さきに, 吾々は実験室内でフラスコを用いて米麹を製造し, この際42℃ と言う比較的高い温度で製麹したものが, 33℃ と言う低温度のものより, 低いProtease力価を示すことを知り, 第1報に, そのことを報告した。この事実は清酒用米麹のみならず, 味噌用米麹に於ても従来の製麹概念と著しく異るものがあつて, それだけに一般実務家からの反響も大きなものがあつた。
製麹中には, 酵素の生産と同時に, 一旦生産された酵素が物理的化学的諸条件又は他の酵素によつて破壊されることも当然考えられことであるが, 第1報の実験のみを以てしては, 製麹温度の差がそれ等の事柄に如何に関係しているかと言うことは明らかにされなかつた。
又, 実際の米麹製造の場合には, 第1報に報じたように製麹当初から38℃ とか43℃ とかの高温に曝すことはない。従つて吾々の第1報に報告した実験を再検討することも亦, 必要である。斯様な考慮の下に, 実験の方法を多少変えて本実験を行つたが, 結果としては第1報と略々同様なものを得たし, 又製麹中に於ける酵素生産について多少の知見も新たにすることが出来たので此処に報告することにした。
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