高分子化學
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25 巻, 273 号
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  • 橋本 静信, 神内 重矩
    1968 年 25 巻 273 号 p. 1-5
    発行日: 1968/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    脂肪族ポリエステルの線状ポリマーと環状オリゴマーとの関係を検討することを目的として研究した。まず, ε-カプロラクトンの開環重合における触媒効果について調べた結果, 触媒として水が最も開環速度は速く, 短時間でほとんど定量的に重合した。しかし, 重合度はかなり低かった。また, 酢酸亜鉛では重合度の高いものとなり, 分子量10000程度の高分子量物質を得た。一方, ポリカプロエステルの解重合による環状ラクトン生成反応に熱平衡関係を適用し, 活性化エネルギーを算出し, 47kcal/molという値を得た。
  • 橋本 静信, 古川 功, 米田 昭夫
    1968 年 25 巻 273 号 p. 6-10
    発行日: 1968/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    主鎖にリン酸エステル結合を持つ複素環ポリマーを得る目的で1, 3-極性付加環化反応を利用し, テレフタルジニトリルオキシドと種々のリン酸エステル系2官能不飽和化合物との重合を行った。重合は種々の溶媒を用い室温にてかきまぜる方法によった。その結果DMF中でジオレフィン成分を変えた場合は収率80%以上で軟化点約130-170℃の範囲内にあるポリマーを得た。DMF溶液での還元粘度はいずれも0.2前後であった。種々の重合溶媒について検討した結果HMPA-ジオキサン混合溶媒の場合に比較的すぐれた結果を与えた。この含リンポリマーの耐熱性はリン酸エステル基のためあまりすぐれていない。ポリマーの赤外吸収スペクトルはいずれもイソオキサゾリン環に起因すると考えられる吸収を認めた。またポリマーの構造はリン分析値より1:1付加構造をとっていると考えられた。
  • 橋本 静信, 古川 功
    1968 年 25 巻 273 号 p. 11-15
    発行日: 1968/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    フェニルホスホノチオイックジクロライドを出発原料として数段階を経てビス (p-カルバジノフェニル) フェニルホスヒンオキサイドを高純度, 高収率で得た。このホスヒンオキサイドと脂肪族または芳香族ジオール類とを適当な溶剤中で110℃ に加熱することによってポリウレタンを得た。このポリマーの重合度は反応試剤のモル比ならびに使用した溶剤の種類によって影響を受け, 最も高粘度 (ηsp/C=0.24) を与えたのはニトロベンゼンを用い, グリコールに対してホスヒンオキサイドを1.02倍量用いたときであった。また一般に脂肪族ジオール類からのポリウレタンは芳香族ジオール類からのものより高粘度で, しかも高融点を示した。
  • 下條 澄雄, 谷本 重夫, 岡野 正弥, 小田 良平
    1968 年 25 巻 273 号 p. 16-18
    発行日: 1968/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    ヒドロキノンとベンジジン-3, 3'-ジカルボン酸をバナジン酸アンモニウムと塩素酸ナトリウムを用いて縮合させ, 得られたCOOH型ポリマーを熱濃硫酸で閉環させてポリキナクリドンキノンとした。このものは, ヒドロキノン-25-ジカルボン酸とベンジジンを同様に縮合させて得たCOOH型ポリマーを閉環させることによっても得られた。これらのポリキナクリドンキノンについては, 分子量はあまり大きいものてはなかったが, 他の多くの耐熱性ポリマーと比較して一段とすぐれた熱安定性を有することがわかった。すなわち, キナクリドンキノン構造は耐熱性ポリマーの構造単位としては最高のものの一つであろう。
  • 菊川 清, 野桜 俊一, 村橋 俊介
    1968 年 25 巻 273 号 p. 19-24
    発行日: 1968/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    ポリ炭酸ジビニル (PDVC) あるいは炭酸ジビニルー酢酸ビニル共重合体 (DVC-VAc) より得られるポリビニルアルコール (PVA) の構造について検討した。これらのPVAはPDVCおよびDVC-VAc共重合体中の5員環構造に由来する多量の1, 2-グリコール構造を含んでいる。1, 2-グリコール構造が増加するに従い (3mol%~45mol%). PVAの融点は低下し, 赤外吸収スペクトルのCO伸縮振動も1090cm-1から1050cm-1へ移動する。1, 2-グリコール構造を40mol%以上含むPVAでは, 示差熱分析で融点が認められなかった。1, 2-グリコール量による融点の変化をFloryの理論により取り扱い, PVAの融解熱として1.67kcal/molを得た。また, 1, 3-グリコールだけからなり1, 2グリコール構造を含まないPVAの融点として243℃ を得た。
