パークロルエチレン (Cl
2C=CCl
2, パークレン) 分解生成物 (2種) または添加安定剤 (3種) による絹の変色および脆化について調べた。
1. pHについては, 分解生成物である塩化トリクロロアセチル, トリクロル酢酸は強い酸性, 添加安定剤であるプロピルアミンはかなり強いアルカリ性, フェノール, エポキシプロパンは中性に近い弱酸性であることが判った。
2. 強伸度の低下は, トリクロル酢酸が最も大きく, フェノール, エポキシプロパン, プロピルアミンは同位でこれに次ぎ, 塩化トリクロロアセチルはほとんど変化がないことが判った。
3. 黄変度はプロピルアミンが最も大きく, 次いでトリクロル酢酸, 塩化トリクロロアセチル, フェノール, エポキシプロパンの順であることが判った。
4. 退色率は酸性染料, 1:2型金属錯塩染料ともにトリクロル酢酸が大きく, 40℃での塩化トリクロロアセチルがこれに接近し, 次いでフェノール, プロピルアミン, エポキシプロパンの順であるが, 1:2型金属錯塩染料の方がやや退色しにくいことが判った。
5. このような結果から, 絹はパークレン分解生成物のうち特にトリクロル酢酸によって脆化, 変色し次いで添加安定剤のうちプロピルアミン, フェノールの影響をうけることが判ったが, 実際のドライクリーニングでは, これらが相互に作用するので脆化, 変色または退色が一層助長され易いことが想定される。
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