エチレンのラジカル重合で生成する短鎖分岐構造の理論的計算の基礎を得るために, 主として, Hoffmannの拡張ヒュッケル分子軌道法を用いて, 遷移6員環状態を中心にラジカルにおける分子内水素移動反応の機構について考察し, 次の結論を得た。
i) この反応の遷移状態は, シクロヘキサンの椅子型に似た構造と思われる。
ii) ブチル分岐生成の場合の遷移状態とエチル分岐生成の場合のそれを比べると, 後者の方が, 著しく生成しやすい。
iii) 分子内水素移動反応の内, 短鎖分岐生成に対する寄与の最も大きいものは, 第一級ラジカルによる第一級および第二級水素の引き抜きを含むもの, 次いで, 第二級ラジカルによる上記水素の引き抜きを含むもの, これ以外は, 無視できるほど小さいと思われる。
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