日本臨床外科学会雑誌
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70 巻, 8 号
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症例
  • 竹本 圭宏, 藤岡 顕太郎
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2521-2524
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は47歳女性.左鼠径部に2cm大の有痛性腫瘤を自覚し近医受診.当科に紹介された.左鼠径部に2cmの腫瘤を触知し,還納不能で圧痛を伴っていた.腹部CTでは4cm大の辺縁不整な腫瘤性病変が認められ,腹部エコーでも内部不均一な低エコー域が認められた.軟部腫瘍・鼠径リンパ節腫脹もしくは鼠径ヘルニアが疑われ,腫瘤摘出術を施行した.鼠径管内から外鼠径輪を通じて内側下方に向かい突出する暗褐色腫瘤を認め,鼠径管を解放し腫瘤を摘出した.術後3日目に軽快退院した.病理学的には,腫瘤内部に著明に拡張した嚢胞を多数認め,1層の立方体の細胞が嚢胞を覆っていた.免疫染色では立方体の細胞がCalretinin染色で陽性となり,異型性は認められなかったので良性多嚢胞性腹膜中皮腫と診断された.鼠径部に発生する中皮腫は稀であるため,文献的考察を加えて報告する.
  • 重河 嘉靖, 小林 康人, 東口 崇, 山本 基, 落合 実, 辻 毅
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2525-2530
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は36歳,男性.腰痛を主訴に当科を紹介受診した.白血球,CRP上昇と炎症反応を認め,左側腰部後腹膜にCT,MRI検査で嚢胞性成分を伴う腫瘤として描出された.これらの結果,後腹膜の炎症性腫瘤と診断し,後腹膜アプローチでの鏡視下腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は45×50×50mmで,病理組織学的に神経鞘腫と診断した.また,断端には既存の神経節細胞を認め,腫瘍は交感神経幹と連続していた.
    われわれはきわめて稀な腹部交感神経由来の後腹膜神経鞘腫の1例を経験した.後腹膜アプローチでの鏡視下手術は腸管損傷の危険性も少なく安全に行えるので,後腹膜神経鞘腫に対し有用と考えられる.
  • 金城 洋介, 吉冨 摩美, 韓 秀炫, 山本 秀和, 小西 靖彦, 武田 惇
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2531-2535
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,女性.主訴は左上腹部痛.腹部造影CTにて左横隔膜下を占拠する辺縁不整で空洞形成を伴う15cm超の巨大腫瘍を認めた.
    PET・ガリウムシンチにて腫瘤に一致した集積を認め,上・下部消化管内視鏡検査は正常,内分泌ホルモン・腫瘍マーカーも共に正常であった.他に原発巣と考えられる病変はなくCT画像所見から後腹膜腫瘍を疑った.遠隔転移はないため診断・治療目的に手術を行った.脾摘・胃部分切除・膵尾部切除・左副腎部分切除・横隔膜合併切除を追加することで腫瘍を切除し得た.病理組織学的診断は後腹膜孤立性繊維性腫瘍であり,横隔膜への浸潤が広範囲であったため残念ながら横隔膜切除断端は陽性であった.術後経過は順調で合併症なく退院できたが術後5カ月目に再発した.後腹膜繊維肉腫には悪性度の高いタイプがあり発見時には進行していることが多く腫瘍摘出例は半数以下である.拡大手術による切除例は稀であるので報告する.
  • 山口 俊介, 松田 健司, 堀田 司, 瀧藤 克也, 東口 崇, 尾崎 敬, 山上 裕機
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2536-2539
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,女性.婦人科において直腸膣瘻の精査中の腹部CTにて仙骨前面に腫瘍を指摘され当科を受診した.諸精査にて,脂肪肉腫と診断され,手術を施行した.摘出腫瘍は長径約9cm大の被膜形成明瞭な充実性腫瘍であった.組織学的には脂肪組織と混在する骨髄造血組織を認め,骨髄脂肪腫と診断された.本疾患の骨盤腔内の発生は稀であり,文献的考察を加え報告する.
  • 星川 竜彦, 小林 健二, 篠崎 浩治, 尾形 佳郎
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2540-2543
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は88歳,女性.右ソケイ部の膨隆を自覚したが,疼痛などの症状がなく放置していた.数日後,発赤と疼痛が出現し近医を受診したところヘルニア嵌頓と診断.当院救急外来へ紹介となった.来院時右ソケイ部に硬い膨隆を触知し腹部CT検査では右ソケイ部に周囲の炎症を伴う腫瘤様の構造を認めるものの,小腸の拡張などの通過障害を示唆する所見はなかった.超音波検査でも,腸管の通過障害を示唆する所見はなかったが,ヘルニア嚢内に腸管の陥入と穿孔を示唆する所見があり,大腿ヘルニア嵌頓および腸管穿孔の診断で,同日緊急手術を施行した.術中所見では大腿管を通って回盲部から50センチの回腸から突出したMeckel憩室と思われる部位が嵌頓し,先端がヘルニア嚢内で穿孔,膿瘍形成していたためこれを切除後,McVay法で修復した.Meckel憩室を内容とするLittréヘルニアは極めてまれな疾患であり,文献的考察を加えて報告する.
