高分子化學
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26 巻, 291 号
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  • 第2報引張特性の温度およびひずみ速度依存性
    今沢 康多, 松尾 正人
    1969 年 26 巻 291 号 p. 433-442
    発行日: 1969/07/25
    公開日: 2012/02/20
    ジャーナル フリー
    数種類の樹脂-ゴム2成分系ポリマーの引張特性をインストロン型引張試験機を用い, ひずみ速度0.25-25min-1, 温度範囲-40-60℃で測定した。試料としてはPVCに相溶性の異なる種々のゴムをブレンドした系, およびABS樹脂, 耐衝撃性ポリスチレンなどを用いた。降伏応力 (σY) には温度-ひずみ速度換算関係がなりたち, 重ね合わせの結果得られた合成曲線は次式で表わされた。〓
    ここでK1およびK2は材料定数であり温度およびひずみ速度には依存しない。aTは重ね合わせの際の移動量である。破断伸びに関してはクレージングによるものと思われるピークが樹脂, ゴム両成分のそれぞれのTgの間の温度に見出された。このピークはひずみ速度の増大によって顕著に高温側にシフトし, そのシフトのひずみ速度依存性より求められた見かけの活性化エネルギーは約20kcal/molとなった。また, aTの温度依存性から求められた降伏の活性化エネルギーはシャルピー衝撃値とよい対応を示した。以上の結果より, 樹脂-ゴム系の引張破壊現象の特異性が明らかにされ, 破壊機構としてのクレージングの重要性が指摘された。
  • 大沢 直志, 中山 晃, 三平 和雄
    1969 年 26 巻 291 号 p. 443-450
    発行日: 1969/07/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    前報で等球気泡をもつモデルフォームについて動的圧縮実験を行ない, フォームのpacking factorがpであるときの, 粘性率ηおよび圧縮モジュラスEpは, ηpmp+η0 (1-p), Ep=Em {p2+β (p-p2)} で表わされるであろうと予測した。ここに添字のmはフォームのマトリックスを表わし, η0, βはマトリックスの材質に依存しない構造因子と考えられた。本報では, この構造因子について, さらに詳しい検討を加えるために, 気泡球の大きさが5種の分布型をもつモデルフォームをつくり, 前報と同様な実験を行なった。その結果η0は材質に依存しないのみでなく, セルサイズおよび分布型にも依存しない, またβは平均気泡球半径γと比例関係があり, 圧縮モジュラスについては, Ep=Em {p2+ (p-p2)} なる関係式が得られた。ここにkは材質および気泡球半径の分布型に依存しない定数である。これらの実験式は, 多数の市販ポリエチレンフォームおよびPVCフォームについての実験結果とよく一致した。その結果, これらの実験式によって, 任意の動的圧縮特性をもつフォームを設計できることが示された。
  • 完戸 俊助, 鈴木 聡一
    1969 年 26 巻 291 号 p. 451-462
    発行日: 1969/07/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    イソプレンとメタクリル酸メチル (MMA) との乳化共重合に関して次の結果を得た。1) イソプレンは水に難溶であるため, 開始剤によってラジカルに活性化され重合反応の起点となることはほとんどない。しかし, 単量体で膨潤している粒子中でのイソプレンの反応性はメタクリル酸メチルより相当に大きい。2) 仕込溶液のpHを弱酸性から弱アルカリ性に変えると粒子径は増大するが収率は減少する。3) 加水分解によるポリマーカルボキシレートの生成は仕込溶液中のpHが6.4-6.6で極小を示し, これをはずれると増加する。4) カルボキシレートの定量ではIR法はラテックス粒子中の全カルボキシレートを検出し, 電位差滴定法は表面層のものを検出する。とくにはっきりと解離定数の見積れるものでもpKはおよそ6であって, 単量体のそれよりはるかに小さい。5) 臭素添加によってポリマーはγ-ラクトン環を形成する。6) ラテックスのロ紙電気泳動法を開発し, 易動度と表面の解離基との関係を論じた。
  • 第3報1, 3-シクロヘキサジエンのポリスルホン
    山口 格, 長井 勝利, 小野 尭之
    1969 年 26 巻 291 号 p. 463-470
