銅の淡水中での酸化皮膜形成に及ぼすシリカおよび硫酸イオンの影響を調べるため,銅粉末および1/4割した銅管をシリカと硫酸イオンを含む溶液に浸漬させた.シリカを含まず硫酸イオンを20 ppm以上含む試験水に8週間浸漬した銅粉末の約90%は亜酸化銅(Cu2O)へと変化した.40 ppmのシリカと硫酸イオンを含む試験水中に8週間浸漬した銅粉末は,硫酸イオン濃度が20 ppmでは約10%が,硫酸イオン濃度が50,100 ppmでは約75%が亜酸化銅となった.シリカと硫酸イオンを含む試験水中で形成された銅管上の皮膜厚さは,シリカを含まず硫酸イオンのみを含む試験水中で形成された皮膜厚さに比べて減少した.淡水中での亜酸化銅皮膜形成は,硫酸イオンにより促進され,シリカにより抑制されることが分かった.
市販のパイナップル缶(無塗装ぶりき缶)の缶内面腐食挙動を促進貯蔵試験と電気化学測定で検討した.促進貯蔵試験では経時に伴い内容物中の錫濃度は増加した.錫-鉄合金の露出に伴いその増加量は大きく,缶内圧も増加した.電気化学測定では,錫,鉄,錫-鉄合金の順に自然電位は貴となり,促進貯蔵試験による錫の腐食挙動を支持する結果であった.これらを踏まえ,缶内面の腐食は5つのstageで表されることが示唆された.
本誌掲載論文受付日の訂正
材料と環境Vol.74, No.5, p.94-99に掲載した論文「果実用途無塗装ぶりき缶の缶内面腐食挙動」最終ページの末尾部分に誤りがありました.以下に訂正いたします.
誤)Manuscript received January 31, 2024
正)Manuscript received January 31, 2025