高分子化學
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14 巻, 149 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 前田 庸
    1957 年 14 巻 149 号 p. 442-447
    発行日: 1957/09/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    結晶性高分子物質の粘弾性を調べる目的で, ポリエチレン, テフロンおよびダイフロンの超音波音速および吸収を, 温度および周波数を変えて測定した。周波数2.88Mcの場合, -60℃ より+160℃までの測定温度範囲で, 通常の低密度ポリエチレンは-60℃および+30℃に吸収の山を生じ, テフロンおよびダイフロンはそれぞれ-20℃および+125℃に吸収の山を生じた。高密度のポリエチレンは-60℃に吸収の山を生ずるが, 低密度のものの+30℃の山に相当するものは見られなかった。これらの転移の活性化熱として, ポリエチレンの低温および高温の転移に対し7および22kcal/mol, テフロンの転移に対しては8kcal/molを得た。さらにこれらの転移におけるセグメントの大きさの推定から, ポリエチレンの低温の転移は無定形部分の一部の自由度が解放されるものであり, 高温の転移およびテフロンの転移はいずれも無定形部分の全体の自由度が解放される状態と考えた。
  • 第3報単量体過酸化物一還元剤による重合について
    宇野 泰三, 吉田 経之助
    1957 年 14 巻 149 号 p. 448-454
    発行日: 1957/09/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    塩化ビニル (以下VCと略記) のモノマーに酸素を圧入すると, 一部は容易に単量体過酸化物を形成し, 亜硫酸ソーダ (以下SSと略記), 塩化第一鉄酸性亜硫酸ソーダと容易にレドックス触媒になることを知った。しかし, この場合も遊離の酸素は重合を抑制する, また, 酢酸ビニル (以下VAcと略記) の単量体過酸化物はVCの良い重合触媒となるが, メタアクリル酸メチル (以下MMAと略記) の過酸化物は全然触媒とならない。還元剤はSSが最もよく, トリエタノールアミン, ジメチルアニソンでは重合しないばかりでなく, 重合を完全に抑制する, この点が一般に用いられている過硫酸カリ (以下KPSと略記) や過酸化ベンゾイル (以下BPOと略記) の場合と異なっている。乳化剤はラウリルスルホン酸ソーダ (以下Na-LSと略記) が最もよく, 水重合ではほとんど重合しない。重合速度は添加する酸素の量を変えてもあまり影響がない。KPSと比べると非常にわずかなモル量の酸素を添加するだけで重合する。生成ポリマーのk'(Hugginsの係数) は一般に大きく, ポリマーの分岐が他の重合形式の場合に比べて多いことが考えられる。
  • 小笹 英夫, 山本 吉威, 山岡 昭美, 岡田 文夫
    1957 年 14 巻 149 号 p. 455-459
    発行日: 1957/09/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    ポリエチレンテレフタレートの縮合度を求める場合溶剤の種類その組成割合, 溶解温度, 溶解時間など因子が粘度に及ぼす影響を明確にすること, 粘度測定の量適条件を求めることおよび長時間溶解した場合におけるポリマー崩壌状況を調べることを圏的とし, 各種溶剤, 各種試料溶液を25℃においてオストワルド粘度計により粘度を測定した。 の結果, m-クレゾールーフヱノール系溶剤よりもテトラクロールエタンーフェノール系溶剤の方が適当で, この場合でもフェール量の増加につれて, かつ溶解温度が高くなると試料の崩壊が起る。したがってテトラクロールエタンーフェノール系混合剤において, その比が7: 3の系が最も良好で, 溶解温度は80℃, 溶解時間は溶解後24時間程度が最適であることを認め, 解後24時間における比粘度を求めて比較すると紡糸能とよく一致した。
  • 第4報含水2成分混合溶媒系におけるポリビニルアルコールの膨潤平衡
    中島 章夫, 宮道 一夫, 桜田 一郎
    1957 年 14 巻 149 号 p. 460-471
    発行日: 1957/09/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    ポリビニルアルコール皮膜を水を1つの成分とする2成分混合溶媒中に浸漬し, 膨潤平衡における母液相, 膨潤相の成分分配を測定し, 同種および異種成分の各種の組の間に水素結合が形成されるような3成分系に関して, 成分の選択的吸着を混合溶媒の熱力学的性質, 成分分子の構造と関連して検討し, ポリビニルアルコールのように結晶性高分子に関しては, 結晶領域を非晶質架橋分子における架橋点と同じように取り扱って溶媒 [1]-高分子 [2] の2成分系に対する関係を溶媒 [2]-溶媒 [3]-高分子間の3成分系に拡張できることを指摘した。非水成分として用いた溶媒はメタノール, n-プロパノール, フェノール, アセトンである。
  • 第1報モノビニルアセチレンおよびジビニルアセチレンの影響
    椋本 和夫
    1957 年 14 巻 149 号 p. 472-477
    発行日: 1957/09/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    酢酸ビニルの重合に及ぼすモノビニルアセチレンおよびジビニルアセチレンの影響について実験を行った。両者はともに重合禁止作用はなく, 重合の初期において著しい遅延作用を示し, その初期重合速度は重合開始剤濃度に比例し, モノビニルアセチレンおよびジビニルアセチレンの濃度に反比例する。重合速度にKiceの式を適用してポリマーラジカルとモノビニルアセチレンおよびジビニルアセチレンとの反応速度恒数を求め, それぞれ60℃で10.2×103および107×103を得た。また重合の安定化反応は主としてポリ酢酸ビニルラジカルと遅延剤から生ずるZ・ラジカルとのcross terminationにより各ラジカル間の他の安定化反応はほとんど無視される。
  • 第2報ポリビニルアルコール部分ホルマール化物について
    松本 恒隆, 水島 国夫
    1957 年 14 巻 149 号 p. 478-482
    発行日: 1957/09/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    水に対して適度の膨潤性を有するPVA部分ホルマール化物を用い, これを酢酸およびカプロン酸水溶液中で膨潤させ, 溶質が水相 (第I相) と高分子膨潤相 (第II相) にいかに分配されるかについて研究した。その結果第1報と同じく次式が成立することを認め, その分配恒数について検討した。
    CII=kCIn (1)
  • 増田 初蔵, 井上 幸彦
    1957 年 14 巻 149 号 p. 483-487
    発行日: 1957/09/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    ラッカー塗膜の機械的性質に及ぼす顔料の補強作用について検討を加えるため, 塗膜の感温性に注目し, 亜鉛華およびタルクを含む2系列の硝酸繊維素 (TCP30%添加) 皮膜の線膨張係数を測定した。亜鉛華含有皮膜では線膨張係数は全く正常であって, 2次転移点は46℃ 付近にあり, 顔料含有量とともにわずか上昇した。しかるにタルク含有皮膜では2次転移点は同様に46℃付近にあるが。転移点において明らかな収縮がみられ, それより高温での線膨張係数は異常に小さかった。これはガラス転移点以上では収縮が続き熱膨張と相殺する傾向があるためである。そこでタルク含有皮膜について鈍し効果および引張荷重の影響を調べた。荷重が小さければガラス転移前の線膨張係数は荷重に無関係であるが, 平均応力としては降伏点を越えなくてもある荷重以上になると低温側線膨張係数が異常に増大した。このことは顔料粒子周辺の局部応力が膜質の降伏点を越えることを意味する。なおねじり振動法により皮膜の剛性率および対数減衰率の温度依存性を追求した。
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