差動熱量計において, 溶融状態から所定の結晶化温度 (T
c) で長時間等温結晶化したポリエチレンテレフタレート (分子量≒15000) は
Tc≧225℃ ではただ1個の結晶融解による吸熱ピークを示し, 一方, 160%≦
Tc≦225℃では3個の吸熱ピーク (Peak 1, Peak 2およびPeak 3) を示し, そして
Tc≦160℃では2個の吸熱ピーク (Peak 1およびPeak 3) を示す。各ピークは高温の順からそれぞれPeak 1, Peak 2およびPeak 3と記す。溶融状態から急冷したのち所定の
Tcで結晶化した試料は
Tc≦225℃において2個の吸熱ピーク (Peak 1'およびPeak 3') を示す。各ピークは高温の順からそれぞれPeak 1'およびPeak 3'と記す。
1) Peak 1は
Tcおよび結晶化時間に関係なく一定のピーク温度を示した。しかし昇温速度 (HR) によってのみ変化した。すなわちPeak 1は速いHRで低湿側に, そして遅いHRで高温側にピーク温度を移動した。これらの結果からPeak 1の出現は昇温過程中における結晶の厚化と融解速度によると説明される。
2) Peak2は結晶化時間およびHRにはほとんど関係なく, 主として
Tcによって変化した。そしてPeak 2のピーク温度を
Tmとして示すと次の関係
Tm=(
Tc+
Tc0)/2である, ここで
Tc0は平衡融点である。Peak 2の出現は
Tcに対応する結晶の再結晶化, サイズおよびその分布によると考えられる。
3) Peak 3はHRを速くするとより高温側に移動した。Peak 3の出現はTcに対応する結晶の再結晶化, サイズおよびその分布によると考えられる。
4) Peak 1'はPeak 1と全く同じ挙動を示した。
5) Peak 3'は
Tc≦160℃ではPeak 3とほとんど同じ挙動を示した。しかし225℃≧
Tc≧160℃において, Peak 3'のピーク温度はPeak 3のそれよりも低温側に出現した。
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