日本蚕糸学雑誌
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50 巻, 6 号
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  • 第3報 根・株・枝条および葉における乾物重の推移
    菊池 宏司
    1981 年 50 巻 6 号 p. 465-471
    発行日: 1981/12/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    桑の栽植密度と生育との関係を生態学的視点から明らかにするため, ほ場を用い実験を行った。密度は, 10a当500, 1000, 3000, 6000, 10000および15000株の6段階に設定した。桑品種は剣持を用い, その古条を1977年の5月上旬に, うね間・株間を等間隔として方形にさし木して造成した。調査は植付2年目のほ場を供して, 器官別乾物重について行い, 次のような知見を得た。
    1 根の乾物重は, 4月から6月にかけて減少しその後増加した。減少の度合は密植の4つの区で大きく, 疎植の2つの区で小さかったが, その後9月まで増加した。増加率は疎植区ほど大きく, 4月24日に対する9月25日の重量は, 10a当り10000株以上の密植区では約1.3倍であったのに対し, 500株区では4.5倍を示した。
    株の乾物重は, 根と同様に季節的変化を示したが, 減少の度合は根より少なかった。
    根と株の合計重に対する根の重量の比率は, 一時減少し, その後増加した。比率が最も小さくなる時期は, 15000株区では6月上旬, 1000株以下の区では8月下旬であり, 疎植になるにつれて遅くなる傾向を示した。
    2 枝条や葉の乾物重は, 密植区で早い時期に急激に増加し, 疎植区では遅れて増加したが, いずれの時期にも密植区が疎植区より多かった。また, 葉では区間の差が最も大きかったのは6月下旬であり, 枝条では8月から9月にかけてであった。
    3 4月24日から9月25日までの乾物重増加量の各器官への配分をみると, 葉や株では栽植密度による差はほとんどなかったが, 枝条では密植区ほど多く, 逆に根では疎植区ほど多い傾向がみられた。
  • 渡部 仁, 清水 孝夫
    1981 年 50 巻 6 号 p. 472-477
    発行日: 1981/12/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    養蚕農家に濃核病ウイルス (DNV) の分布が見られるにもかかわらず, 濃核病が発生しないのは現在飼育されている蚕品種の多くがDNVに非感受性であるためである。
    本研究では濃核病流行の基本的要因の一つは感受性蚕品種の飼育であるという観点から, 保存蚕品種や過去において普及率の高かった実用品種のDNV感受性を調査し, 長野県の集団違作資料を参考に“感受性品種の変遷”の面から, 過去において濃核病が流行した時期は昭和33~45年の夏秋蚕期であろうと推定した。またDNV感受性品種では, DNVと伝染性軟化病ウイルス (IFV) の間に synergism が認められたので, 当時の濃核病は伝染性軟化病と併発した形で流行したものと考察した。
  • 片岡 紘三
    1981 年 50 巻 6 号 p. 478-483
    発行日: 1981/12/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    営繭中の液状絹および吐糸直後の繭糸の含水率について検討した結果, 以下の点が明らかとなった。
    1) 営繭中の蚕および繭糸の重量変化から吐糸直後の繭糸の含水率は69.5%と計算された。
    2) 吐糸過程で液状絹の含水率は2回大きく減少する。中部糸腺では, 前部糸腺に近いほど液状セリシンの量が多いため液状絹の含水率は数%増加する。
    3) 1回目の減少は後部糸腺と中部糸腺の境界で起き, この減少は液状フィブロインがセリシンによって脱水されるために起きる。その結果, 中部糸腺における液状フィブロインとセリシンの含水率はそれぞれ1対1.15の割合になる。
    4) 2回目の変化は吐糸管の圧糸部で液状絹が繊維化するとき起きると推察した。
  • I 糸故障数の理論的解析
    白 倫, 嶋崎 昭典
    1981 年 50 巻 6 号 p. 484-489
    発行日: 1981/12/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    待ち行列の理論を用いて繰糸生産過程中のスナップ糸故障数の分布を考察した。初めに, つぎの仮定を設ける。
    (1) 糸故障の発生間隔は平均値1/λの指数分布に従い, それらは互いに独立におきるものとする。
    (2) 修理サービス時間は確率 Cr(∑kr=1Cr=1)で, パラメータrのアーラン分布に従う。それらはまた互いに独立におきるものとする。
    (3) 糸故障の発生と修理の終了とは互いに独立な事象とする。