  • 大谷 裕, 岡 伸一, 倉吉 和夫, 河野 菊弘, 吉岡 宏, 金山 博友
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2544-2547
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は82歳,女性.両側大腿内側から膝関節部の疼痛,痙攣を主訴に他院救急外来を受診.腹部CT検査で両側閉鎖孔ヘルニアと診断されたが,その後症状が消失し経過観察された.その数日後に当科外来を受診したが,腹部CT検査では異常を指摘出来なかった.患者からの問診により主訴の原因が閉鎖孔ヘルニアに伴うHowship-Romberg徴候であったと考え,待機的手術を施行した.前方アプローチにて両側鼡径管を解放し,腹膜外腔を展開した後,開大した閉鎖孔の全面にprosthesis(Bard®Direct Kugel patch,S size)を貼付した.術後に下肢の症状が再発することは無かった.一般に閉鎖孔ヘルニア症例はイレウス症状や下肢の疼痛など,何らかの症状を契機に発見され緊急手術が施行される場合が多いが,当症例のように待機的手術が行われる場合も散見される.本症例は両側性の閉鎖孔ヘルニアが自然還納していたという点で,過去の報告例と比べて特殊な例であった.高齢者の原因不明の腹痛や下肢痛の原因として,閉鎖孔ヘルニアが関与しているケースが少なからず存在する可能性が示唆された.また,Direct Kugel patchを用いた術式は低侵襲で確実に閉鎖孔を処理可能な術式であると思われた.
  • 芝木 泰一郎, 森本 典雅
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2548-2550
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    カテーテルインターベンション時のSeldinger法における穿刺部血腫形成の頻度は極めて少ないものの,まれに外科的血腫除去を要する症例が存在する.従来,手技修了後の止血は用手圧迫で行われていたが,適応に制限があるものの,止血デバイスの使用が徐々に広まってきており用手圧迫同等,もしくはそれ以上の良好な止血効果を示している.今回我々は,右総大腿動脈よりアプローチして冠動脈造影を施行後,止血デバイスの1つであるAngio-SealTMを用いた止血操作後に血腫形成を来し,外科的に血腫除去手術を施行した症例を経験した.本症例について文献的考察を含め報告する.
  • 村岡 孝幸, 泉 貞言, 山川 俊紀, 小野田 裕士, 溝尾 妙子, 塩田 邦彦
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2551-2555
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は35歳,男性.交通事故により腹部を強打した.肝損傷を認め,保存加療を開始したが,24時間後のCTで腹腔内遊離ガス,腹水の増大と膵体部の断裂を認めたため,消化管穿孔および膵損傷と診断し,緊急開腹手術を施行した.膵体部不全断裂,十二指腸球部の穿孔,肝右葉中心性破裂を認め,膵胃吻合,胃空腸吻合,肝空腸吻合を行った.術後縫合不全を呈したが,保存的に軽快した.膵機能温存のために膵胃吻合が有効であった.また肝中心性破裂において肝空腸吻合は緊急避難的な胆汁ドレナージの選択肢になり得た.腹部多臓器損傷は損傷形態に応じて柔軟な対応が必要である.
  • 豊田 剛, 吉田 禎宏, 鷹村 和人, 今冨 亨亮, 斎藤 恒雄
    2009 年 70 巻 8 号 p. 2556-2562
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,男性.既往歴に慢性関節リウマチ(22年前~),左腎細胞癌で腎摘(15年前).労作時の動悸を主訴に受診し,著明な貧血(Hb5.2g/dl)を認めたため,当院内科に紹介され入院した.上部消化管内視鏡検査で胃体上部後壁に3型様腫瘤を認め,生検にてGroupV(淡明細胞癌様でpor)との診断であった.CT検査で胆嚢結石と両肺に多発性腫瘍を認めた.止血目的もあり幽門側胃切除・リンパ節郭清術,胆嚢摘出術を施行した.病理組織検査にて粘膜下層を中心に拡がった,clear cell carcinomaで,CK7およびCK20の免疫染色にてともに陰性であり,腎細胞癌の多発性肺転移を伴う胃転移と診断された.術後インターフェロンα,インターロイキン-2などの治療を行ったが効果無く,術後1年3カ月にて死亡した.
    本症例は免疫抑制剤のタクロリムスを投与されており,多発性転移に関与した可能性は否定できない.
編集後記
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