ポリビニルアルコール (PVA) を部分的に酢酸化するような場合を考えると, 酢酸墓で置換される水酸基の位置の組み合せによって, 同一置換度の分子についても非常に多くの異性体の存在が考えられる。これらの異性体中極端に異る2種の型として, 置換が糸状分子に沿って無秩序に比較的平均して起っている型と, 糸状分子の各部分に選択的に集中的に起っている型の2種が考えられる。前者を無秩序置換分子, 後者を選択的置換分子と命名する。PVAの部分ホルマール化によってこれら2種の型の分子を合成した。前者はPVAの水溶液から出発して, 均一系でホルマール化を行うことにより, 後者はPVAのフィルムを不均一系でホルマール化することによって得られた。これらの分子の固体の構造を考えると, 無秩序分子には問題はないが, 選択的置換分子にはそれが無秩序に相互K配置された場合と, 置換されない部分はされない部分に, された部分はされた部分に相接近, 対応して配置された選択的配置の2種が考えられる。無秩序分子が無秩序に配置されたフィルム, 選択的置換分子が無秩序並びに選択的に配置されたフィルムの3種につき, 種々ホルマール化度を異にする場合の比重を測定し, 3種のフィルムは明瞭に異る比重を示すことを明らかにした。
 抄録全体を表示