日本蚕糸学雑誌
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56 巻, 1 号
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  • 松野 瑞彦, 土井 則夫, 仁科 祥次郎
    1987 年 56 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    クワ胴枯病柄胞子の皮目接種または自然感染枝のおが屑埋没による人為的発病法を用いて本病の2, 3の発生生態を明らかにした。
    クワを春期の伐採罹病枝条に5~12月まで1カ月間, あるいは6~9月まで10日間ずつ接触させ, 翌春の病斑形成をみると7月上旬~8月下旬, とくに7月中・下旬接触区に多かった。
    また, 本病菌を接種した圃場栽植クワ枝条を, 11月から2月まで月2回ホルムアルデヒド剤10倍, PCP・銅水和剤100倍の混合液で消毒し, 春期の病斑形成程度から, 本病菌が皮目から皮層部生活組織へ侵入する時期は1月上~下旬頃からと推定された。
    さらに, 27品種のクワの本病に対する感受性を比較すると, おおむね従来の結果と一致した。なお, 新品種のしんいちのせ, あつばみどりは感受性であり, ふかゆき, ゆきしのぎは抵抗性, わせみどり, かんまさりおよびあさゆきはその中間に区分された。
  • 寿 国梁, 三浦 幹彦, 西岡 孝彦, 嶋崎 昭典
    1987 年 56 巻 1 号 p. 9-17
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    現行の生糸荷口の格は各検査項目の最低成績で決定されるため, 同格品位であってもその品質特性は荷口ごとに多様な変化を示している。本研究はこのような品質特性を的確に表現する一つの試みとして, まず重回帰分析による生糸荷口の品質の総合評価方法について検討を行なった。その結果, 現行の生糸格級値について補完的な性質を持つ一つの総合的な品質評価関数を得た。これを用いて現行の検査で同格と判定される生糸荷口の品質スコアを計算すると, その格級値の近くで品質特性をより的確に示す総合評価値が得られた。次に全検査成績の主成分分析を行なった結果, 生糸品質の変動を最大限に説明する第一主成分は生糸の総合的な品質を評価できることが知られた。さらに, 両生糸品質の総合指標の特性を検討した。
  • 平林 潔, 柳 悦州, 川上 正太郎, 奥山 健二, 胡 衛軍
    1987 年 56 巻 1 号 p. 18-22
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    紫外線照射によって起きる絹フィブロインの劣化について研究した。試料は炭酸ナトリウムに較べ, より緩かにフィブロインに作用するロダンカリにより精練した。機械的性質に及ぼす紫外線の影響は, 短波長が長波長より大きい。紫外線は, 絹フィブロインの分解温度には関与しない。紫外線照射時間の増加に伴い, 絹の重量は僅かに減少する。この重量減少は, フィブロインの光化学的反応により生じたアンモニアガスの発散によるものである。アミノ酸分析の結果, 総アミノ酸重量が照射時間に伴い減少することから, アミノ酸の分解が紫外線によって引き起されることがわかった。アミノ酸構成比について検討した結果, 絹フィブロインは紫外線照射初期の段階において非晶部を構成するアミノ酸の分解が生じ, 照射時間の増加と共に結晶部に及ぶと考えられる。
  • 絹のグラフト加工に関する研究 第6報
    塚田 益裕, 浦島 開, 青木 昭
    1987 年 56 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    絹の用途を拡大する試みの一手法としてメタクリルアミドグラフト加工絹糸が厚手用のスーツ地用の素材として適しているか否か, 加工絹糸で製織した絹織物の力学的特性値を基に検討した。
    グラフト加工糸をよこ糸に用いて絹織物を製織し, 風合い試験機により絹織物の引っ張り特性, 曲げ特性, せん断特性等の基本的な特性値を比較検討したところ, グラフト加工により絹織物は内部間隙が多くなり, 繊維・糸相互の接触状態が疎で, ふくらみを生じ, しなやかな絹織物となることが確かめられた。
    表面の特性値から判断するとグラフト加工により織物表面の摩擦係数は増加する傾向がみられた。Total hand value の値から判断して, グラフト加工絹織物は嵩高性が要求される秋冬用厚手スーツ地等の素材に適した特性を有していることが明かとなった。
  • 荒川 昭弘, 清水 進
    1987 年 56 巻 1 号 p. 29-32
