ゴム加硫後に於て緩慢な加硫現象が鹿起する。これは後加硫と呼ばれ, 夙にHinrichsen こよつて指摘され, 又その後, 多くの人々によつても確かめられた。しかしながらこの現象は加硫中に於ける反應と同じであるか, 又は別個のものであるかに就いては知られていない。それのみか, ゴム加硫の本態が明かでなかつた。いまこの現象を明かにするため實験を行い, 次に述べる2, 3の知見を得たの。
1) 後加硫は, 加硫時の反應と似てむり, 加硫後残存する硫黄が緩慢にゴム分子と反應してチオケトン基を附加し, 加硫時に生じていた在來のチオケトン基と合體して逐次架橋に移つて行くものと考えられる。
2) このような反應が加硫ゴムの内部で自然に行われて行くためには, 自由分子鎖*が大きな役割を果していると考えられる。素練條件のみを異にした加硫ゴムの現象は既に述ベた。
ここでは後加硫の現象に対して2, 3の知見を得ると共に, 加硫中に綱目の破れから生ずる分岐鎖の暴動を考察して見たい。
*ここに自由分子鎖とは, 加硫時に於て網目構成要素とならなかつた末端部分や, 又は加硫中に綱目の崩壊から生ずる分岐鎖のように一端を固定され, 他端が自由な分子鎖を総稱することにする。
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