日本蚕糸学雑誌
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57 巻, 3 号
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  • 内海 進, 小泉 勝
    1988 年 57 巻 3 号 p. 171-178
    発行日: 1988/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコの消化液 (DJ) 中に存在し in vitro で強力な抗 Streptococcus 活性 (ASA) を示す蛋白質 (ASP) について in vivo 作用を解析するため, 非絶食蚕および絶食蚕を冷凍後解剖してDJを採取し材料とした。DJの80%硫安飽和画分を用いたASA検定において, 非絶食蚕DJは50倍, 100倍の低希釈では300倍以上の高希釈に比べてASAが劣った。一方絶食蚕からのDJは低希釈ではASAを示したが, 高希釈では認められなかった。すなわち非絶食蚕DJの硫安画分にASA阻害物質が存在し, 希釈によりその作用は失われ, ASAが発現すると考えられる。眠起時のDJ中では阻害物質減少のためASAが強力に発現し, 盛食期DJではASP量は多いが阻害物量も多く, ASAはやや低下した。また120日間の冷凍保存蚕から採ったDJのASAは, 非絶食蚕では強力であったが, 絶食蚕では著しく低下した。セファデックスG-75での活性画分G75AのASAに対して他の非活性のG75BやG75C画分, あるいは桑葉からの同様画分が阻害を示した。
  • 加藤 靖夫, 中村 照子, 武内 民男
    1988 年 57 巻 3 号 p. 179-183
    発行日: 1988/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕体液中の血球凝集性糖タンパク質の生理的機能を調べる一環として, 雌雄間における凝集活性値の相違について比較した。凝集活性値の変化のパターンは雌雄において共通したものであった。すなわち, 活性値は幼虫5齢初期から中期にかけて低い水準にあるが, 熟蚕期になって増加しはじめ, 吐糸開始直後に最大となった。そして, その際の最大活性値は雌よりも雄の方が若干高くなる傾向を示した。血球凝集性糖タンパク質の糖およびアミノ酸組成は雌雄とも比較的似たものであることから, 雌雄間における活性値の差異がこの糖タンパク質の極く微細な化学構造上の差異を反映しているものと推察される。
  • 今西 重雄, 大槻 良樹
    1988 年 57 巻 3 号 p. 184-188
    発行日: 1988/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    日本種, 中国種, 欧州種, 熱帯種及び突然変異種の家蚕の胚組織を in vitro で培養し, 品種間差異を検討した。初代培養期間中, 胚組織から細胞遊離及びそれらの遊離細胞の増殖は日本種及び中国種で異なり, 培養の前期または後期に活発に遊離, 増殖するタイプに区別できた。新たに樹立した細胞株はSES-BoMo-C129及びSES-BoMo-J125と名づけた。前者は5種類の細胞型から構成され後者は2~3種類の細胞型から構成されていた。両細胞株の細胞倍加日数は3.0~3.5日間であり, 染色体数は細胞株ごとに異なっていたが, 主に91~110本の範囲にあった。至適細胞増殖条件は両細胞株とも培養温度は28℃, 培地中の血清濃度は10%であることが分った。
  • 三毛 明人, 大脇 真, 深田 哲夫
    1988 年 57 巻 3 号 p. 189-195
    発行日: 1988/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕微粒子病病原 Nosema bombycis (Nb), 並びに家蚕分離微胞子虫M11, 及びM12各胞子で免疫したマウスの脾臓細胞と, マウスミエローマ細胞を融合させ, それぞれの胞子と反応する抗体を産出するハイブリドーマを作製した。3個のハイブリドーマクローンの産生する単クローン抗体について調べたところ, N321はNb胞子と, E324はM11胞子と, そしてT240はM12胞子とそれぞれ特異的に反応した。更に各微胞子虫に重症感染し加熱乾燥処理した母蛾の磨砕物を用いた Inhibition-ELISA により, N321とNb胞子との結合がNb感染母蛾磨砕物により, E324とM11胞子との結合がM11感染母蛾磨砕物により, そしてT240とM12胞子との結合がM12感染母蛾磨砕物によって特異的に阻害されることが確認された。以上の結果は, 取得した単クローン抗体がこれら3種類の微胞子虫胞子を識別するための有効な試薬になり得る可能性を示している。
