ポリスチレン, ポリビニルナフタレン, ボリエチレン, ポリイソブチレン等の高分子炭化水素を分別し, 其極限粘度数 [η](濃度の單位はgl) の0.022から0.28の間で [η] を大體相等しくする5組の試料を選び鹽化ベンゼン溶液で80℃で粘度の測定を行い次の結果を得た。但し濃度cの範園は充分稀薄な溶液から100g/l迄である。
粘度と濃度の関係式に於て濃度の二次の項迄とつた。
ηsp/c=〔η〕+A
1〔η〕
2c
なる式が成立しないような高濃度, 高粘度の場合には三次の項迄考慮にいれた。
ηsp/c=〔η〕+A
1〔η〕
2c+A
2〔η〕
3c
2なる式が事實によく適合する。Huggins等も既に指摘しているように数A
1は(Huggins等はk'なる符號を用いている)重合度に無關係な係数であり, 粘度測定が好溶劑で行われる以上重合同族列の種類によつても大差がない。しかるに係薮A
2は同一系列の高分子に於ては重合度には無關係に一定であるが, 高分子の分子構造には鋭敏であり, 各系列に於てそれぞれ特有の数値を與える。特に興味の有るのは常温で重合した分岐の少いポリスチレンと100℃で重合した分岐の多いポリスチレンの比較であり, 分岐の影響は明瞭に係数A
2にあらわれ, nsp/cとcの關係曲線が直線を離れる頃から同一の〔η〕の試料に於ても分岐の多い化合物のnsp/cの方が他よりも遙に急激な上昇を示す。
粘度の濃度に關する三次の項の係数を吟味する事により, 二次項迄の吟味では不可能な場合にも分子構造に關し從來よりも一段と立入つた論議が可能になつたわけである。
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