    発行日: 1969/07/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    1, 3-シクロヘキサジエン (1, 3-CHD) と液体亜硫酸 (SO2) との共重合について検討した。1, 3-CHDはSO2と-78℃でも無触媒で共重合する。生成コポリマーは重合系が不均一の場合には白色粉末で, フェノール類および-35℃付近以下のSO2に可溶であるが, 均一系の場合には角質状で上記の溶媒には膨潤する程度であった。コポリマーの組成は, ともに1: 1であった。コポリマーの構造は3, 6-ジ置換シクロヘキセン環とSO2から成る構造単位を有すると推定された。重合速度は-35℃付近で極大値を示し, これ以上の温度では減少する傾向を示した。コポリマーのSO2に対する溶解性および重合系において-35℃付近で特異な変化が起こることを観測した。すなわち, コポリマーは-35℃付近以下でのみSO2に溶解し, 希釈剤を使用しない場合にはこの温度以下で1, 3-CHDに対し, SO2大過剰の状態では重合系は均一であるが, -35℃以上では不均一である。-40℃以下における重合の見かけの全活性化エネルギーは約4.7kca1/mo1で, 重合初速度は一40℃では1, 3-CHDおよびSO2初濃度のそれぞれ2次および3次に, 0℃ではともに2次に依存するという結果を得た (希釈剤: トルエン; 1, 3-CHD初濃度: 0.5-1.5mol/1; SO2初濃度: 5-11mol/l)。コポリマーの熱分解は180℃付近から始まった。またアルカリ水溶液および液体アンモニアにも急激に分解した。X線回折図では17.4゜に鋭いピークを示した。フェノール可溶および不溶ポリマーの性質にはほとんど差異はみられなかった。
  • 第13報ラジカル共重合におけるシスートランスーメチルプロペニルエーテルおよび2, 3-ジヒドロピランの反応性
    稲木 良昭, 野桜 俊一, 村橋 俊介
    1969 年 26 巻 291 号 p. 471-478
    発行日: 1969/07/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    非共役型1, 2-二置換エチレンのシス, トランス異性体間のラジカル反応性について検討するために, シスー, トラソスーメチルプロペニルエーテル (MPE), および置換基の固定された2, 3-ジヒドロピラン (DHP) の無水マレイン酸またはアクリロニトリルとのラジカル共重合を行なった。無水マレイン酸との共重合では交互共重合体が得られ, 共重合速度はシス-MPE>トランス-MPE>DHPの順となった。分光学的検討からこれらのモノマーは無水マレイン酸と電荷移動錯体を形成していることが認められた。アクリロニトリル (M1) ラジカルに対する相対反応性 (1/r1) はシスーMPE-トランス-MPE>DHPの順となった。メチルプロペニルエーテルのシス体とトランス体に反応性の差が認められなかったのはモノマー状態における異性体間の自由エネルギーがほぼ等しいためと考えられた。DHPモノマーでは二重結合と酸素の孤立電子対との共役によって安定化されているが, ポリマー中の環構造は逆にひずみをもっている。このことがDHPの低反応性に関係があるものと思われる。
  • 第14報シスー, トランスーメチルプロペニルエーテルおよびアクリロニトリルのラジカル三元共重合
    稲木 良昭, 野桜 俊一, 村橋 俊介
    1969 年 26 巻 291 号 p. 479-484
    発行日: 1969/07/25
    公開日: 2010/12/22
    ジャーナル フリー
    アクリロニトリル (M1), シスーメチルプロペニルエーテル (MPE, M2), トランスーMPE (M3) のラジカル三元共重合を60℃ で行なった。MPEには単独重合性がないので, 共重合組成式は簡単化できた。モノマー反応性比は未反応モノマー量から図的に求めた。
    γ12=2.72±0.06, γ13=2.66±0.06
    重合中, シス-MPEとトランス-MPEのモル比には変化はなく, したがってアクリロニトリルラジカルに対する反応性には差がないことが示された (r13/r12=1.00±0.04)。このようにして求まったモノマー反応性比はシスまたはトランス-MPEとアクリロニトリルとの二元共重合の結果とよく一致した。
  • アセチル化触媒としてのスルファミン酸, スルファミン酸アンモン, 硫酸ヒドロキシルアミンについて
    高橋 璋, 高橋 史朗
    1969 年 26 巻 291 号 p. 485-490
    発行日: 1969/07/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    NH2SO2OH (SA), NH2SO2ONH4 (AS),(NH2OH) 2H2SO4 (HS) の (1: 1容) CH3CO2H水溶液に浸漬し, 化合物を抱有した精製リンター (化合物含量1%) を50~100℃ でアセチル化した。SA, AS, HSを抱有した試料は70℃ で2~5分アセチル化されトリアセテートが得られ, その触媒作用はHS≧SA>ASの順であった。またアセチル化反応を促進するには触媒と親和性の小さい希釈剤を使用し, 試料内部の濃度低下を防ぐことが望ましい。高重合度のアセテートを得るための触媒, 希釈剤の効果はそれぞれHS>SA=AS;CH2Cl2+C2H5OH>none>C6H6≧CH3CO2Hの順であった。
