高分子化學
Online ISSN : 1884-8079
Print ISSN : 0023-2556
ISSN-L : 0023-2556
30 巻, 343 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 吉武 敏彦
    1973 年 30 巻 343 号 p. 663-666
    発行日: 1973/11/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    アクリル酸 (AA) をグラフトしたポリ塩化ビニル (PVC), (AA-g-PVC) のTHFおよびDMF溶液の粘度数を測定した, DMF中では濃度が小さいところで粘度数の上昇が見られる。これはカルボキシル基の解離による高分子電解質的挙動によるものであろう。THF中では電解質的な挙動は見られなかった。
    THF溶液はきわめて希薄な濃度でも白濁が見られ, この白濁は温度の上昇および濃度の増加とともに大になる。温度の上昇に伴う粘度数の変化を測定し, 白濁が大になるとともに粘度数が低下することを認めた。また, 濁りを光電光度計を用いて透過光の減少から求め, 溶液中に存在する粒子の大きさをDQ値を用いて推定した。この濁りは溶液にメタノールを少量加えることにより消失する。
    この白濁の原因はグラフトポリマーのポリアクリル酸成分が会合することによるものと考えられる。THFはPVCの良溶媒であるからグラフトポリマーのPVC成分は溶解した状態でとどまり, ポリアクリル酸成分が会合を起こすと高分子ミセル構造が形成されるものと考えられる。
  • 中村 儀郎, 森 邦夫, 杉本 一美
    1973 年 30 巻 343 号 p. 667-672
    発行日: 1973/11/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    トリチオシアヌル酸・1ナトリウム塩 (TTCA・Na) を混練したポリ塩化ビニル (PVC) 板は, 水洗浄を行なうだけで直ちに, 塩化第一スズのような感応化試剤と板表面でメルカプチドを形成して感応化を受け, つぎのメッキ工程に供することができる。さらに, この場合得られるメッキ層のはく離強度は, PhGのような親水性高沸点溶媒を混練することによって一層増加する。
    また, チオフェノール, β-チオナフトール, チオグリコール酸オクチルエステル, または, 2-ジブチルアミノ-4, 6-ジチオ-s-トリアジンのようなチオールのメルカプチドに比較して, より強い還元力を有するTTCAのスズ (II), 銀, 銅メルカプチドを混練したPVC板は, 水洗または, DMF処理を行なうだけで, 感応化工程, あるいは, 活性化工程を省略して, 直接化学銅メッキ工程に進むことができる。
    ここに得られるメッキ層のはく離強度は, 0.1~15kg/cmである。
  • 森川 洸, 天野 高男
    1973 年 30 巻 343 号 p. 673-680
    発行日: 1973/11/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリ塩化ビニル (PVC) の熱分解を粉末, 溶液状態 (静的熱分解), およびプラストグラフによりせん断力下 (動的熱分解) で行ない, 高級脂肪酸アミドの作用と効果を, 分解体の紫外・可視吸収スペクトルを測定することによって検討した。
    酸アミドは静的熱分解を促進する。粉末系およびフタル酸ジ-2-エチルヘキシル溶液系におけるこのような熱分解の促進は, 酸アミドの求核性に基づくものであり, とくにシクロヘキサノール溶液系においては酸アミドのプロトン付加体の親電子性および生成した塩化アンモニウムやジアミドのプロトン付加体の親電子性にも基づくものと思われる。
    金属カルボン酸塩の共存する場合, ステアリン酸アミドは, PVC粉末の熱分解に対し促進効果を示すが, 可塑剤の存在する系においては抑制効果を示すかあるいは無効果である。
    プラストグラフによる動的熱分解において, ステアリン酸アミドを添加すると, 混練抵抗は小さくなり, 可塑剤を含むPVCの場合にはその熱分解はほとんど抑制されないが, 可塑剤を含まないPVCの場合には, 摩擦による発熱が抑えられることによってかなり大きく熱分解が抑制される。
  • 鈴木 恵, 自念 栄一, 山本 勇
    1973 年 30 巻 343 号 p. 681-687