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    ラテックス凝集反応を用いてカイコ濃核病ウイルス (DNV) の定量を試みた。粒径0.12μmのラテックス粒子の100倍液に抗-DNV IgGを感作させ, ウイルス液と20分間反応させた後に吸光度 (A630) を測定した。精製DNVを用いたところ, 2~20μg/mlまで吸光度が増し, それより高濃度では逆に減少した。蚕体成分の混入による定量値の変化は認められなかった。また, Single radial immunodiffusion とDNV感染蚕からのDNV定量値を比較したところ, 両者間に高い相関が認められた。
  • 横井 直人, 吉井 太門
    1987 年 56 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    福島県におけるキボシカミキリの羽化期は6~9月である。そこで, 羽化時期の早晩と産卵数の関係を知るために, 野外で調査を行った。その結果, 両者の間には高い相関がみられ, 羽化時期の早い個体ほど産卵数が多く, さらに, 産卵期間も長かった。産卵に及ぼす影響を日長, 温度および成育朝間の長短により調べたところ, 温度のみが影響を及ぼすものと考えられた。産卵期間中, 平均気温が20℃以上の日数が多いものほど多産であった。これらのことから, 晩期羽化個体ほど産卵数が減少する要因は9月以降の気温の低下であると考えられる。なお, 福島県における1雌当りの平均産卵数を推定するには羽化時期別産卵数を考慮する必要があり, それらを基に推定した結果, 福島県では従来の知見による産卵数よりもはるかに少ない, 約100粒程度と考えられた。
  • 朝倉 哲朗, 舘野 晶彦, 川口 靖, 浜野 国勝, 向山 文雄
    1987 年 56 巻 1 号 p. 38-44
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    〔1-13C〕および〔2-13C〕シングルラベル酢酸ナトリウムならびに〔1, 2-13C〕ダブルラベル酢酸ナトリウム由来の家蚕絹フィブロインの生合成の様子を, 13CNMR法を用いて研究した。実験は, 13Cラベル酢酸ナトリウムを, 5齢6日目の家蚕に投与し, その体液ならびに液状絹を一定時間経過後に採取し, 得られた13CNMRスペクトルにおいて, 13Cラベル炭素の強度変化ならびに13C-13Cスピン結合の有無を検討した。これら前駆体が, アセチルCoAとして, TCA回路に入り, 反応が進行する様子が, 13CNMRを用いて追跡可能であった。特に, TCA回路, 1サイクル目において, グルタミン, グルタミン酸が, 生成されること, 主にクエン酸の形で, 体液中にプールされることが明らかとなった。絹フィブロインは, これらの前駆体を素材として合成されるが, 特に, リンゴ酸を経由したアラニン残基合成の様子が, 13C-13Cスピン結合の有無から明らかとなった。
  • 野木 照修, 柳沼 泰衛
    1987 年 56 巻 1 号 p. 45-51
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    施肥窒素の桑園土壌中での挙動と桑による吸収利用について検討するため, 標識窒素を用いた圃場試験を実施した。
    1. 土壌中の施肥由来の無機態窒素が施肥位置からほぼ消失する時期は, 春肥由来のもので7月初め, 夏肥由来のもので8月末であった。
    2. 下層土の土壌無機態窒素はほとんどが硝酸態であり, また, 夏の期間下層には春肥由来のものかなり残存していると推察される。
    3. 施肥当年の収穫物中の窒素に占める施肥由来の割合は, 春肥由来のものが21~24%, 夏肥由来のものが16~25%であり, 合計の施肥窒素の割合は40~50%であった。
    4. 翌春の収穫物中の窒素に占める前年の施肥由来の割合は, 約30%と高いが, 晩秋蚕期収穫物中では8%程度に低下した。
    5. 施肥窒素の利用率を算出した結果, 春肥39%, 夏肥37%と春肥, 夏肥で大差なく, 従来のものより低い値を示した。
  • 桑野生育過程における樹体内成分の動態解析 (第1報)
    白田 和人, 高岸 秀次郎
    1987 年 56 巻 1 号 p. 52-58
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    ほ場の7年目の成木桑を夏切り直後から翌年夏切り時まで7回にわたり堀りとり, 樹体内窒素および関連物質の器官別含量の変化を周年的に調査した。全窒素含有率は時期による変化はあるものの, おおむね葉や小根など末端器官で高く, 拳や株で低かった。樹体内の全窒素量は葉の展開にしたがって増加したが, 葉や条を除く諸器官では夏切り直後にわずかに減少した。その後しだいに増加して翌年3月に最高値を示したが, 春の新梢発育にともなって再び減少した。冬期における増加はこの期間にも窒素吸収が行なわれていることを示すものと考えられた。全窒素量の時期的変化は, おもに水溶性窒素に左右された。また水不溶性窒素は器官による差異は大きいが, 時期的変化は小さく, このことから窒素の貯蔵形態は主として水溶性窒素であると判断された。窒素の器官別周年変化より, 地下株, 大・中根などの地下部器官が窒素貯蔵の役割を果していると考えられた。
