症例は54歳男性,他院にて肛門痛のため2度切開,ドレナージ術を受けたが病状が改善しないため,当院転院となった.仙骨部から肛門,陰嚢,右大腿に及ぶ発赤を認め,握雪音を伴った.単純X線写真, CT検査にてガス像を認め, Fournier's gangreneと診断し,直ちに広範に切開,ドレナージ,人工肛門造設術を施行した.術後, DIC, ARDSを合併したが,徐々に改善し,切開,ドレナージ部の皮膚欠損部は皮膚移植を施行し,創が乾燥した後,人工肛門閉鎖術を施行し,退院した. Fournier's gangreneは欧米では400例を越す報告例があるが,本邦では比較的稀な疾患である.また,本症例の如く広範囲に拡大した報告は少なく,若干の文献的考察を加え報告する.
抄録全体を表示