ブドウ酒中の鉄含量についてオルソ・フェナンスロリン法によって定量を行なったところ, 34種類の試料中最高28.10mg/l, 最低3.00mg/lであった。野生ブドウについて鉄含量を測定し, アムレンシス種, コアニテー種, ツンベルギー種で3.00mg/lから7.50mg/lであった。甲州種ブドウについて汁液仕込と果皮仕込を行なったものでは8.25mg/l, 28.10mg/lであり, 果皮に鉄分が多く含まれているものと考えられる。ナイロン66を用いてブドウ酒を処理したところ含まれている鉄分の半量以上を除去しうることを認めた。
銅含量についてジエチル・ジチオカルバミン酸ソーダによる比色定量を行ない, 27種のブドウ酒について最高3.88mg/l, 最低0.38mg/lの値を得た。なお野生ブドウ3種の定量値は0.66mg/l-0.38mg/lであった。
甲州種および甲州× アフス・アーリーの交配種について汁液と果皮仕込を行ない, 汁液で1.25, 1.00mg/l, 果皮で1.97, 1.50mg/lであり, 鉄分と同様に果皮に多く含まれていることがわかった。ナイロン66処理にて銅含量についても鉄と同様な結果を得た。肥料試験栽培によるブドウ酒中の鉄および銅含量について基礎的数値を得ることができた。
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