日本におけるインフラ鋼構造物の腐食劣化が進行している.現在,外観観察や残存板厚などで維持管理が行われている.近年の残存耐力のシミュレーション技術の発展により,腐食形態も含めたインフラ鋼構造物の高度な寿命予測が期待される.そこで,純鉄へのCr添加は大気腐食環境における耐食性を大きく変化させるので,腐食形態におよぼす添加元素の影響を評価するためにCrを添加元素として選択した.レーザー変位計から得られた腐食深さ分布を,空間統計学を用いて解析することで,腐食形態を数値化し,大気腐食形態におよぼす純鉄へのCr添加の影響を定量的に評価した.
その結果,空間統計学による解析から得られるレンジとシルにより,各Fe-Cr合金の腐食形態を定量的に区別することができた.腐食による周期的な表面の凹凸において,凹凸の周期は0.3 mass%のCr添加で長くなった.1~7 mass%のCr添加では,Cr添加量の増加にともない凹凸の周期は短くなった.凹凸の深さは,3 mass%までのCr添加では,Cr添加量の増加にともない深くなった.7 mass%までCrを添加すると,凹凸の深さは著しく浅くなった.このように,純鉄へのCr添加量は腐食形態に大きな影響をおよぼすことが分かった.