日本蚕糸学雑誌
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52 巻, 3 号
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  • 鈴木 幸一, 藤田 正男, 宮 慶一郎
    1983 年 52 巻 3 号 p. 185-190
    発行日: 1983/06/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    銅-コンスタンタンの熱電対温度センサを使用し, それをグリースで卵水引に接着して過冷却点を測定すると, センサを卵内に挿入した方法よりも非休眠卵と休眠卵の過冷却点に違いが認められた。そこで前者の方法で25℃における各ステージの過冷却点を調査したところ, 非休眠卵の産下48時間では-25.67±0.72℃で, その後胚発育にともなって徐々に増加した。休眠卵の産下48時間で-28.99±0.72℃, 10日で-30.70±1.47℃, 産下100日では-31.59±1.57℃というように休眠中の過冷却点は低く抑えられていた。浸酸処理卵および人工越冬卵の過冷却点は, 処理後胚発育あるいは胚発育の再開に従って緩慢に上昇した。以上のカイコ卵の過冷却点変動を, これまで知られている多価アルコールの量的変動に直接帰因するものではないと推論するとともに, 他昆虫のものと比較しながら考察した。
  • 成 洙一, 小林 正彦, 吉武 成美
    1983 年 52 巻 3 号 p. 191-197
    発行日: 1983/06/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコの中腸における加水分解酵素の活性の変態にともなう変化を組織化学的ならびに生化学的方法によって調べた。酸性フォスファターゼは幼虫5齢末期から活性が上昇し, 吐糸期には極めて高い活性を示した。これに対して蛹の中腸皮膜では蛹齢5日までほとんど活性が見られなかった。その後, 成虫化発育に伴って再び酵素活性が現われ, 羽化時には高い活性を示した。これらの酸性フォスファターゼの活性の変化は細胞内のリソゾームの消長とほぼ一致した。一方, 退化した幼虫の中腸を主成分とする蛹の腸管内容物では, 常に高い酵素活性が保持されていた。酸性核酸分解酵素 (DNase, RNase) の活性の変動も酸性フォスファターゼの変化とほぼ一致していた。以上のことから変態期の中腸では各種加水分解酵素が関与する組織の崩壊が一定の変態プログラムによって行われることが明らかになった。
  • ZITO SUMARDJITO, 片桐 幸逸, 平野 久, 松田 長生, 中島 健次, 北浦 澄
    1983 年 52 巻 3 号 p. 198-202
    発行日: 1983/06/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    ジャワ産の4種のクワ, Morus australis Poir., M. cathayana Hemsl., M. multicaulis Perr. およびM. nigra L. について染色体数, 葉の表面の微細構造, パーオキシダーゼアイソザイムおよび蛋白質の電気泳動像を調査した。染色体数は4種とも体細胞で28で, 2倍体であった。葉の表面の微細構造は M. cathayana, M. multicaulis および M. nigra は互に類似していたが, これら3種と M. australis とは異っていた。パーオキシダーゼアイソザイムのパターンは M. cathayanaM. nigra はI型, M. australisM. multicaulis はII型に属していた。蛋白質の二次元電気泳動像には, M. australis の低分子側に他の3種に見られない特異なスポットが検出された。以上の結果から, M. cathayanaM. nigra は比較的近縁な関係に, また M. australis と他の3種は遠縁な関係にあると推定された。
  • 篠原 恭恵, 蜷木 理, 河口 豊, 坂口 文吾
    1983 年 52 巻 3 号 p. 203-207
    発行日: 1983/06/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕の偽対立遺伝子の一つであるETcについて遺伝学的ならびに形態学的実験を行った。ETc/+同志の交配のF1においては, ETc/ETc遺伝子型の胚子が腹肢を欠くECaホモ型に類似した形態的特徴をもっていた。ETcと他のE偽対立遺伝子ENとの相互関係を交雑により調べたところ, ETcENとのヘテロ個体ではETcホモ型の表現型をとることが確認された。このことから, ETcは, ENに対して極性を示す優性の位置偽対立遺伝子 (position pseudoallele) 関係にあるものと推察される。ETc/ETc個体は反転が困難であったが, 遺伝的背景を変えたところ, 大部分のETc/ETc胚子が反転し得るようになった。反転型胚子は孵化直前まで発生が進行し致死していた。一方反転が完了し得ないETc/ETc胚子も少数あり, これは点青期の状態で致死していた。ETc/ETc胚子においては, 正常に肢の生ずる腹節の外胚葉層に見られたような細胞数の増加は起らず, また正常胚子で知られているような孵化直前の胚の伸長も認められなかった。
  • 高林 千幸
    1983 年 52 巻 3 号 p. 208-214
    発行日: 1983/06/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    自動繰糸機において使用原料繭の実繰解じょ率を時系列的に計測するために, 落繭の大きさを接触方式で検出して電圧変換し, その信号から不時落緒繭・総落緒繭をコンパレータにより判別し, 一定時間内あるいは一定繭粒数内の実繰解じょ率を演算・表示および印字する装置をマイクロコンピュータにより構成した。この装置の検出・演算性能を確かめるため, 自動繰糸機において計測実験を行い, 実繰解じょ率を時系列的に演算・表示し得ることを明らかにするとともに, 本計測手法の製糸工程管理面での有用性を確認した。
  • 稲垣 秀一郎, 山下 興亜
    1983 年 52 巻 3 号 p. 215-220