  • 松沢 秀二, 井本 友三久, 岡崎 正樹
    1968 年 25 巻 273 号 p. 25-30
    発行日: 1968/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    PVA 3%, ホルムアルデヒド5%および塩酸0.5Nの水溶液をつくり, PVAをホルマール化し, ホルマール化度の異なるホルマール化PVA (PVFW) を作製した。このさい, すでに知られているように, ホルマール化度30mol%を越えるとPVFWは沈殿してくる。PVFWの残存水酸基をピリジンを触媒に用いて酢化した。それら酢化物のうち, ホルマール化度45mol%以上のものは, クロロホルムに部分的に可溶であるか, 完全に不溶であった。また部分ケン化PVAcのケン化と同時ホルマール化を酢酸水溶液中で行ない (反応は終始均一系で進んだ) 得られたホルマール化PVA (PVFS) は, 酢化後ホルマール化度80mol%のものまでクロロホルムに可溶であった。ホルマール化22mol%以上の酢化PVFWの極限粘度数の原料PVAcのそれに対する増加量は, 同一ホルマール化度の酢化PVASのそれより大であった。またそれらの試料の数平均分子量を浸透圧法により求めた。ホルマール化度22mol%以上のPVFWの数平均分子量は線状ポリマーとして計算した値より大であった。PVFSの場合それはすべて計算値よりやや小であった。以上から, 水溶液より出発するホルマール化反応のさい橋かけが生ずると結論した。
  • 辻 孝三, 吉田 宏, 林 晃一郎, 岡村 誠三
    1968 年 25 巻 273 号 p. 31-35
    発行日: 1968/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    ニトロエチレンを少量加えた2-メチルテトラヒドロフラン低温ガラスを放射線照射すると, ニトロエチレンのアニナンラジカルのESRスペクトルが観測される。このアニオンラジカルは, ニトロエチレンが2-メチルテトラヒドロフランの電離により放出された電子を捕獲して生成したものである。また, このアニオンラジカルは, ガラス中におけるニトロエチレンの放射線後効果重合の開始種であることが知られた。アニオンラジカルのESRスペクトルは可視光で容易に消滅し, 通常の中性ラジカルとは異なった挙動を示す。
  • 古川 淳二, 川端 成彬, 西村 淳
    1968 年 25 巻 273 号 p. 36-40
    発行日: 1968/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    ジアルキル亜鉛-ポリハロメタン系触媒が, メタクリル酸メチルやビニルエーテルなどのビニルモノマーの重合を開始することが見出された。中でもEt2Zn-CBr4系が最も大きい触媒活性を有している。スチレンやメタクリル酸メチルの重合は, ラジカル的に進行することが共重合の結果などから推定された。しかし, ハイドロキノンやジフェニルピクリルヒドラジルは, 重合禁止作用を示さなかった。ビニルエーテルの重合は, カチオン重合機構で進行するものと考えられた。結晶性のポリイソブチルビニルエーテルが, 得られる場合も見出された。
  • 第8報インデンのBF3・OEt2によるカチオン重合
    桜田 一郎, 伊勢 典夫, 林 譲, 中尾 正明
    1968 年 25 巻 273 号 p. 41-49
    発行日: 1968/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    トルェン, 1, 2-ジクロルェタン, ニトロベンゼンおよびそれらの2成分混合物を溶媒として, インデンのBF3・OEt2触媒によるカチオン重合に対する電場の影響を検討した。電場による重合初速度の増大は, トルエンにおいては観測されず, 誘電率の上昇とともに増大し, 極大値を経て, 減少した。この結果は, トルエン溶媒においては生長連鎖末端のイオン対の解離定数が非常に小さいため電場効果が現われず, 誘電率が上昇するに従って生長連鎖末端がより自由イオン性になることを示すと考えられる。この説明は, 既報の動力学的な考察からの予想と一致する。以上の結果から, インデンの自由イオン生長反応速度定数とイオン対生長反応速度定数の比は, 1, 2-ジクロルエタン溶媒においては, スチレンのそれより小さく, また, この比の溶媒の誘電率による変化の割合もスチレンのそれより少ないことが推論された。1, 2-ジクロルエタン溶媒で得られたポリマーの重合度は電場により, わずかではあるが上昇した。
