患者は59歳,女性.下腹部痛,嘔吐を主訴に当院を受診した.下腹部全体に圧痛やBlumberg徴候,筋性防御を認めたが, Howship-Romberg徴候を認めなかった. CTにて腹水,小腸の拡張,両側閉鎖孔ヘルニアを認めた.両側閉鎖孔ヘルニア嵌頓による穿孔性腹膜炎と診断し,緊急開腹術を施行した.腹腔内には腹水を認め, Treitz靱帯から80cm肛門側の空腸が右閉鎖孔に嵌頓し穿孔していた.左側は容易に整復でき,穿孔を認めなかった.空腸楔状切除術を施行し,両側ヘルニア門を直接縫合閉鎖し卵巣を縫着した.経過は良好で術後24日目に退院した.
最近,閉鎖孔ヘルニアは術前診断される症例が増加しているが,両側閉鎖孔ヘルニアは稀で,本邦報告例は自験例を含め51例である.今回, CTにて術前診断しえた両側閉鎖孔ヘルニアの1例を経験したので報告した.
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