一、小麥皴を水にて浸出し酒精にて沈澱し外観上「タカヂアスターゼ」に酷似せる粗製粉末酵素を分離し且つ其中に含有せらるゝ種々の酵素に就きて定性及定量試験を試みたリ
二、小麥麩中には稍や多量の「バーオキシダーゼ」「チロシナーゼ」「ヂァスターゼ」と少量の「オキシグーゼ」「カタラーゼ」等を含有す
三、小麥皴「バーオキシダーゼ」は温度に對する抵抗力強く醤油釀造の際に於て小麥炒熬操作の加熱温度一一五度附近にては損傷せらるゝ事少なく一一九-一二〇度三〇分にて始めて死滅す
四、小麥麩「パーオキシダーゼ」及馬鈴薯「パーオキシダーゼ」の作用力を同一條件に於て比較するに前者は後者の約二倍なり
五、小麥数「チロシナーゼ」の「メラニン」色素集成作用は可成顯著にして過酸化水素、硫酸「マンガン」「グリココル」硫酸鐵等の觸媒を添加するときは該作用力促進せらる
六、小麥麩「ヂァスターゼ」作用力を同一條件に於て「タカヂァスターゼ」の作用力に比較するに前者は後者の約2/3倍たり
七、小麥麩に含有せらるゝ酸化酵素は醤油醗酵の際に於て色素生成其他の醗酵生理的作用に關し重要なる意義を有する事本實験に於て推察し得べく著者は他日醗酵に對する是等の酵素作用の關係に就きて發表すべし
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