桑の栽植密度と生育との関係を生態学的視点から明らかにするため, ほ場を用い実験を行った。密度は, 10a当500, 1000, 3000, 6000, 10000および15000株の6段階に設定した。桑品種は剣持を用い, その古条を1977年の5月上旬に, うね間・株間を等間隔として方形にさし木して造成した。調査は植付2年目のほ場を供して, 器官別乾物重について行い, 次のような知見を得た。
1 根の乾物重は, 4月から6月にかけて減少しその後増加した。減少の度合は密植の4つの区で大きく, 疎植の2つの区で小さかったが, その後9月まで増加した。増加率は疎植区ほど大きく, 4月24日に対する9月25日の重量は, 10a当り10000株以上の密植区では約1.3倍であったのに対し, 500株区では4.5倍を示した。
株の乾物重は, 根と同様に季節的変化を示したが, 減少の度合は根より少なかった。
根と株の合計重に対する根の重量の比率は, 一時減少し, その後増加した。比率が最も小さくなる時期は, 15000株区では6月上旬, 1000株以下の区では8月下旬であり, 疎植になるにつれて遅くなる傾向を示した。
2 枝条や葉の乾物重は, 密植区で早い時期に急激に増加し, 疎植区では遅れて増加したが, いずれの時期にも密植区が疎植区より多かった。また, 葉では区間の差が最も大きかったのは6月下旬であり, 枝条では8月から9月にかけてであった。
3 4月24日から9月25日までの乾物重増加量の各器官への配分をみると, 葉や株では栽植密度による差はほとんどなかったが, 枝条では密植区ほど多く, 逆に根では疎植区ほど多い傾向がみられた。
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