    上述の仮定のもとで糸故障分布の確率母関数 P (y)
    P(y)=P0(1-y)∑kr=1Cr(1+θ-θy)-r/∑kr=1Cr(1+θ-θy)-r-y
    となる。ここに, 1段階の平均修理時間は1/μで一定であり, θ=λ/μで0≦y≦1, P0=1-θE(r)である。また, 平均糸故障数は
    E(N)=(1-P0)(1+θ+P0)+σr2θ2/2P0
    で与えられる。ここに, E(r)=∑kr=1rCr, σr2=∑kr=1(r-E(r))2Crである。
  • 石黒 善夫
    1981 年 50 巻 6 号 p. 490-494
    発行日: 1981/12/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    絹糸およびスチレングラフト重合絹糸の横断面にイオンエッチングを行ってフィブリル構造を露出させた試料を, 走査電子顕微鏡で観察し, スチレングラフト重合絹糸のグラフトポリマーの繊維内における充填部位について検討した。その結果から次のことが考察された。
    絹糸にスチレンをグラフト重合加工すると, スチレンはフィブリル内部に浸透し, そこにグラフト重合して充填する。フィブリル間隙には充填しない。加工率を高めると, フィブリルに充填するポリマーの量が増加するため, フィブリルの径が拡大され, その結果として繊維断面積が大きくなる。
  • 山下 忠明
    1981 年 50 巻 6 号 p. 495-500
    発行日: 1981/12/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    桑での光合成産物の転流形態とそれの非同化器官での蓄積過程を明らかにするため, 水耕栽培した桑幼木を2時間14CO2を含む空気中におき, 14CO2を固定させた。14CO2の固定後ひきつづき14CO2を含まない空気中で光合成をおこなわせ, 14C同化生成物の移行をしらべた。14CO2固定終了後2, 6, 10時間後に収穫し, 葉, 枝条皮部, 枝条木質部, 株皮部, 株木質部および根に分け試料を採取した。固定直後には14C同化生成物の99%は葉にとどまっているが, 2時間後には枝条および株の皮部への転流がみとめられ, このときの枝条皮部での放射能は固定終了後6時間および10時間におけるよりも高い値を示した。固定終了10時間後にもなお, 個体全体の放射能の80%近くは葉にとどまっていたが, 非同化器官のなかでは根および株皮部に多くの14C同化生成物の転流がみとめられた。
    いずれの部位でも放射能分布はつねに糖分画中で高く, とくに, 葉および枝条皮部では固定終了直後には全放射能の40%がシュクロースにとり込まれていた。
    根では他の部位より多くの放射能がアミノ酸分画に分布し, そのなかではアスパラギンおよびグルタミンに多くの14Cがとり込まれていた。
  • 徳永 達郎, 石黒 善夫
    1981 年 50 巻 6 号 p. 501-505
    発行日: 1981/12/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    絹フィブロイン繊維へのメタクリルアミドのグラフト重合の条件を, モノマー濃度, 初期pH, N2ガスの流量, 浴比, 反応温度, 反応時間を変えながら過硫酸カリウムを触媒とする溶液系で検討した。その結果にもとづいて, 生産過程における好ましい反応条件を, グラフト繊維を大量に生産するようにつくられた装置を用いて決定した。
    最適条件は, 絹フィブロイン繊維30kg, モノマー, 38% (O. W. F), 浴比13倍, 過硫酸カリウム1.0% (O. W. F), 初期pH約3.8の溶液循環系で行う方法であった。昇温プログラムは3段階とし, (i) 室温から60℃までを15minで, (ii) 60℃から75℃までを25minで (ii) 75℃から83℃までを20minで昇温し, プログラム完了までに60分を要した。この条件により, 約33%のポリマーをもつグラフト絹繊維を再現性よく得ることができた。
  • II. 齢中期における明暗切替時期と就眠脱皮時期との関係
    鷲田 純彦
    1981 年 50 巻 6 号 p. 506-512
    発行日: 1981/12/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    就眠時期を決定する暗刺激の有効性を明確にするため, 齢の前半を明育, 後半を暗育として暗への切替時期と就眠, 脱皮時期との関係を調査した。
    (1) 暗への切替時期を6時間ずつ遅らせると就眠, 脱皮時期も6時間ずつ遅れ, 各区とも就眠は暗切替から30~36時間後に, 脱皮はこれより更に12~18時間後となった。
    (2) 切替後の暗期の長さは, 就眠, 脱皮の開始に影響を与えなかったが, 餉食より48時間後の切替時期で, 最低6~4時間は必要であった。
    (3) 暗への切替時期が遅く, 切替時の体重が重い程, 眠蚕体重も重くなった。
