赤辛みそから分離した
T.versatilisと
T.etchellsiiの生育条件を検討し, つぎの結果を得た。
(1) 食塩耐性
T.versatilis: 食塩0~12%で最も良く生育し, 24%においてもなお十分に生育する.
T.etchellsii: 食塩8~12%で最も良く生育し, 高食塩下での生育は,
S.rouxiiはもちろん,
T.versatilisにまさる。
(2) 生育温度
T.versatilis: 無塩下での適温は25~30℃であり, 35℃で弱化し, 40℃では生育しない。食塩18%存在下での適温は25~35℃であるが, 40℃では弱化し生育微弱となる菌株もある。
T.etohellsii: 無塩下での適温は25~30℃であり, 35℃では生育しない。食塩18%存在下での適温は無塩下同様25~30℃であるが, 35℃では半生育にとどまり, 40℃では生育しない。
(3) 生育pH無塩下では両酵母ともpH4.0~5.5で良く生育する。食塩18%存在下では両酵母ともpH4.0~45において最も良く生育し, pH5.0以上では次第に生育が弱化する。
(4) ビタミン要求性
T.versatilis: 殆どの菌株がチアミンとビオチンを絶対的に要求する。イノシトールは無塩下では要求せず, 食塩18%存在下で刺激的に要求する。コリンを食塩18%存在下で刺激的に要求する菌株もある。パントテン酸は要求しない。
T.etchellsii: チアミンとピオチンは無塩下で刺激的に, 食塩18%存在下で絶対的にそれぞれ要求する。イノシトールは食塩18%存在下でも要求しない (ただしイノシトール欠除では, 生育は幾分劣る)。パントテン酸に対しては, 食塩18%存在下で刺激的な要求を示す。
(5) 培養方法と生育静置培養で, 両酵母が最高増殖まで達するに要す日数は,
S.rouxiiと比べ,
T.versatilisは3倍,
T.etchellsiiは4~5倍かかる。これに対し振とう培養では,
S.rouxiiに比べ, 両酵母とも生菌数が7~8倍多く得られる。
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