    発行日: 1973/11/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ABS樹脂に短いガラス繊維を分散複合したガラス繊維強化ABSプラスチックの圧縮クリープおよびその回復性を平面および鋼球圧子によって測定し, これら特性の温度依存性や繊維混入率との関係から繊維による母材の強化機構を検討した。その結果, 繊維混入によって瞬間弾性率は上昇し, 遅延弾性クリープ以降は約75℃以上の母材の粘性が低下し始める温度から母材の流動を阻止する効果が現われ, 繊維混入率の増加に伴ってクリープひずみ速度を減少させる効果が顕著に認められた。一方回復率については荷重, 温度に依存するが, 繊維混入率の増加によって改善されることがわかった。これらのクリープ挙動は母材の場合, 線形粘弾性的であるが, 繊維混入によって非線形的となり, 粘塑弾性的挙動を示すことがわかった。そこで粘塑弾性理論を適用した結果, 摩擦力の分布関数の面からも繊維による母材の流動阻止効果が明らかとなった。
  • 山口 格, 長井 勝利, 小野 堯之
    1973 年 30 巻 343 号 p. 688-693
    発行日: 1973/11/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    微量の1, 3-シクロヘキサジエン (1, 3-CHD), 1, 3-シクロオクタジエン (1, 3-COD), およびシクロヘキセン (CH) の存在下で, 液体亜硫酸中でのスチレン (St) の重合について検討した。
    1, 3-CHD存在下では酸素の存在しない場合においてもStのカチオン重合が起こり, 同時に少量のポリスルホン (1, 3-CHD-St-SO2コポリスルホン) (PSul) も生成した。ポリスチレン (PSt) の生成速度は1, 3-CHD添加量の約1.0次に比例し, その生成の全活性化エネルギーは約8.5kcal/molであった。また酸素はPStの生成を促進し, PSulの生成を抑制する効果を示した。
    一方1, 3-CODおよびCH存在下では酸素ふんい気下で重合を行なった場合にのみ, PStの生成が認められ, これらの場合にはPStの生成に対して見かけ上誘導期が見られた, PStの生成に対する開始反応の活性化エネルギーはそれぞれ約9.2kcal/molおよび10.5kcal/molであった。
    これらの結果と既報のシクロオレフィン類の液体亜硫酸中での重合の結果から, シクロオレフィン類とSO2との間での電荷移動によって生成したシクロオレフィンのラジカルカチオンとスチレンとの電子移動, さらにスチリルラジカルカチオンからカチオン重合開始種が生成し, スチレンのカチオン重合が起こるものと推定した。
  • 潮村 哲之助, 岩尾 徹也
    1973 年 30 巻 343 号 p. 694-698
    発行日: 1973/11/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    アイソタクチックポリプロピレンのβ変態の延伸性をα変態の延伸性と比較した。1軸延伸の場合, β変態はα変態に比較して降伏点応力が低く, 上下降伏点応力の差が小さいことが確認された。160℃での2軸延伸の場合では, β変態を延伸して得たフィルムは, 厚みが非常に均一であり, また表面が梨地状である点で, α変態を延伸したフィルムと大いに異なっている。ところが延伸されたフィルムの結晶構造にはもはや両者の差異はなく, また延伸されたフィルムの機械的性質も互いに非常に類似しているのである。
  • 山口 格, 佐々木 栄一, 前沢 次朗, 河本 正夫
    1973 年 30 巻 343 号 p. 699-703
    発行日: 1973/11/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ナイロンのメタル化物を開始剤とするメタクリル酸メチルのアニオングラフト重合をテトラヒドロフラン中で行なった。重合は容易に進み, アミド基のメタル置換度0.1の場合, 60℃, 5時間で転化率は90%以上に達した。重合は, モノマー初濃度, 時間, 温度の増大とともにやや重合率が増加する傾向が示された。アミド基のメタル置換度を変えたときには, 重合速度に著しい差が見られた。得られた反応生成物を, 順次溶媒抽出により四部分に分離し, 各部分の生成量およびそれぞれに含まれるナイロン幹ポリマーの量に及ぼす反応諸条件の影響について調べた。さらに得られたグラフトポリマーの構造について検討した。
  • 野口 順蔵, 西 則雄, 吉本 正人
    1973 年 30 巻 343 号 p. 704-708
    発行日: 1973/11/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    さきにα-ヘリックス構造をもつポリ-L-ロイシン繊維が羊毛類似の性質を示すことを明らかにした。本研究では, 羊毛分子中のシスチン橋かけの意義を明らかにする目的でL-ロイシンに対しL-システインを3, 5, 7および10%モルの各割合で共重合させ, α-ヘリックス構造にシスチン橋かけをもったコポリマー繊維を合成した。その性質は, 羊毛程度の強度およびヤング率を示すが, 荷重-伸度曲線において, 羊毛に特徴的でありポリペプチド分子のβ構造に起因すると考えられる20%伸度以上での起ち上りは認められなかった。この点は今後研究されねばならない。
feedback
Top