  • 第14報ザンテート類によるポリ塩化ビニルの橋かけ
    森 邦夫, 中村 儀郎
    1969 年 26 巻 291 号 p. 491-497
    発行日: 1969/07/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    o-アルキルザンテートカリウムを混練したポリ塩化ビニル (PVC) または側鎖にザンテート基を含むPVCはエチレンジアミン (EDA) によってチオール基を含むPVCを経て直ちにスルフィド構造を有する橋かけPVCとなる。同様の構造の橋かけPVCは硫化水素ナトリウムと混練したPVCのEDA処理によっても得られる。さらにポリザンテートはEDAによって直ちに相当するポリチオールとなるからポリザンテートと混練したPVCはEDA処理によって相当するポリチオール化合物を用いた場合と同様の構造の橋かけPVCとなる。以上の橋かけ反応を低分子モデル化合物を用いて確認し, これら橋かけPVCの製造条件と性質を検討した。
  • 上出 健二, 渡部 武
    1969 年 26 巻 291 号 p. 498-510
    発行日: 1969/07/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    円錐-円板型回転粘度計を利用して, 低ずり速度領域 (ずり速度γ=2.72×10-2~2.08×10sec-1) におけるアイノタクチックポリプロピレン溶融物 (250℃) のずり流動特性と, 定常ずり流動停止直後の応力緩和を測定した。試料として分子量範囲6.2×104~3.96×105の分別区分6種と未分別物1種を利用した。溶融物にずり変形を付加してから比較的短時間のうちは, 場合によっては定常状態におけるずり応力よりも大きなずり応力が発生する。非定常状態におけるずり応力の最大値は, 試料の分子量が大きくかつずり速度が大きいほど大きい。定常状態に達するに要する時間も試料の分子量とずり速度によって著しく影響される。この結果, 毛細管流動の場合でも見かけの粘度に及ぼす非定常流動の寄与が無視できないことが予想された。ニュートン流動から非ニュートン流動に転移するときのずり速度は分子量にほぼ反比例する。ニュートン粘度と分子量との間にはいわゆる3.5乗則が近似的に成立する。定常流停止直後の応力緩和は非線形的である。緩和の速度は分子量が小さいほど, ずり速度が大きいほど大きい。非線形応力緩和の主原因は非フック弾性である。
  • 栗田 利雄
    1969 年 26 巻 291 号 p. 511-521
    発行日: 1969/07/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    ポリエスエル系ポリマーの化学反応を利用する微細構造検討法の可能性を調べる目的で, 微細構造の異なるポリエチレンテレフタレート (PET) 繊維を, 30℃ において70%モノエチルアミン水溶液で加アミン分解した。分解過程は減量, 不溶解残留物の結晶化度, 分子量, 長周期, アミド基含量, 融解挙動, 形態などの変化から検討した。分解過程は, 初めに減量の速い過程とこれに続く減量のおそい過程とがあった。速い過程では結晶化度の増大, 分子量の低下, 長周期の減少, アミド基含量の増加, 融点の降下などが示され, 一方おそい過程ではこれらの値は変化せず一定であった。これらの結果から, 減量の速い過程で非晶領域が選択的に分解を受け, 以後のおそい過程で結晶が厚さの方向からでなく, まわりから徐々に分解を受けると考察した。また無延伸糸はラメラ状構造から成り, 延伸糸はラメラ状構造とフィブリル状構造とから成ることが, 融解挙動の検討結果と電子顕微鏡観察から明らかになった益
  • 山口 興治, 川口 実, 岸 栄洋, 安岐 信行, 沢西 馨
    1969 年 26 巻 291 号 p. 522-528
    発行日: 1969/07/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    高温下におけるポリエチレンの沈降係数を簡便に測定し, 求めた沈降係数と固有粘度から長鎖枝分かれ度を測定する目的で直鎖ポリエチレン試料1種, 枝分かれポリエチレン試料2種の分別試料について測定を行なった。装置は日立UCA-1A型を用い, チタンローターを用いて115℃, 60000rpmで測定した。Schlieren像が時間とともにひずんだり, 鋭くなったりする現象が時々現われたが, ローターの温度分布を少なくするように工夫した結果現われなくなったので, この異常現象は熱による対流のためと考えられる。枝分かれポリェチレンにおいて1分子あたりの長鎖枝分かれ度は分子量とともに増大し, 枝分かれポリエチレン2試料の間に製造条件から推定されたとおりの長鎖枝分かれ度の差が認められた。本方法は, 従来の光散乱法に比べて測定精度や簡便さの点ですぐれているといえる。
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