  • 絹の染色機構に影響を及ぼす諸因子に関する研究 第6報
    中嶋 哲生, 清水 慶昭, 四方 正義, 木村 光雄
    1988 年 57 巻 3 号 p. 196-199
    発行日: 1988/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    生糸時に弾性限界点以上に伸長された絹糸について酸性染料の等温吸着平衡並びに初期染色速度を測定し, 生糸時の伸長が絹糸の染色性に及ぼす影響について検討した。伸長された生糸は, 炭酸ナトリウムと非イオン界面活性剤の混合溶液にて精練した。染料としては, 特級試薬 Orang II (C. I. Acid Orange 7) を用いた。半無限浴で, 40, 50, 60℃における染色開始から900秒までの染色速度と同温度での, 吸着等温線を測定し, 以下の様な結果を得た。1) 飽和値は伸長されたものの方が少し大きかった。2) 初期における染色速度は, 伸長されたものの方が少し小さかった。このように, 絹繊維の微細構造は伸長されることにより変化を受け, それによって絹繊維の染色性もまた変化することがわかった。
  • 阿部 芳彦
    1988 年 57 巻 3 号 p. 200-202
    発行日: 1988/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    アメリカシロヒトリから分離された微胞子虫類の病原性, 増殖様式, 血清学的性状などについて検討した。木原虫はアメリツシロヒトリ, カイコおよびハスモンヨトウの若齢幼虫に感染し, 死亡個体も観察された。しかし胞子形成はカイコ以外の幼虫では少なかった。ハスモンヨトウ幼虫では感染部位ほとんど神経組織に限定されており, 感染個体は早期に麻痺症状を示して死亡した。胞子の血清反応では本原虫は Nosema mesnili と同一の反応を示した。
  • 朝倉 哲郎, 吉水 広明, 葛原 亜起夫, 松永 是
    1988 年 57 巻 3 号 p. 203-209
    発行日: 1988/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    絹フィブロインが, グルコースオキシターゼ, GODの固定化担体として優れている原因を磁気共鳴法, すなわちNMR, ESRを用いて検討した。絹フィブロインの13C-NMRスペクトルならびにスピン-格子緩和時間, スピンラベル試料のESRスペクトルは, すべて, GODが存在しても, 変化は認められなかった。また, GODの酵素反応は, 絹フィブロインが存在しても本質的に変化しなかった。以上のように, 絹フィブロインとGOD間に目立った相互作用は認められず, 絹中でGODはその酵素反応を十分に行うことができ, それが上記の原因の一つと考えられた。
  • 顧 世紅, 岩下 嘉光, 川崎 秀樹
    1988 年 57 巻 3 号 p. 210-215
    発行日: 1988/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    イミダゾール系化合物 (KK-42) の投与による3眠化のしくみを解明する目的で本実験を行った。エクジステロンの注射後に発現する形態変化から幼若ホルモン (JH) 変動の推定を行った。4齢投与幼虫のエクジステロン注射については投与後24時間目に, 正常な幼虫脱皮, 48時間目に触角の膨大及び翅原基の外転, 72時間目には蛹の形態を示すクチクラがそれぞれ見られた。また, 3齢投与により3眠蚕となった終齢にエクジステロン注射をした幼虫の形態変化は, 4眠蚕の5齢幼虫に同様に注射した時に発現する形態変化と類似した。さらに, 3齢投与幼虫のエクジステロイド濃度のピークは正常3齢幼虫に比較して3日程度遅く現れていた。以上の結果により, 4齢投与幼虫のJHは投与後48時間目に低下し, 72時間目頃には殆ど体内から消失すること, 3齢投与幼虫ではKK-42の抗エクダイソン作用が3眠化に深く関与することが推察された。
  • 飯塚 英策, 小笠原 一郎, 玉井 治
    1988 年 57 巻 3 号 p. 216-222
    発行日: 1988/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    多くの品種から成るいくつかの蚕品種群のカイコの産する繭糸について弾性率の, 精練絹糸については結晶化度の測定が行われ, 両物理量とも繊度に関して負の有意な線型相関関係を示すことが明らかにされた。
