.0℃であった。また, 完全に休眠卵色を呈した産下144時間後のそれは, 約50.5℃にまで上昇した。一方, 非休眠卵のCTは, 産下後10時間以内および48時間後がそれぞれ約45.0℃および約46.5℃であり, 反転期をすぎたと思われる産下144時間後でもそのCTは約44.0℃であった。このように, 産下直後の休眠性卵と非休眠性卵のCTにはほとんど差がなかった。しかし, 非休眠卵と異なり休眠卵のCTは産下後の時間とともに上昇し, 144時間後には非休眠卵との間に明らかな差を生じた。
    以上の結果は, 卵内水分の保持に関与する脂質層がカイコ卵に存在し, 休眠卵では休眠の進行にともない, その脂質が変化していることを示唆する。しかし, 非休眠卵のCTとの間に差を生じるのが休眠開始後であることは, その差がカイコ卵の休眠誘導因子として機能している可能性の少ないことを暗示している。
  • I さし穂採取部位と発芽・発根について
    村上 毅
    1980 年 49 巻 2 号 p. 159-166
    発行日: 1980/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    桑の前年伸長枝の4つの異る部分から採取, 調整したさし穂を28℃, 弱光下でさし木し, 発芽, 発根量と, さし穂乾量の変化を測定し, 再生器官の形成, さし穂の生長および呼吸に対する貯蔵物質の分配について検討を加えた。その結果を要約すれば次のとおりである。
    1. さし木後新しく形成される新梢および根の量は, いずれもさし穂採取部位が枝条基部に近いものほど多い。
    2. 新梢および新根はさし木後30日目にほぼ最大に達し, その後はほとんど増加しなかった。
    3. 発根率はさし穂採取部位によって差がみられたが, 部位IVにおいても80%以上であった。
    4. さし木後40日目のさし穂の生存率は部位Iから順に90, 80, 70, 60%以上であった。この事実は好適なさし木条件下ではさし穂として利用出来る枝条の範囲がかなり広げられることを示唆しているものと考えられる。
    5. さし木後30~40日目までに, さし穂の乾物重は10~20%減少し, そのおよそ30%程度が根および新梢に転換し, またさし穂の生長には10%弱が利用されたものと考えられる。
    6. したがってさし木後30~40日目までの間に, 利用貯蔵物質量のおよそ60%はさし穂および再生器官の呼吸によって消費されたものと考えられる。
    7. 呼吸によって消費された貯蔵物質量はさし穂の皮部表面積とほぼ比例しており, さし穂直径の細いものほど単位容積当り呼吸消費量が多くなる。したがって同じ容積のさし穂であれば, 直径の大きいものほど有利なものと考えられる。
  • 塚田 益裕
    1980 年 49 巻 2 号 p. 167-168
    発行日: 1980/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 宮川 正通, 酒井 英卿
    1980 年 49 巻 2 号 p. 169-170
    発行日: 1980/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 塚田 益裕, 平林 潔
    1980 年 49 巻 2 号 p. 171-172
    発行日: 1980/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 有賀 勲
    1980 年 49 巻 2 号 p. 173-174
    発行日: 1980/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
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