日本蚕糸学雑誌
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62 巻, 6 号
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  • 浅川 秀哉
    1993 年 62 巻 6 号 p. 441-447
    発行日: 1993/12/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコ消化液アミラーゼを精製し, それらのアミノ酸組成政びアミノ酸配列を明らかにした。4型 (Amy-dIV) と5型 (Amy-dV) のアミノ酸組成に差異のあることが明らかとなった。また, これらのN末端アミノ酸配列はアイソザイム間で非常に良く保存されており, 分析された範囲では同じ一次構造を持つことが明らかとなった。N末端アミノ酸配列を他の生物のα-アミラーゼと比較したところ, カイコ消化液アミラーゼのN末端アミノ酸はチロシンであり, 他の動物種で一般的なグルタミンとは異なっていた。相同性についてはブタ膵臓α-アミラーゼあるいはラット膵臓α-アミラーゼとの間で特に高かった (52.3%) が, まったく同一の一次構造を持つものは見出されなかった。また, ヒトα-アミラーゼとも相同性が42~48%あることが認められた。しかし, Bacillus 属, Aspergillus oryzae, そして大麦のα-アミラーゼとの相同性は, 今回検討した領域ではまったく認められなかった。一方, カイコ消化液アミラーゼの内部領域のアミノ酸配列について検討したところ, 他の動物種のα-アミラーゼと類似した配列が存在することがわかった。
  • 太田 啓介, 金勝 廉介
    1993 年 62 巻 6 号 p. 448-454
    発行日: 1993/12/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕幼虫真皮組織の形態学的研究を行い, 竹蚕 (Bo) の発現機構に関して下記の知見を得た。
    1. 遺伝子Boは, 真皮細胞層において特徴的に発現し, 細胞や核の変形をもたらした。
    2. 遺伝子Boは, 1齢~2齢期において最も顕著に発現し, 主として幼虫背面側真皮細胞の増殖を抑制した。その結果, 5令2日目のBo/Bo個体の腹部第5体節背面側における真皮細胞核の数は+/+個体の44%にまで減少した。また, 腹面側では背面側ほど大きく細胞数は減少せず, 75%前後に止まった。
    3. 3齢以降の腹部背面側の真皮細胞核数は腹面側細胞核数に対し, +/+の場合には100%前後であるのに対してBo/Boでは約50%程度であった。
    4. 以上の観察結果はBo/BoBo/+の各種の形態的特徴をよく説明しうる。
  • 白 倫, 徐 春江, 嶋崎 昭典
    1993 年 62 巻 6 号 p. 455-461
    発行日: 1993/12/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    In this parer, we analysed the effect of the frequency of occurrence various kinds of defects of the reeling thread on the distribution of the number of reeling thread breakdowns. As a result, we obtained the distribution of the number of reeling thread breakdowns by using the queue model M/E2/1, in which the repair service time is expressed as the sum of two independent random variables with exponential distribution of differ ent parameters, respectively. Based of these results, a theory of the control system of reeling thread breakdown associated with the defects of the reeling thread was proposed.
