清酒もろみ末期における状貌のうち, 坊主と地蓋の成因につき検討した。
1) 協会7号, 8号, A-63の各酵母を用いて小仕込試験を行ない, 各もろみにおける酵母の状態を検鏡した。地蓋を造ったA-63, 8号ではもろみ末期になると酵母は凝集してくることが, また坊主もろみになった7号酵母はもろみ期間中分散していることが観察された。
2) A-63, 8号の示したもろみ中での凝集には繊維様の物質が包含されているように観察されたので, ろ紙の繊維を用いて麹汁で培養した酵母につき吸着性を調べた結果, 協会7号は吸着せず, 協会8号, A-63は吸着性を示した。
3) 筆者らが, 過去に行なった仕込で地蓋を形成したA-63, 協会8号, S-23, S-70, S-139らの酵母はともにろ紙繊維に吸着した。またその吸着の程度は培養日数により異なる。協会7号は酵母の老若にかかわらず吸着しないが, A-63は酵母が老熟するほど吸着性が強くなる。
4) ろ紙の繊維を10日間以上培養した酵母に混じて醸酵試験を行なうと, 繊維吸着性のあるA-63, S-23らの酵母は繊維に吸着し, 浮上って蓋を形成したが, 吸着性のない7号らでは蓋を形成しない。
6) 以上にょり, もろみ末期に地蓋を形成する酵母は繊維に対し吸着性のある酵母であることを認めた。
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