PEFC向けセパレータを低コストに大量生産する方法として固相窒素吸収法による高窒素ステンレス鋼製造に注目した.本研究では高窒素ステンレス鋼の耐食性と接触抵抗に与える昇温時の窒素分圧とTi添加量の影響を調査した.22Crフェライト系ステンレス鋼の固相窒素吸収処理では,窒素分圧が高いほど母相のオーステナイト化が促進され耐食性が向上した.過剰な窒素分圧は表面の窒化物の粗大化を促進し耐食性を低下させた.
硫酸ニッケル含有セルロースナノファイバー分散塗料で被覆した発錆炭素鋼の乾湿繰り返し環境下におけるさび構造の変化を調査した.塗膜下に生成したさび層の組成や耐食性を評価するためにXRDおよび電気化学測定を実施した.その結果,安定なα-FeOOHの割合が増加し,硫酸ニッケルを含有させることでその割合が増加する傾向が確認された.また,α-FeOOHの生成による腐食速度の低下も確認された.
地層処分環境での地下水中の炭酸塩濃度上限と想定される0.1~0.5 mol・dm-3の条件を対象に温度をパラメータとしてNaHCO3水溶液中で炭素鋼のSSRT試験を行った.伸び比など機械的特性への温度の影響は見られなかったが,SCC破面率では303,323 Kの低温でSCC感受性が高くなると判断された.その要因として低温での再不動態化の抑制が示唆された.また,低温で粒界型,高温で粒内型のSCCが支配的になる傾向がみられた.