  • 中国近代の生糸輸出貿易に関する研究 第II報
    顧 国達, 宇山 満, 濱崎 實
    1993 年 62 巻 6 号 p. 462-470
    発行日: 1993/12/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    本稿は中国近代の輸出貿易に占める蚕糸業の経済的地位を明らかにするために, 1840年代は広州と上海の対イギリス輸出貿易, 1850年代は上海の輸出貿易, 1859~1949年は中国全体の輸出貿易を中心に検討した。輸出総額に占めるシルクの割合および主たる輸出品目間におけるシルク輸出額の相対順位を明らかにし, これらの変動要因について検討を加えた上で, 蚕糸業が近代中国の最も重要な外貨獲得産業であり, 輸出貿易において重要な経済的地位を有していたことを数量的に明らかにした。
  • 竹田 敏
    1993 年 62 巻 6 号 p. 471-477
    発行日: 1993/12/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    Na+-K+-ATPaseの特異的阻害剤である, ウアバインによって誘導される, カイコ蛹の腹部回転運動の性質について検討した。腹部回転運動の定量化には, 自動記録装置に接続した近赤外LED反射式変位センサーを用いる方法を開発した。一個体当たり40nmolesのウアバインを, 蛹齢4日のカイコ蛹に注射すると, 羽化の前々日ならびに前日に激しい腹部回転運動が出現した。腹部回転運動の出現は, ウアバインを注射する蛹の発育時期に依存していた。脳, 食道下神経節, 胸部第一神経節を, それぞれ予め除去した蛹では, ウアバインを注射しても激しい腹部回転運動はおこらなかった。
  • 上石 洋一, 青木 軍次
    1993 年 62 巻 6 号 p. 478-484
    発行日: 1993/12/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    ネットロウシルクを用いた織物を試作し, 温湿度特性などについて吸水ポリエステルを用いた同一組織織物や, 染色堅ろう度試験添付白布の綿, 絹, ウール, ポリエステル布と比較した。ネットロウシルク織物は厚いにもかかわらず, 透湿性, 通気性ともに良好な結果が得られた。熱的な性質では熱伝導率が小さく, 皮膚と衣服との間の温度を一定に保つためのエネルギーが少なくてすむことが予想される。また, 温度の保持性はウール布よりも劣るが, 他の素材を用いた布よりも優れており, ネットロウシルク糸内に含まれる空気層が多いことによるものであると考えられる。ネットロウシルク織物の温湿度特性としなやかさを考慮すると, 肌着や寝間着あるいはくつろぎ感を与える衣類などに応用することが可能であろう。
  • 河口 豊, 恒成 直美, 伴野 豊, 古賀 克己, 土井 良宏, 藤井 博
    1993 年 62 巻 6 号 p. 485-488
    発行日: 1993/12/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    矮小卵 (emi) の形質的特徴を正常卵と比較分析した。emiホモ雌蛾の造卵数は正常の約1/2であった。emi卵は正常卵に比べ長径, 短径ともに短く, 卵の形態と大きさはsm群の小卵に類似していた。卵重は正常卵の約1/2, 卵黄タンパク質は約2/3であったが, sm群の小卵のそれよりもそれぞれ重くなっていた。emi卵はsm群小卵には認められない受精ならびに孵化する能力を有していた。受精率ならびに孵化率はそれぞれ66.0%, 27.5%であった。emi蟻蚕は正常に比べ体重は軽く, 体形は矮小であった. しかし成虫にまで正常に発育した。
  • 鳴海 多恵子, 小林 正彦, 森 精
    1993 年 62 巻 6 号 p. 489-495
    発行日: 1993/12/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    野蚕糸の内部微細構造を明らかにする事を目的として, 12種の絹糸虫類の繭糸について走査電顕と透過電顕により観察を行った。その結果, ヤママユガ科ではすべての種において繭糸中にボイドが認められた。ボイドの形は横断面の観察ではほぼ楕円形であり, 縦断面の観察ではいずれのボイドも繊維軸方向にある程度の長さをもっていることが確認された。繊維の正横断面におけるボイドの大きさおよび長幅率はボイドが分布する繭糸断面上の位置により異なり, 中心部において双方共に大きい傾向がみられた。ボイドの大きさおよび数は種による相違があり, タサールサン, テンサン, ムガサンは他の種に比べて繭糸断面に存在するボイドの数が多く, 形も大きいものが観察された。また, ボイドを含む繭糸断面は概して繭の中層に多く出現することが明らかとなった。
  • 野木 照修
    1993 年 62 巻 6 号 p. 496-501
