一、清酒の揮發性成分を米粒を含む酢液二石餘及び清酒四斗餘から蒸溜法に依つて分離精査した
二、揮發性酸は主として酷酸にして少量の蟻酸を混有してゐる
三、「フーゼル」油中に來る揮發性盟基は、屡々交獄に見ゆる「ピリヂン」を認めす「カダベリン」を得た
四、清酒の様な醗酵液を速に蒸溜する時は「フーゼル」油分は、大部分最初の溜分に來る事を知つた
五、清酒の「フーゼル」油を形成する「アルコール」類は「イソァミルァルコール」を主成分とし共の約三分の二量の「ブチルァルコール」(イソ) 及び四分の一量の左旋性「アミルァルコール」の三者より成立してゐる
六、「フーゼル」油中、高沸點溜出部は主として常温にて結品状を爲す「パルミチン」酸「エチルエスター」及び「ステアリン」酸「エチルエスター」より成り其の量清酒に於ては「フーゼル」油を形成する全、「アルコール」の半量に達しないが米粒を含む、酢液に於ては,「アルコール」類全量の一倍半量に達してゐる、即ち此の物は水及び稀薄酒精に殆んど溶解しないから搾揚時大部分粕中に移行するものであらう、而して夫自身の沸點は三〇〇度近くに及ぶものであるが、普通蒸溜に於ては多成分蒸氣趣の影響を受け主として九〇一〇〇度の溜分中に溜出して來て油滴を爲し浮ぶ性質がある、粕取嶢酎等に冷時屡々析出する結晶性物質は之等の物に起因すべく時に嶢酎潤濁の一原因を爲すものと考へられる
七、低沸瓢揮焚性「エスター」類は、検出する事が出來なかつた
八、「アルデハイド」類は「アセトァルデハイド」っヅアレルアルデハイドL (此物の分離は不成功)「フルフロール」様物質の存在を認めた、後二者は「エキス」分の加熱に由來するものと考へられる
九、「フーゼル」油を含む酒精の分溜に際し初溜部は常に「ヴアニリン」硫酸反懸、濃青藍色を示した、此は前記「ヴアレルァルデハイド」に囚るものと考へられる、著者の一人 (山田) の研究によれば、該反應は「イソヅアレルァルデハイド」、正「ブチルァルデハイド」に於て濃青藍色を與へ、「アセトァルデハイド」は黒褐色であるから、之等「アルデハイド」類の瞼出に用ひらるべき新反應である十、酒精中該成分を不純物として含有するものは蒸溜の最初の區分を分別すれば除去する事が出來る。
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