原子力発電所から発生する低レベル放射性廃棄物は,放射能レベルに応じて,浅地中処分(トレンチ処分,ピット処分)及び中深度処分による埋設処分が考えられている。日本原子力学会の標準委員会は,これら低レベル放射性廃棄物に関する規制基準や審査ガイド等の改訂状況,埋設処分の事業化の動向,関連技術の進展やニーズ等を考慮し,改定が必要と判断された既存の3つの日本原子力学会標準(浅地中処分施設(ピット処分,トレンチ処分)の検査方法,中深度処分施設の埋戻しと施設の管理方法,及び中深度処分施設の安全評価手法)の改定に取り組み,2023年に発行した。本報告は,日本原子力学会2024年春の年会の企画セッションにおいて紹介された3つの学会標準の改定内容と,それを取り巻く標準策定の背景・経緯を含むシリーズ連載である。本稿はその導入として,標準の構成と改定の経緯,及び安全確保の基本的な考え方について紹介する。
原子力発電所から発生する低レベル放射性廃棄物は,地上,又は地表から70 m未満の地下にて浅地中処分(ピット処分,トレンチ処分)される。処分施設には,放射線障害防止上の安全を確保するための機能が要求され,個々の設備などが設定した機能を満足していることを,施工中及び施工完了後に検査することが必要となる。浅地中処分施設(ピット処分,トレンチ処分)の検査方法に関する標準は,2010年に初版が発行され,その後改定に取り組み,2023年に発行した。本報告は,日本原子力学会2024年春の年会の企画セッションにおいて紹介した浅地中処分施設(ピット処分,トレンチ処分)の検査方法の改定標準(本報告では2023年改定の“AESJ-SC-F017:2023”を示す)の概要を説明する。
低レベル放射性廃棄物のうち,比較的放射能濃度が高いものは,地表から深さ70 m以上の地下の廃棄物埋設地に埋設すること(以下,“中深度処分”という)が計画されている。中深度処分施設では,放射能の減衰に応じて,保安のために必要な措置を講じていく段階管理を行うとともに,廃棄物埋設地の埋戻しと坑道の埋戻しが段階移行の要件の一部となる。埋戻し方法と施設の管理方法に係る学会標準は2010年に初版が発行され,2016年にピット処分及びトレンチ処分編として部分的に改定された後,2023年に中深度処分編が改定された。本報告は,日本原子力学会2024年春の年会の企画セッションにおいて紹介した埋戻し方法と施設の管理方法に係る中深度処分編の改定標準(本報告では2023年改定の“AESJ-SC-F028:2023”を示す)の概要を説明する。
低レベル放射性廃棄物のうち,比較的放射能濃度が高いものは,地表から深さ70 m以上の地下の廃棄物埋設地に埋設すること(以下,“中深度処分”という)が計画されており,その新規制基準は2014年の検討開始から7年を経て2021年10月に制定された。この間,日本原子力学会では2008年に制定していた余裕深度処分の安全評価手法標準の改定に取り組み,2023年に発行した。本報告は,日本原子力学会2024年春の年会の企画セッションにおいて紹介した中深度処分施設の安全評価の実施方法に関する改定標準(本報告では2023年改定の“AESJ-SC-F012:2023”を示す)の概要を説明する。
経年劣化事象の1つである配管減肉について,現行の配管厚さ測定をベースとした減肉管理とその課題を紹介すると共に,それらを解決するための減肉予測手法を活用した減肉管理の利点の整理・電中研の配管減肉予測手法FALSETについて紹介する。更に,特定の減肉事象への減肉予測技術の活用例についても述べる。
加速器施設,特に大学など小規模の施設の運営に苦労しているところが多い。また次世代の研究者・技術者をどう確保して育てるかという問題にも直面している。加速器のトラブルは多岐にわたり,特に現場のトラブルは研究対象でもなく,他の人々とどう情報交換をすれば良いかも分からない。そこで問題を抱えている人がその知識を持っている人と出会えるような仕組みをどう作れば良いか,そこで得た情報をどうすれば共有できるかについてまだ明快な解決策はないが,皆様と一緒に考えていきたい。
本報告は,日本原子力学会2024年春の年会で開催した日本原子力学会シニアネットワーク連絡会(SNW)企画セッションのとりまとめである。本企画セッションでは「地層処分事業の理解を進めるためには―学校教育の面から考える―」と題して,SNWの地層処分の専門家と対話した経験のある小,中学校の教職関係者(2名)および教職課程履修中の学生(2名)とSNWのエキスパートがパネル討論をおこなった。高レベル放射性廃棄物の処分は社会が避けて通れない問題である。理科・社会科にまたがるさまざまな分野を含む新しい教材としての活用方法について,いろいろな意見が出された。
原子力人材育成ネットワークでは,産官学で連携して原子力分野の人材確保・育成の推進を図っている。これら活動のうち,(一社)日本原子力産業協会では人材確保・育成の現状把握の一環として,日本の原子力産業界における人材の需要量および供給量を調査している。学生の動向は“原子力”に対する若い世代の意識がどのように変化しているかを示す客観的なデータとして有用であり,また今後の原子力人材育成の進め方について総合的な検討を行っていく上で重要なデータであることから,企業の採用動向のデータと合わせて経年変化を追っていくことで原子力人材の需給トレンドを伺うことができるものと考えている。
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