  • 石川 欣造, 宮坂 啓象, 山本 靖昭
    1968 年 25 巻 273 号 p. 50-54
    発行日: 1968/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    PVA結晶の格子定数が水の吸着によって変化することを見出した。試料として十分高温で熱処理したPVA繊維を用いX線回折法で格子変形を測定した。絶乾状態での測定および一定相対蒸気圧に試料を保つ目的でベルジャー型のセルを試作した。PVA結晶は相対蒸気圧の増加につれてしだいに変形して行く。変形は分子鎖軸と直角なac面内で起こり, b軸ては変化が観察されない。水による格子の変形は, a軸でわずかな収縮, c軸では高い蒸気圧下では1%以上に及ぶ伸張である。一定の蒸気圧を保った場合の格子変形の速度は相対蒸気圧に依存し, 低圧では, 数十時間で平衡に達するが, 高圧では1時間程度で変化は終了する。本研究で得られた結果から, PVA結晶は水を吸着することおよび望月らによって報告された電子線回折による格子定数が従来得られているX線によるそれと多少異なるという結果は, 両者の測定条件の相違によるものであって, 前者はほぼ絶乾状態に対応し, 後者は吸水した状態のそれに対応するものと考えられる。
  • 第4報シンジオタクチックポリビニルアルコールの溶解温度およびずり応力による析出量に及ぼす重合度ならびにタクチシティの影響
    呉 祐吉, 松沢 秀二, 近藤 慶之, 中村 和男, 坂本 敏夫
    1968 年 25 巻 273 号 p. 55-61
    発行日: 1968/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    ギ酸ビニルおよび三フッ化酢酸ビニルの重合物から得られた種々のシンジオタクチックポリビニルアルコール (VF-PVAおよびVTFA-PVA) を試料として, 溶解温度およびずり応力による析出量を測定した。VF-PVAのシンジオタクチック (diad)%(s-(diad)%) は, 重合温度が低いほど高く, VTFA-PVAのそれは, 高重合度物ほど低かった。それらの粗い粉末の溶解温度は酢酸ビニルから誘導されたPVA (VAc-PVA) に比べかなり高かった。なお, それは, s-(diad)%が同一ならば重合度が高いほど高いこと, および同一重合度ならばs-(diad)%が高いほど高いことを認めた。水溶液にずり応力を加えて析出させた溶質の溶解温度は, 原料PVAのそれより約10℃高かった。さらに, その析出物の溶解温度もs-(diad)%が同一ならば重合度が高いほど高く, 重合度が同一ならばs-(diad)%が高いほど高かった。PVA水溶液のずり応力による析出量は, VAc-PVAではほとんど無視しうる程度であったが, VF-PVAおよびVTFA-PVAの場合は, s-(diad)%および重合度により左右されたが, 約9~93%であった。また, 析出物のs-(diad)%が, 原料PVAに比べやや高くなる傾向が認められた。以上の事実から, シンジオタクチック部分のsequence lengthが機械的変性に重要な役割をしていることを認めた。
  • 第5報シンジオタクチックボリビニルアルコール水溶液のゲル化について
    呉 祐吉, 松沢 秀二, 中村 和男
    1968 年 25 巻 273 号 p. 62-67
    発行日: 1968/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    ポリビニルアルコール (PVA) 水溶液の粘度は, 低温で時間とともに上昇し, ある濃度以上でついにゲル化する。酢酸ビニル (VAc), ギ酸ビニル (VF) および三フッ化酢酸ビニル (VTFA) から誘導されたPVA (VAc-PVA, VF-PVAおよびVTFA-PVA) を用い, 種々の条件でゲルをつくった。それらのゲルの見かけの融点とPVA濃度との関係を測定し, PVAの立体規則性がゲルの構造にどのような影響を与えるかを調べた。ゲルの見かけの融点TMと濃度Cとの間には, だいたいlog C=const.-ΔH/2.303RTMなる関係が成立した。これから計算されたΔHはVAc-PVAでは72kcal/mol, VF-PVAでは10-12kcal/molおよびVTFA-PVAでは20kcal/molであった。ΔHをゲルの一つの網目が融解するときのエネルギーとすると, これは水素結合がVAc-PVAでは1-2個, VFPVAでは約2個およびVTFA-PVAでは約4個に相当すると考えられる。VTFA-PVAでは, 低濃度領域で上式からはずれる傾向にあった。そこで, その領域では水を会合した分子間水素結合をしてゲルを形成しているのではないかと考えた。また, ゲルを形成する一つの網目がシンジオタクチック部分から形成されているとすると, シンジオタクチック部分のsequence lengthのより長いものを持つほど, 機械的変性を起こすといえる。
