日本臨床外科学会雑誌
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70 巻, 1 号
選択された号の論文の58件中51~58を表示しています
症例
  • 福原 研一朗, 大村 泰, 葛城 邦浩, 竹村 雅至, 藤原 有史, 吉田 佳世
    2009 年 70 巻 1 号 p. 253-256
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/05
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,男性.67歳時にS状結腸切除を施行,術後腹壁瘢痕ヘルニアを生じていた.入院前日より嘔気あり,翌朝に右下腹部痛出現し,受診した.腹部に縦20cm×横30cmの巨大な腹壁瘢痕ヘルニアを認めた.筋性防御なく,腸蠕動音聴取できず.ヘルニア部にのみ圧痛を認めた.腹部エコーで拡張した小腸内に液体が貯留,蠕動は認めず.腹部CTでヘルニア嚢内にのみ少量の腹水と遊離ガスをごく少量認め,ヘルニア門付近で軸捻転を確認した.そこで腹壁瘢痕ヘルニア嚢内での空腸軸捻転による小腸壊死穿孔と考え,手術を施行した.上腸間膜動脈を軸に約400度の軸捻転をきたし,Treitz靱帯より約50cmの部位より約130cmの空腸壊死を認め,壊死部位の切除・人工肛門を造設した.術後経過は良好で術30日目に人工肛門を閉鎖した.巨大な腹壁瘢痕ヘルニア嚢内では捻転は起こしにくいとされるが,術10年後に軸捻転をきたし,手術で救命しえた.
  • 伊藤 貴明, 平松 聖史, 待木 雄一, 桜川 忠之, 宮田 大士, 加藤 健司
    2009 年 70 巻 1 号 p. 257-260
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/05
    ジャーナル フリー
    症例は87歳,女性.2007年9月,腸閉塞の診断で近医から紹介.Howship-Romberg徴候を認めたため閉鎖孔ヘルニアを疑った.CTでは両側閉鎖孔ヘルニア,左大腿ヘルニア,小腸の腸閉塞像を認めた.閉鎖孔ヘルニア嵌頓と診断し,同日緊急手術を施行した.開腹所見では,両側の閉鎖孔に嵌頓する小腸を認め,これを用手的に整復した.陥入していた2カ所の小腸ともに壁内血腫を認めたが,壊死には至らず腸切除術は行わなかった.左閉鎖孔嵌入部に腸管径の差を認め,腸閉塞の原因と考えられた.また,左大腿ヘルニアも認めた.修復は正中開腹創から腹膜前到達法によるtension free mesh repairを行った.閉鎖孔ヘルニアは,高齢女性の腸閉塞の原因として時に経験するが,両側の閉鎖孔ヘルニアの嵌頓例を見ることは少ない.この症例に関して文献的考察を加え報告する.
  • 駒屋 憲一, 藤井 公人, 小林 一郎, 森浦 滋明
    2009 年 70 巻 1 号 p. 261-264
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/05
    ジャーナル フリー
    再発鼠径ヘルニアに対する術式は現在施設により多岐にわたる.当科では再発例に対して2004年9月より2007年6月までにpreperitoneal approachによるtension free repair法を採用し,9例の症例を経験した.それらは全例男性,平均年齢70.1歳,再発6例,再々発3例を含み,内2例は両側例であった.再発形態は全例が恥骨に接する内鼠径ヘルニアであった.平均手術時間は162分,平均出血量は100mL,平均術後在院日数は8.8日であった.術後合併症として皮下血腫の形成を1例認めたが,保存的に治癒した.再々発は認めていない.
    本法は再発症例に対しては前回手術による癒着が少ない層で手術操作が可能であること,解剖学的構造の把握が容易であること,内・外鼠径ヘルニアに対し,myopectineal orificeをin layにて補強することが可能であり,根治性において優れた有用な術式である.
  • 高木 剛, 中瀬 有遠, 福本 兼久, 宮垣 拓也
    2009 年 70 巻 1 号 p. 265-269
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/05
    ジャーナル フリー
    症例は92歳,女性.受診1週間前から右鼠径部に膨隆を認め,徐々に右鼠径部痛が増強するため来院.右鼠径部から右大腿内側にかけて4cm大の弾性軟の腫瘤を認めた.CT検査での右大腿ヘルニア嵌頓の診断のもとに緊急手術を施行した.鼠径法にてアプローチし,右大腿ヘルニアの嵌頓を確認した.緊満したヘルニア嚢の脱転操作の際,容易に腹腔内に内容物が還納してしまったため,内容物確認のため腹腔内検索を行ったところ壊疽性虫垂炎を認めた.手術は,同一術野で虫垂切除術とメッシュプラグ法にて大腿ヘルニア根治術を行った.術前CT検査でのヘルニア嚢内の検索は有用であるが,虫垂嵌頓の診断は困難であった.虫垂の嵌頓は比較的稀であるが,その可能性を念頭に置き,術前・術中診断ならびに外科的治療を行う必要があると思われた.
  • 兼田 博, 木村 正美, 久米 修一, 松下 弘雄, 井上 光弘, 上村 邦紀
    2009 年 70 巻 1 号 p. 270-273
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/05
    ジャーナル フリー
    症例は54歳,男性.発熱,倦怠感を主訴として来院した.CTで脾膿瘍と多発性肝膿瘍と診断し抗菌剤全身療法を行ったが,発熱が持続した.脾動脈内にカテーテルを留置し,抗菌剤の動注療法を開始したところ,速やかに解熱し,CTでも膿瘍は消失した.以後,再発は認めていない.若干の文献的考察を含めて報告する.
会報
平成20年度本学会概要
編集後記
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