    日本白繭種群においては, 線型相関関係を表わす回帰直線の回帰係数 (負) の絶対値|b|は弾性率と結晶化度の両相関関係ともに改良型蚕品種群の方が在来型蚕品種群よりも低い値を示した。欧州蚕品種群は他の蚕品種群に比して低い|b|-値で特徴づけられたので, 欧州種との交雑育成種を多く含む日本白繭改良種がこの傾向を受け継いだ可能性が高いと判断された。
    中国白繭種群については, 在来型改良型両蚕品種群間で|b|-値に有意な差が認められなかった。これは品種改良が主として同種の在来型品種内で行われたことによるものと考えられた。
    なお一般に, 品種改良により繭糸の弾性率が高くなる傾向が認められた。
  • 清水 滉, 茂木 達宏, 大川 健介
    1988 年 57 巻 3 号 p. 223-226
    発行日: 1988/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    繊維中にタンニン酸―金属錯体を生成させることによって, 絹の黒染の可能性を検討した。タンニンと鉄塩とによって暗青ないし黒色が得られることから, タンニン酸吸着絹布を種々の鉄塩で媒染し, 発色した色相から, 用いた鉄塩の中では第一鉄塩が有望であることが認められた。タンニン酸吸着絹布に対して第一鉄塩による媒染を数回行うことによって, マンセル色票のN2.25/3.8%Rに相当する赤みの黒色が得られた。更に, 第一鉄塩による媒染と銅塩による媒染とを行うことによってN2/3.1%Rに相当する赤みの黒色が得られた。この絹布の耐光および耐洗濯堅牢度は良好であったが, 耐摩擦堅牢度は最低の値であった。
  • 渡辺 泰光, 吉原 常男, 井上 元
    1988 年 57 巻 3 号 p. 227-231
    発行日: 1988/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコ培養細胞株 (SES-BoMo-15A) をMGM-448培地から牛胎児血清 (FBS) 量の異なるMGM-443培地及びMM培地へ順化または移行させ, それらのカイコ核多角体病ウイルスに対する感受性を調査した。10%FBSを含むMGM-448培地及びMGM-443培地における細胞の増殖速度とウイルス感染率はほぼ同様であった。3%FBSを含むMM培地ではウイルスの増殖が認められたが細胞には多角体の形成がほとんどみられなかった。つぎに, 3%FBSを含むMM培地での順化細胞をFBS量が3%と10%のMGM-443培地とMM培地へ移しウイルス感染率を調査したところ, 多角体形成細胞率は常に10%FBS量区で高く, 多角体形成に及ぼすFBS添加量の影響が明らかであった。また, MM培地区の細胞における多角体形成は極めて乏しく, 長期間の培養において小形の多角体が少数の細胞に形成されたが, MGM-443培地区に比較して極めて低率であった。これらの事から, MM培地にはカイコ核多角体形成の面で栄養的に不足するものがあると推察された。
  • 1988 年 57 巻 3 号 p. 232
    発行日: 1988/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコの5齢期における脂肪体での脂質合成からゲリコーゲン合成への代謝転換
  • 一田 昌利
    1988 年 57 巻 3 号 p. 233-234
    発行日: 1988/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 天蚕の生活環の制御に関する研究 (第2報)
    談 恩智, 鈴木 幸一, 栗原 守久, 桑野 栄一
    1988 年 57 巻 3 号 p. 235-236
    発行日: 1988/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 管家 英治, ERNEST F. COUCH
    1988 年 57 巻 3 号 p. 237-238
    発行日: 1988/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 常山 泉, 榎本 末男, 大山 勝夫
    1988 年 57 巻 3 号 p. 239-240
    発行日: 1988/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 1988 年 57 巻 3 号 p. 256
    発行日: 1988/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコの蛹―成虫発育に及ぼす数種のイミダゾール誘導体の抗エクジステロイド作用
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