日本原子力学会誌ATOMOΣ
Online ISSN : 2433-7285
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巻頭インタビュー
時論
Perspective
視点 これからの原子力に求められるもの
特集
  • 1.AI技術を活用した確率論的リスク評価手法の高度化研究その1―フォルトツリー自動作成手法の開発―
    二神 敏
    2024 年 66 巻 11 号 p. 555-559
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/10
    解説誌・一般情報誌 認証あり

     原子力発電所のPRAは,解析作業が膨大であり,事業者の負担となっていることが,国際的に検討されているリスク情報活用アプローチを国内に導入するに当たっての懸案となる可能性がある。この要因は,膨大な設計資料等の読み込みおよび内容理解,信頼性データや評価モデルの構築を習熟した技能者が経験に基づいて手作業で入力しなければならない状況にある。この課題を解消するため,AI,デジタル化技術を活用し,従来手作業であったところを自動化することによって,原子力発電所PRAの省力化・等質化を目指したPRA手法を開発している。本稿では,AI技術を活用したPRA手法の全体的な開発計画とFT自動作成手法の開発状況について報告する。

  • 2.AI技術を活用した確率論的リスク評価手法の高度化研究その2―信頼性データベース構築のための自動故障判定手法の開発―
    氏田 博士, 森本 達也, 二神 敏
    2024 年 66 巻 11 号 p. 560-564
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/10
    解説誌・一般情報誌 認証あり

     原子力発電所の確率論的リスク評価の省力化・等質化を目指して,「AI技術を活用した確率論的リスク評価手法の高度化研究」を3ヵ年計画で実施中である。本稿では,この計画のうち「信頼性データベース構築のための自動故障判定手法の開発」の2022年度の試作内容と得られた成果・課題(専門家による評価)について紹介する。NUCIAから信頼性データベースを作成するAIツールの方法論を,自然言語処理フレームワークや事前学習済み大規模自然言語処理モデル等を活用して構築し,試作した。これにより,信頼性データベース構築に必要な情報である故障発生個所(系統・機器)や故障原因等を自動抽出可能となった。

  • 3.機械学習を活用した動的PRAと不確かさ評価手法の高度化
    鄭 嘯宇, 玉置 等史, 柴本 泰照, 丸山 結
    2024 年 66 巻 11 号 p. 565-569
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/10
    解説誌・一般情報誌 認証あり

     原子力安全の継続的な改善のためにはリスク情報と不確かさ情報を活用した合理的な意思決定が重要であり,近年ではこれを効率的に実施するために人工知能/機械学習(AI/ML)を活用することが期待されている。本報では,原子力分野におけるAI/MLの活用例を調査し,日本原子力研究開発機構が行うAI/MLを活用した動的確率論的リスク評価(PRA)と不確かさ評価・感度解析の研究状況を紹介する。具体的には,決定論的解析コードと機械学習による代替評価モデルを柔軟に共用できる多忠実シミュレーション手法を構築することで,ランダムサンプリングを用いた動的PRAとソースターム不確かさ評価・グローバル感度解析の効率的な実施を可能とした。

  • 4.自然言語処理技術を活用したPRA解析結果の妥当性確認手法
    網谷 達輝, 平井 俊輔
    2024 年 66 巻 11 号 p. 570-573
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/10
    解説誌・一般情報誌 認証あり

     確率論的リスク評価(Probabilistic Risk Assessment: PRA)を実施したときの評価モデルの妥当性は,その計算結果に相当する最小カットセット(カットセット)の妥当性を確認することによって担保される。従来はPRAの評価モデルが現在ほど複雑ではなく,リスク上有意な事故シナリオのバリエーションも多くなかったため,リスクへの寄与が大きい事故シナリオの妥当性を重点的に確認してきたが,現在,原子力プラントのPRAを実施した際に得られるカットセットの数は10万個以上になることもあり,それらをつぶさに確認するためには,膨大な時間を要することが課題であった。

     本研究では,自然言語処理技術の一つであるWord2 Vecによってカットセットをベクトルに変換し,ベクトル間の近接性に基づいてクラスタリングすることにより,同種の事故シナリオを意味するカットセット同士を一つのクラスタにできることに着目し,効率的かつ網羅的にカットセットの妥当性確認が可能な手法を開発した。

解説
  • イノベーション戦略を支える安全基盤研究体制維持のために
    田内 広
    2024 年 66 巻 11 号 p. 574-577
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/10
    解説誌・一般情報誌 認証あり

     福島第一原子力発電所のALPS処理水をめぐってトリチウムの生体影響が注目を集めた。その研究コミュニティは,人数を減らしながらも四半世紀にわたる厳しい研究費の状況を何とか生き延びてきたが,いまや消滅の危機にある。トリチウムは水素であることから,生体影響には化学形に依存した特殊性がある。将来の核融合発電施設の候補地においてさまざまなステークホルダーから理解を得るためにも,トリチウムの化学形や濃度と生体影響に関する未解明課題の解決が重要である。

報告
  • 「地層処分のセーフティケースに係る様々なステークホルダーを対象とした理解促進に関する方法の検討」特別専門委員会
    2024 年 66 巻 11 号 p. 578-582
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/10
    解説誌・一般情報誌 認証あり

     地層処分のセーフティケースは,地層処分の安全性を論証するために地下環境の長期的な安定性や放射性物質の挙動などの科学的論拠を体系的にまとめたものであり,段階的な意思決定・判断に資することを目的としている。このため,その内容を地層処分に係わるステークホルダーにとって理解しやすく説明する必要がある。しかしながら,地層処分分野特有の考え方や専門用語に起因して,他のステークホルダーとの間で認識に齟齬を生じ,そうした説明が容易でないという課題が認識されてきた。本委員会では,この課題に対応するため,セーフティケースを用いた相互理解の鍵となる用語を抽出し,その意味を背景情報と併せて整理した「語彙基盤(地層処分の言葉)」を作成するとともに,安全コミュニケーションの方策について提案した。

  • データ同化技術の展開と原子力における期待
    鷲尾 隆
    2024 年 66 巻 11 号 p. 583-586
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/10
    解説誌・一般情報誌 認証あり

     近年のデジタル化(DX)の中では,現実世界とサイバー世界を結び付けるシミュレーション技術が中心的役割を担っている。そこでは,ハイレベルな効率性や信頼性,経済性を有する答えを得るため,シミュレーションの精度や信頼性,効率性に厳しい要求が生まれている。そして,先端計測・センシング技術の発展により豊富な実データ収集が容易になっている状況を背景として,これらの要求を達成するコア技術としてデータ同化が注目されている。本稿では,まず狭義の標準的なデータ同化手法を概観し,その後,最近開発されている手法やより広義のデータ同化手法についても概要を述べる。そして,原子力分野の研究開発に携わる研究者・技術者によるこれら手法の利用について期待を述べる。

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