    発行日: 1993/12/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    夏秋期の全伐時期の違い (7月, 8月, 9月中旬) と施肥窒素の吸収利用状況について, 標識窒素を用いた圃場試験により検討した。1) 収穫量, 乾物量, 収穫物中の窒素量は全伐時期が遅いほど多かった。2) 各全伐時期の収穫物中の春肥由来の割合は7月全伐区が最も高く, 夏肥由来の割合は9月全伐区が最も高かった。3) 部位別および時期別の施肥由来の割合から, 夏肥後8月中旬頃まで夏肥の吸収が盛んで, その後は地力窒素の吸収が主体であったことが推定された。4) 全伐当年の収穫物への春肥窒素の取り込みは全伐時期によりさほど大きな違いは認められなかったが, 夏肥窒素は全伐時期が遅いほど多かった。5) 翌年収穫物への前年施肥窒素の取り込みは9月全伐区が7, 8月全伐区に比して多く, 吸収した施肥窒素の翌年収穫物への配分率も9月全伐区で高かった。6) 施肥窒素の利用率は, 春肥, 夏肥ともに全伐時期が遅いほど高く, その傾向は夏肥窒素で著しかった。
  • 桑樹の耐アルミニウム性に関する研究 (第1報)
    矢彦沢 清允, 山本 満寿夫, 押金 健吾
    1993 年 62 巻 6 号 p. 502-506
    発行日: 1993/12/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    硫酸酸性風化の履歴を有するフォッサ・マグナ東端の第三紀海成堆積土地帯に位置する桑園の低位収穫に及ぼす因子を検討するため肥培管理ならびに土壌の断面形態と理化学性を調べた結果, 次の様な知見を得た。根群の発達は極めて不良で, 30cm以下の下層土には根の分布は認められない。作土および下層土のpH範囲が, pH (H2O) 4.1-4.4, pH (KCl) 3.3-3.7, pH (CaCl2) 3.7-4.1であり, また, 交換酸度ならびに加水酸度のY1が15以上の極めて強い酸性土壌であることがを明らかとなった。この強い土壌酸性が根の生育を阻害している主要因であると思われる。さらに, 作土と下層土の交換全酸度は, Alイオンが70-90%を占有し, また, Al飽和度は11-30%であることが明らかとなった。この酸度の内容から, 根の生育低下は主としてAlイオンの阻害性によることが示唆された。
  • モデルによる予測とその予備的なテスト
    館野 正樹
    1993 年 62 巻 6 号 p. 507-516
    発行日: 1993/12/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    力学モデルを用いた解析によって, 以下のことが明らかになった。矮性のクワの場合, 力学的安定性を損うことなく, シュート中に占める茎の割合を減らして葉の割合を増加させることができる。したがって, 単位面積あたりのシュートの純生産量が変化しない場合, 葉の収量は矮性のクワの利用によって増加し得る。予測をテストするために, 密植したみなみさかりの接木2年苗に succinic acid 2,2-dimethylhydrazide を散布してシュートを矮化させた。この結果, 処理区の茎長は対象区の81.3%になったが, 対象区と処理区のシュートの乾物量の間には有意な差はなかった。しかし, 矮化したシュートではシュート中に占める葉の割合が有意に増加しており, これによって単位面積あたりの葉の収量が23.0%増加した。一方, モデルによる増加予測値はこの場合29.4%であった。理論地と実験地は完全には一致しなかったが, 密植の場合には矮化が葉の増収につながり得ることが実験的にも示された。
  • 鈴木 繁実, 佐藤 武彦
    1993 年 62 巻 6 号 p. 517-522
    発行日: 1993/12/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    こうじかび病菌の簡易検出法として培地吸着濾紙とポリエチレン袋を利用した「濾紙・ポリ袋法」を考案した。本法は, 新しいポリ袋に入れた手で培地吸着濾紙を取り出し, その両面を検査対象に軽く押し当ててからポリ袋に回収し, ポリ袋の口を固く結び, そのまま30℃で48~72時間培養後, 発育した菌のコロニーを調べ, こうじかび病菌の有無・多少を判定するものである。この方法はアガースタンプ法とほぼ同じ水準の優れた菌検出精度が認められ, そのうえ, 安価で, 培養用滅菌機器等が不要であり, 省力化が著しく, また, 誰にでもできる極めて簡易な現場向き検出法であることが確認された。
  • 小林 淳, SERGE BELLONCIK
    1993 年 62 巻 6 号 p. 523-526
    発行日: 1993/12/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
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