    発行日: 1983/06/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕における摂取物質の絹糸および卵形成への利用の摂取時期依存性について検討するため, 幼虫4齢1日齢から熟蚕期までほぼ毎日, 7種類の放射化合物を投与し, 繭層および完成卵に取り込まれた放射能を測定した。その結果, 14C-グリシンと14C-グルコースを5齢後期に投与した場合に繭層への取り込み割合は著しく増加した。一方, 完成卵への回収割合は投与物質の種類によって大きく2つのパターンに分れた。第1のグループは14C-グルコース, 14C-グリシン, 14C-ロイシンおよび14C-チロシンで認められたもので, 5齢前期から中期にかけて相対的に高い分配割合を示したものである。第2は35S-メチオニン, 3H-ウリジン, β-14C-シトステロール投与の場合で, 4齢初期から熟蚕期まで発育経過を通じて漸増したものである。以上の結果は絹糸および卵形成のために利用される栄養物質の摂取時期は物質の種類によって異なることを示している。
  • 石黒 善夫, 唐澤 栄
    1983 年 52 巻 3 号 p. 221-225
    発行日: 1983/06/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    製糸工場における繰糸湯汚濁の実情を明らかにする目的で, 関東地方の4工場を対象に, 汚濁の指標とされる微小生物 (細菌原生動物等) 相とその水質環境について調査した。その結果, 一般細菌数は106~108個/mlで, 水中に生息するものを中心に, 自然界に広く分布するものが多数検出された。4工場のうちの1つについて調べた大腸菌群数は103~104個Des/mlと多く, 細菌学的にかなり汚染の進行が指摘できた。原生動物, 後生動物および微細藻類も相当数検出された。BOD値は35~37mg/lで, これら指標値の高い原因として, 繰糸湯中に溶出する蚕蛹からの蛋白質, 脂質および繭からの栄養塩類たりうるセリシンが考えられ, また, 微小生物の生育にとって繰糸湯の温度条件が好適である等の理由が指摘できた。
  • 天然染料の染着機構に関する研究 I
    清水 慶昭, 清水 久美子, 奥 昌子, 木村 光雄
    1983 年 52 巻 3 号 p. 226-232
    発行日: 1983/06/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    フラボン系天然染料の未媒染並びに金属イオン (主としてAl3+) 先媒染絹に対する染着機構を, 吸着等温平衡実験から得た吸着量ならびに吸着の標準親和力 (-Δμ0) などから検討した。その結果, 次のようなことが明らかとなった: 1) 用いた染料の未媒染絹に対する吸着は Langmuir 型 (L型) で, 平衡吸着量は温度が高い程小さい。2) Al3+は絹に対してBET型の吸着等温線を示す。吸着初期から平衡に達する部分はL型で, 飽和吸着量はカルボキシル末端基量に相当する。3) Al3+先媒染絹に対する吸着もL型で, 飽和吸着量は3.1×10-4mol dye/g silk であり, この値は絹のカルボキシル末端基量とアミノ末端基量の和に匹敵する。4) 染料の吸着量はAl3+先媒染の場合が最も多く, 次いでCu2+先媒染, 未媒染の順であった。5) ルチンの場合の吸着量~pHの関係は酸性染料~絹の場合のそれに似ている。
  • 河口 豊, 藤井 博
    1983 年 52 巻 3 号 p. 233-241
    発行日: 1983/06/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    退化型小形卵系統に分離する正常蚕とsmn蚕を用いて卵形成過程における卵巣でのRNA合成と蓄積とについて追究した。正常卵巣ではtRNA並びにrRNAを含むすべてのRNAの合成は蛹の中・後期において最も旺盛となり, 逐次蓄積されていくのに伴いRNA含量が増加する。しかしながら, smn卵巣では正常と同じtRNAおよびrRNAが合成されるものの全体としての合成が極めて低く, 蓄積も起こらないのでRNA含量が少ない。正常卵巣におけるRNAの合成は主として包卵細胞と栄養細胞とにおいて行われ, 栄養細胞で合成されたRNAのみが卵細胞に移行し, 蓄積される。一方, smnにおいてもRNAは包卵細胞と栄養細胞とにおいて合成されるが, 合成能は特に包卵細胞において低い。さらに, 栄養細胞から卵細胞へのRNAの移行はほとんど認められない。
  • 1983 年 52 巻 3 号 p. 242-242,249
    発行日: 1983/06/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコ後部絹糸腺の5SrRNAの塩基配列
    エリサン (Philosamia cynthia ricini) の5SrRNAの塩基配列-昆虫における5SrRNAの易変性進化速度に関する証拠
    プロモーター領域を分割する転移性因子はショウジョウバエのクチクル蛋白質遺伝子を不活化する
    2種鱗翅目幼虫の成長発育に及ぼす植物エクジステロイド摂食の影響
    蚕の絹糸フィブロインの小サブユニット (L鎖) mRNAの分離
    日131号×Nd交雑種における2種のフィブロイン対立遺伝子の発現
  • 長島 栄一, 中垣 雅雄, 佐藤 正昭, 若林 秀忠, 伴野 豊, 向 仲懐
    1983 年 52 巻 3 号 p. 243-244
    発行日: 1983/06/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 古田 要二
    1983 年 52 巻 3 号 p. 245-246
    発行日: 1983/06/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 加藤 靖夫, 中山 伸, 武内 民男
    1983 年 52 巻 3 号 p. 247-248
    発行日: 1983/06/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
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