    (4) 齢の前半を明育, 後半を暗育とする各区は, 同時に行った全明育及び全暗育にくらべて, 経過が不斉一であることを認めた。
    以上の結果から, 齢の長さ及び眠蚕体重の決定に明暗条件がはたす役割, 及び暗刺激が就眠, 脱皮を誘導する現象について内分泌機構等を考察すると共に, 稚蚕育における応用面にも言及した。
  • II. 囲心細胞における Peroxidase の取り込みとタンパク性顆粒の形成
    田中 一行, 池田 光治
    1981 年 50 巻 6 号 p. 513-519
    発行日: 1981/12/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    囲心細胞のタンパク性顆粒の形成機構を究明するため, Peroxidase (HRP) をトレーサーとして, 電顕組織化学的に追究した。
    1. 血液中に注射されたHRPは, 共通被膜, 細胞間隙, 形質膜の陥入に順次輸送される。
    2. 細胞間隙および形質膜の陥入部のHRPは, coated vesicies と細管状構造によって濃縮され, 細胞質部に取り込まれる。
    3. HRPを取り込んだ coated vesicles と細管状構造は, 液胞状顆粒と融合し, タンパク性顆粒に発達する。
  • II 糸故障数の確率分布について
    白 倫, 嶋崎 昭典
    1981 年 50 巻 6 号 p. 520-526
    発行日: 1981/12/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    前報の確率母関数から糸故障数分布 pn がつぎのように計算できることを示した。
    pn=(u(n-1)(0)/(n-1)!-u(n-2)(0)/(n-2)!)p0
    Pr(N≦n)=u(n-1)(0)/(n-1)!p0 (n≧1)
    ここに p0=1-θ∑kr=1rCr, u(n)(0)は
    u(y)=1/∑kr=1Cr(1+θ-θy)-r-y
    n階導関数でyを0とした値である。またCrは糸故障の種類別出現確率で, θは単位平均修理時間を1/μ, 平均発生間隔を1/λとするときθ=λ/μで与えられる。
    工場調査によって, 故障種類別の区分を, 小故障は節とりだけの修理で, 中故障, 中大故障, 大故障, 特大故障は粒付調整, 接緒器通し, 集緒を通し, よりかけ, 繰枠求緒などの作業をもとにしてこれらの作業の中の一つを含むもの (中故障), 二つを含むもの (中大故障), 三つを含むもの (大故障), 三つ以上含むもの (特大故障) によってそれぞれ分類した。この区分の仕方によって違う糸故障の修理時間の分布は同じ尺度パラメータμ, それぞれの位相パラメータrのアーラン分布で近似できることが知られた。それらの結果, 実測糸故障種類別の分布を用いて計算した糸故障数の理論分布と実測糸故障数の分布との関係を検討した。その結果, 故障の発生, 修理の情報から導いた理論分布は実際の糸故障数の変化状態をよく代表することがわかった。
  • 尾暮 正義
    1981 年 50 巻 6 号 p. 527-532
    発行日: 1981/12/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    白芽荊桑♀×白芽荊桑♂の若い桑実生を接穂に用いてコウゾに1~6回接木した来歴をもつ個体に着生した白色椹の色, 糖含量および葉身のアイソザイムパターンを調査し, 台木の影響を検討した。
    1. 椹の色は測色色差計を用いてL. a, b法で測定した結果, 白芽荊桑♀×白芽荊桑♂の椹は明度が低く, 色は赤と青の度合が強いのに対し, 白色椹は明度が高く, 色はやや黄色で赤味を帯びており, 両者は著しく異っていた。また, 白色椹の色とコウゾに接木した回数とは明確な関係は認められなかった。
    2. 桑およびコウゾの椹は果糖とブドウ糖がほとんどであり, 蔗糖は極めて少い。生重あたりの全糖は対照の椹が6~6.4%, コウゾの椹が6.9%に対し白色椹は8~8.9%であった。また, コウゾに接木した回数が多い程, 白色椹の糖含量も多かった。
    3. 白色椹を着生した個体の葉身におけるパーオキシダーゼおよびIAAオキシダーゼのアイソザイムパターンはコウゾに接木した回数とは無関係にすべて同じであった。また, これらはコウゾのアイソザイムパターンとは全く異なり, 白芽荊桑♀および白芽荊桑♂のバンドを共有していた。
    4. 白色椹から採った種子は発芽率, 発芽勢とも良好であったが, 本葉1, 2枚展開する頃までに葉が黄色になり, 枯死する実生が約10%あった。
  • 1981 年 50 巻 6 号 p. 534
    発行日: 1981年
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
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