生長点組織培養法によりウイルスフリー化に成功した日本在来種, 甲州種, 善光寺種についてブドウさらにはワイン品質の面での改善効果を検討した。
1. 感染樹では, 9月上旬よりブドウ葉に典型的なリーフ・ロール病症状が出現した。この結果, 感染樹では糖度の上昇が9月上旬に停止した。これに対しフリー化樹では10月上, 中旬迄継続し果汁糖度が善光寺種では18.99/100m
l, 甲州種では22.59/100m
lとそれぞれ18%, 25%の増加を示した。
2. 果汁中還元糖, ブドウ糖, 果糖の含量変化を追跡したところ, 両区ともにブドウ糖が果糖をまさり, 上昇曲線は両区ともに糖度の場合と同様の傾向を示した。
3. 果汁中総酸は, フリー化によって成熟期後半に若干の低下を示し, さらにリンゴ酸での減少と酒石酸の増加の傾向がみられた。
4. 果汁中各種養分分析の結果, 窒素含量では顕著な差が認められた。8月下旬で感染樹の240mg/
lに対し382mg/
lと59.2%増を示した。遊離アミノ酸含量でも同様にフリー化樹で628%(9月上旬)の増加が認められた。これはその主成分を占めるプロリン含量の増加によるものであった。
5. ワイン品質への効果としては果汁時と同様, プリー化によって特に窒素, 遊離アミノ酸プ獄リン含量で増加がみられた。またフラボノイドフェノール, ロイ認アントシアニン, カフェオイルタータレイト,
p-クマロイルタータレイト等の主なフェノール成分で20~60%の減少が認められた。刑酒の結果, 感染樹由来のものに比べ酸甘味のバランスのとれた飲みょいものとなった。
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