  • 桑の生育過程における樹体内成分の動態解析 (第2報)
    白田 和人, 高岸 秀次郎
    1987 年 56 巻 1 号 p. 59-64
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    7年目の成木桑について無機成分 (P, K, Ca及びMg) の器官別含量の周年変化を調査した。各要素含有率は葉や小根など末端器官で高く, 拳, 株で低かった。また皮質部は木質部より数倍高く, 要素特異性も認められた。各要素とも葉に多く集積したが, 年間を通じてみると拳, 株, 大・中根などに多かった。落葉期の地上部に対する地下部の集積量比はP: 2.5, K: 1.2, Ca: 0.7及びMg: 1.5であり, Pは地下部に, Caは地上部に多く集積した。貯蔵器官の各要素の時期的消長は, PはNに類似し生長, 再生長過程で減少し, Kは夏切り後の再生長過程では変化せず, 新梢発育時に減少した。またCa及びMgは生育盛期には減少し, 落葉後に増加した。以上から各要素の移動, 集積の傾向は (P, N) (K) (Ca, Mg) に大別された。生長, 再生長過程での貯蔵養分寄与度はP>N≧Mg>K>Caの順と考えられ, 上記の集積量比及び樹体内の移動の難易の序列と一致した。
  • 川崎 秀樹, 岩下 嘉光
    1987 年 56 巻 1 号 p. 65-71
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    5齢期のカイコの翅原基の培養法を検討し, 培養下でりん毛形成にいたるまでの分化様式を光顕的に追跡した。静置の方法では金網台法が最も適し, 酸素分圧は高い方が分化の進行が早く, カイコの血液の培養液への添加は効果がみられた。
    分化を誘導するエクジステロン濃度は, 0.02~0.1μg/mlの範囲で, りん毛形成までの完全な過程が観察された。培養下における翅原基の分化様式は, 5齢1日目, 6日目及び前蛹期いずれも同様で, 生体内におけると同様の細胞分裂, クチクラの分泌並びにりん毛形成等が観察された。
  • 楠 茂樹, 諸橋 征雄
    1987 年 56 巻 1 号 p. 72-76
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    クワ種子は, 25℃・暗所では, 低い発芽率 (20~30%) しか示さないが, 25℃より高い温度 (例えば35℃) で一定時間処理されると, 発芽が著しく促進される。この現象に関し, 処理時期, 処理時間, 処理温度について詳しく調べた。その結果, 吸水開始13-19時間以後に高温 (27-40℃) 下に短時間 (15分) 移されると, その後25℃に戻されても, 顕著に発芽が促進され, 80~90%の発芽率を示すようになることがわかった。
  • 画像処理による繊度計測制御システム (第3報)
    西出 照雄, 大浦 正伸
    1987 年 56 巻 1 号 p. 77-82
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    画像演算処理装置で得られる繊度信号の収集並びに演算処理と繊度制御とを繰糸過程において実行するプログラムの開発を行なうとともに, このプログラムの諸機能について基本的な検討を行った。本プログラムの基本的な機能については, 信号発生器によるアナログ信号と画像演算処理装置によるデジタル繊度信号とを用いて検討した。
    BASIC言語で記述した本プログラムは初期値設定, データの演算処理, 繊度制御, 演算処理データの出力などの各ルーチンから構成されている. また, 本プログラムは2種類の繊度信号, すなわち, デジタル信号およびアナログ量の信号が収集できるように設計されている。
    検討の結果, 本プログラムは繊度データの収集演算処理並びに繊度制御の所期の機能をもつことが確認された。
  • 中島 靖, 高梨 克弘, 奥山 健二, 平林 潔
    1987 年 56 巻 1 号 p. 83-84
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 赤井 弘, 木内 信, 木村 敬助
    1987 年 56 巻 1 号 p. 85-86
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
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