  • 木下 茂武, 斉藤 安史, 菊池 道継, 都解 圭郎
    1968 年 25 巻 273 号 p. 68-79
    発行日: 1968/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    配向性のよい高分子材料では分子鎖の方向性による疲労破損の程度が異なる。その基本的な原因を明らかにする目的で, 一軸性延伸ポリプロピレン (PP) フィルムを試料として, 表面摩擦力およびその摩擦痕の損傷を観察した。鋭い刃状の摩擦子を用いて, PPフィルムの摩擦力の荷重依存性, 温度効果, 方向差などについて次の実験結果が得られた。垂直荷重が10gから90gまで増加するに従って, 摩擦機構は, 凹凸部の凝着のせん断から表面の盛り上がり変形を経て, 塑性流動変形に移行する。摩擦力の温度変化は試料のヤング率の温度変化と対応しており, 約60℃の結晶分散開始温度から表面の盛り上がり変形が顕著になり, 結晶分散のピーク125℃以上で流動変形に移る。表面の盛り上がり変形は分子鎖に直角にスライドするときが平行にスライドする場合より大である。これが摩擦力の方向異方性を示す主因である。低温では荷重が大きいとき, 高温では荷重が小さいときから摩擦痕にはクラックの発生が認められる。クラック方向は試料のスライド方向には無関係に, 分子鎖の方向に対して約30°の傾角をなしている, この傾角はポリプロピレン結晶のすべり面と一致する。分子鎖に対して一定傾角のクラックの存在が摩擦力の異方性のもう一つの原因となる。
  • 第1報
    三平 和雄, 大沢 直志, 中山 晃
    1968 年 25 巻 273 号 p. 80-86
    発行日: 1968/01/25
    公開日: 2012/02/20
    ジャーナル フリー
    独立気泡をもつ高分子含泡体の粘弾性的性質を研究するために, 独立小気泡をもった市販フォームを素材として, これに多数の大気泡を作為的に附加した二重構造の含泡体試料をつくり, 試作した圧縮粘弾性試験機を用いて, この動的粘弾性を測定した。その結果, 含泡体の充てん率pとそのときの粘性率ηpおよび圧縮モジュラスEpとの間には次のような実験式が得られた。

    ここにη0, βは含泡体の構造因子のみによって決まる定数であり, ηm, Emは高分子材料の粘性率および圧縮モジュラスである。
  • 第2報結晶化温度と融点
    池田 守男
    1968 年 25 巻 273 号 p. 87-96
    発行日: 1968/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    差動熱量計において, 溶融状態から所定の結晶化温度 (Tc) で長時間等温結晶化したポリエチレンテレフタレート (分子量≒15000) はTc≧225℃ ではただ1個の結晶融解による吸熱ピークを示し, 一方, 160%≦Tc≦225℃では3個の吸熱ピーク (Peak 1, Peak 2およびPeak 3) を示し, そしてTc≦160℃では2個の吸熱ピーク (Peak 1およびPeak 3) を示す。各ピークは高温の順からそれぞれPeak 1, Peak 2およびPeak 3と記す。溶融状態から急冷したのち所定のTcで結晶化した試料はTc≦225℃において2個の吸熱ピーク (Peak 1'およびPeak 3') を示す。各ピークは高温の順からそれぞれPeak 1'およびPeak 3'と記す。
    1) Peak 1はTcおよび結晶化時間に関係なく一定のピーク温度を示した。しかし昇温速度 (HR) によってのみ変化した。すなわちPeak 1は速いHRで低湿側に, そして遅いHRで高温側にピーク温度を移動した。これらの結果からPeak 1の出現は昇温過程中における結晶の厚化と融解速度によると説明される。
    2) Peak2は結晶化時間およびHRにはほとんど関係なく, 主としてTcによって変化した。そしてPeak 2のピーク温度をTmとして示すと次の関係Tm=(Tc+Tc0)/2である, ここでTc0は平衡融点である。Peak 2の出現はTcに対応する結晶の再結晶化, サイズおよびその分布によると考えられる。
    3) Peak 3はHRを速くするとより高温側に移動した。Peak 3の出現はTcに対応する結晶の再結晶化, サイズおよびその分布によると考えられる。
    4) Peak 1'はPeak 1と全く同じ挙動を示した。
    5) Peak 3'はTc≦160℃ではPeak 3とほとんど同じ挙動を示した。しかし225℃≧Tc≧160℃において, Peak 3'のピーク温度はPeak 3のそれよりも低温側に出現した。
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